少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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 PSO2のEP4に突入します。


80話 GUARDIAN AWAKING

 帰投中 艦娘母艦白峰 灯莉視点

 

 

 「怖かったです……!」

 「よしよし本当によく頑張ったね」

 「また江風がオトしてる」

 「オトす言うな瑞鳳」

 

 江風ちゃんは救助した哨戒艦娘さんに抱きつかれていた。精神が恐怖で決壊したところにあんなに颯爽と現れて助けてくれたのだからそうだろうなぁと思いながら見ていた。

 

 「帰りながらインタビューの続きをしましょうか。江風は無理ね。私が代わるっぽい」

 「はい、お願いします!」

 「とりあえず今回襲ってきた深海棲艦を例に出すけど、基本的に鎮守府組織では深海棲艦を2つのカテゴリで分けているわ。そうね、日本人かアメリカ人かと男性か女性かみたいな2種類ね」

 「はい」

 「1種類目が駆逐艦とか軽巡洋艦、戦艦といったデカさや使える装備の種類によって分かれる種別。艦娘と共通ね。駆逐艦は脆くて火力に欠けるけど取り回しがよくて機動力対応力が高いっぽい。対称的に戦艦は機動力とかに欠ける代わりに火力の権化っぽい。巡洋艦がその中間。だから今回のメンバーだと火力に一番秀でているのは羽黒っぽい」

 「そういえば乱戦の外から撃ってましたね!」

 「その他で自身の戦闘能力はないけど艦載機で戦える空母が瑞鳳と赤城っぽい。この辺りはいわゆる後衛ポジションっぽい」

 「すごい攻撃でしたよね!」

 「他にも色々あるけどまあこんなところっぽい」

 

 たしかにそこの深堀りはテーマから外れてしまう。

 

 「2種類目は言葉を話せるかとコミュニケーションが取れるかのカテゴリっぽい。ABCDの4つがあって、人の言葉を話せてコミュニケーションが取れるのがカテゴリA。分かりやすいのがタね」

 「大型艦や特殊個体に多いけど、そうでない子もいるよ」

 「タさんは異種族、って感じが全くしませんね!」

 「次がB。言葉は話せないけどコミュニケーションは取れるタイプ。イがこれね」

 「きゅっきゅーでだいぶ言いたいことが分かりましたよね」

 「それでCが言葉は話せるけどコミュニケーションが取れないタイプ。人の言葉を発するだけのケダモノね。江風が蹴り飛ばした奴は多分これっぽい」

 「Aの深海棲艦とややこしいですね」

 「話が通じないし戦闘する気しかないのはCってとこっぽい。最後にDが言葉も話せずコミュニケーションもとれない本当にケダモノ。人型かどうかとこれらは傾向こそあれ一致しないっぽい」

 「同じ深海棲艦から見てもCやDの連中は同種だと思いたくないぐらいに知性を感じないよ」

 

 苦い顔をするタさん。色々あったようだ。

 

 「その上でほとんどの深海棲艦は本能で人とそれに属するモノを襲う本能があるって話は白峰に乗る前にしてたわよね。それだけの連中はやりやすいっぽい。ただ向かってくるだけのものだから単純っぽい。中途半端に知性を持ち出すと戦術取ってきて厄介度が増すっぽい」

 「さっきの深海棲艦も……」

 「襲うためって本能より甚振ってやろうって半端な知性の結果っぽい」

 「その上で、カテゴリABも基本的にヒトを害するために生きているような連中がほとんどだよ」

 「なんというか、生きるために襲うというか襲うために生きている、って感じですね」

 「そうだね。なんのために襲うか、さえ分かれば色々と研究も進むんだけどね」

 「現状、知る術もないから千切っては投げを繰り返すだけっぽい。全く、こうでもないと戦い甲斐もないんだから」

 「夕立さん?」

 

 少し変わった様子で嘆息する夕立さん。

 

 「あぁごめんね?聞こえてた?」

 「はい、それとそれに関してなんですけど、皆さん怖くないんですか?戦うのって」

 「私は……後にするわ。ほらそこでくつろいでるの!意見述べなさい」

 「流れ弾!?最初は怖かったけど福山提督の圧の方がよっぽど怖いし……ねぇ?」

 「怖くなくなったからって油断してはいけない、ってその福山提督にきつく言われてるけど……」

 「艦娘になるとそういう本能が軽減されるんです。ことここの鎮守府の面々はメンタルが鍛えられていますから、動じることはそうないですね。先ほどで言えば哨戒艦娘さんの安否の方が気がかりでした」

 「なる程……」

 「おう、本能的な恐怖軽減や非常時対策がされてると言ってもヒトの延長のソレだから勘違いしちゃだめっぴょん」

 「それでも正直怖くて母艦の担当艦してる私もいるかも!」

 「こんな感じよ、大抵はね。江風はどう?」

 「私って外れ値に言わせる?自分の身の安全より誰かが犠牲になる方がよっぽど嫌だから死ぬかもって相手でも臆する気はないンだけど」

 

 割ととんでもないことを江風ちゃんは発言している。初対面で、『主人公という役割』という話を聞いた時点でそんな気はしていたけども。

 

 「それで間抜けに死ぬんじゃないわよ」

 「トーゼン」

 「最後に私ね。私も外れ値の類でね。戦ってないと生を感じられないのよね。命の取り合いじゃない頭脳戦でも経営戦略でもなんでもいいけど、現状一番合っているのはこの戦場なの」

 「生を……?」

 「さっき深海棲艦が襲うために生きているようだって話をしたでしょう?ある意味私も似たようなものなの。戦いがないと生きている実感を得られない。水を得た魚って表現があるけど、水を失った魚はそのまま息絶えて死ぬでしょう?そういうモノよ」

 「そしたら夕立さんの戦い方って……」

 「艦娘夕立としての無法な戦い方の本能もあるけど、命懸けてる実感が欲しいのと実際有効だからああいう立ち回りしたってだけっぽい。『ソロモンの悪夢、夕立』で調べれば面白い話が転がっているわよ。まあ、このインタビューに載せるには蛇足で却下っぽい」

 

 ケラケラと笑って見せる夕立さん。

 

 「ま、戦場に立っている艦娘は一般人よりは肝が据わっているけどその程度で怖いものは基本的に怖いのが普通だってよーくよーく覚えてもらえればいいわ。それと時間は大丈夫?」

 (そろそろ〆をよろしくのポーズ)

 

 この話もカットせずに使うつもりで話を締め括ってくれとのオーダーが出た。

 

 「そうですね!今回も時間が来ちゃいました!体を張っている艦娘さんに身一つで頑張る哨戒艦娘さん!それでもと私達に味方してくれるタさん達!皆尊敬しちゃいます!次回はどんなお話が聞けるか楽しみです!皆さんも知りたいことがあれば番組のSNSにお題をよろしくお願いします!

 途中からしか見れなかったよ〜!って人も、エスカの太陽テレビサイトからアーカイブ配信をしているから、ぜひぜひ!見てくださいね〜!それではぁ!」

 「「ばいばーい!」」

 

 

 放送直後 第101鎮守府 矢矧視点

 

 

 「「……」」

 「なんだったのかなぁ、アレ」

 「だから見るのやめましょうって言ったのに」

 

 太陽テレビの第2回放送を見た私達の空気はお通夜もかくやといったところだった。何故ならばーー

 

 「なんで秘匿してきた情報ペラペラ喋っちゃうのかな☆」

 「というかあの装備群、具現武装じゃないでしょ?何あれ?」

 「ぴゃあ……具現武装も平気で使ってたよね」

 「こんなことが認められるというのか!?」

 

 上からボロが剥がれそうなぐらい切れている阿賀野姉、困惑している能代姉に酒匂。そしてアースガイドから派遣されてきている私達の提督である。私を含めたこのメンバーが101の中核である。

 弊鎮守府の方針は無垢な一般人を混乱させないようにややこしいことは秘匿しつつ人々の平穏を護ること。127が太陽テレビとやった放送の真逆であり、事の大小の差はあれど大抵の鎮守府もそうであるはずだった。

 

 「『大本営』が許可を出したからこそ出来た放送だって聞いているわ。例え127を抑えても上を変えなきゃ第二第三の127がやっていくでしょうね」

 「人々を混乱させてまで何を知らせたいのかしら」

 「江風から聞いたけど、思想は予防接種のようなモノだそうよ。なにかの拍子に知ってしまうなら予め丁寧に教えておいたほうがいい。それが横須賀の元帥を筆頭にした『大本営』の投票した過半数の総意で、その通りに127は実行しているのだと」

 「なんで迷い猫(ストレイ・キャット)と連絡を取っているの?矢矧」

 「こういう時に一々何も知らず何もできず驚くだけなのが間抜けだと思ったからよ。皆今の自分達を冷静に見てみなさいよ」

 

 出し抜かれて揃って臍を噛んでいる様は情けないと思う。

 

 「とにかく、時代が変わりつつあるの。127はただ分かりやすい目印なだけ」

 「それこそ127を抑えてそれは間違っているって示さなきゃ」

 「ここは阿賀野姉の言う通りね」

 「ぴゃん!やっつけないと!」

 「具体的にどうやるの?」

 「127を叩く」

 「ぴゃ〜ん!」

 「他の子達も集めて会議しなくちゃ」

 「……」

 

 私の姉妹艦達の正義感の強さはいつも通りだが、盲目的すぎる。まるで何かに操られているようなーー

 

 (……『物語』!)

 

 濁流の言っていた『物語の役割』に入り切っていると思えば合点がいく。その上で1人平静な私はそういう概念を理解したから落ち着いていられるのだろうか。

 そう思っているうちに鎮守府の他のメンバーが集められ、テレビ放送でやってはいけない暴露をする127を叩くべきだと阿賀野姉が主軸になって話し始めた。提督も頷いている。一方で集められた他の艦娘は困惑している。

 

 (そう考えると『物語』の舞台に上げられているのは101では私達阿賀野型と提督だけ。共通点は……アースガイド?)

 

 提督がアースガイドから来ている鎮守府だが正式にアースガイドに所属している艦娘は阿賀野型の4名だけである。つまり今回の『物語』はアースガイドに関係することと考えてもいいのかもしれない。

 

 「阿賀野姉も皆も熱くなりすぎよ。いきなり行って通せるところじゃないのは知っているでしょう?……私も頭を冷やしてくるからお互いにクールダウンしましょう」

 

 そう言ってその場を離れた。

 

 

 10分後 第101鎮守府 矢矧視点

 

 

 「もしもし、江風?」

 『よォ、どうした?』

 

 私は周囲に誰もいないことを確認してから江風に連絡を取った。

 

 「単刀直入に言うわ。何かの『物語』が動き始めている」

 『!』

 

 太陽テレビの放送を見た不自然な姉妹艦や提督の熱狂や明確についていけていない他の艦娘の違いについて詳細に説明する。

 

 『ってなると今回の『物語』はマザー・クラスタとアースガイドの争いで、それに巻き込まれたってとこかな』

 「そう考えるのが妥当よね。でも、何が起きようというのかしら……」

 『現状検討もつかないね』

 「とりあえず宥めてみるけど、そちらに対して行動を起こすかもしれないからよろしくね」

 『りょーかい。1人冷静なだけでもすごくありがたいよ』

 「それとあの放送なんだけど、貴方駆け付け蹴りかました際に内蔵やられてたわね?痩せ我慢してたけど」

 『吐血しながら駆け付けるンじゃカッコつかねーだろ?』

 「気持ちは分かるけどね。そのうちガタが来るわよ」

 『来ねェように改修中さ。にしても内臓いったとき用の修復材クッソ不味いのな』

 「この世の終わりのような味なのよね」

 『経験済なんだ?』

 「まあね」

 

 人々を助けたい一心で艦娘に成りたての頃は無茶をしてきたものだった。『紫電一閃』の二つ名が広まる頃には落ち着いたが。

 

 「それと助けた相手に優しくするの、気持ちはわかるけど気を付けなさいよ。拗れることあるから……」

 『何があったか知らねェけど肝に銘じておくよ……』

 「貴方もフラグいくつ立ててるのよ」

 

 そんな雑談に興じて、連絡は終了した。せめて騒ぎを小さく出来ればいいが……。

 

 

その後 第127鎮守府 江風視点

 

 

 「ーーってわけで101からの動きがあると思われます。各自注意してほしいのと、特に新人組は巻き込まれたら即座に連絡して逃げて欲しいンだ。そのために呼んだンじゃないからね。もっと先の、これからの為に君たちは集められたから」

 

 新人達に怪異回りなど話せる経緯は全て話した。もう待っていられる時期ではないだろう。

 

 「思った以上にとんでもないわここ!?」

 「いやまあうん、本当に済まない」

 

 常識的な荒潮の反応が正しいのだろう。私の言葉をてーとくが引き継ぐ。

 

 「この状況についていけない、ついていけなさそうだという方は早めに申告してください。転属など安全を確保した上で斡旋します。この件の後、この鎮守府の今後に皆さんが必須だというのは事実ですがその危険性を無視した上で引き留めることは仁義に反しますから」

 「朝潮、承知の上です!」

 「朝潮はそうだよな……」

 「提督、このことは亜贄社長もご存じなのですか?」

 「ええ、大和さん。彼にも共有しています。この『物語』が動き始めたことについてはこれから共有しますが、前提を踏まえた上で我々に協力して頂いています」

 「そうですか……」

 

 新人達は困惑している。無理もない。

 

 「今更でーす!」

 「私も逃げたりしません!」

 

 瑞鳳や羽黒は覚悟完了だ。

 

 「世界の裏を牛耳る組織と組織のぶつかり合い……ゾクゾクするっぽい!」

 

 夕立の姉貴は大丈夫そうだ。

 

 「正直理解が追いついていないかも」

 「航空機は!?航空機は落とせるのかァン!?」

 

 転属組も理解に時間を要するだろう。ツングースカさんは何も分かっていない気がするが大丈夫か。

 

 「それにしても、想定されるのがマザー・クラスタとアースガイドの衝突。それに付随する形で我々や101が巻き込まれる。かなり壮大な『物語』になるのでしょうね」

 「私は『介入する主人公』だから、『本命の主人公』が別にいるはず。どんな人でどんな立場なんだろう」

 「……案外、どちらでもないのかもしれません」

 「てーとく?」

 「あれから2年。そろそろですね、アレが目を覚ますのは。そういうことなのか?なあ――」

 

 

 AP241(=2028年) 3月22日 10:30

 

 

 その人は冷凍睡眠装置の中で意識を取り戻した。

 

 『はじめまして!私はシエラと申します!気分はいかがですか?貴方はご自分のことをしっかりご認識されていますか?パーソナルデータを確認してみてくださいね!』

 

 その人はその声を受けて冷凍睡眠装置から抜け出す。装置から出てすぐ先でピンクの制服を纏った金髪碧眼のサイドテールの少女が手招きをしている。バナナのようだな、とちらっと思いながらそちらへ歩を進める。

 

 「――さーん。こっちこっち、こっちですよー!おはようございます、気分はいかがです?」

 

 その人にとって彼女は見覚えなど全くない。

 

 「あっ、挨拶遅れました!はじめまして!私、――さんの専属オペレーターとなります、シエラです!無事、目覚められたようでよかったです。体にもおかしなところはないですか?ダーカー因子も……はい、きれいに浄化されているみたいですね」

 

 データを確認する少女にその人は首をかしげる。状況が理解できていないのだ。

 

 「おやっ?首をかしげられてるご様子。もしかして、記憶が曖昧だったり?そういうことがあるかもと医療部から連絡は受けてました。

 ではでは、僭越ながら専属オペレーター、シエラ。状況の説明をさせていただきますね」

 

 その日、守護輝士(ガーディアン)と呼ばれることになった人物が目を覚ました。そしてこの人こそが、『本命の主人公』だ。




 PSO2主人公が目を覚ましました。ですが本作品はあくまで『介入する主人公である江風』が主人公であり、彼ないし彼女は主軸にはなりません。また、あえて守護輝士は名前を設定していません。
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