12月初旬 11:00 某県灯台前
「……指定の場所はここよね?」
「切り立った崖に灯台がぽつんとあるだけですよね」
「間違えてたら私達高級肉の入ったクーラーボックスや調理器具持って僻地に迷い込んだ間抜けよ……!」
「ですね……」
私こと霞と127の電は、南西海域の決戦時のやりとりで高級な黒毛和牛の美味しい食べ方をやって見せてくれ、と潜水艦隊海狼(シーウルブズ)に呼び出されていた。
「にしても、霞ちゃんどんなコミュしたら高級肉一緒に食べようとか言われるんですか?」
「最高品質の黒毛和牛をテキトーに焼いてテキトーに食べそうな話してたから、それはどうなのってツッコミ入れただけなんだけど……」
「霞ちゃん高級なの食べ慣れてるのです?」
「ないわよこちとら一般庶民の出よ!でもちゃんとしたやり方で食べないと勿体無いことぐらいは知っていたからね。
予習はしたけど上手く焼けるか、というか海狼なんて大物相手に上手く立ち回れるか不安で仕方ないわ……」
「顔色伺いとしてはサポートするので、頑張ってなのです」
海狼は世界的に有名な鎮守府である横須賀等には劣るもののかなりの知名度と戦果を誇るが帰属先は不明、連絡先も知っている者は皆無という、存在そのものが伝説の部隊である。
南西海域の件では横須賀が呼んだらしいが、詳細はまったく持って不明。そんな彼女らから私の所属する50鎮守府に特定できない匿名通信で先日の約束を、と連絡が入ったのだ。
その際に127との顔も繋ぎたいから127も1人呼んでほしいとの要望があったため、こうして電を伴って指定された場所に来たのだ。
そうこう話をしながら灯台のふもとまで歩みを進めた。
「灯台前にいれば迎えに出る、って書いてるけど……」
「……灯台の中から人の気配がするのです!」
「あら、流石の反応ですね。50の霞さんに127の電さん。私は特3鎮守府秘書艦の伊8。はちと呼んでください」
灯台の扉を開けて出迎えたのは伊8。潜水艦娘だ。
「特3……?」
「特殊第3鎮守府。通常ではない形式の鎮守府です。私達は潜水艦及びその補助専門というわけです」
「なる程……」
「海狼に呼ばれてきたんですけど、あの部隊はここの所属なんですか?」
「ある意味そう、と言えますね。とりあえず中にどうぞ」
灯台の中に招き入れられる。少し階段を上がった先に隠されるように大型のエレベーターがあり、そこから下降していく。こんな秘密基地のような鎮守府があったとは、と驚いてる間に到着したようだ。
「提督、お二人をお連れしました」
「ご苦労。初めまして、お嬢さん方。僕は特3提督の羅臼 怜だ。よろしく頼むよ」
「50の霞です、本日はお招き頂きーー」
「んふっ!?」
「……電?何やってるの?失礼でしょ!?」
青みがかった髪に知性的な美貌、とでもいう羅臼司令官の顔と声に電は噴き出していた。空気を読めるから連れてきたのだが逆に空気を壊してどうするんだ、という目を向ける。
「んぐっ、すみませんっ、器官にっ、ごほっ」
「そんなに似てるかい?『ルーサー』に」
「んっぐふぅ!!」
ねっとり、という表現が相応しい声色で続ける羅臼司令官に更にむせ込む電。もう何がなんだか分からない。
と思っているとはちさんがおもむろに手に持っていた分厚い本を振りかざし、羅臼司令官の頭めがけて振り下ろした。しっかり角で殴っている。
「っぐぅ!!」
「悪ノリしないでください。置いていかれている人もいるんですよ」
「ふふふ、これでそれぞれの事情は把握したよ」
「ルーサーを……知っている?」
ルーサーという名前を警戒する電だが、誰のことだろうか。聞き覚えはある気がするが思い出せない。
「えーと、霞ちゃんには……」
「中途半端に巻き込むとこのようにふとした拍子に破綻する。覚えておくといいよ。ちなみにルーサーという名前はオンラインゲームPSO2の敵キャラクターでボスエネミーでもある人物だ。これだね」
「あぁ、その前にお肉一旦預かりますね」
躊躇う電に構わず話を続け、画面を見せてくる羅臼司令官。そしてそこには服装こそ違うが羅臼司令官そっくりの人物が不敵な笑みを浮かべている様子が表示されていた。
「本当に似てる……」
「なんで声まで似てるんですか?」
「自分に似た人間は世に3人いるというだろう?そういった偶然さ」
「あれ?でもゲームキャラになんでそこまで?」
「かのゲームの世界は実在するから、と言えば分かるかい?福山提督はこのゲームの世界から出てきた人物で、そんな部下だからこそ僕の容姿に過剰に反応したというわけさ」
「その通りなのです。ついでに言えば、バミューダに127がカチコミ出来たのもアークスの船を借りて宇宙経由で急襲したからなのです」
「荒唐無稽なはずなのに納得がいくわね……」
ゲームの世界が実在したなんて主張は妄想と斬り捨てるべきだが、127周りの経験がそれ由来なら、あれやこれやにも納得だと本能が告げる。
「予想していないところから情報が漏れている、知られている可能性について常に考えておくことをお勧めしよう。そのザマでは相手に自分は情報不利ですと弱点を見せびらかすようなものだ」
「肝に銘じておくのです。……それにしてもどうして?」
「127が『北の姫』の勢力と合流し、敵からの攻撃に偽装して鎮守府に付けられた監視装置を破壊したあの一件。
アレには僕達特3や海狼が横須賀の要請で秘密裏に参加していてね。外周から監視を行っていた敵部隊を排除していたんだよ」
「あの時に……!」
タさん達が127に合流した際の127襲撃事件。その現場に居たらしい。
「情報流出と対策バレを恐れた横須賀に裏から依頼されてね。隠密で沈めてそのまま帰還したわけさ。そうだろう、はち」
「はい、その際に海狼の指揮を執っていたのが私です。対価として南西勢力の使用していたジャミング装置の改修品を流すという契約でした」
「僕達はそういった秘密の依頼を受託する代わりに機密を貰うという契約で動くんだ。当時は研究途中だったジャミング、そして味方する127の秘密。そう、福山提督の正体がゲームの宇宙からやってきた宇宙人だった、ということをね。ちなみに折衝役として宇宙人当人である、幹部のクーナという女性が来たよ」
「クーナさんそんなことも……というより私もあそこで初めて知ったのに!?その前からなのですか!?クッソ羨ましいのです!」
「なんで嫉妬してるのよ!?」
「外部の人に司令官さんのことを先に知られるのは悔しいのです!」
「あんたねぇ……」
電はある事件を経て福山司令官に異様に懐くようになった、という話は江風から聞いていたが余りにも見苦しい。
「やれやれ、出自の異なる者が上に立つと下の者との連携に支障が出るものだが、なかなか上手く行っているようじゃないか?」
「宇宙人だったと判明したうえでのその信頼関係は大きいですね」
「……そこまで気にする必要あります?自分の司令官さんの正体が宇宙人って」
「気にするわよ!感覚麻痺も大概にしなさい!」
今の127所属スタッフも知るところなのだろうから、感覚麻痺しているのだろう。
「……あぁ、電達の言っていた機密ってそのことだったのね」
「はい。色々とひっくり返りますし、宇宙人の超技術の支援を受けているという情報は伏せたかったのです」
「事実、南西海域との決戦ではうまく出し抜いたからねぇ」
「軍民関わらずこぞって127に問い合わせていましたから、普通の手段で日本からバミューダまで隠密で到達するのは不可能でしたからね」
その関係でうだうだ問い合わせずにまっすぐ南西海域に向かった私達が決戦に間に合い、他は間に合わなかったのだ。
「僕らはそういった裏事情も把握しているし横須賀も共有はしている。けれど関係者である127は知らないことが多いからねぇ。
この情報格差はフェアじゃないと思ってこの場を設けたのさ。霞、君はいい機会を与えてくれたよ」
「あ、ありがとうございます?」
「後は単純に黒毛和牛の美味しい食べ方なんて海狼の面々は知りませんし豪快に適当に焼いてかぶりつくだけですから丁度良かったです」
「それに彼女らは1年の大半を洋上で過ごしている。こういった刺激は大事な栄養なんだよ」
おそらくその交流こそが彼らの求めているものなのだろう。大役もいいところなのだが。
「そういえばその海狼はどちらにいるのですか?」
「そろそろ到着する頃合いだが……その前に海狼についても説明しておこうか」
海狼は特3の部隊ではなく、直属の上官を持たない独立傭兵のような立場の部隊である。依頼を受ければその海域へ出向き任務を行い、対価を受け取りまた次の海へ繰り出していく。
とはいえ補給無しに活動することは出来ないため、日本を含めた複数の国に一時的に寄港する拠点を持っている。その1つがこの特3なのだという。
海狼の人員は腕利きであり超長期の外勤任務に耐えうる資質を持った選りすぐりの潜水艦娘が他の海狼メンバーからスカウトされる形で補充される。そのため、全員腕利きで国籍はバラバラだという。
「特3からは伊168、イムヤが参加していてね。その縁もあって寄港地として機能しているわけだよ」
「ここが灯台の地下という目立たない立地なのも関係が?」
「元より僕達は特殊部隊だ。外部においそれと動きが察知されてはいけないんだ。だからこうして地下、いや海中に拠点を構えているのさ。
それに複数拠点を持っていてね。この鎮守府施設ごと後日移動予定なんだ」
「鎮守府が移動!?」
「鎮守府を構成するのはあくまでも鎮守府コア。建造システムの容量を削った上で鎮守府妖精の力を借りれば好きなように造形できる。その応用なのですね?」
「良く知っているじゃないか。それを応用してこの鎮守府は潜水艇の形をしているんだ。だから移動する際は拠点との連結を外しさえすれば荷物をまとめる必要すらないのさ」
「そんなことが出来るんだ……」
「地下を本拠地にした要塞の127が特異だと思ってたのですが……もっととんでもねぇのです」
つまり、次に特3に来ることがあればまた別の場所に行く必要があるのだろう。
「提督!特3艦隊及び海狼、無事帰ってきました!」
「おや」
「大鯨ママー!」
「きゃっ!?アルバちゃん!?」
「アルバずっるーい私もー!」
「……えーと」
「海狼の面々です。今騒いでいるのはアルバコアにホークビル。そして特3を含めた寄港地には潜水母艦が所属していて彼女らからは現地妻ならぬ現地ママと呼ばれています」
「つまり雷お姉ちゃん!」
「張り合わないの」
一気に人が増え、騒がしくなる。
「あれ、他所の子だ」
「あれでしょ?黒毛和牛!」
「久々の陸の肉だー!」
「まずは色々片付けて、ね?」
「あぁしおん!傷一つついてないようで良かった!」
「ぶふぁっ!?」
「え、何」
確か伊400、しおん。彼女がやってきた途端羅臼司令官のテンションが振り切れた。ついでに電が再び噴き出した。
「ただいま兄様!」
「あぁ、しおん。僕の可愛い妹ぉ!?」
「客人の前です」
「めっちゃルーサーの言動なのです……!」
はちさんが今度は顎を打ち上げるように本で殴りつけた。全くもって容赦がないが大丈夫なのだろうか。
「各員処理と修復を。終わる頃には焼き上がってると思いますので。はい、解散」
「ジャパニーズスペシャルミート楽しみ〜!」
「しっかりお腹空かせてきたもんね!」
「まずはお風呂にどっぼーん!」
はちさんの指示の元に潜水艦娘達はするすると動いていく。非常に連携が取れていると言っていいだろう。
「こういう指示に従えない子は海狼はおろか特3でもついていけないので。さて、霞さん調理は任せていいですか?」
「はっ、はい!一応練習はしてきたんですけど本物の高級食材を扱うのは初めてで……」
「50の提督から日々特訓を重ねていたと聞いているよ。期待させてもらうとしよう。どうだろう電、友人の君からみた霞は」
「霞ちゃんが練習してきたなら本当にガチガチに練習してきたと思うので大丈夫だと思うのです」
「電!?」
練習は確かに頑張った。だが、調理が特別得意なわけでもないのだから心得のある人に代わってほしいのだが。
「今回の食事は栄養補給ではなく楽しむための美食です。彼女達も先の海戦で気に入った貴方が頑張って振る舞った料理のほうが喜ぶと思います」
「はちさんまで……」
「さっきの話の限りだと、ぶっちゃけ霞ちゃんは手料理振る舞うためだけに呼ばれたみたいですし腹括るのです」
「もう……分かったわよ!やってやるわよ!はちさん、副菜の準備もあるからそっちの方は手伝ってもらえます?」
「勿論」
そんなやり取りの後、出来る限りを尽くした黒毛和牛料理を完成させるために奮闘した。
数時間後
「ん〜!yummy!」
「もっとジュージューいってるものだと思ってたわ!いってないほうが美味しいのね!」
「美味い以外の感情が感じられない空間とか初めて見ましマジでうっめぇのです!」
「ま、満足してもらえたなら良かったわ」
電が嘘を言っているのでなければ本心から皆に楽しめてもらえたようだ。良かった。
「ここまでやってくれるなんて、ママと認めてもいいわ!」
「そうね!大鯨ママに次ぐ私達のジャパニーズママにしてあげるわ!」
「えっ」
「アレは海狼流の最大級の賛辞です」
「アルバ、ホーク、いいことを教えてあげるわ。駆逐艦霞はママ艦娘として有名なのよ!」
「イム!なる程ね!」
「これが二ホーンのママ力なのね!」
「カスーミママ!」
「う〜……」
「霞ちゃん大丈夫ですか?」
「もう慣れてきたわ。それに満更でもないっていうか……」
「霞ちゃんママがデレたのです!」
「電は自重しなさい!」
流石に同期にママ呼びはされたくはない。朝霜や清霜相手には慣れてしまったが。
「というかこの無秩序は羅臼司令官的には……」
「美味しいですね兄様!」
「美食を楽しむしおん……あぁ、なんて可憐なんだ!」
「……」
「馬鹿兄状態の提督はただの気持ち悪いシスコンなので放っておいていいです。必要なら殴って正気に戻させます」
「実の兄妹かなにかなのですか?」
「はい。血の繋がった兄妹でお互いにシスコンとブラコンです。どちらも優秀ですしこんな狭い共同生活で下手に色恋沙汰が発生しても困るので、丁度いいんです」
「あー……」
鎮守府は閉鎖空間のようなものである。その中で色恋沙汰が発生する場合、単純に両者がくっつくだけであれば問題はないが三角関係などが起きると悲惨なことになる。
それを機に異動するという話もよく聞くものだ。こと、基地司令官が年若い男性である場合は特に。
「まあ、それならいいか」
「イナヅマ、っていったよね君!また新しい面白い技術あったりしない?依頼を優先的に受けてあげるからさぁ」
「ありますけど試作段階で他所に渡すのには未熟な技術ばかりなのです。その上で増設バーニアは潜水艦には向かなさそうですし……術具応用のバリアシステムですかねぇ」
「なにそれ面白そう!」
「私達に必要なくてもママ達には有用じゃない?」
「確かに潜水母艦の安全性を高める装備としては相性がいいですね……まだ量産に到れるほど完成度がないので、一度フィッティングしに127に来てもらえればなんとかします」
「やったね大鯨ママ!」
「あの、その辺り許可はいいんですか?」
「後から取るのです。正直そういった強化装備を独占しても127の負担が増えていくだけなのでとっとと共用装備にして楽させてほしいのです」
そういえば急制動を可能にする追加装備や簡易的なバリアを展開することで夾叉弾の類を防げる装備を開発していると聞いた事があった。
南西海域の決戦でも艦娘母艦がそういったバリアを展開できていたからこそかなり前線に出られていたこともある。
「やー、127も横須賀も気前がいいねぇ!逆になにかしてほしいこととかある?」
「……南西海域決戦のような厄介な局面を打破してくれればそれでいいのです。そちらが活躍するということは厄介事が減り、私達の負担が減りますから。本当にそれが重要なのですよ……!」
アルバコアさんが質問を投げかける。今までの軽薄な雰囲気と少し違う辺り、何かを試しているようだ。対する電もそれを察したのか、少しの沈黙の後に偽らざる本音をぶつけていた。
「電、南西との決着で少しはマシになったと思ったけどまだ大変なの?人材不足の方」
「むしろこれからが本番なのです。名前が売れたから普通に戦えることも求められますし、普通に遠征任務も大事なのです。
ゴタゴタが収まっていちゃもん付けてきた上層部が消えた以上、興行に本格的に着手します。私みたいな異常適性(イレギュラー)や深海棲艦組のような特殊運用も期待されています。
なにより、バミューダの怪異みたいなトンデモ相手もやる必要があります。私達の最終目標はPSO2の宇宙の先の怪異、【深遠なる闇】を司令官さんも仲間も失わずにキッチリ仕留めることですから」
「随分と多いわね……」
「だからどこかしらの得意分野がある協力者が頑張ってくれるだけで大助かりなのです。流石に司令官さんが宇宙人、って広く知られたら大騒ぎになっちゃいますけど、そうでないところの技術や情報は積極的に共有していきたいですね」
「へぇ、そこでその深遠ナントカを倒す協力を、とか言わないんだね」
「畑違いのヒトに頼んでもしょうがないのです。それぞれ目標も違うわけですし」
「そうねぇ、正直電達の壮大な目標についていけるとは思わないわね」
力も足りない、人材はもっと足りないと日々ボヤいている127は決して他に無理強いをしない。南西の決戦でさえかなりの追加報酬等の見返りを持って助力を求めていた程だ。
「聞けば聞くほどアースガイドのカッチカチとは違うみたいだね!」
「ッ!アースガイドですか!?」
聞いたことのない名前だが、電は知っているらしい。それも悪感情を持って。
「霞ママにも分かるように言うと〜、俺達は正義の味方!当然そんな俺達の考えは正しいし言うことも聞いてくれるよな!ってエラソーな連中ってところかなー」
「補足しよう。社会の裏に存在する組織アースガイド。大まかな目標は人類を導くこと。その為に紛争の仲裁や人の手に負えない怪異事件の対処等に奔走している。
人々は手を取り合うべきだという思想と自分達は人々のために活動しているという自負と自惚れから、裏事情を知った人々は自分達に協力すべきという傲慢なスタンスが多々見られる組織さ」
「そんなのが……海狼にもちょっかいかけたんですか?」
「艦娘にもアースガイドに参加している奴がいてねぇ。アメリカのアースガイド艦娘に協力しろって迫られたから断っちゃった!」
「それで電、というより127のスタンスを見ていたわけですか」
「私達は艦娘って役割を放棄する気はないけど、自由に世界を駆け回って気に入ったクライアントの依頼を受けて好みの報酬を貰いたいだけなの!そんな世界のためなんて付き合ってられないわ!世界平和より黒毛和牛よ!」
「そこまでハッキリしてると付き合いやすくて助かるのです」
自由な独立部隊とその組織は確かに噛み合わないだろうな、と思う。
「もう1つ補足しよう。現在の彼らの本拠地はラスベガスにある。首魁の名前はアーデム・セイクリッド。穏当で優秀なことに疑う余地はないけど自分が人々を導かなければ、という傲慢さがどうにも気になるね」
「ラスベガス……ラスベガス!?」
「君達が追っている南西の深海棲艦に与していた連中の背後にいる組織との関連は不明だけど、なにか知っているかもねぇ」
「それじゃあ、ハーバーなんとか、って人名か何かに覚えはありますか?」
「それ関連で言えばアースガイドの本拠地を兼ねているラスベガスのアースガイド北米支部、その支部長がハーバードという姓だった覚えがあるねぇ」
「……」
「電?」
「私の両親は艦娘の親族という立場を利用して敵勢力に通じていて、その敵の関係者にハーバーなんとかって人がいるような断末魔を上げて死にました。……そのせいで私もダークファルスに……」
「ちょっと複雑そうね?」
そうして電からその事件から発展したダークファルスとの戦いの詳細を聞いた。とてつもない話である。
「そんな訳で先の決戦で討ち漏らした奴も裏で糸を引いていた奴も【深遠なる闇】も私達の手で引導を渡します。
だけど当然他のこともやらなくちゃですし、そこで得意分野があるならそこは協力してくれるとありがたいですし報酬も出していきたい。それが私達127のスタンスなのです」
「へぇ、じゃあ次は何のお肉をくれるのかしら!」
「今の時期ですと……国産は鴨が脂が乗っていて旬だって聞きますね?」
「そういうノリならいざって時は呼ぶといいわ!ね、皆!」
「鴨鍋美味しいんだよね」
「カモ……たしか、ジャパニーズduckね!」
「霞ママ同伴ならいいよ!」
「それ大事!」
「えっ」
「だそうだよ?」
「霞ちゃんには付き合ってもらいますね」
「なんでよー!?」
完全に私には関係ない流れだったはずだが。そうして騒いでいると羅臼司令官がふと思い出したと情報を提供してくれた。
「127の電と親しい霞にはアースガイドは相性が悪いだろうね。だからこそ忠告しておこう。101鎮守府。ここはアースガイドにどっぷり浸かっている鎮守府だ。覚えておくといい。特に軽巡阿賀野型姉妹の4人にはね」
「阿賀野型……」
「戦士としての実績も優秀だからねぇ。対立するなら身構えておくことだよ」
「情報ありがとうございますなのです」
私達50鎮守府も身構えていたほうがいいのだろう。立場を中立から明確に127や横須賀サイドに変えたのだから。
そして後日、療養中だったはずの江風がその阿賀野型姉妹の1人である矢矧と怪異を巡って交戦したという話に頭を抱える羽目になった。
それとは別に事あるごとに海狼との交流に駆り出されることになったのはまた別の話だ。