少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 最終決戦、前編です。


55話 バミューダ海域決戦

 バミューダ海域における11:40 南西海域

 

 

 「ほんっとうに敵がひしめいているわね。壮観て言えばいいのかしら?」

 「気持ち悪いでいいわよあんなギチギチ」

 「どっから撃っても当たりそうだな!」

 「弾薬足りるかな……」

 「まだ交戦許可は出てませんね。まだ引き付けるつもりでしょうか?」

 

 私達50鎮守府の礼号組は例の宣戦布告前から127からの依頼があった通り、南西から日本に向けて進軍するつもりの深海棲艦部隊への迎撃に出ていた。

 他にも同様の依頼を受けて展開しているらしい部隊が複数見られる。宣戦布告を見て慌てて出撃準備を始めた鎮守府の部隊はまだ到着に時間がかかるだろう。

 

 「霞ちゃん、127の皆どこだろう。暗くて良く見えないけど」

 「こちら大淀、了解。127の艦娘母艦はすぐ後方に着いたと連絡がありました」

 「こんなに近くにかよ!?」

 「相当の命知らずじゃないの、面白いわね」

 「……あいつらここにはいないかもね」

 「「霞ちゃん!?」」

 「それより、ここじゃ他の艦隊と被るから右舷にずれるわよ。敵をしっかりと正面は通さないように布陣すべきね」

 『こちらが指示を出す前に最適解か。認識できた資質を伸ばしているようだな、駆逐艦霞』

 「艦娘母艦に乗っているのは参謀!?ますます確信が持てたわね」

 

 私の知っている彼らは常に敵の一歩手前を行き、非常事態へのカバーも早く、何より命知らずなのかという度胸を持ち味方の損害を何よりも嫌う連中の集まりだった。

 その上で護衛対象になる艦娘母艦及び非戦闘要員をここまで前線に出すということは、もっと前線、ないしとんでもないところに布陣していると思われる。

 

 「まだ待ち、っていうのにも狙いがあるんですね?」

 『俺の仕事が無くなりそうな勢いだな。……展開している友軍各員へ。こちらは127鎮守府。宣戦布告の時間まで後十数分ある。攻撃開始はそこまで待ってくれ。その頃には有利な状況にすることを約束する』

 

 凄まじい自信だ。理屈は分からないが地球の裏側にあるらしい敵の本拠地の急襲でもするのだろうか。

 

 「まあ、やるかどうかで言えばやるわね。……皆聞こえたわね?もう少し待機よ!」

 「「了解!」」

 

 そうしていると全域に通信がかかる。そして騒々しい笑い声が響き渡った。

 

 『ハハハハハ!!見えるかしら愚かな人間共!私の宣戦布告の前に蛮勇にも立ち向かおうとするのはわずかにこれだけの戦力!何分で磨り潰されるか賭けてみない?ハハハハハ!!』

 「うっせ!」

 「大淀、通信が届いてる範囲は?」

 「前回同様日本のメディアにも届いてますね映像はこちらです」

 

 通信に映っている映像は2つ。本拠地らしき屋内で高笑いをする敵総大将、指揮者(コマンダー)だったか。取り巻くように下卑た笑いを浮かべる姫級を中心とした深海棲艦が複数。奥の高台に見切れるようにまた1隻。おそらくあれが創造者(クリエイター)だろう。

 もう1つは私達が俯瞰で中継されていた。彼我の戦力差が分かりやすいように。

 

 「この映像だとあの辺か?ドローンらしきものは見えないけど」

 「気にするだけ無駄よ。逆に蹴散らしてアピールに使えばいいと思いなさい」

 

 そうして待機していると、指揮者がより愉快そうに喋り続けてきた。

 

 『あらぁ?127の愚かな面々がここにはいないようねぇ!可哀想に!押し付けられたのねハハハハハ!!』

 「すごい調子の乗り方ね。ああいう顔を叩きのめすのが楽しいんだけど何処にいるのかしら」

 「さあね。……後10分か」

 『さあ絶望しなさい愚かな人間共!この全てが私の指揮下にある!死を恐れもしない!圧倒的な質と暴力の前に絶望してーー』

 『『煩ぇ死ねえええぇぇぇぇぇぇ!!!』』

 『なぁっ!?』

 

 騒々しく調子に乗る指揮者の映像に飛び込む人影が2つ。127の天龍さんと卯月さんだ。

 

 『こちら127鎮守府!当艦隊敵拠点に奇襲成功ス!繰り返す、奇襲に成功ス!友軍各艦隊は指定時間より迎撃願う!』

 

 次に響いてきたのは福山司令官の声だ。やっぱりやってくれたのだ、彼らは。

 

 「聞こえたわね!混乱が増すでしょうからそこから追い払い始めるわよ!」

 「「了解!」」

 

 やってみなさいよ、アンタ達……!

 

 

 少し前 バミューダ海域 艤装島上空 アークス揚陸艇

 

 

 「梓、指定ポイントに到着したわよ!」

 「ありがとうございます、サラ。タイミングも完璧ですね」

 

 私達はアークス揚陸艇で艤装島の真上に陣取っていた。霧が濃く、艤装島に居座る怪異もまだ見えない。

 

 「改めて作戦を説明します。屋内の指揮者らを第127鎮守府の戦闘要員ほぼ全てで攻撃、島の外部からの揚陸艇への襲撃に対する妨害を第1鎮守府第一遊撃隊で、島の屋外上部に鎮座する怪異を私、坂田班、アークス部隊で討伐します。

 流れとしては艤装島港湾部に揚陸艇を上陸させ、各部隊を展開。最初に卯月、天龍さん、タさんが指揮者に突撃。指揮者に反応させます。それに怪異が反応した所に私達が『スターゲイザー』を叩き込みます。

 以降、指揮者と怪異のリンクを乱すことを主眼に攻撃を行って頂きます。その上で各討伐対象を討伐すれば任務完了、といった流れです。

 皆さん、これが対南西勢力との決戦になります。どうか、よろしくお願いします」

 「「了解!」」

 「揚陸艇、一気に降下するわ!揺れるから捕まってなさい!」

 

 ぐん、と重力が掛かる感じがする。内部の安定性が保証されているはずの揚陸艇でこの感じなのだ。降下というより落下と言うべき速度を出しているようだ。

 

 「待ってろよクソ指揮者……!」

 「絶対ここで殺してやる」

 「この日のために、そしてこの日以降のために私達は生きてきたんだ!」

 「ほう、地球の連中随分とやる気じゃないか」

 「私達にとってのダークファルスのような相手だもの。それと、今回はちゃんと働いて貰うからね!」

 「全く。お前さんは適材適所という言葉を知らないのかい?」

 「局長やってるんだから少しは総務部の仕事やれって言ってるのよ馬鹿マリア!帰ったら何1つ仕事減ってなくて酷い目にあったんだから!」

 「……」

 「おいなんでここで俺を見るんだよテオドール!」

 「先日同じことを言っていたな、って。マリアさんに鍛えられていたのがよく分かりますね」

 「いやそれはないぜーー」

 「なんだぁ、ゼノ。私と同類は不満かい?」

 「いや姐さん、そういう訳じゃなくてだな……」

 

 アークス部隊として参加しているのはテオドールさん、マトイさん、ゼノさん、サラさん、そして六芒均衡の二、マリアさんだ。選抜基準は『ダークファルスと正面から正気で戦える人物』である。

 マリアさんは先日の【若人(アプレンティス)】戦にこそいなかったが、40年前の【巨躯(エルダー)】戦争を始めとして数多くのダークファルスと第一線で戦い抜いてきたベテラン中のベテランエースである。

 

 「アークス各員へ。対峙していただく怪異はダークファルスには及びませんが、恐怖、狂気といった精神汚染能力はダークファルスのそれを上回ります。くれぐれも油断せずにお願いします」

 「任せろよ梓。そんぐらいでビビるようじゃ六芒均衡なんて務まらないからな」

 「私も全力でやるよ!」

 「頼もしい限りです……さて、サラ」

 「ええ、まもなく着陸するわよ!総員、対ショック!」

 

 ずぅん、という音と共に重力の感覚が戻る。到着だ。

 

 「総員出撃!これで終わらせます!」

 

 てーとくの号令と共に各自駆け出すのだった。

 

 

 艤装島 屋内

 

 

 「「煩ぇ死ねえええぇぇぇぇぇぇ!!!」」

 「なぁっ!?」

 

 私専用に作って以降、各艦娘にもカスタマイズの上で装備が行き届いたバーニアを最大限に噴かして卯月の姐さんと天龍の姐さんが取り巻きも何もかも無視して突撃した。

 指揮者が卯月の姐さんの蹴りを受けて仰け反った所に天龍の姐さんの斬撃を受け、体勢を整えようとした所に左右から二人が打ち込む。

 

 「っぐ、どこから……」

 「喋る暇なんか与えるかよ!」

 「今ここで死ぬんだよテメーは!」

 「舐めないで!何はともあれ私の体は強化されてーー」

 「はああああっ!!」

 「がっ!?お前は、北の……」

 「射出!」

 「がふっ!?」

 

 続いてタの姐さんが突っ込み大盾を殴りつけ、盾から射突攻撃を深々と突き刺した。

 

 「姫様の、仲間達の仇を!取らせてもらう!指揮者!」

 「どいつもこいつも……!でもねぇ!私には神の加護があるのよ!これぐらいでーー」

 『ーーーーー!!!』

 

 まるで島が悲鳴を上げているように島中に響く悍ましい悲鳴のようなもの。

 

 「な、力が、減って!?何があったというの!?」

 「響だよ。こちらの予想通りだ。このまま攻めていくよ」

 「「了解!」」

 

 つまりは屋外でてーとく達がやったということだ。

 

 

 同時刻 艤装島 屋外

 

 

 「なる程こりゃあすげえな」

 「冷静に分析すれば【若人】の方が厄介と分かりますが、見る者への威圧という面だけで言えば並べるでしょうね」

 

 怪異を見やる。先日見た通りの巨体と悍ましさは相変わらずだ。

 

 「なる程。濁流さんの言う通りですか」

 「アズサ、どうしたの?」

 「マトイ。それに皆さんも見えますよね?アレの腹部に残る攻撃の痕が」

 「本当だ」

 「先日の江風さんの攻撃の痕です。……つまり、奴は回復に手を回せていない」

 

 それだけではなく、本来のこの怪異は攻撃手段として対象を濃霧に包み込み一気に発狂させるといった搦め手を複数持っているという。江風さんに対しそんな手段は使っていなかった。つまり、現状維持に手一杯であると言える。

 

 「逆に言えば半端な攻撃じゃリンク先の指揮者とかいう奴へのサポートが切れないって訳だ。お前さん、どうする気だい?」

 「単純な話です。意識せざるを得ない一撃を叩き込んで危機感を覚えさせます。自己修復や自己防衛に注意を割かせれば指揮者への補助、更には別区域に展開している敵部隊への指揮者の能力の効果範囲を抑えることが出来ます」

 「その分こちらが危険を背負うってことは理解しているね?」

 「当然。ですから対ダークファルスを行える人選で招集したんですよ、マリアさん」

 

 要は【若人】との戦いの再現である。危険はこちらで引き受ける。

 

 「マトイ、テオドール、ゼノ先輩。『スターゲイザー』を使います、助力を。マリアさんはそこに全力で追撃を。坂田班及びサラは屋内へのエネルギー流入が見られたらそこを優先的に潰してください」

 「うん!」

 「消耗に関しては大丈夫ですか?」

 「あれだけ撃ちましたから加減は覚えました」

 「よし、そんじゃ一発かますとするか!」

 「さあ、貴様の安寧は終わりだ。この一撃で滅びを自覚し、足掻いて逝け!『スターゲイザー』!!」

 

 力を合わせたメンバーを戦闘不能にしないようにしつつ出せる最大威力で叩き込む。力の奔流を見てようやく防御態勢を取ったが遅く、身構えた腕ごと叩き斬った。

 

 「ーーーーー!!!」

 

 覚悟のできていない者が聞けば発狂してしまうような悍ましい悲鳴を上げる怪異。先程身構えた腕こそ消し飛んだがまだまだ腕は残っていて、その1つをこちら目掛けて振り抜こうとして。

 

 「『閻斧(えんぶ)ラビュリス』!」

 

 マリアさんの創世器、ラビュリス。権能はシンプルに凄まじい破壊力。その非常に強力な一撃がその腕を迎撃するどころか引き裂いて胴までダメージを通していた。

 

 「ーーー!!」

 

 怪異はそこで判断に困ったような素振りを見せる。霧の維持、指揮者への補助、本体の防護。何を優先すれば良いのか迷っているようだ。

 元々圧倒的な力を持ち一方的に暴れまわる側だったのだ。一度アメリカ本土から逃げ出したとはいえ劣勢という状況に不慣れなのだ。

 

 「ーーー」

 「坂田さん!サラ!」

 「お前ら構えろ!」

 

 ドクン、と塊が胴体から根本に向かって行く。それが島の上部に寄生している1つの根に辿り着き、島の内部へエネルギー供給を始めようとする。

 

 「させるか鳥頭がよ!ロケットランチャー斉射!」

 「やらせない!『ホールディングカレント』!」

 

 坂田班の斉射とサラの武器であるワイヤードランスを伸ばし、突き刺しての電撃がエネルギーを送ろうとする根を一気に攻め上げる。

 

 「ーーー!」

 「根が壊れたぞ!」

 「ーーー!!」

 「霧が……アイツに集まっていく!?」

 

 怪異が霧を吸収し、損傷が消えていく。それと同時に島の内部への供給も中断した様子だ。何よりも自身の防護を優先する気のようだ。

 

 「『ウォークライ』……さあ、一気に攻めていきますよ!」

 

 後は、このまま内部での戦いが有利に進められればいい。

 

 

 同時刻 艤装島 屋内

 

 

 「なんで!?何故、何故力が来ないの!?がぁっ!?」

 「年貢の納め時ってやつだ!くたばれ!」

 「アタシらの仲間の無念、思い知れぇ!」

 「絶対にお前だけは、許さない!」

 

 怪異からの力の供給が途絶えたことに混乱する指揮者に苛烈に殺意を持って攻め立てる3人。天龍の姐さんやタの姐さんがここまで殺意を前面に出す所は見たことがなかったから、少し驚いている。

 

 「江風!ぼさっとしてないで自分の相手しなさい!各部隊、作戦通り展開出来たわね!?一気呵成と行くわ!」

 「ッ!了解!」

 「「了解!」」

 「行こう、江風!」

 「あぁ、付き合ってくれよ、海!」

 

 暁の姐さんの声で意識を戻し、私が戦うべき相手である創造者に向き合う。コイツは私がケリをつけたいのだ。

 

 「行くぜ、創造者ァ!!」

 

 

 同時刻 南西海域

 

 

 『行くぜ、創造者ァ!!』

 「これ、江風ね……」

 「映像が指揮者?ってやつから江風ちゃんと創造者ってやつのところに移ったね」

 「カメラが吹っ飛ばされて転がっただけじゃねぇのか?」

 

 南西海域に展開している私達50鎮守府、いや敵を含めた全艦隊に指揮者の映像が届いていたのだが。

 そのカメラか何かが天龍さん達の苛烈な攻撃に巻き込まれたのか、カメラが吹き飛ばされて離れた江風達をフォーカスして映し出していた。

 後ろからものすごい殺意に溢れた127組の攻撃と声が響いている辺り、見えずとも指揮者やその郎党は押されているのだろう。

 

 「おい、力が……途絶えたぞ!?」

 「指揮者様は何を……!」

 「どうすればいいんだ!?」

 

 対峙する深海棲艦の指揮艦らしき連中を中心に動揺が広がっている。127の乱入前まで万能感に満ちた様子だったのに一変している。

 

 「金剛さん、これがギリギリまで攻撃するなってことだったんですね?」

 『えぇ。そして攻撃はもう少し待ってくだサイ。動揺をさらに広げた方が好都合デス』

 

 少し離れた同海域にーー大量の敵を相手にするのでこちらの布陣もだいぶ横に伸びているーーいる金剛さんに連絡を取って確認する。確かにまだ戦いを始めるには勿体ない。

 

 『こちら127艦娘母艦。金剛の言う通りだ。もうしばらく攻撃準備のまま待機で頼む。その間、優先ターゲットを見極めてくれ。

 ターゲットは小隊長、指揮艦、そういう類のものだ。指揮者からの力も指示も降りてこないと喚いているあいつらだな。

 攻撃開始と共に出来る限り素早くアレらを落としてくれ。それでお前達の安全性も左右される。優先ターゲットが遠い部隊は……分かるな、50鎮守府霞』

 「目の前の部隊を素早く、圧倒的に撃破して敵の恐怖を煽る、ですね」

 『その通りだ。順調に強みを伸ばしているようだな。その上で後続の連中へは特に、逃げ道を用意する形で攻めるように。

 窮鼠猫を噛むというが逃げ道がある鼠はわざわざ猫を噛みには来ない。それに、今回間に合わなかった連中にも戦果を残してやる方が禍根も残るまい?』

 

 それもそうだった。今南西海域で迎撃できている艦隊は127に好意的で要請にさっさと応じた鎮守府の部隊である。

 指揮者の宣戦布告に混乱し、問い合わせたりと後手後手に回っていた鎮守府の部隊はこの戦いに間に合わない。

 そんな連中に変にやっかみを受けるぐらいなら、あえて逃げ出すような敵は取りこぼしてそいつらの戦果にする。これで連中の溜飲を下げられるなら後々の鎮守府間の関係維持が楽になるだろう。

 

 『こちら海狼(シーウルブズ)。遠めの指揮艦への狙いは出来ているよ。報酬、期待させてもらうからね』

 『127襲撃時にも世話になった部隊か。当時の礼も兼ねてその分戦果には色を付けて応じよう』

 『それならジャパニーズクロゲワギュー!最高級のクロゲワギューのステーキを食べたいわ!』

 『いいわね!お礼はそれで頼むわ!』

 

 潜水艦隊特殊部隊、『海狼』。世界中の潜水艦のエースが集まった部隊で特定の拠点を持たない。世界のいくつかに寄港先を設けていて、そこに立ち寄っては次の戦場に繰り出していく。

 役割としては敵味方が知らないうちに接敵、敵の大物をスナイプして仕留めて行く暗殺者のようなもの。

 噂でだけ聞いたことのある、連絡の仕方すら不明の実在するかも良くわからない存在だった。今回はおそらく横須賀が手配したのだろう。……それはそれとして。

 

 「黒毛和牛の食べ方、ってちゃんと知ってます?」

 『what?ゴーカイに焼いて食べるのが美味しいんじゃないの?』

 「雑に食べるの勿体ないですよ!?」

 『なんてコト!この戦いが終わったら作って見せてよキミ!』

 「えっ」

 『……だそうだ。品はこちらで用意する。後で正式に50鎮守府基地司令に依頼しておこう』

 「えっ」

 「霞すごいじゃない!あの海狼と接点持っちゃったわよ!」

 「ナイス突っ込みです。流石霞さんですね」

 「やるな霞!」

 「すごいよ霞ちゃん!」

 「えっと」

 

 調べてちゃんと食えぐらいのつもりで言ったのだが……ともかく。

 

 「それ以上騒いだら転属届」

 「「ごめんなさい」」

 

 以前の127に家出した件が効いているようで、こうして強制的に落ち着かせることが出来るようになっていた。

 

 「アホやってないで江風の様子は……」

 

 兎にも角にも、創造者を江風がどう対処できるかで今後の展開が変わるのだ。

 

 

 同時刻 艤装島 屋内

 

 

 「オラァ!次ッ!こいつもだ!」

 「遠くから狙うなんてやらせない!『ラ・フォイエ』!そこはまとめて『イル・ザン』!」

 

 私は創造者が繰り出すエーテル製の前衛部隊を斬り捨てて進軍していた。援護するように遠距離に配置されている奴は海が撃破してくれるので前に集中できている。

 座標で狙える炎テクニック、『ラ・フォイエ』に敵を吹き飛ばす高威力の風テクニック、『イル・ザン』。海のテクニックのレパートリーはますます増えている。

 

 「こんなモンかよ創造者!」

 「……想定を超えている?」

 

 創造者が作り出したエーテル部隊は、確かに私への対抗策として意識して作られたような性能をしていた。簡単に踏み込まれないようにする牽制型、低火力だと芯には届かないので有効打が通らない大型といったように。

 だが、出来得る限りの強化をしている私が抜けない相手ではなかった。想定が少し古い、というのが適切かもしれない。

 

 「やりたいことは分かったけどさぁ。ンだよ、お前その程度なのか?」

 「……私は」

 「創造者!私に強化を!押されているじゃないの援護しなさいよ!フルパワーで!!」

 「……ッ」

 「『ウォークライ(お前の相手は私だぞ)』?」

 「!」

 

 てーとくが便利に使っている敵の意識を自分に向けさせるスキル、『ウォークライ』。私の戦術的にも習得しない理由がなかった。

 

 「お前いつもあんな雑なオーダーばっか受けてたのか?道理で」

 「……どういう」

 「お前が強化した相手との戦闘は何度かやってきたけど、どれもこれも雑な仕事だなとは思ってたのさ。お前、相手がどんな意図で依頼してきているか理解してねェだろ」

 「……その通りだ。それが私のーー」

 「ンなモンが『役割』なんて言わせねェぞ。むしろ役割を放棄しているとすら言えるぜ。例えば今の指揮者の奴のオーダーは『死にたくないから死なないための強化を目一杯してくれ』だぜ?」

 「……そう、なのか……指揮者!」

 

 私の言ったことを疑わずに全力で力を振るう創造者。本当に上手く使ってくれる相手や助言をくれる相手が居なかったようだ。

 

 「まあ今のは嘘なんだけどな」

 「ッ!?」

 「あんな全力、切り替える余裕もないだろ?なら今のうちに制圧すればいいってことだよなァ!こいつも終わり!」

 

 創造者への道を塞ぐ敵もあと僅かだ。口撃の中でも刃を振るう手は止めていない。

 

 「……お前は……何なんだ……タチバナアオイ!」

 「『自分に課せられた役割』じゃなくて『私がやるべきと思った役割』に徹しているだけの人間さ。そして今の私の役割は、お前を倒すことだ!」

 「江風、後は任せて!」

 「お前は北の姫の下にでも居れば未来は違ったんだろうな。お前の力の使い方を一緒に悩んで、認めてくれるそんな誰かがいれば。

 だけど、そうはならなかった。今のお前は私達の敵だ。だから、ここで終わりにする!バーニア全開!一気に行くぜ!『シンフォニックブレイク』!!」

 「させない」

 「ッ!?」

 

 私と創造者の間に割って入り攻撃を凌いでみせたのはーー

 

 「赤騎士(レッドナイト)!?お前、なんでここに……それになんのつもりだ!」

 「創造者。この個体には可能性がある。故にまだ摘み取らせるわけにはいかない」

 「その可能性のためにどれだけの犠牲が出たと思ってやがる!ここで終わらせなきゃどれだけの犠牲が増えると思っていやがる!ンなことも分からねェ、ってのかよクソメカがよ!」

 「よりよい世界の未来のために」

 「その邪魔だって言ってンだよ!『オウルケストラー』!」

 「……お前は」

 「創造者。お前は果たすべき役割を見い出せ。その持ちうる可能性を示せ。その為に、お前はここで朽ちるべきではない」

 「退けって言ってンだよ!『クイックマーチ』!」

 「機械なら、『ゾンデ』!」

 

 私の連撃も海の雷テクニックも耐えてみせる赤騎士。効いていない訳ではないようだが、致命には遠い様子だ。

 

 「……タチバナアオイ」

 「ンだよ創造者!コイツの次はお前だ逃げるなよ!」

 「……お前は何の為に存在している?何がそこまでさせる?何がお前を常に押し上げていく!?」

 「存在意義だァ?ンなモンねぇよ。『スケアフーガ』!ただ、私が居て、私がやりたいことがあって、一緒に居てくれる人が居て、その為に、その人達とやりたいことのために力を借りて、力を伸ばしてここまで来た!そしてこれからも!それだけだ!『フォールノクターン』!」

 「左腕部、破損……武装を放棄……!」

 「今!『ザンバース』!」

 「もっとぶっ壊れな!『シュートポルカ』!私は!私の、私達の為にここにいる!私だけじゃねェ、ここに乗り込んだ全員が自分の意志で選んでここにいるんだ!自分だけが特別だと思ってるンじゃねェ!『ファセットフォリア』!」

 「追撃!?右腕部、破損……!」

 

 創造者は自分を、そして見出した私を特別なものとして見ている。指揮者はそういうものではないと思ったのか、そうあってくれと縋るように。それを私は蹴り飛ばす。

 

 「『特別』に縋って自分の意志もねェような奴にも!ただただ選んでやってるつもりの奴にも!私達は負けねェ!『ブラッディサラバンド』!」

 「……」

 「まだ格納武装がある」

 「江風!」

 「しぶとい!」

 

 あれだけ攻撃して両手とその武装を破壊したのにも関わらずまだ攻めてくる赤騎士。格納していたのは、エーテル刃が大きく展開されるブレードのようなもの。打ち合うには不味いと本能が告げ、海の叫びと共に後退する。

 

 「お前は芽を摘み取る存在。危険。ここで、取り除く」

 「ッチィ……!」

 「アオイ!私が受けるぜぇ!」

 「アウトロー!?」

 「戦艦レ級!?」

 

 アウトローが私と赤騎士の間に割って入り、刃をその身で受け止めてみせ、腕も掴んだ。

 

 「!」

 「逃さねえヨォ!」

 「腕部、パージ」

 「あぁ!?」

 「逃げやがったって、創造者もいねぇだと!?」

 

 腕ごと捨て去り赤騎士は穴の外へ撤退した。創造者も合わせるように姿を消していた。

 

 「クソ……ふぅ、助かったよアウトロー。そっちは大丈夫か?」

 「アイツは腕に一発、胸に一発、頭に一発直撃叩き込んだから死んだぜ!あっさりすぎて拍子抜けだったぜハハハ!」

 「強化されたお前の攻撃が的確に刺さればそうもなるか。……そうなると悔しいな、私の方は討ち漏らしちまった」

 「江風、外が反応滅茶苦茶で追えないよ……!」

 「だろうね。だからこそここで……畜生」

 「響だよ。君達は健闘してくれたよ。赤騎士の乱入は完全に想定していなかったからね」

 「響の姐さん」

 「戦況を確認しよう。屋内における戦闘はアウトローの因縁の相手を含む大多数を討ち取ったよ。こちらは修復材のおかげもあって被害らしき被害はないね。

 ネームドは創造者が撤退、追跡は不能。乱入した赤騎士は大破。強力な手を残してはいたけど、やる気を出すのが遅かったね。次に会敵すれば撃墜は十分に狙えるだろう。

 指揮者は創造者の強化もあって健在だけどそれがうまく働いているね。江風、狙ってあの強化をさせたのかい?」

 「指揮能力は強化させないように、とだけ」

 「それならむしろいい効果も付いたと言う所だね。あの強化によって指揮者の耐久は飛躍的に増加したけどそもそもの戦闘経験がないから火力は意味を為していないサンドバッグだ。手が空いた他の皆も攻撃を集中させ始めている。

 その上で怪異とのリンクにも阻害が生じているよ。元々怪異とのリンクだけだった所にねじ込む形になったから妨害になったみたいでね。指揮能力はより一層低下しているよ。

 そして自分だけ強化して他をおざなりにしたと思われた結果、他の深海棲艦の士気の低下と混乱が加速したんだ。アウトローが相手した個体があっさり落ちたのもその一環だよ。

 これは南西海域にも影響していて、現在友軍艦隊が大攻勢に出て優勢。その中の指揮艦を集中狙いしたこともあって本能で生きているカテゴリDなんかは逃げ出し始めているね」

 

 私が苦戦している間にだいぶ有利に事が進んでいたらしい。代わりに指揮者が異常な耐久力を持ってしまっているようだが。

 

 「外の状況は?」

 「第1遊撃隊からは特に問題なしとの連絡が来ているね。怪異戦の方は攻撃が苛烈にこそなっているけど段々怪異が萎んできているし霧も薄くなってきているからしっかりダメージを与えられているようだよ。

 それでもレーダーが異常を示して術具の専用回線でないと梓とすら通信が厳しい状況であることには変わりないけどね」

 「私はどっちに加勢したらいいですか?」

 「暁達が離島棲姫との説得交渉で難航していたけど、創造者の逃走もあってそろそろ進展がありそうだ。そこに加わってほしい。艤装島の声を聞いたのは江風だからね。海風は外を手伝ってもらっていいかい?」

 「了解」

 「頑張ろうね、江風!」

 「おうよ!」

 

 まだやれることは、全部こなしておきたい。

 

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