少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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江風VS八尺様VS怪異絶対殺すマン後編です。
最終的なゴールを少し意識する回になります。


60話『物語』と『主人公』

 同時刻 濁流視点

 

 

 「まったく、アドバイス間に合わなかったとはいえ初見で捌き切るとはねぇ!」

 「あグ……」

 「あぁ、まだ動きなさんなよ。治療とあのお兄さんの離脱が終わるまでね」

 

 私は最低限の防御結界と八尺様への捕縛及び治療の術を展開していた。防御が最低限なのは、単純に矢矧ちゃんの大火力に耐えうる防御結界を私が出せないので流れ弾防止以外意味を為さないからだ。

 そうして眺めている中で江風ちゃんは矢矧ちゃんを押し始めた。矢矧ちゃんは横須賀の狂人以外の艦娘に珍しく明確な殺意を向けられ、外面では凛としているけど動揺している。それに対して江風ちゃんは所謂「ゾーン」に入っている状態だ。

 元々近接距離での知覚に優れている彼女により特化出来るように力の使い方を教えたらここまで至ってしまった。普段から格上を相手にする訓練を繰り返していたからだろう。

 

 「最もああいうのって精神の消耗激しいからポンポンやるものじゃあないんだけどねぇ」

 

 少なくともこのまま状況が推移すればこちらの作戦目標は完了できるだろう。そのサポートがてら、授業の続きをするべきだろう。

 

 「江風ちゃんに矢矧ちゃん、それに八尺様ちゃんもそのまま聞いてほしいんだけど。単純にこのまま生かすも殺すも『怪異事件の解決』としては正しくないのよ。手順ってものがあるの」

 「らあああっ!!どういうことで!?」

 「くっ、混乱させようというの!?」

 「いや?まとめて話す機会なんてないからちょうどいいと思ったのさ。アースガイドの上層部なんて話を聞きやしないで指示出すからねぇ」

 

 アースガイドの一部は聞き分けのある派閥もあるが、正義に溺れて話を聞かずに厄介な事態に発展させるケースは珍しくない。バミューダの怪異なんていい例だった。

 

 「さて、怪異事件とは怪談、つまり『物語』だ。巻き込まれるやつも怪異もその登場人物って『役割』を持っているんだ。劇みたいにね。当然、そんな『物語』が終わらないと登場人物は『役割』を降りられない。こと怪異においてはね」

 「『役割』……!」

 「手を緩めてはくれないか!」

 「今回の件においては『田舎の怪異・八尺様物語』というわけだ。従って『子供を襲う八尺様』と『襲われる子供』の役割は最低限選出される。

 そしてこの登場人物を強制退場させようとした場合。……『物語』はそれを素直には受け入れてくれないのさ。江風ちゃんのように八尺様という役を降ろそうとした場合でも、矢矧ちゃんのように殺そうとした場合でもね」

 「濁流さんがあの兄さんの領域離脱までって拘ってたのは……!」

 「そういうこと。『八尺様物語』におけるオチは子供がとり殺されるか脱出するかの2つだ。

 これから逸脱しようとした場合、『物語』はちゃんと終わろうとする。端的に言えば新たな苦難が子供を襲ったり、次の八尺様を投入させたりだ。それなら素直に脱出エンド迎えてから処理をする方がマシだろう?」

 「そんなの、誰が望んで……!」

 「世界が、か」

 「!?」

 「江風ちゃんの言うとおりだ。人間でも怪異でもなく、この世界そのものが望んでいるのさ。

 私達『組合』とかはそれに逆らわないようにしつつ、『物語』の外の部分をなんとかして自分好みの結末を迎えようとやっているにすぎない。

 人間至上主義のアースガイド様はそれらも人間様が一から十まで決める権利があるって思って行動するから私達と衝突するのさ」

 「そんなものに人間は負けない、負けてなるものか!」

 「息巻くのはいいけど、そのしわ寄せが最初に来るのは君達アースガイドかい?違うだろう?君達が守るべき力無き人々だ。

 都合のいいことしか記録していないのでなければ、アースガイドの記録にもそういう『物語』による帳尻合わせは経験があるはずだ。ことこの10年間はね?」

 

 いつの間にか攻防も止み、それぞれ考え始めていた。

 

 「……エーテル?」

 「ざっつらいと。情報粒子エーテル。これが発見されて地球中で活性化してからまあ厄介でさあ。『物語』の代役補充だのご都合展開ゴリ押しだのが発生しやすくなってねぇ。だから昔より形式を大事にするようになったのさ」

 「それってもしかして、怪異を討伐したら劣化コピーのような怪異が沸きやすいって話のことかしら?」

 「その通りだ。エーテル以前からなかったわけじゃあないが、まあ増えたよね。

 今回で言えば、下手にあのお兄さんの脱出前に討伐してたら『代役の八尺様もどき』がわらわらと発生して鬼ごっこする羽目になったかもしれない。あるいはこの子が妙な復活をしていたかもしれない。

 事実、エーテルの値がかなり高いんだよ今のこの村。代役ないし修正の準備は万全ってわけだ」

 「そんな……!」

 「次回からエーテルの測定器でも持ち歩いてみるんだね。高い値叩き出したら変な展開への発展が激アツさ」

 「やっぱり、エーテルってヒトの味方でもない、ただの情報粒子なんですね」

 「指揮者(コマンダー)や創造者(クリエイター)を相手にした江風ちゃんは実感も深いか。その通りで中立だ。だから都合の良いように解釈して使ってると痛い目見るよ。守るべき相手が犠牲になる、そんな形でね」

 「……」

 「まあ?今はあのお兄さんの離脱確認したからどうとでもなるよ。『物語』は無事終幕を迎えた。この後八尺様やらこの村をどうするかは自由だ。エーテルもそう悪さはしないだろう」

 

 同時に転移の準備もできている。

 

 「どうだい、気分がだいぶ落ち着いただろう、八尺様ちゃん?」

 「うぅ……頭が、少し、晴れた……」

 「これも『物語』補正ってわけだ。事が落ち着くまでは正気に戻すのも困難だし下手に刺激すれば余計厄介になる。覚えておくといいよ?」

 「……返す言葉がないわね」

 「落ち着いたねぇ矢矧ちゃん?君も『物語』の補正が切れたわけだ。江風ちゃんも落ち着いたかい?」

 「!?」

 「いーや全然」

 「あっはっは!いやー仮説がどんどん裏付けされていくねぇ!まずは矢矧ちゃん。君も『物語』の登場人物、強硬な退魔師として『役割』が与えられていたわけだ。

 今後もそういうアプローチ続けるなら『物語』に絡め取られやすいから精々気をつけることね」

 「なんてこと……」

 「私がアースガイドに対して戦場で説得しないのは『役割』補正もあってのことさ。喋るだけ無駄だものね!」

 「……私は?」

 「『介入モノの主人公』だ」

 

 ここに江風ちゃんを連れてきた本題はこれだ。

 

 「介入……?」

 「『物語』に別の『役割』を持って介入して別の着地点に導く存在。よくあるだろう?『もしこの話にこんな奴が居たら展開がどう変わるか』なんて『物語』の延長がさ」

 「まあ……?」

 「君はその『主人公』なのさ。様々な話に首を突っ込んでは変化を与える特異存在だ」

 「待って!それだとさっきまでの話が……!」

 「変わるね。その上で君のような『主人公』には専用の『物語』があって、そちらもこなさなきゃいけない。そして介入のしわ寄せもそこに来るだろう。例えば、事件に介入するほど身内意識の強い地元から異物扱いされるとかねぇ?」

 「ッ!」

 「君はすっごい東条の人間らしい人間性をしている。さっきの八尺様ちゃんを受け入れると決めてからの矢矧ちゃんに対する迷いない殺意なんて模範的理想的な東条人だ」

 「……」

 「その上で疎外されていくのは介入のしわ寄せだ。そして君が『主人公』である限りそれは続く。君は『物語』を変化させる代償に君の周囲が変化し続けることを宿命付けられているのさ」

 「何故そこまで言えるの?」

 「東雲のとっつぁん、君達にわかりやすく言えば悪い鎮守府関連の人間の黒幕だった人。あの人が江風ちゃんをそう判断した。

 だからあの人の従者だった赤騎士(レッドナイト)が本来の未来を摘み取る異常因子、つまりさっき言った『主人公』として判断したわけだ。それを聞いて私達が追跡調査したら確かにそれっぽいなぁってなったのよね。

 実際バミューダの怪異の完全討伐という限界を超えた未来を勝ち取ったわけだからね、君は」

 「アイツ、そういう意図だったのか」

 「見逃したの?そんな相手を」

 「無理言うなよ、バミューダの怪異を討伐するのに力を使い果たして入院コースだったんだ。第1遊撃隊が護衛に回った連中なんて単騎で叩く余裕があるかよ」

 「え?そんな話は……」

 「ま、そこの情報は後から送るとしよう!話を聞いてくれたお礼だ!とりあえず帰還するよ江風ちゃんに八尺様ちゃん!」

 「ッ、待ちなーー」

 「それじゃ〜ね〜」

 

 一度戦闘態勢を解いた上で即座の反応は厳しい。それを利用させてもらって『組合』宗家まで転移するのだった。

 

 

 『組合』宗家

 

 

 濁流さんが話の主導権を握るようにして事件は終息した。

 

 「やーお疲れ様!死者なし被害最低限のパーフェクト・ゲームってやつだねぇ。とりあえず、八尺様ちゃんは……名前なんか欲しいけど本名覚えてる?」

 「覚えて、ない」

 「そっかぁ。江風ちゃん何がいいと思う?」

 「え?……八重、とか……いや待ってくださいいきなり名前なんて」

 「けってーい!君は今から八重ちゃんだ。八尺様である以前に、ね。さ、まず治療だ!腕生やし直そうか!治療班よろしく!ついでに綺麗に磨き上げちゃって!」

 「「お任せー」」

 「ぼあっ!?」

 

 あっさりと名前を決めてしまったと思ったらスタンバイしていたらしい治療班に八尺様、いや八重を引き渡してしまった。

 

 「あの」

 「これも必要な措置でね。さっきまでの彼女は『八尺様』以上でも以下でもない存在だった。なんかの拍子にまた『物語』に引きずり込まれかねないほどにね。だから早急に別の属性でコアになるモノが欲しかったんだ。つまり個人名だね」

 「そしたらもっと考えてつけても……」

 「逆に良くないんだ、それが。名は体を表す、って言うでしょ?八尺様にちなみ過ぎた名前だとまた『八尺様という役割』として引っ張られる可能性があるんだ。だから『ぱっと思いついたテキトーにいい感じの名前』が適切なワケ。遠すぎてもそれはそれとしてよくはないから、丁度良かったんだ」

 「なる程……」

 「それに怪異のような存在に名前をつけるって行為はすごい重要な意味を持つんだ。誰が名前をつけるか、っていうことを含めてね。

 八重ちゃんのことは君が面倒を見るって約束したんだから、名付け主は君であるべきなんだ。ま、名前って色んな意味で大事なものだって思ってくれればいいよ」

 「分かりました」

 「それと深呼吸しな?戦闘は終わったんだよ」

 「え……っぐああ!?」

 

 深呼吸をしたら急激に体が悲鳴を上げ始めた。目がチカチカする。

 

 「病み上がりな体にあそこまで負荷かけて戦ってたんだ。戦闘に対する意識の高さで誤魔化していたとはいえ、ね」

 「なんでこんなに……」

 「矢矧ちゃんと戦っているとき、具体的には紫電一閃をいなした時。君は感覚が鋭敏になっていただろう?そしてそのまま戦って切り替えないまま今に至る。一瞬やるだけで負担が大きいのにやりっぱなしなんてそりゃあ限界も来るよ」

 「っぐ、ふぅ」

 「やり方を教えたのが早すぎたとは思わないけどさ。少しずつ慣らしていこうね」

 「はい……」

 

 私は近接距離での感覚が鋭い異常適正(イレギュラー)だ。それを更に上げる方法として集中の仕方を教わっていたが、体がもう少し復調するまで練習はまだだと言われていた。それを無意識に使ってそのままでいたようだ。

 

 「それともう1つ。君は『主人公』だって言ったよね」

 「はい」

 「そして君の『物語』はずっと続いている。君が『物語』を降りるまでね」

 「……」

 「降りたいときは艦娘も戦闘職も辞めて騒動に近寄らずにゆっくりと生きることだ。引退、って言ったほうが分かりやすいかな。そうでなければ君が必要とされる『物語』が終わらない限り、君の戦いは続くよ」

 「随分と詳しいんですね」

 「私も『主人公』だったからね。私も多くの『物語』に介入したもんさ。なんせ向こうから突っ込んで来たんだからねぇ。都度都度対処してたらこっちの世界じゃとんでもない有名人さ」

 「……だった?」

 「結婚して子供産んで育児に必死こいてたら気付いたらそういう厄介事が私に直接は来なくなっててね。ああ、私の『物語』は終わったんだと思ったものさ。

 この辺りの事情と仕組みを知って研究していたのが東雲のとっつぁんだったのさ。とっつぁんが君達127、あるいは君がこれからを変えうる『主人公』と見なしたからこそ託して逝ったんだと思うよ」

 

 勝手な、と思うのと同時に疑問が浮かぶ。

 

 「赤騎士はそう判断してなかったみたいですけど。私を排除したがってましたから」

 「あの子も私が知ってるとおりであれば、自我を持ってるけどとっつぁんの思考思想をトレースはしていない。話を聞かされて育った子供ってところだ。

 その上で『物語』があってその結果色々と変わっていくんだ、って認識してたらその根本を捩じ曲げていく『主人公』なんて爆弾でしかないんだ。『主人公』だから必ず好転させるなんて言えないだろう?」

 「それこそ今回で言えば八尺様もどきが発生するような事態に、ってことですか」

 「そうそう。必死こいた上でしわ寄せ食らって得た結果がろくでもないのは嫌だろう?だから多くの情報が君には必要だ。事態を理解し、より理想的な結果に導く為の情報がね。今回で言えば怪異事件という『物語』への理解だ」

 「マターボードと同じ理屈か……!」

 

 てーとくや守護輝士(ガーディアン)が操るマターボード。多くの事象、情報を集めて未来を書き換えるための超常存在。

 

 「梓ちゃん、いや、今の梓ちゃんの本来の枠をやっているシオンの縁者とかいう子が担っている『役割』もまた『主人公』と見ていいだろうね。マターボードは完全に『物語』を理想に導くためのアイテムと言っていい。全知存在(アカシック・レコード)だったっけ?そんなのに見いだされたなんてそりゃあ『主人公』だねぇ」

 「それじゃあてーとくも?」

 「聞いた感じだと、『主人公』の『役割』をこなせず別の『役割』。そうねぇ、ライバルポジションにでも降格したってところだろうね。守護輝士ちゃんとかいう『主人公』に影響されているところも含めてね」

 「降格。もうてーとくは『主人公』ではない、と?」

 「そういうこと。けど『役割』は新しくあるんだろうね。『闇堕ちした元主人公』っていうね。そしてそんな奴の末路ってのは大体ロクなモンじゃないのさ。改心してもしなくても最後の方で『主人公』に未来を託して散るような、ね」

 「……それはてーとく自身も危惧していました」

 「『守護輝士という主人公』がいるとはいえ、そこまでを変えられるかは分からない。だからこそ『介入モノの主人公』である君さ」

 「私がてーとくの未来を掴み取れ、と」

 「そう!けど、それには何が必要かは理解しているね?」

 

 それはてーとくが行き詰まった問題。守護輝士が掴んでみせた相違点。私達が南西勢力相手にやり返した根本。

 

 「一人じゃ限界がある。仲間と強みを活かし合って、協力してやっていく」

 「それを忘れるんじゃないよ。どうもこの世界ってのはビターエンドみたいなのが好きみたいでね。そういうところからこぼれ落ちていくと心得なさい。

 その上で貴方自身も強く、そしていざってフラグに敏感で迅速に叩き折りに行く必要があるわけだ。それこそ赤騎士がヤバ過ぎるってビビり散らかすぐらいにね」

 「……指導、お願いしますね」

 「勿論!まあまずは疲弊した体の休息とスイッチのオンオフだ」

 「疲弊はそうですね……でもオンオフ?」

 「言ってしまえば君はずーっと『主人公』だ。言い換えれば『物語』に振り回され続ける。感情もね。さっきの戦いで矢矧ちゃんが強情だったり『八尺様の怪談』が終わってからお話聞いてくれたのは覚えてるね?」

 「はい」

 「君も『東条人の主人公』らしく譲れない事情のためにすっごい熱くなっていた。だからこそ矢矧ちゃんの必殺剣の紫電一閃を受け流せたわけだけど。

 言い換えればそういう時に君は熱くなってしまう。その分冷静な判断能力は落ちる。戦闘に関する感覚は鋭くなってもその後まで思考が回らなくなっている。自覚はあるかい?」

 「まあ……」

 「だから君の課題はスペックアップに技術のさらなる取得と並行してそういう時でも心のどこかで冷静に大局を見据えられる余裕を作ることだ。それが出来なきゃハッピーエンドは無理だと思いなよ」

 「……はい!」

 「それじゃまずは休息!しっかり休むのも大事だからね!それと八重ちゃんを君が引き受けたんだからしっかり面倒見てあげな!」

 「了解です!」

 

 

 現在 第127鎮守府

 

 

 「ってことがあったンです。だから、『ダークファルス【若人(アプレンティス)】』の事件で『役割』を持ったイツキさんやコウタさん、『物語』が進行中の127と深く関わるハギトさん。

 それぞれいつどんな『物語』に『過去他の物語に関わっていた再登場人物』として巻き込まれるか分からないンです。関わらないなら徹底的に距離を置く、関わるならアンテナ張ってすぐに私達みたいなのと連携取れるようにする。そして最低限の対応能力を得ておく。

 そういう事が必要だということと、お互いにフォローしあえればもっと安全でいいと思って今回引き合わせたって次第ですね」

 「ここまでの実例を出されると納得せざるを得ないね。警戒をしっかりとしておくとしよう」

 「イツキは力を取り戻すとして……俺は何が出来るんだ?」

 「ヤバそうなのに気付いたら即通報、離脱の徹底をお願いしたいですね。初動が早い方が色々と都合がいいですから」

 「武道やってても教えられることはマジでヤバい奴がいたらまず逃げろだもんな。了解だ」

 「それと、またオラクル側でなにかあった時、【若人(アプレンティス)】の時みたいにユーザーアークスとして協力してくれるとありがたいです。事情がわかった上で安否の心配の要らない実力者とか最高レベルの戦力ですから」

 「よし、任された!」

 「えーと、俺はどういうことをしていけばいいのかな。また力を取り戻したいけど……」

 「リハビリ兼ねて知覚の訓練からですかね。後はイツキさん本人の力だけじゃなくて空気中に漂ってるエーテルとかの力を活用できると無理なく戦えると思うンですよね」

 「そこについては私に考えがある。所謂演算補助装置、サポートデバイスがあればいいと思っている」

 「ンなハードも作れるンですか?」

 「流石に時間は貰うけどね。昔なら優秀な武器や防具があればいいだろうけど現代だ。現代らしい装備を持って然るべきさ」

 「頼もしいですね。よろしくお願いします」

 

 そうして話がまとまってきた所に騒がしい声が近づいてきた。

 

 「ほら、遠くから見てないで近づくの!」

 「でも、恥ずか」

 「『イル・ゾンデ』」

 「ぼあああっ!?」

 「何やってんだ海に八重」

 「接することに慣れてもらわないと!でしょ?」

 「だからってテクニックで無理やり移動しなくていいだろうがよォ!」

 

 八重を掴んだ海が移動を兼ねたテクニック『イル・ゾンデ』で無理やりこちらまで突っ込んできた。

 

 「はい、挨拶!」

 「ぽ、ぽぽぽ……」

 「そうじゃないでしょー!」

 「や、八重、です……うぅ……」

 「か……」

 「か?」

 「可愛い……!」

 「ッ!?」

 「長身でボン・キュッ・ボンで照れ屋な色白美人とか可愛いに決まってる!な!イツキ!」

 「……コウタ?」

 「まあ確かに現代では普通にモテそうな美人に仕上がっているね?それと、八尺って話だったけど190cm位かい?」

 「元の人間時代の身長がコレぐらいだったみたいで。『組合』の人外組が人間社会に溶け込むためのアレコレしたら霊力でも込めて怪異モードにでもならなきゃこんなとこに落ち着いたってわけです」

 「人外が……ああ、羽とか角を隠すとかそういう感じかな」

 「です。とりあえず現在は127の憲兵隊の所属ってことにして人慣れさせる方向にして……八重?」

 「ぼっ!?」

 

 人間時代からその身長で醜女と差別されていたこともあり、人前に出るのを嫌がっていたがあからさまにそれとは別に様子がおかしい。そしてこれは二度目であり。

 

 「やっぱ未成年男子がストライクゾーンなんだなお前……」

 「だってぇ……」

 「良かったなコウタ」

 「お、おう?」

 「八重?確認」

 「思い込まない、思い込まない、うぅ、でもうぅ……」

 「こンな感じなので程々に付き合ってくれると助かります。それとベタベタし過ぎだと思ったら即座にツッコミお願いしますね。拗らせた性格なんてすぐには治らないンで」

 「わ、わかった」

 「良かったね八重ちゃん。浅田君に近づこうとしたら妖精さん達に警戒されて阻まれていたもんね」

 「それはどういう状況だい?」

 「今高3で127に就職予定の男子高校生がいるンですけど、鎮守府の妖精にモテモテで。毒牙にかけさせねーぞってその妖精達が手ェ組んで一騒動あったンですよ」

 「なんというか、青春してるね……」

 

 コウタさんの言う通り190cmの高身長でグラマラスな色白美人、という位に八重の姿は落ち着けることが出来た。元人間だったからこそ可能だったとも言える。

 だが、まともに人、特にストライクゾーンの未成年男性にはかなり挙動が怪しいところが要改善である。この調子で子供に接近すればそれこそ事案である。コミュニケーション能力の高いコウタさんとの交流でマシになって欲しいものだが。

 そんなふうに騒ぎつつ、顔合わせは終了するのだった。

 

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