少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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エピソード1、完結です。
次回は登場キャラ紹介などをやってから次章へ移ります。


57話 さとられながらのエピローグ

 ??? 和室

 

 

 私が次に意識を取り戻した時に目にしたのは知らない和室の天井で、身体は布団に寝かされていた。

 

 「艦娘化は……解けていないか」

 

 身体を起こそうとして違和感を感じる。まるで何日も身体を動かさなかったせいでなまっているような。

 

 「っぐ、こわばっちゃいるけど動かせないわけじゃないか。それに、腹減ったな……ここはどこで今は何時だ?」

 「賑やかなお声やねぇ。おはようさん」

 「ッ!?」

 

 襖を開けて入ってきたのは和装のはんなりとした雰囲気の女性。質素ながら品のある和服に、狐のように細めた糸目で笑みを浮かべている。そして、『ヒトではない』違和感を感じる。

 

 「貴方は?」

 「一瞬でそこまで感じて考えられるなんてええ才能やねぇ。あぁ、心配せんでもええよ。全部、あんさんが思うたことぜーんぶ教えるからなぁ」

 「思ったこと……?」

 「まずは、ここは『組合』宗家の医療棟や。何度か修練棟には来たことあったの覚えとる?」

 

 異能者、怪異、理解のある人間。それらの相互扶助組織『組合』、その宗家。私が陸戦技術や術具の扱いを教わった組織であり、その本部だ。濁流さんの実家でもある。

 家という名の巨大施設の体をしていて、宗家の家屋の他に訓練棟や様々な機能の為の施設が併設されていると聞いていた。もっとも、今まで訓練棟と宿泊棟にしか入ったことはないが。その別棟である医療棟に今はいるらしい。

 

 「あんさん、意識失う前に何やってたかは覚えとる?」

 

 そう言われて創造者(クリエイター)との問答の後、力を限界ギリギリまで付与されて怪異を葬ったことを思い出した。

 

 「随分と危ない注文したもんやねぇ。そのくりえいたあ、ゆう子はきっちりあんさんの注文通りの力と負荷を与えたんやねぇ」

 「負荷……もしかして」

 「エーテル、つまるところあんさんの異能を司る部分がしっかりと復調するまでは1か月の重症やわぁ。ちなみに身体は修復材ですぐに治ったんやけど、意識が戻らんでなぁ。濁流ちゃんに連れてこられて丁度1週間なんよ」

 「そんなに!?……早く戻って顔見せないと」

 「あかんよぉ。復調まで1か月言うたやろ?じっくり休まな、あんさん二度とエーテルの力、使えのうなるよ」

 「!」

 「今無理をしたら艦娘としても危ういわぁ。せやからしっかりと療養せないかんよ。ちゃあんと鎮守府の子達には連絡入れるから安心しいや」

 「はい……」

 

 とはいえ、あの後バミューダ海域はどうなったのか。南西の迎撃部隊は無事なのか。127に襲撃はなかったのか、離島棲姫はどうしているのか。気になることがたくさんある。

 

 「そうねぇ、ひとつひとつ話していこかねぇ」

 「……あれ?」

 

 ……今、声に出していただろうか?

 

 「心の中の声、ちゃあんと聞こえているんよ。うちは妖怪、覚(さとり)。心の中を読む覚り妖怪やからねぇ」

 「ッ!」

 

 驚くのと同時に、腑に落ちる。意識を取り戻してすぐにやって来たこと、私の頭が混乱しているにも関わらず話があまりにもスムーズであることもそれで説明がつく。それに、下位置換のような能力は電が持っているのだから無闇矢鱈と怖れることもない。

 

 「あらあら。お友達が似たような力を持っているいうても順応の早い子で助かるわぁ。少し気に入ったわぁ」

 「……で、教えてくれるんですか?」

 「せやねぇ。まず、あんさんが怪異を完全に討伐したおかげでばみゅーだの異常な霧は消滅したんよ。艤装島も水底へ沈んでいったねぇ」

 

 しっかりとケリを付けられたらしい。

 

 「南西に展開していたあんさんらに協力していた子たちはみいんな無事やわぁ。あんさんらが指揮も空気も粉々にしたからねぇ。

 統率の出来る深海棲艦ややる気のある深海棲艦のほとんどをそこで討伐し終えて、残ったてきとーな子達は散々に逃げていったんよ。

 そういう子らもあんさんらを信じられなくてもたついてた鎮守府の子達が遅れを取り戻すゆうて根切りにしに行ってて、今も活発にやってるそうやね。代わりにあの戦いに出た子らはゆっくり出来てるみたいやねぇ」

 

 霞達も無事らしく、安心した。

 

 「あんさんの鎮守府に色々と乗り込もうとしたのはおったけど、詠はん達が出張ってたから心配あらへんよ。事後処理でてんてこ舞いみたいやけど……その辺はようわからんねぇ」

 

 地上施設が再び吹き飛ばされる覚悟はしていたが、稗田さん達のおかげで無事だったようだ。どこの勢力が殴り込んできたかはこの際置いておこう。

 

 「ええ心がけやねぇ。それで離島棲姫いう子やけど、あんさんの鎮守府で保護される形で日本にやってきて、今は正式に所属って形になったそうやね。

 艤装はんの願った通りに自分の世界を広めるために色々と知ろうと貪欲にやってるっちゅう話やね」

 

 懸念していた彼女も前を向けたようで、良かった。

 

 「そや。横須賀第1遊撃隊の子らやけどね」

 「!」

 「特に誰も連れずに普通な顔して直接横須賀に帰ったみたいやね。あんさんが出会った敵対しとった子達は行方不明やね。

 もしかしたら、終の海におるかもしれへんけど、濁流ちゃんや沖田はんは追及を諦めてるようやね。調べるなら自分の手でやることやね」

 「あの人達独自で動いてるんだ……」

 「せやねぇ。あの子達も10年ずーっとしんどい思いも辛い思いもしてきてるからねぇ。

 昔はよくここにも遊びに来てくれたんやけどここ数年はとんと来なくなってしもうてねぇ。心配やけどうちに出来ることはなさそうなんよねぇ」

 「あの人達、敵対はしないし元帥達の為にって言ってるけど本人の意向を無視してやったって……私なりの答え、ぶつけてやる」

 「ふふ、期待してしまうよ?けど、無理してはあかんよ。特に心の方はね」

 「それで摩耗してきた人をこの1年だけでいくつも見てきたので、そうなりたくはないって思ってますよ」

 「それでええ。そういえばお腹の方の声に耳を傾けてなかったねぇ、粥を用意するから待っとってぇな」

 「1週間何も食ってなかったんでしたっけ……普通に食ったら体壊すかぁ……肉喰いてぇ」

 「元気なのはええことや」

 

 そうして1か月、リハビリとついでに力に馴染もう、ということで修練と言う名の無茶振りに振り回されることになった。

 これについては後日語ろうと思う。とりあえず言えるのは金剛さんのスパルタ教練の源流はこの『組合』で間違いないということだけだ。

 

 

 12月上旬 第127鎮守府 正門

 

 

 「っはー!ひっさびさの我が家……じゃねぇ鎮守府だァ!」

 

 鎮守府は既に私にとっての『我が家』と言って差し支えない程に馴染みのある大切な場所だと帰ってきて一層思った。

 

 「かーわーかーぜー!!」

 「よう久しぶりだな海ッ!?」

 

 抱きついてくることは予想できていたので構えていたが、その上でふっ飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

 「うわーん久しぶりの江風だよおおお!!」

 「痛ェよバカ海ィ!!」

 「海風ちゃんしれっとエーテルで身体強化して飛びつきましたね」

 「私達でなければ見逃していたわ」

 「なんで帰ってきていきなりダメージ受けてるの?」

 「賑やかさが戻ってきていいって思いましょう、うん」

 「羽黒もいい性格になってきましたよね」

 

 以前と同じように騒がしく出迎えてくれる同期メンバー達。痛いのは勘弁して欲しいが帰ってきたという実感がより強くなる。

 

 「帰ってきたわね、江風!」

 「おあ、離島棲姫さんじゃねーか」

 「呼び捨てでいいわよ!それと、その呼称はもう古いわ!」

 「お、おう?」

 「私は此処に居る。いつでもどこでもあの子に示し続ける!だからわたしの名前は此処、ココよ!」

 「はっ、ストレートで好きだぜ、いいじゃンか」

 「ッ、別に嬉しくないわよ!それよりも!私に責任を取るって言ったこと、忘れてないでしょうね!?」

 「忘れるかよ。お前をこっちに引き込んだんだ。お前が広げたい世界を、出来る限り広げさせてもらうさ」

 「ふんっ、期待しているわよ!」

 

 決戦時に出会った鬱屈として辛い選択にイヤイヤと首を振っていた姿ではなく、前を堂々と向いた凛々しさすら感じさせる彼女を前に気が引き締まる。さあ、やってやろう。

 

 「江風さん」

 「てーとく!」

 「食堂へ。皆さん待っていますよ。私も、待っていました」

 「うん、ありがとうてーとく!」

 「えぇ。お帰りなさい」

 

 息を大きく吸い、高らかに告げる。

 

 「ただいま!!」

 

 

 EPISODE1 駆け出しの異常適性(イレギュラー) 完

 

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