少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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65話 決闘、南極女帝

 南極女帝の縄張り 17:30

 

 

 私とココは艦娘母艦白峰から少し離れた位置に誘導された。白峰を中心とした本隊は旋回する潜水棲姫7隻を軸に多くの潜水艦に囲まれている状況だ。

 

 「さあ、やろうじゃないかお客人(ビジター)」

 「やるのはいいけどさ、色々確認はさせてくれよ」

 「勿論さ」

 「1つ、私達がアンタとやりあう限り仲間の安全は保証されるんだな?」

 「逃がしはしないが攻撃もしない、そんなところさ」

 「そしてもう1つ。アンタが確かめたいのは私達の実力というより、私達があのクソ怪異を攻略してみせた力と意思を見たい。そういうことでいいんだな?」

 「話が早くて助かるよ。伊達に修羅場は潜って来ていないようだねぇ、迷い猫(ストレイ・キャット)」

 

 南極女帝(アンターティックエンプレス)。コイツは芝居がかった呼び方が好みらしい。

 

 「江風、要はアレにぶつけたみたいに全力でコイツをぶちのめせばいいのね?」

 「あぁ。とはいえ実戦は初めてだ。簡単な作戦だけ決めるぞ。私が崩して隙を作る。そこをココ、お前が殴る。まあ、好きにやってくれよ。連携を軸として私は鍛錬積んできたんだからな」

 「分かりやすくていいわ」

 「私の前で堂々と話し合うってことはそう出来る確信があるわけかい。いいよ、見せておくれよ!」

 「あぁ、仕掛けるぜ!」

 

 弾けるように飛び出す私とココ。対する南極女帝は上半身は人型、下半身は四本脚の巨人のような体躯の艤装の頭部分に腰掛けている状態だ。

 艤装の両肩に戦艦級の主砲が、各足首に計4対の副砲が搭載されている。その上で南極女帝本人も取り回しの良さそうな巡洋艦級の砲を手にしている。一対多の状況でも十二分に立ち回れそうである。

 

 「やああああっ!!」

 「簡単には受けてやれないねぇ!」

 

 ココが一直線に南極女帝の本体に飛び込んで拳撃を入れようとするが艤装の大きな手がしっかりと受け止めた。全身砲台ハリネズミの体なのに両手がフリーなのは防御用だったらしい。

 そして動きの止まったココに各砲座が照準を定める。あの至近距離からの斉射は危険すぎる。

 

 「『ウォークライ(私を忘れてンじゃねェ)』!!」

 「んうっ!?」

 「ココ、足止めるな一旦離れろ!」

 

 てーとくが多用しているアークスのハンタースキル、『ウォークライ』。一旦対象が向けている意識を強制解除させた上で発動者の攻撃に強く意識を向けさせる防御担当(タンク)向けのスキルだ。レンジャースキルを習得した電に触発されて私も習得を頑張った。

 

 「私を忘れてンじゃねェ、主砲斉射ァ!」

 「否応なしに懐に飛び込んできたココが些事に思えちまう。面白い手品だけど……当然斉射に耐えて見せられるんだろうねぇ!?」

 「受けるかよ!バーニア緊急作動!」

 

 斜め後方へバーニアを使い緊急離脱し、そのままバーニアの向きを変えて南極女帝の本体に突撃する。

 戦艦級の主砲は強力無比だがその分斉射後の隙が否応なしに発生するのだ。カウンター主体の私が攻めるならこのタイミングだ。

 この戦法がまるで意味を成さないのは一門ずつ順繰りに精密射撃を行い実質クールタイムがない金剛さんである。文字通りの規格外だ。一応、射撃後に追撃するかを本人が考えるというタイムラグは存在するが正直言って誤差の範疇である。

 

 「おっと、こういう時のための手装備さ!」

 「読めてるンだよ『シンフォニックブレイク』!」

 

 先程の艤装主砲の斉射時に使わなかった手持ち巡洋艦砲を向けてくるが想定済みだ。更に急制動をかけ、真の狙いである右肩の主砲に一撃を叩き込む。

 

 「おいおい、情報が甘かったねぇ、こんなに空中を縦横無尽に動くのかい!それも攻撃をすれ違うような挙動でさ!」

 「その砲身を叩き折ってやるわ!『スライドアッパー』!」

 

 流石に要塞じみた艤装の砲台を私の一撃で壊すには到底足りなかったが、こちらには姫級深海棲艦、離島棲姫であるココがいる。フリーになった彼女の捻りこむようなナックルPA(フォトンアーツ)が砲塔に刺さる。

 ココが専用装備を得た上で今日まで前線に出るのを拒み続けていたのはPAの模倣習得を優先させていたからだった。

 

 「意識を好きに弄られた上で対応に遅れるとは……これは厄介だねぇ。けどねぇ!」

 「緊急回避!」

 「んの、”アメリカスラング”!」

 

 南極女帝もこの攻防で対処法を掴んだようで、艤装の剛腕でまとめて薙ぎ払う挙動をしてきた。要は私しか狙いを定められないなら近くにいるココも巻き添えに出来る大振りな攻撃で対処すれば良いのだ。

 こちらはココの装備も緊急離脱に秀でているのでお互い無事だった。

 

 「なる程、迷い猫とはよく言ったもんだ。嫌って程気まぐれに翻弄してケロリとしているじゃあないか!」

 「嫌がらせで付けられた二つ名なのにしっくり感じられてるのムカつくな!」

 「大した”フランススラング”で”日本スラング”な奴ね!」

 「名付け親がいいセンスしてるってことだろうさ!」

 「それよりココお前どこで覚えてきたその言葉」

 「この装備作る時に濁流とかいう奴から教わったけど?」

 「あの人かァ……」

 

 どさくさ紛れに何を吹き込んでいるのだろうか。そんなどうでもいいことを考えて少しクールダウンする。

 

 「さて、どう攻めるかねェ」

 「こちらの主砲が小破か。火力はちょいと足りないが、度胸と逃げ足は期待通りだ。じゃあ、これにはどう反応するんだい?」

 

 そう言って南極女帝は腰掛けている艤装から何かを取り出した。収納スペースに余裕があるようだ。

 そして取り出されたものは。

 

 「……ンだよその気持ち悪い干物」

 「まるで”聞いたことのない言語スラング”ね、ムカついて来たわ」

 

 干物のような、毛皮のようなナニカ。色彩も質感も何とも言い難い、『存在そのものを忌避したくなるような』素材だった。その上で、どこか既視感がある。

 

 「この感覚は……」

 「そんな気色悪い”ロシアスラング”が秘密兵器ってわーー」

 『ひ、あぁ、いやあああああっ!!』

 「「ッ!?」」

 『あ、秋津島さん落ち着いて!?』

 『ヘイヘイヘイヘイヘウ!!』

 『暇だからって狂ってるんじゃないわよツングースカ!……ッチ、厭な記憶が思い出されるわね!』

 『駆除しないと、あんなもの掃討しないと!!』

 『神風!?』

 『ねえ!私にやらせてよ!戦らせなさいよ、殺らせなさいったらぁ!!』

 『夕立まで、落ち着け!?』

 『麻耶とワ級が気絶してるわよ!?』

 『大惨事やな……雷はん!』

 『私の出番ね!癒してあげるわ!』

 

 通信から白峰の方が大混乱になっている様子が聞こえてきた。恐怖や興奮を母性で無理矢理沈静化させられる雷の姐さんが動けるなら程なく混乱も収まるだろう。

 

 「何が、どうなって……」

 「南極女帝!他のやつには手を出さないって話じゃないの!?何をしたのよ!」

 「何って、お前さん達が気持ち悪いで済ませているコレを映像越しに見たからさ。運び屋の2人を巻き込んだのは悪いと思っているけどね」

 

 その言葉で既視感の正体に辿り着いた。

 

 「怪異の残骸か、ソレ。バミューダの奴と同じヒトの心を狂気に叩き落とす存在」

 「その通りさ。ま、コイツはもう死んでいるから見てもパニックが起きる程度で済んでいるんだけどね。

 そして見ても動揺もしないでただ嫌悪する程度のお前さん達は怪異慣れしている訳だ」

 「どういうこと?」

 「納得したよ。ココ、お前は年単位でバミューダのクソ怪異が頭の上に居たから耐性がついてンだよ。それとやり合った私や127で長い面子もね。卯月の姐さんとか平静だろ?」

 「あの”ロシアスラング”がクソ怪異と同じってこと?」

 「ざっくり分類すれば、だな。秋刀魚もマグロも魚で一括りに出来るけど別物だろ?それぐらいの差だよ。

 ……それで、南極女帝。その言い方だと生きている、いや。『狂気を与える存在という役割』だと影響が強くなるってことだな?」

 「役割?まあ、大体そういうことだよ」

 

 そう考えるともう1つ該当する例が近時である。

 

 「『山奥の村の怪異八尺様という役割』の八重も似たようなモンだった。道理で宗家と地方拠点って違いがあるっても、濁流さんと組合の現地の人の反応が違ったわけだ」

 「どう違ったの?」

 「濁流さんは慣れたモノ、って感じで余裕だった。けど、現地の組合所属のヒトは恐怖で錯乱一歩手前だった。ああ、庭に、庭に!ってな」

 「随分と差があるのね」

 「なんだい?他にも怪異とやり合っていたのかい?」

 「それどころか仲間に引き入れたよ」

 「……へえ?」

 

 それはそれとして。なんで私達がバミューダの怪異相手に取り乱さなかったかと言えば。宇宙の怪異ことダーカー、そして上位のダークファルスを相手にしたこともあり、それ以前に。

 

 『あんなの司令官さんの圧に比べたらゴミクズも同然なのです!さっさと掃除しちゃうのです!』

 「あいよ電。そう急かすなって」

 「司令官……超人(オーバーマン)、不知火こと福山梓か」

 『はー?司令官さんはまっとうに人間ですけどぉー!?その二つ名ムカついてたので使うの止めてもらえますかー!?司令官さんは提督(アドミラル)が適切なーのーでーすーう!!』

 「雷の姐さん」

 『電もぎゅ〜!』

 『はにゃあ〜』

 「……私は何を聞かされているんだい?あれも怪異に当てられた影響かい?」

 「単にお前がてーとくの厄介オタクって火に燃料ぶち込んだからだよ」

 「電の案を採用したら梓が全鎮守府提督の代表みたいな扱いになるのよね」

 

 人を辞めているようなーー実際辞めて現在はダークファルスなのだがーー身体能力を指して127と親しくない鎮守府関連の他所から超人、つまり人でないモノだと、てーとくは呼ばれつつあった。

 

 「それはともかく。件のてーとくの強力な圧の元で日々訓練しているから、その程度の狂気相手には動じないンだよ。さっき正気を失ったりしてたのは今日とかここ最近転属した面子さ」

 「なる程、怪異耐性がついていたようなものかね。じゃあ、その上でどこまでやれるか見せておくれよ!」

 「ココ、『はっ倒す』ぞ!」

 「ええ、やってやるわよ、いい加減フラストレーション溜まってきてたのよ!」

 「戦術継続、『ウォークライ(私が相手だ)』!」

 「さて、お手並みをーー」

 「まず術札!」

 「なんだい、動きがーー」

 「砕けな!『シンフォニックブレイク』!」

 「追加で『ペンデュラムロール』!ほらっほらっほらぁ!!」

 

 動きを阻害する術具ーー私の定番装備になりつつあるーーを使って動きを止め、先程攻撃した主砲に攻撃を集中する。

 南極女帝は怪異の残骸を艤装の左手で持っているが完全に無視する。パワーアップアイテムでもないようなので律儀に釣られる理由がない。

 

 「近接向けの小手先ってわけかい!でもこの程度ならさ!」

 「『フォールノクターン』、『ワイルドラプソディ』、右主砲」

 「この、曲芸師みたいなことをするねぇ!」

 

 振り払う巨大な腕を飛び上がって交わし、そのまま貼り付いて連撃を仕掛ける。

 

 「『クイックマーチ』、『シュートポルカ』、左主砲」

 「ダメージはないけど、鬱陶しいったらないね!」

 「『シンフォニックブレーー』」

 「これは流石に読めてるよ!全砲門斉ーー」

 「キャンセルのバーニア全開、後退」

 「なっーー」

 「ーーァァアアアア!!!」

 「がっ!!?」

 

 私の行動を読ませた上でギリギリまで引き付けて、相手がノーガードの全力で反撃するのに併せて後退。

 そうしてガラ空きになった南極女帝本体の脳天にココの全力の一撃が刺さった。

 

 「名付けて、『流星拳(メテオフィスト)』よ!」

 「もっと鍛錬積めば威力底上げできそうだなァ」

 「十分でしょ?」

 「一撃必殺タイプならこの1.5倍は欲しい」

 「言ってくれるわね……!」

 

 ココがやったことは単純である。高高度から落下する速度にバーニアの推進力を上乗せした速度で衝突するように殴りつける、それだけだ。訓練時から決めておいたキーワードの『はっ倒す』は私が全力で引き付けて敵のガードが空いたら全力でそれをぶつけろというものだった。

 『流星拳』はココに意識を割いていたら少し移動すれば避けれてしまう大振りで回避の隙が大きい攻撃のため、私に全意識を持っていかせるように立ち回る必要性があった。

 その上で衝突への本能的な忌避反応で加速しきれないところがあるので、度胸付けと実際にココ自身へ反動のこないような装備改修がまだまだ必要である。

 

 「うっぐ、やってくれたねぇご来客。少しばかり意識が飛んじまったよ」

 「”イギリススラング”。なんで無事なのよ」

 「威力不足なンだって」

 「防御関連のあれこれがなかったら足りてたよ。まあ、これなら合格さ」

 「余裕かまして!」

 「保険持ちか」

 「そういうことさ!」

 

 そう言って南極女帝は上着のようなものを投げ捨てる。

 その瞬間南極女帝の本体及び艤装の損傷が治ってしまった。敵対時のアウトローが使っていた創造者(クリエイター)作の深海棲艦版応急修理妖精のようなモノだろう。

 

 「はぁ!?全快したっていうの!?」

 「それを使うってことは創造者の奴と繋がりがあるってことか?」

 「いや?アイツがあちこちで流出させているものを確保しただけさ。運び屋コンビの大型バーニアなんかもそういう流れだよ。誓って言うが、創造者の行方は知らないし提携もしていない」

 「……電」

 『嘘ではなさそうですね』

 「だよな。まったく、どこに逃げ込んだんだアイツ」

 

 創造者の創り出す作品は運用するのが単純馬鹿とでも呼ぶべき指揮者(コマンダー)だったから今日のうんざりするドッキリ装備、ぐらいで済んでいた。これが十二分に運用できる者に渡った場合、このように恐ろしく手を焼くことになってしまうのだ。

 そういう事情もあって早いところ創造者を仕留めてしまいたいが、吹雪さん達がどこに匿ったのか何一つ居場所が明らかになっていない状態だった。

 

 「さて、私は満足したけどお前さん達は続けるかい?お客人」

 「同じ手は……」

 「効くならもっと楽にケリついてるだろうね。今まで言ってきた言葉に嘘がないならこっちも武器を収めるよ」

 「チッ、”メキシコスラング”」

 『こちら白峰、周囲に展開していた潜水棲姫が撤収していっているよ』

 

 訓練はしていたがココの実践投入は初であり、奥の手であった『流星拳』も種が割れてしまった。これ以上戦闘を継続しても無駄だろう。南極女帝も怪異の残骸を収納して戦闘態勢を解いていた。同時に白峰側も安全が確認された。

 

 「さて、と。南極女帝。お前の言う通り力と意思は示した。見返りに何をくれるんだ?」

 「とりあえずは私の縄張りをお前さん達127が通っても手出ししないことを約束しよう。運び屋の2人はそもそも私とは上下関係がないからね。そっちで対応しな」

 「密輸の依頼をしていた連中への義理はいいのか?」

 「ついでにそいつらの正体を教えなさいよ」

 「構わないさ。元々見返りをもらってるからこの海域をルートに提供してやっていたのに最近支払いが滞っていてねぇ。私としても鞍替えするのにちょうどよかったのさ。

 さて、運び屋に物資を預けていたのは南西連中の崩れ。元創造者共の配下だった連中さ。受取先は最終的には喜望峰の周辺を縄張りにしている別勢力。それぞれの頭目と拠点の座標も教えておこうか」

 「言えとは言ったけどそこまであっさりと言ってくれるンだな」

 

 正直期待以上どころではない。

 

 『こちら駆逐古鬼。南極女帝、貴方には『終の海』の外交担当、って言えば分かりやすいかしら?南西崩れは『終の海』で対処するわ。少しは面目ってのが必要だからね。喜望峰は遠すぎるから横須賀から国連艦娘組織経由で現地の連中に対処させるわ。その上で、『終の海』にも窓口を開いてもらいたいのだけれど、何かを示す必要はあるかしら?』

 「望外だねぇ。ならお前さん達を苦しめた怪異。私が生まれる前のそれの情報を頂こうか」

 『127の子達に興味を持ったのも怪異だったわね。そこまでして怪異に何故執着するのかしら?』

 「怪異を知るのはあくまでも手段だ。私はねぇ、『私達深海棲艦を生み出した存在』を暴きたいのさ」

 『!』

 「迷い猫にココ。お前さん達も知りたくはないかい?『全ての元凶』って奴の面をさ」

 「……」

 「怪異がその『元凶』だってのか?」

 「少なくとも物理的な海の底よりももっと深くの異空間にソレはいると踏んでいる。南極にはそんな地下深くへも行けそうな人類のモノじゃなさそうな遺跡があってねぇ。その道中に怪異が跋扈しているのさ。その上で関係ないなんて言わせないさ」

 

 飄々としていた南極女帝の目に、怒りが見えた。

 

 「……復讐か」

 「分かるかい、迷い猫」

 「毎日飽きる程見てるよ、そういう目。『全ての元凶を明らかにしたい』ってのは目的であって根本じゃないンだろ?」

 「あぁ。私には先輩がいてねぇ。生まれたてで右も左も分からなかった私に知識と心をくれたんだが……その遺跡でね」

 「怪異に殺されたか」

 「あのヒトは強かった。この艤装だってほとんど元はあのヒトのモノだ。それでも、怪異の持つ狂気への耐性は物理的な強さに比例しなかった。あのヒトは狂気に侵されて苦しんで、私をなんとか地上へ送り出して死んだ。この仇は取らなきゃ女が廃るってモノさ」

 「成る程な。私達に興味を持ったのは怪異と敵対したからってのはずれていて、狂気に抗いきったからが正解か」

 

 そう考えれば先程の怪異の残骸で唐突な狂気耐性判定を仕掛けてきたことにも納得がいく。

 

 『この話は『終の海』に持ち帰らせてもらうよ。おそらく、私達の司令官は一席設けるだろうね』

 「南極にはないお茶請けの一つ、期待させてもらうよ」

 『善処するわ』

 『響だよ。白峰部隊各位も帰投してほしい。色々と調整が必要だからね』

 『白峰了解。皆さん、着艦して下さい』

 「江風了解。その前に南極女帝、一つだけ言うことがある」

 「なんだい?」

 「考えは理解した。想いも理解した。けど、いきなり私の仲間に狂気ぶつけたことは許してないから覚えておけよ」

 「覚えておくさ」

 「行くよ、ココ」

 「分かったわ」

 

 そうして、私達は撤収した。日本の領域に入る前に駆逐古鬼さんは離脱して日本から東に位置する『終の海』へ戻っていった。

 

 

 21:00 第127鎮守府 食堂

 

 

 (ちらりとワ級を見る)

 (意を決して食事を口にする)

 (ワ級を注視する)

 「……マヤ、おいしい、これ、おいしい!」

 「そう、か」

 「だから毒も何も入れてねぇって言っただろ?」

 「摩耶も食えっぴょん」

 「まだまだお代わりもあるからね!」

 「卵料理も追加しちゃいまーす!」

 「私も腕によりをかけた。皆も食べてくれ」

 

 帰投した後、待機していた瑞鳳やタの姐さんも調理担当に参加しての豪勢な運び屋コンビ歓迎パーティーが開催されていた。帰投中に意識を取り戻した2人に事情を説明していたが緊張は解けなかったようで、温かい食事を食べて初めて緊張が解けた様子だった。

 

 「本当にさぁ、ここで初めてご飯を食べた時、嫉妬までしたわ」

 「温かくて旨い飯って劇物だよな」

 「おかげでこの食事のない生活には戻る気は一切ないわね。瑞鳳!私にそのオムレツを寄越しなさい!」

 「お?なんか旨そうな匂いがするじゃねぇか!」

 「よう、アウトロー。お前飯食ってなかったのか?」

 「食ったけど?でもイイ匂いがするんだから食べる!」

 「私も軽いのを……軽いの、ありますよね?」

 「タの姐さんが軽めの作ってたはずですよハナさん」

 「江風さん、ありがとうございます!アウトローさん、食べ過ぎには気をつけないと!」

 

 摩耶さんとワ級さんに近しい境遇ともいえるアウトローとハナさんもやってきた。食堂もかなり賑やかだ。

 

 「江風さん」

 「てーとく?」

 「今日の作戦遂行、お見事でした。ありがとうございました」

 「きひひっ。大勝利、ってね!」

 「そしてこの光景は、貴方が作り出したものでもあります」

 「……うん」

 

 面と向かって成果を褒められると気恥ずかしい。

 

 「さあ、私達も輪にーー」

 「あ、司令官さん!江風ちゃんも早く来るのです!」

 「わーってるよ!てーとく、行こう」

 「ええ」

 

 得るものが多かったとはいえ、まだ問題は山積みどころか増す一方だ。だけど、この光景はしっかり守り抜いていきたい。そう、思うのだった。

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