16:30 廃神社
てーとくを見送った私は守っていた人々の下へ歩み寄る。
「変身解除。終わったよ」
「蒼お姉ちゃんすごい!」
「蒼、大丈夫なの?」
「すごいな、蒼は」
「艦娘としての体にダメージは入ったけど鎮守府に帰れば治せる範囲だしだいじょーぶ」
鎖鎌の触手を斬りながら戦っていたおかげで足元が腐食の沼になっていたが、そこは艤装の足パーツで耐えられる範囲だった。とはいえ、その蓄積ダメージだけで少破状態ではあるが。
「それより皆は大丈夫?」
「俺達も子供達も大丈夫だが……」
「あの、私も大丈夫なんですけど、ちょっとあの子達を送ってきます!」
駆け出していく死神。あの子達というのは鎖鎌が纏っていた動物達の魂だろうか。
「艦娘って思った以上にすごい仕事なのね……」
「これを艦娘の仕事って言ったら他所の艦娘に殴られるぐらい毛色が違うけどね?まあ、体張ってるところは同じだけど」
「蒼お姉ちゃん、私も艦娘になれば蒼お姉ちゃんみたいになれるかな?」
「止めとけ、真面目に止めとけ」
「蒼、目が本気だな……」
自分が辞める気はないが自分に憧れて艦娘になるのは流石に違うと思う。横須賀第1遊撃隊に憧れて艦娘になるようなものだ。それで続けているキワモノは加賀しか知らないしカオリにそうなってほしくもない。
「それと私のてーとくを見たでしょ?化け物をズバズバとぜーんぶ斬り倒した人。あの人の下で鍛えているし一緒に戦ってるから大丈夫だよ。あんな提督はてーとく以外に居ないと思うけどね」
「今度改めてお礼を言わなければな」
「そうねぇ」
「蒼お姉ちゃんっててーとくさんが大好きなんだ?」
「まぁね。ウチの鎮守府は大体てーとくやてーとくが作る空気が好きで居座ってるような奴ばっかだよ」
「あのてーとくさんって人がミッケを受け入れてくれるんですか?」
「そうだよ。話を通したら速攻で許可出してくれたのがあのてーとくだよ」
言葉にすると私も電のことを言えないぐらいにてーとくが好きらしい。卯月の姐さんのような恋愛感情とは違うが。
「そうだね、いつか鎮守府に遊びに来てよ。紹介したい人がたくさんいるし……あぁ、そうだもうすぐテレビ放送の日だね」
「確か太陽テレビだったか」
「うん。どこまで表に出していいか手探りの試験運用な内容だけど、見てくれれば少しは分かるんじゃないかな。……出演してるの私だから恥ずかしいんだけど」
「蒼お姉ちゃんテレビ出るの?」
「うん。もう撮影は終わってるから後は放送待ちだよ」
「蒼さーん、戻りました……」
「ああ、おかえりって頬どうしたの!?」
動物達の魂を送って来た死神の顔が赤く腫れていた。
「偉い人に、勝手に管轄外のことするなってぶたれて……でも、あのままだとあの悪い人みたいに吸われちゃうから……」
「助けてくれたんだね。ありがとう。父さん、母さん、手当てしてあげてほしい」
「あぁ」
「まったく酷い上司ね……」
「ウチでしっかり癒やしていってね死神さん。そして……時間だ」
時刻は17時前。そろそろ行かなければならない。
「ミッケを連れて行くよ。最後に挨拶しな?」
「うん、ミッケ、元気でね!」
「向こうでも頑張れ、ミッケ!」
「にゃあーお」
「……じゃ、行こうか」
17:20 東条の街 駅前
「蒼さん!」
「な……麗華!?」
「最後に挨拶できて良かったです」
「お前謹慎はどうしたよ」
「振り切って参りました」
「マジかよ」
関係者総出で止められても止まらない麗華というのは想定外もいいところだった。
「まずはお礼を。自身の立場がしっかりと分かりましたし、鎌倉さんや坂東さんとしっかりと意見を交わすことが出来ました。ありがとうございました」
「お、おう」
「それと、お祖父様は蒼さんが想像した通り私を母多神の依り代にしようとしているのは事実でした」
「なっ、直接聞いたのか!?」
「私のことですから私が聞かねばならないのです。それとお祖父様は反対していたのですが、私の次に母多神に親和性の高い殿方を私の婿にするつもりだったそうですわ」
「ッ!」
「現状の候補は鎖鎌という男だったそうです。その彼が死んだ、と騒ぎになった隙をついて出てきたのです」
「ふざけた話だぜ。鎖鎌は私の手で仕留めたよ」
「それで大人達の計画は大きく後退することになったようです」
「そりゃあ暴れた甲斐があったねェ」
「お祖父様の強い意向で次の候補の選定まで時間がかかること、それが終わったら私を正式に依り代としてお祖父様から代替わりしてこの地を治めると告げられました」
「それがタイムリミットか……」
「私は屈したくありません。ですが、どこまで抗えるか分かりません。もしもの時は……蒼さん、貴方の手で楽にしてもらえますか?」
「……その時はな。約束する。だけど、そうはさせないってことも約束する。どうにかするために帰ってくるから、それまで頑張ってくれよ」
「……はい!」
てーとくの未来を救うために動いているのだ。地元の友人の一人救えないで何を救えるというのか。私は決意を胸に東条の地を去るのだった。
17:00 東条家 書斎 東条賢三視点
俺はここ一番の苛立ちを覚えていた。立花蒼というイレギュラー、そしてかの女の起こした騒動で明るみになった当家の諸問題の数々に。
あのお方の復活のため、各所に根回しを優先していたために随分と長いこと見落としていた自分にも腹が立っている。
それを突きつけてきた孫娘の麗華に成長を見るのとそうせざるを得ない状態に追い込んだ自身の不甲斐なさ、成長の切欠を与えたのがよりにもよって立花蒼であったことへの残念さで一杯である。
「旦那様!」
「煩いぞ斎藤。どうせあの鎖鎌とかいう男が死んだという話だろう?」
「な、なぜそれを」
「俺はあのお方と現状一番深く繋がっている。舐めるな」
「はっ……!」
「それと斎藤。俺の指示と言い張って好き放題してくれたようだな。そんな権限は与えたつもりはなかったがいつの間に権力を得た?」
「い、いえっ、それは旦那様のお手を煩わせない為の……」
「俺はお前の後始末で忙しいんだがな」
「なっ」
「今後二度と俺の意思を勝手に妄想して嘯くな。『この街から追放する』ぞ」
「そ、それはっ、余りにも……!」
「それほどのことをしたとここまで言っても自覚をしないようだな?鎌倉と坂東の娘には俺から話をつけておいた。麗華の意思を無視したスピーカーになどなるなとな」
「も、申し訳ーー」
「それで、立花蒼だが。情報はどうなっている?」
「はっ、奴の親族からこの街を出ていくように通達され今後はもう戻ってくることはないかと……」
「そうか」
俺は何を残念がっている?あのお方の天敵足りうる存在が消えることに。
「立花蒼め、麗華様に余計なーー」
「余計か?」
「えっ」
残念がっている正体が判明した。麗華にとっての立花蒼は俺にとっての友永芳佳なのだ。東条を背負う人間として見つつ対等に立ち、視界をクリアにしてくれる戦友。息子の裕也には巡り合わせてやれなかった貴重な友。
「斎藤。お前は俺の交友関係にも文句を言っていたな。その上で聞くが、俺がその点について折れたことが一度でもあったか?」
「で、ですが友永芳佳とはもう連絡を取っていないはず……」
「であればお前の言う事を聞いたと?随分と偉いんだなお前は?」
「め、滅相もない!」
「フン。恨むぞ立花蒼。お前が東条人であれば……お前が麗華のパートナー足りえれば……あのお方の最高の世界を麗華に渡せるというのに」
惜しくて仕方がない。だが、現実は変わらないのだ。
「ともかく麗華にあのお方を受け入れてもらわねばならない。パートナー候補は後回しだが俺が探す。それらについて一切合切口を挟むな。挟めば問答無用で追放すると覚悟しろ」
「ひいっ」
眷属となった東条人にとってあのお方の影響外である街の外に出ることは文字通り死を意味するのだ。
「麗華はどうしている」
「はっ、部屋にいるはずで……」
「そうか」
それを聞いて呼びつけようと他の使用人に声を掛ける。
「麗華を呼べ」
「え?お嬢様は斎藤様の許可を得て外出すると先程出ていかれましたが……」
「なっ、私はそんなことを一言もっ!?」
「くふふ、ははは!」
出し抜くことを覚えたらしい。正直嬉しいほうが勝っている。
(それにしても、鎖鎌が死んで良かった。それには感謝するぞ立花蒼。だが次はないと思え)
いくらあのお方の眷属として適性があるとはいえ、年のはるかに離れた異常犯罪者を愛しい孫娘の伴侶にしたくはなかった。胸の中の安堵感はそれによるものが大きいのだろう。
18:00 第127鎮守府 尋問室
「ぐ……ここは……」
「やっと起きたか保健所所長さんよぉ」
「誰だ、そして何故私が縛られているっ」
「我々は第127鎮守府。私はその基地司令福山梓。貴方方が危害を加えようとしていた立花蒼さんと猫のミッケさんの帰属する組織です。捕虜として尋問を行わせてもらいます」
「な……」
「先に伝えておきますが貴方が同行していた鎖鎌は殺しました。母多神の眷属も撃退済みで人的被害はありません。そして貴方への助けもないでしょう。その身の保身を考えるのであれば素直に話すことです」
「ば、馬鹿な!鎖鎌さんはあのお方に認められた方なんだぞ!?」
「私達が鍛え上げてきた立花蒼さんの方が勝っていただけの話です。さて、今回の件の首謀者は誰だ」
「そんなわけ……があっ!?」
「1つ言っておくが俺達の尋問ってのは対テロリスト想定のモンでな。いくらでも心身ともに痛めつけてやるからその前に吐けよ」
「坂田さんの言う通りです。既に我々は貴方をヒトとして定義していない。さあ、吐け」
「あのお方が容赦しないぐああああっ!!」
「狂信者がよ……」
「あのお方と言うのは母多神のことか?その神の指示か?」
「こんな些細なことをあのお方が指示されるわけがうぐああああっ!!」
「では誰だ」
埒が明かないので圧をかける。下手な戦場より強い殺気を込めた圧を。
「ひーー」
「答えろ」
「の、野良猫がいると知って私が、私が鎖鎌さんに持ち掛けたんだ!鎖鎌さんこそ麗華様のパートナーに相応しい眷属筆頭であると賢三様に認めていただくためにぃ!」
「誰の入れ知恵だ」
「ひっ」
「猫を一匹殺害したところで評価が移ろうはずもないでしょう。誰がそれが有効だと言った」
「む、昔ハーバートが……」
「ハーバート?」
「新たなより素晴らしい人類を目指す組織のハーバートが、そうやって成果を積み上げればと前に言っていたんだ!それを5年前に立花蒼が邪魔をして台無しにして、見限られた!ハーバートは見る目がない!」
「第二技研と同じようなパターンってことか」
「そのハーバートとの連絡は?」
「あれからずっと、待て、ここはどこだ……」
「貴方の質問に答える義務はーー」
「ここは東条じゃない……あのお方の力を感じられない!ああ、嫌だ嫌だ嫌だ!!私が保てなーー」
「おい、どうしーー」
「ごばぁ」
どろりと溶けるように保健所所長の体が腐臭を伴う赤黒い血でもない液体になった。
「うわっ、なんだよコレ」
「母多の眷属の死骸と同じですね。違うといえば……地面に溶けて消えませんね。東条の地ではないからでしょうか。……この液体を保存し解析に。『組合』に連絡を」
「了解。掃除大変そうってレベルじゃねぇぞ……」
「全くですね。それにしても、新たな人類ですか」
「絶対ロクでもねぇイカレ宗教か人類に絶望しましたーで極端に走るイカレ野郎かだろうな。フィクションだけにしろよそんなモンはよ……」
「そうですね……」
得られた情報は多くないが、それで最大限やれることをやらなければならない。
後日 『組合』宗家 会議場 濁流視点
「ーー以上が江風ちゃんの、いや立花蒼という『主人公』と詰み一歩手前の東条の地の現状だ。私は、私達はこの支援を行わなければならない。理由は改めて説明したほうがいいかい?」
「ひと昔前なら一つの街が滅ぶだけの話やけど、今は情報社会や。どう落とし前を付けようと所詮はそこだけやったけど今は違う。テレビにネットに口伝え以上に共有できる手段がごまんとあるんよ。
母多が暴れたらそれを報道されて被害が拡大するのもあるし、他の同じようなこと企んどる怪異共に『こういう手が有効なんや』思われるのもあるねぇ」
覚の姐さんが一息に話して周囲ーー『組合』には階級などはないが出席者はその上で顔役ないし判断が仰がれる重鎮面子であるーーを見渡す。彼女は『組合』は安倍晴明に京の都を叩き出された頃からの古株であり、出席者の多くの幼い頃を見てきた人物でもある。私もおしめを替える頃から世話になりっぱなしである。
「そうなったら『最期』や。今までうちらが築き上げてきたものも、深海棲艦が出てから濁流ちゃんが立ち回ってきた『友好的な怪異とそうでない怪異がいるというアピール』も、ぜーんぶおしゃかやねぇ。
日ノ本だけやあらへん。この星全域に恐怖は伝播して疑いが疑いを呼ぶ。そんな世界にうちらの居場所はないやろねぇ。そこまで考えた上で、濁流ちゃんの言葉を聞いてやぁ」
「姐さんが全部言っちゃったよ。まあ、そういうこと。末路は神話レベルの混沌と騒乱になるだろう。だから、皆の力を貸して欲しい。
軸になるのは『主人公』たる立花蒼ちゃんだけど、彼女に全部おっかぶせて満足できるか?あるいは頼りにならない味方勢力として情けない姿さらして終わりたいかい?そうならないために、やれることをしようじゃあないか。
差し当たって、目下の問題はこの状況をアースガイドも把握していることだ。当然あちらも自体の収束を図るべく動くだろう。目標はこれと共同することだ」
ざわめく周囲。『組合』とアースガイドは不倶戴天の敵と言って過言ではないのだ。何故なら、アースガイドの日本支部の元は安倍晴明を根源とする陰陽道一派ーーつまり『組合』の元になった人や怪異を滅ぼしかけた安倍晴明とその仲間たちの後継勢力ーーの組織であり、友好的な怪異を保護しようとする『組合』と排除しようとする彼らとで度々争ってきたのだ。なんなら私の祖父もそういった抗争で死亡している。
そんな安倍晴明一派が人類を導くことを主眼に置いているアースガイドに合流するのは当然の流れであり、力と影響力も大きくなったのだ。そしてそのままだと押し潰されかねない状況下で発生したのが怪異を顕在化させやすくするエーテルの発見と隠しきれない怪異そのものである深海棲艦及び艦娘の登場だった。
そこで私は先陣を切り対深海棲艦戦線に加わり本能だけで立ち上がった艦娘に戦術アドバイスをして一緒に戦う立場を早急に取り、『『組合』というのは少なくとも現状の危機である対深海棲艦戦線においては味方である』という状況を作り、今も続けているのだ。
アースガイドも後を追うように鎮守府組織と提携を始めたが有効手段を導けたわけではないため、最優で最前線を常に行く横須賀を味方につけた『組合』をアースガイドは表立って叩くことは出来ない膠着状態を形成するに至ったのだ。
「皆言いたいことは分かる。だけど、真面目に小競り合いしている余裕がない。かと言ってその時までにアースガイドを潰せるかと言えばノーだ。なにせ全世界規模なんだよアイツラは。たとえそれをやれたとして、母多相手に余力なんて残るはずもない。今回だけでいい、間に合せでも良い、この戦いで母多にとって有利に事を運ばせてはいけないんだ」
その後ああでもないこうでもないと議論した後、会議は解散した。
「濁流ちゃん、宛てがないわけではないんやろ?」
「鎖鎌の言っていた『あーだむ』に近い名前の色々支援できる存在には心当たりがある。けど、これを大々的に出すわけには行かないからね」
「アーデム・セイクリッド。アースガイドの主宰やね。ともすれば敵はアースガイド全体とも取れるし、頭が暴走しているだけで他のアースガイドの子らはなぁんも知らん可能性もあるねぇ。もちろん、アースガイドの敵がわざとその名前をつこうとる可能性もあるんやね」
「『組合』がアースガイドにお前達の主宰の名前が敵から出たぞ、なんて声明を出そうものなら反発必須だし『組合』からも暴走者が出かねない。爆弾すぎるよこの情報は」
「それにその直属らしいハーバートいう人物が不明なのも嫌らしいわぁ」
「現状把握できているアーデムの側近的な人物にハーバートなんて名前のやつはいない。関係が悪くなければそれこそアーデムの側近に聞いてみたいところだけど話を聞いてくれそうな奴なんて……」
「八坂炎雅(えんが)。10代にしてアーデムの右腕として活躍している表向きは高校生。期待できるとしたら彼やろうねぇ」
八坂炎雅は江風ちゃんと接点のある八坂火継の実兄であり、唯一の肉親である。彼らの両親はエスカタワー建設時のゴタゴタに巻き込まれ事故死している。そんな彼を掬い上げたのがアーデムだという話だ。
「そもそも八坂炎雅へのツテもないけどね」
「繋げられそうなところからやるしかないねぇ。『紫電一閃』ちゃんはどうやろか?」
「話を聞いてくれればいいけど。やるかぁ……」
非常に頭の痛い話である。
「それとあの死神ちゃん周りはどうしたん?」
「クソ上司の更に上にツテがあったからチクっておいたし、騒動が起きたらあちらも大騒ぎ確定だからしっかりとした人選を至急送って体勢を整えるって返事もらったよ」
「これで安泰やねぇ」
「そや、死神と言えば〜って唆したのは姐さんでしょう。怖いわホント」
「あらあら、うふふ」
冗談抜きに味方の中で一番怖いのは覚の姐さんだと思う。
更に後日 2月末 第127鎮守府
「うあ〜〜!!」
「どうしたの江風?ハグする?」
「いらねェよ海。やっとテレビ放送されただろ?友永家や自家からびっしり感想書き込まれたの送られてきてさァ……恥ずかしいったらねェよ」
「あ、あはは……それは、うん。好評だったの?」
「好評なのとここ頑張ってるな、みたいなのとか山盛りでさ……。こういうところも見たい、に関しては視聴者の感想として秋雲の姐さんに提出するけど」
「反応も含めて1から10まで、って言われそうだけどね」
「言ってくれるなよ……それと、私のじいちゃんがお世話になった死神さんの状況も来た」
「江風のハートを鷲掴みにした子!」
「あのなァ!事実だけど!」
この遠慮なくズバズバ言うところはなんとかならないのかこの親友は。
「これ見てよ。名前に関する話をした上でこの結論だ」
「命名、立花朱音(あかね)……朱い目で優しい心音だからって、私も目が蒼いから蒼だったよな」
「それじゃあ江風とお揃いなんだ。いいね」
「まあ、そうとも言うか」
「それと、朱音の劣悪な上司が交代させられたらしい。なんか死神の人事異動とかも活発らしい」
「江風が濁流さんにチクった結果?」
「期待はしてたけど想定以上だよ。まあ、良い方に転がったからいいか」
この時点の私は対母多に備えて死神サイドも徹底的に準備をする態勢にまで入っていたことは知る由もなかった。
「なんにしても、第2回目の撮影頑張ってね!」
「うぅ、やってやンよ!」
更に後日 東条の街
「ヒロ〜!」
「どうしたカオリ」
「蒼お姉ちゃんの仲間の人からメールが届いたの。響って人」
「少しは疑えよ?で、なんて?」
「貴方達に見せるべきものが撮影できたので送ります、だって。動画がついてる
よ」
「ふぅん、なんだろう」
子ども達が添付映像を見ると、ミッケを膝の上に乗せてミッケ共々日向ぼっこをしながら寝ている江風とその周囲で丸まって寝ている猫の集団の様子が映っていた。ミッケの毛並みも一段と良くなっている様子である。
「わぁ……!」
「ミッケが元気そうで良かった!」
「動画タイトル、『鎮守府の猫達の日常』……いつもこんなんなんだ」
「ねえ、もう一回再生しよう?」
「うん!」
嵐の前の静けさであり尊い日常であり、そんな時間を各々過ごすのであった。