少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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91話 ハギトの発明と今後の展望

 4月18日 10:00 第127鎮守府

 

 

 八坂が目覚めてから翌日、八坂達を含む鎮守府外の人々を集めていた。外部メンバーは八坂兄妹、守護輝士(ガーディアン)、マトイさん、橘イツキさん、茅野コウタさん、そして矢矧である。和泉リナさんは都合が合わなかった。

 

 「あ、天星学院の八坂さんだね。久しぶり」

 「清雅学院の橘副会長さん!?」

 「へぇ、姉妹校の」

 「おい、こりゃどういう集まりだ?」

 「亜贄社長がお披露目したい技術がある、って話よ炎雅」

 「紫電一閃の矢矧さんか。他の連中はどうした?」

 「招待を受けたのは私だけ。他の皆は信頼できない、ってことでしょうね」

 「さて、揃ったようだねえ諸君!」

 「あ、変態社長!」

 「いきなりそれは酷いんじゃないかな火継君!……まあいい。ここにいる皆にはこれを配ろうと思っていてね。イツキ君やコウタ君には以前から話していた補助デバイスだよ」

 

 そう言ってハギトさんはエメラルド・タブレットに似た端末を複数取り出す。ハギトさんのがエメラルドであればこちらは純粋なグリーンで発光も控えめである。

 

 「私の具現武装、エメラルド・タブレットを元に127鎮守府のオーダーを受けて幅広い層に使えるようにした、その名もグリーン・タブレット!」

 「そのままじゃないの」

 「突っ込みに磨きがかかっているね!……こほん。これは具現武装を使える人にはその補助を、そうでない人にも私のエメラルド・タブレットに近い補助機能を盛り込んでエーテルに目覚めていないないし能力が低下している人にも扱えるように調整した補助デバイスといったものさ。例を見せよう。瑞鳳君、羽黒君!」

 

 そう呼ばれて2人が出てきた。勿論グリーン・タブレットを手にしている。

 

 「エーテル適性のない私だけどぉ……可愛い艦載機よ、出ろ〜!」

 

 瑞鳳の声に反応して車輪が可愛い(瑞鳳基準)艦載機が多数召喚された。そしてそれはアトラクションのギミックよろしく自由に飛ぶわホバリングしてみせるわと常軌を逸した動きをしてみせた。

 

 「速度無しで精密に動けるから食堂で料理を届けることだって出来ちゃうの!」

 

 ものすごいドヤ顔で語る瑞鳳。私達が具現武装に目覚めたときからこういった艦載機を出してみたい、と渇望していたのが念願叶ったといったところだった。

 

 「私は……コーデアプリ、起動!」

 

 そう言った羽黒の周囲に鏡が複数と電子表示でYMTのエスカアプリのコーデアプリが大きく起動した。

 

 「アウターはこれ、ベースはこれ、スカートはこれで……決定!」

 

 羽黒が服を選ぶと試着どころか体に纏う服がそれになった。周囲の鏡でどう映っているかの確認も可能だ。

 

 「こうやってお洒落ができるんです!タブレットのアプリ機能をオフにしたらこうやって元の姿に戻れますね」

 「便利だ……」

 「だろう?火継君。これが基本要素の1つさ」

 「まだあるのか?」

 「まずはそこにある大きな鉄骨だが……行け!」

 

 ハギトさんが指示を出すとともに幻創種ゾンビが複数現れる。そしてしっかりとした足取りで鉄骨の周りに付き、軽々と持ち上げて端へ運んで下ろし、戻ってきて整列した。

 

 「このように幻創種を使役することも可能さ。このタイプは1体に付き100kgまで持ち上げることが可能で指示に忠実に動く。どれだけ召喚できるか、どこまで細かい指示を出せるか、どこまで遠隔で操作できるかは人それぞれだけどね。この辺りもプリセットデータにあるから参考にして欲しい」

 

 囮に盾に戦力に、瓦礫撤去に設備運搬にと便利に使える召喚対象だ。因みにプリセットには戦闘用に頭の割れる熊なども入っている。

 

 「なあハギトさん、俺達が頼んでいたのは……!」

 「当然だとも!さあコウタ君、この指示書の指定の通り『ログイン』してくれたまえ」

 「あっはい。……おぉおお!?」

 

 コウタさんの横に彼のPSO2アバターである†コア†が出現した。

 

 「おぉ、PSO2の操作感で動いてる……!」

 「これでPSO2ユーザーアークスの利便性も向上したわけだ。ちなみに『憑依』の項目を選んでみてくれたまえ」

 「『憑依』っと……おぉー!?」

 

 アバター†コア†が消え、コウタさんが†コア†の姿になる。

 

 「まずは慣れてもらうけど、慣れればPSO2の操作感で体が動かせるはずさ。もし生身で緊急事態に遭遇した時はこちらで切り抜けると良い」

 「おぉ……ってことはイツキ!」

 「俺の具現武装の感覚リハビリに使えたりします?」

 「勿論だとも!それらを兼ね揃えるために時間をかけていたのだからね!」

 「これでまた、アイカ達と一緒に戦える!」

 「ちなみに本機能、というよりグリーン・タブレット使用時にはフィルターがかかるようにと127からの注文と技術供与の元に作成してある。

 アバターとしても憑依状態だとしても、その他補助として活用してもダーカー汚染やその他怪異による精神汚染への強い抵抗力を持つことが可能だ。それらの大部分はグリーン・タブレットが引き受けるからね。当然限界はあるがその際はアラートが鳴るようにしてあるからそれを目処に一度撤退をしてほしいね」

 「これが八坂や矢矧も呼んだ理由。マザーがダークファルスの力を得た以上、そして矢矧には精神汚染系の怪異、母多とやり合ってもらうために受け取ってほしかったんだ」

 「ねえ、なんで私に二つ渡したの?」

 「その一つは氷莉君のために用意したんだ。火継君、君は彼女を取り戻すんだろう?その上で渡してあげるといい」

 「……うん!」

 

 非エーテル能力者でも軽いエーテル能力じみたことが出来る再現性、現行使える能力の拡張性、対汚染対策の防御性能。これらを備えた機能を搭載したデバイスの配備を。

 それがマザー・クラスタ騒動が起きる前々からてーとくや響の姐さんがエメラルド・タブレットを使役できるハギトさんに依頼していた内容だった。ちなみに試作品は私は既に受け取っており、マザーや守護輝士と八坂炎雅との戦いにしれっと使っていた。威力の低い弾丸を防ぐシールド能力がそれである。

 

 「守護輝士にマトイ君、キミ達には不要と思うかもしれないがキミ達は汚染地域の最深部に気軽に突撃すると聞いているよ。だから気休め程度にでも持っておくといい。単騎突撃のサポートにはなるさ」

 「うぐ」

 「分かった」

 「ちなみにデバイスとしては完成していて、アプリに関しては更新や新規実装次第追加インストールをすれば改善が可能になっている。ESCA端末のようにね!」

 「でも、いいのか?俺達はこれからマザーと戦うんだぞ?お前一応まだマザー・クラスタだろ」

 「それについては響君に説明してもらおうかな。今の私はその一協力者に過ぎない」

 「呼ばれて飛び出て響だよ」

 

 すっと響の姐さんが前に出る。この大人数の前でもその透明な声(ウィスパーボイス)はよく通る。

 

 「まず、私達127鎮守府はこのマザー・クラスタ騒動及びマザーの復讐劇を通過点として見なしているよ」

 「通過点だと!?ここまで大事になってるのにか?」

 「規模こそ大きいけれどマザーのやりたいことはただの子供の反抗期、そして親が存在しない以上、八つ当たりでしかない。つまり彼女が鬱憤を晴らして落ち着けたら終わりの話でしかない」

 「随分小さく見ているのね」

 「誤解しないでほしいな矢矧。尊重しているのさ。何故なら、私達はこの戦いに裏で暗躍している人物を見出しているし私達が復讐すべき相手はそちらだと認識しているからね。自分の復讐は良くて人の復讐は駄目は通じないだろう?」

 「この前も聞いたけど、復讐相手って……」

 「八坂炎雅に矢矧。君達には今から明かす情報を他のアースガイドに伝えないで欲しい。出来ないならデバイスだけ持って今日はお帰り願うよ」

 「あの話、裏が取れたのね?」

 「類似事件を複数確認したに過ぎないよ」

 「炎雅。この話、誰にも漏らさずに聞く勇気はある?アースガイドの根底が崩れるかもしれない話よ」

 「矢矧さん……分かった。127鎮守府がマザー・クラスタの味方なんだかなんだかよく分からない動きをしていた理由も気になっていたしな」

 

 聞いた響の姐さんは満足気に鷹揚に頷く。

 

 「であれば話そう。私達は旧127及び旧130鎮守府を襲った連中に復讐して回っていて、実行犯はおおよそ殺害した。残りは目下捜索中だけどね」

 

 創造者(クリエイター)のことである。

 

 「その上で連中にそのような凶行に及ばせるに至った黒幕がいると認識している。唆した、といえばいいかな」

 「黒幕……」

 「情報はいくつか。1つ、達成すればマザー・クラスタに入れてやるという報酬。1つ、ハーバー某であるという断末魔。1つ、連絡はラスベガスから来ていたという情報。1つ、連絡役のはーばーとと親玉のあーだむと呂律の回らない声での証言。これらから、私達が追っている黒幕はオフィエル・ハーバートとアーデム・セイクリッドであると踏んでいるよ」

 「どういう……ことだよ……」

 「オフィエル・ハーバートとアーデム・セイクリッドはグルで様々な裏世界での計画に関与、ないし援助をしていた。ということだよ。マザー・クラスタを身代わりにしてね」

 

 衝撃を隠せないといった様子の八坂炎雅。まあ、無理もないだろう。

 

 「これらは八坂炎雅、君がアーデムの側近になる前の出来事だと推理しているよ。私達の仇としては何年も前に支援が打ち切られていたこと、怪異都市東条では五年前の小動物連続殺害及び少女拉致殺害未遂事件の際に支援が打ち切られていたことが判明しているからね」

 「……だとしても、なんでアーデムがそんなことを」

 「不明だね。これらの計画の共通項は見えてきているようでまだ不明瞭だ。追加で別の国で彼ららしき存在の関与が判明した事件も踏まえると、『より優れた人類の創造』がどうも目的じゃないか、と推測しているけどね」

 「より優れた人類……」

 「旧127及び130を襲ったことで確保した特異個体睦月を素体にしたエーテル改造艦娘計画、東条における母多神の眷属になることによる人類を抜けた存在になること。他の事例も似たようなものでね。

 今、テキサスでミュータント計画が進んでいるらしくて『組合』が現地のレジスタンスに合流して抵抗戦を行っている。もしこれも同じ黒幕だとすればより確実だと言えるね」

 「テキサス……だと……」

 「炎雅?」

 「アーデムが言ってたんだ。この行き詰まった未来を打破する可能性がテキサスにある。そこに投資している、って。内容までは教えてくれなかったし俺も日本に来ていたから分からずじまいだったが……」

 「兄さん……」

 

 八坂炎雅の中でもピースが繋がったらしい。

 

 「まあこれらは推測に過ぎない。だからオフィエル及びアーデムは容疑者に過ぎないし、彼らの名前を詐称している可能性も捨てきれない。とはいえ、だ。梓」

 「私が引き継ぎます。マザー・クラスタとしてのオフィエル・ハーバートの評価は信用に値しないと言わざるを得ません。

 まずベトール・ゼラズニイ氏の抹殺未遂。他の方に聞いたところゼラズニイ氏の回収と顔見せが本来のマザー氏の命令であり、抹殺はオフィエル氏が個別で請け負ったと発言していたとのこと。その上でこちらの電さんがそれを嘘だと見抜きました。よってこれは彼の独断だと判断しました。

 次にアークスシップ襲撃でのマザー氏がアルさんを回収するための時間稼ぎにおける破壊活動。この直前に江風さんはマザー氏と被害は最小限に、と約束を交わしていましたが実際にはかなり広い規模での破壊活動でした。私が介入しなければ死者も出ていたでしょうね。これについて、トルストイ氏が「だから被害は最小限に留めるべきだった」と諭していたこと、オフィエル本人は必要な犠牲だと頑なに主張していたことからこれもまたオフィエル氏の独断であったと判断しました。

 そして鷲宮氷莉さんの洗脳状況」

 「こ、氷莉の!?」

 「彼女の状態は正常ではありません。強い意識汚染による洗脳。そしてこれはオフィエル氏が必要な措置だと言って施したものだとマザー氏から証言を江風さんから得ています。その上でかの状況、弊鎮守府は遭遇済みです」

 「それって……私、ですか?」

 「ええ。海風さんの受けた洗脳と状態が酷似しています。想定外の相手からの問いかけには洗脳による言動が甘くなる傾向も含めて。以上により、オフィエル氏、いえ、オフィエル=ハーバートは限りなく我々の仇そのものであると判断しています」

 

 てーとくは黒という表現を避けた。コハルが否定語としての黒表現を嫌がるからである。

 

 「響だよ。以上により、オフィエルは確実。アーデムも限りなく怪しい。だからこの騒動を利用して暴くつもりでいるよ。そうでなくてもオフィエルは捕縛するつもりだ。……アースガイドに口外しないで欲しい理由も理解できたかな?八坂炎雅」

 「……あぁ。俺には感情以外でそれを否定できねぇ。それにアーデムは現状を、技術がいくら発展しても変わらずに争い続ける人類を憂いていた。もし、本当にそんなトチ狂った解決策をやろうってんなら……俺が殴って止める。情報開示の時は言ってくれ、俺も手伝う」

 「私もよ。阿賀野姉の憧れの人がそんな事をしていたとしたら、私が殴って止めないと気が済まないもの」

 「話して良かったよ」

 「けど、それを関係ない人たちにも話したのは……」

 「私達を倒して口封じなんて思わないことだ、って伝えるためだね」

 「なんかとんでもないことに巻き込まれてるな、イツキ」

 「オラクルが実在するとかダークファルスとか経験してると地球にもそんなのあるんだなってぐらいかな……」

 「慣れすぎだろ!」

 

 八坂といいイツキさんといい、『主人公』に選ばれたと思しき人は順応性が高いなぁ、と思う。

 

 「オフィエルとアーデムの話は一旦脇に置くよ。橘イツキ、茅野コウタ、八坂火継。君達には先程話に出た怪異、母多神討伐に協力して欲しい。勿論、アースガイドの八坂炎雅、君にもね」

 「あ、そのための戦力増強!」

 「そういうことだよ」

 「おい待ってくれ響さん」

 「なんだい?」

 「俺は前から、鎮守府の裏事情をオープンにし始めた頃から疑問に思ってた。なんでアンタらはこんな裏のことを公に、大規模にしていこうとするんだ?」

 「隠し切るのには限界がある、そしてその破綻はまもなく訪れる。そう判断しているからさ」

 「破綻……だと?」

 「艦娘深海棲艦については知りたい人も多いし、憶測も多く飛び交っている。これがいつどんな形で、いや、どれだけ不都合で理不尽な形で結実するか分からない。例としては人間の裏組織と繋がっていた南西海域の連中による電波ジャックによる南西海域攻略戦のようにね。この件を以て私達や横須賀は破綻は間近だと判断した。そして、その破綻からどのように悪い形で広がっていくか。その対処が今の127の役割だと言っていい」

 「確かにそりゃ……」

 「だから私達は決断した。どうせバレるなら、私達の制御できる範囲内で、有利な方向性で都度都度暴露していく、ないし掴ませること。隠された真実をマスメディアを始めとした人々は求めるけどそれもこちらが用意していたものであれば制御が可能だ」

 「言いたいことは分かったが、ってことは東条の怪異は『そう』する必要のある存在だってことか」

 「そうだよ。かの大怪異は地方都市東条全域を支配下に置いている。隔離空間で制御できる限界を遥かに超えていると言えるだろうね。そしてその影響を受けたマスメディアで生放送なんて出来る人材にも当たりがついている状況。この状況をもって今まで通り隠蔽しきれる、というのは楽観的を通り越してお花畑思考であると断ぜざるを得ないと言っていいだろうね」

 「阿賀野姉はそれでも大丈夫だ、と言って憚らなかったけどね……」

 「そのなんとかなるの範囲についても議論の余地がある。阿賀野の主張するなんとかなるは東条における犠牲者を多く許容するものだ。例え都市が完全に壊滅しても外部に漏れなければ目標達成、と言っても差し支えないだろう。反して私達は今だ重度汚染に至っていない人々の救助は最低目標であるととらえている。怪異が世に広がるリスクを取ってでもね。八坂炎雅、君はどちらを選ぶかい?」

 「……俺は……後者だな」

 「兄さん……」

 「そういう事件のせいで俺の両親は死んで、俺と火継は取り残されたんだ。他の奴にそれを押し付けてはいめでたしめでたしなんて絶対に言えるものか。で、怪異が世に広がるリスクの管理についてはどう捉えているんだ?」

 

 八坂炎雅はこう判断するだろう、というのが響の姐さんが情報開示に踏み切った理由の一端だった。

 

 「怪異、特にこの手の人々の恐怖を、死を、絶望を糧にする類の怪異はどれだけ人々を恐慌の渦に巻き込めたかで行動の成否が決まると言って過言ではないよ。逆に言えば情報制御の上で『ひたすら怪異側を華麗に対怪異戦力が制圧し、撃滅する』というシナリオを用意できればその影響力も限りなく低くなる。

 これは東条の怪異にだけ言える話ではないよ。どうせ情報が広がる、ということは世界各地で、それこそ国内に限らずね。潜伏している同様の怪異へのメッセージにもなる。母多神が成果を出せば『こうすれば成功ないし一定の成果が得られる』と希望を与え、世界中で類似ケースが発生するだろう。こうなればもはやアースガイドでも何でも抑えきれない。そういった怪異との戦いの時代が幕を開けるだろう。

 逆に私達が制圧して母多神に何の成果も出せずに死滅させたという事実を世に出せば彼らにとっても同様のリスクがある、現実的ではないというメッセージを与えることが出来る。それらに対抗している人々への希望のメッセージ足りえるだろうしね。

 これは人類と深海棲艦の戦いで立証されている話でもある。訳の分からない人では対抗できない敵性存在、深海棲艦。そう怯えるだけではない現状を創り出せたのはそうやって戦い続けて認識を改め続けてきた人々がいるからだ。私達にとっては怪異も深海棲艦も延長線上の話でしかないんだよ」

 「……よく、分かった。少し、時間をくれ。そしたら俺の口添えが出来るアースガイドにも東条での作戦の援護に向かわせる。当然、俺自身もな。そこで忌避すべきことは『組合』とかの他の対母多神勢力との小競り合いだろ?」

 「その通りだよ。それが映れば映るだけ、人々の記憶に残れば残るだけ人々に不安を齎すことは理解できているようで何よりだよ」

 「後はその作戦だ。どうやって情報制御をする?トチ狂ったマスメディアだけじゃない、現地人だって端末の一つでもあれば実況して世界に配信できちまうんだぞ」

 「そこは私に任せてもらおうか」

 

 ハギトさんが歩み出る。

 

 「私は元々有名人だからね。外出時は周囲のエスカ端末にジャミングをかけて騒動にならないようにしていた。この応用でそれらの映像は全部カットさせてもらうよ」

 「とんでもねぇことしてんだなアンタ……逆に情報開示はどうするんだ?」

 「ベトールに依頼するよ。彼の専門はパニックホラー。どう撮れば恐怖を伝えられるかを知っているということは逆にどう撮ればその逆を行けるかを知っているということ。ジャックした端末からそれらを流すことで人類は大丈夫だ、と認識させる作戦でいるのさ」

 「アンタらがベトールを回収したのはそういうことだったのか?」

 「アレは単に電が庇ったから生存させるか、のノリだったよ。その上で使える人材だと判明したから使い倒す。それだけさ」

 「よく言えばクレバー、悪く言えば行き当たりばったりだな」

 「応用力が高いと言ってほしいね。さて、ここまで話したけれど守護輝士にマトイ、君達はどうするかい?こちらの感覚で言えば惑星ハルコタンのマガツのような厄災と言うべきだけれど、本件は本当にアークスは関係ないからね」

 「でも、アズサはやるんだよね?」

 「ええ。江風さんの地元の問題は私の問題でもあります。それに私は地球と共に生きていきたい。この問題は看過できるものではないですね」

 「それなら私も手伝う!それに、前の【若人(アプレンティス)】の時にここの皆にはすごい助けてもらったんだもん。恩返しさせてほしいな」

 「そういうものの平定もアークスの役割だ」

 「助かるよ。これで懸念されていた戦力不足問題もある程度目途が立ったと言えるだろうね。だからこそ、その前段階としてマザー氏の暴走をしっかりと止める必要がある。マザー氏にも本件は手伝ってほしいからね」

 「マザーが役に立つ?」

 「母多という怪異は東条の街でのみ影響力を持つ怪異で、逆に言えば外部に情報が全くと言っていいほどないんだ。現地で戦闘しながら分析し、よりよい弱点なり対処法なりを導き出せる高い演算処理能力の保持者がいると大いに助かる。マザー氏自身がそれならば自分がと言ってくれたのもあるからね。だからこそ、その前に終わらせなければならないという今回の復讐をさっさと終わらせて準備に移りたいんだ」

 「母多がなにもアクションを起こさない前提でも夏を超えると破綻する状況にありますから、一早く万全な状態で挑む必要があります。ですからその準備のために我々は努力も援助も惜しみません」

 「まったく……悩みの種は尽きないな」

 「一緒に一つ一つ解決できることを願っているよ、八坂炎雅。いや、アースガイド諸君」

 

 そうして本格的な情報共有は幕を閉じた。後はマザーがどれだけ早く行動に出るかだが、それもそう待つ必要はなかった。

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