少しファンタシーな鎮守府で   作:朝宮 糸瓜

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PSO2EP4-8後編です。PSO2EP4をなぞるのは、ここまで!


96話 幻創の天使と神

 13:30 アースガイド本部地下

 

 

 「クソっ、オフィエルを振り切ったばっかだってのになんて数だよ!」

 「この感じ……階層毎に配置するエネミーをある程度指定しているようですね」

 「ついでに後ろからも来るってのか!」

 「これはちとまずいな。俺が食い止めるのが最善か……?」

 「なーに言ってんのよ、八坂炎雅。貴方を含めて送り届けるのが夕立達の任務っぽい!」

 「ここが私達の残留場所になるのかしら、ね!」

 「いくらなんでも夕立の姐さんとココだけじゃ物量がヤバい!」

 「なーにうじうじ迷ってんのよ、30%色男!」

 「っ!?」

 「マクスウェル!ラプラス!」

 「……おいで、グリモワ・メルヒェン」

 「お前らは……!」

 

 背後からやってきた幻創種天使型をオークゥさんの専用幻創種・マクスウェルの悪魔とラプラスの悪魔が薙ぎ払い、後続をフルさんの結界で進軍を阻止する。

 

 「あっこらヤンデレ!油断するな、後ろ!」

 「え……わわわわっ!?」

 「鷲宮!っとぉ!?」

 

 鷲宮の背後から迫る幻創種天使型が空中から飛び降りてきたアラトロンさんのハンマーに粉砕された。

 

 「ふうっ、なんとか間に合ったようじゃの」

 「アラトロンさん!」

 「……生きてたのか、お前達。いや、知ってはいたがここまで来るなんてな」

 「なんとか治療が間に合ったからね」

 「お陰で体力もいくらか回復した。だから援護できるよ」

 「そういうわけじゃよ。遅くなったが、義により助太刀させてもらう」

 「ヘーイ!俺達を忘れるんじゃあないZE!」

 「やれやれ、統率の取れていない軍隊だ」

 

 追加で迫ってくる幻創種天使型がベトール監督のSFXによって気前よく爆破され、ハギトさんの召喚した戦闘ヘリが空戦を繰り広げ始める。

 

 「ハギトさん!」

 「ベトール監督も!」

 「ここで参戦しなければどこで参戦するのか、って話だからねえ」

 「まったく、パニックホラーとしてもなっちゃあいないZE!」

 「別にあたしは助太刀に来たわけじゃないわよ!マザーのカタキを取りに来たの!」

 「クゥ、マザーはまだ生きてるよ。……でも、まだ私たちは怪我治りきっていないし、本調子とはいいがたい感じ。クゥっぽくいうなら、80%がいいとこ?」

 「大分回復してるじゃねぇか」

 「ぐっ……あたしの身体とは関係ないしー!戦うのはラプラスとマクスウェルだしー!」

 「無意味に強がるでない、オークゥよ。誰が為そうとも、結果は変わらぬ。過程よりも結果を重んじよ」

 「そういうことだよ。ファレグとやり合える存在は私には荷が勝ちすぎているし他の面々は本調子どころではないんだ」

 「それでも、来てくれたんだ」

 「そういうことだから、10%色男!あんたたちはさっさと進みなさい!」

 

 パーセンテージがゴリゴリと減っていくが色男という表現を辞めない辺り、オークゥさんは八坂炎雅が好みのタイプなのかもしれない。

 

 「……何事も、適材適所。守護輝士ならわかるでしょ?私の能力は時間稼ぎにうってつけ。……あのときは破られちゃったけど貴方以外の相手なら絶対に、破れない能力だから」

 

 タイムリープを認識して撃ち破れる本能ばかりの幻創種がいるとは到底思えない。

 

 「マザーのカタキに、目にもの見せてやれぬのはちと癪じゃが……なに、こうして協力に現れただけでも、十分に想定外であろう?」

 

 実際、これ以上戦力の分散を容易に行いたくない私達にとっては渡りに船だった。

 

 「……死ぬなよ」

 「そのために私がサポートしている。ここは安心して任せるといいさ」

 「頼んだわよ、変態社長!」

 「いい加減変態の呼び名止めてもらえないかな!?」

 

 そうしてハギトさん達に任せて更に先に進む。彼らのおかげか、巨大な扉が目の前に来るまで敵の反応もなく走り抜けることが出来た。

 

 「反応、近いです!アーデムとの接触、間もなく!」

 「この扉の先に……いる!」

 「けど最後のお迎えっぽい」

 「どんだけ創り出しやがったンだアーデムのクソ野郎!」

 

 扉を死守すると言わんばかりに大量の幻創種天使型が殺到してくる。

 

 「ここは電達に任せるのです」

 「結局、最小限の人数になりそうね」

 「江風、ここは任せて!」

 「今度こそ私の出番ねぇ!」

 「前衛は私とココでやるわよ!」

 「……了解しました、夕立さん、電さん、加賀さん、海風さん、ココさん。この戦場はお任せします!当初の突入予定メンバー及び雷さんと矢矧さんは突入を!」

 「「了解!」」

 

 

 14:00 アースガイド地下最奥部

 

 

 「アーデム!」

 「アーデム=セイクリッド!阿賀野姉はどこ!?」

 「これは……足元に印章が……儀式の準備をしてたってのは本当だったか!」

 「炎雅に矢矧、それに皆さん。早かったね。思ったより役に立たないな、オフィエル。……まあ、いいか」

 

 まあ大して期待はしていなかった、というように軽く言うアーデム。こちらの殺気にまるで気が付いていないとでもいうかのようだ。

 

 「……動くんじゃねえぞ、アーデム。まずは一発ぶん殴ってやるからな」

 「わ、今まで見たことないほどのすごい剣幕だね、炎雅。そんなに僕のことを止めたいのかい?」

 「……当たり前だ。お前がやろうとしているのは、これまでの人類の歴史全てを否定することだろうが!そんなのを、はいそうですか、って受け入れられるやつがいると思ってんのか!」

 「できるできないじゃなくて、しなければならないんだよ、炎雅。人が、次の段階に進化するために……この星の世界再編(パラダイムシフト)のために今一度の創造が必要なんだ」

 

 話が根本的に噛み合っていない。やはりこの男とは相容れることも理解し合うこともできない。

 

 「御託はいいわ!阿賀野姉はどこ!答えなければ、ここで殺す!」

 「矢矧、前のめりになりすぎるなよ!」

 「阿賀野ならここさ」

 「きら……りん」

 「「!!」」

 

 直後、空中から多数の爆発が降り注ぐ。そしてその後に降りてきたのは……

 

 「阿賀野……姉……?」

 「アーデムさんの、障害は、排除、するよ」

 「幻創種天使型……!でも、今までのとも違う……!」

 

 降りてきたのは白い身体に四対の腕を生やし、脚はなく胴体から二対の大きな羽根が生えた怪物。その頭部には白くなってはいるが阿賀野の原型を留めた上半身が付いていた。

 

 「阿賀野……姉……」

 「なんて、こったよ……!」

 「矢矧ちゃんも、こっちに、おいで?(苦しいよ)」

 「ッ!氷莉、今!」

 「うん、この人は『まだここにいる』よ!」

 「……!聞いたな矢矧!まだ助けられる!」

 「……本当に?」

 「アーデムさんの、邪魔は、させない(助けて)」

 

 阿賀野だったモノが四対の手を振りかざすと8つ爆発が発生した。腕一つにつき一回分の爆発を行えるらしい。

 

 「アーデム!これが人類の進化の形だって言うのかよ!ふざけんじゃねえぞ!」

 「阿賀野はよく適合してくれたよ。類を見ないエーテル保有能力がいい方向に影響したみたいだ。完成形に近いね」

 「……各員へ通達。江風さん、雷さん、八坂火継さん、鷲宮氷莉さん、矢矧さんは阿賀野さんの対処、救出を。残りのメンバーでアーデムを叩きます。守護輝士(ガーディアン)、前衛は任せました。私は、足元の印章を破壊します!」

 「おっと、『疾れ、アルカヘスト』」

 

 アーデムが何かを唱えると謎の液体ーー錬金術か魔法かよく分からないがーーがてーとく目掛けて飛び散る。

 

 「『インペリアルクリーブ』!」

 

 そしててーとくは石床ごとそれを薙ぎ払った。

 

 「他には実体を伴った分身攻撃もしてきましたね。まだ手を残しているかもしれませんが……それに屈する貴様ではないだろう?守護輝士」

 「当然だ」

 「いい加減にしやがれ、アーデム!」

 

 混戦気味に戦いが始まった。

 

 「あはは、その程度?(止めて)」

 「ッチ、空中からドカドカ撃って来やがって!矢矧!声をかけ続けろよ!けど、惑わされるな!」

 「阿賀野姉!」

 「助けて(だめ)」

 「阿賀野姉……ぐっ!?」

 「あははっ、捕まえた(逃げて)」

 「言ったそばから……『レイジングワルツ』!」

 「降りてきたなら!はあああっ!」

 「わたしも、ずっばーん!」

 「不味いわ、皆退いて!」

 「きらりーん☆(だめ!)」

 「「きゃああ!?」」

 

 捕まった矢矧を助けようと近づいたところで至近距離で爆発をする怪物。それによって矢矧も解放されたが、即座に離脱した私と近づかなかった雷の姐さん以外に少なくないダメージが入った。

 

 「あのクソ野郎、阿賀野の意識も囮として活用してやがる……」

 「……ごめん」

 「ううん、大丈夫……!」

 「さっきまで体力温存していたから、まだ……!」

 「あはははは!(もう止めて!)」

 「好き放題やりやがって。まずはあの羽をもがねェとな……」

 「っぐ……」

 「阿賀野さんの悲鳴が、うぅ……」

 「阿賀野姉……!」

 「心は癒すわ!手伝ってグリーン・タブレット!威力増大、効果範囲拡大!エーテルはたくさんあるでしょう!?」

 「あったかい……」

 「ママみが……」

 「ふぅ、少し落ち着いたわ、ありがとう」

 

 ここまで雷の姐さんを温存しておいてよかった。

 

 「あまり好ましくないね。『アブレック・アブ・ハブラ』」

 「やらせるものか!」

 「残ったのは、迎撃する!『フォールノクターン』!」

 

 雷の姐さんを明確に狙ったアーデムの分身攻撃が襲ってくる。てーとくと私でなんとか迎撃はできたがてーとく達を相手取りながらこんな余裕があるとは、と慄く気持ちがある。

 

 「狙いはなんだ……?癒し……いや。グリーン・タブレット!全員にシールドを付与しろ!さあ、吸え、その為にエーテルを根こそぎ吸っちまえ!リミッター解放だ!」

 「!」

 「アーデムに焦りが!なら、こちらも!グリーン・タブレット、リミッター解放、エーテルを限界まで吸い私の破壊の力の一助となれ!そして狙いは……エーテル溜り!」

 「くっ、気付いたようだね」

 「通さない」

 「なんかの儀式に使ってたようだがな……ここまでだ、アーデム!」

 

 ここからは私達の攻勢だ。

 

 「偏向バーニア最大出力……『レイジングワルツ』!」

 「あははっ、追いつくんだぁ?」

 「テメェの爆発は遅いんだよ!『シュートポルカ』!」

 

 爆発を空中で更にバーニアを吹かせて回避し肉薄し、捉えた。

 

 「!」

 「まずは一つ!」

 「このーー」

 「支援射撃を行うわ!」

 「阿賀野姉をいい加減返しなさい!」

 「うわ、下からもーー」

 「『オウルケストラー』『ブラッディサラバンド』」

 「ああぁ!?」

 「所詮はケダモノの底知恵、複数で狩りをすればこンなモンってか」

 

 羽を片側二枚破壊された怪物が墜ちる。さあ、畳み掛けよう。

 

 「八坂!鷲宮!腕だ腕!攻撃手段をぶっ壊していけ!」

 「わ、わかった!」

 「また飛んだらどうするの!?」

 「私がまた叩き落とす、っと!『シンフォニックブレイク』!」

 「あなたはぁ、あはははっ!」

 「『ウォークライ』要らずでタゲ取れるのは楽でいいなァ。さァ、畳み掛ける!矢矧もいいな!」

 「『紫電一閃』」

 「あっがっ!?」

 「まずは一本。これ以上醜態を晒すわけにはいかないもの。この力、示す!阿賀野姉!もう少しだから頑張って!」

 「やってくれるねえ!(お願い)」

 

 その後は激しい爆発を連続で受けたものの私がグリーン・タブレットで貼ったシールドでなんとか凌いだ。

 

 「最後の一本!『紫電一閃』!」

 「あぁああぁぁぁぁあああ!!」

 「今だ、八坂!」

 「うん!天叢雲、また力を貸して!あの人を救うんだ!はあああああっ!」

 

 八坂の浄化の一閃により怪物は形が崩れて、中から阿賀野が転がり落ちてきた。

 

 「阿賀野姉!」

 「ごめんね、矢矧、駄目なお姉ちゃんで……」

 「無事ならいいのよ。無事で、良かった……」

 「矢矧、そこから離れろ!怪物の残滓が爆発する!」

 「!」

 

 矢矧が阿賀野ごと下がった直後、怪物の残滓が爆発し大量のエーテルを空気中に垂れ流した。私達が今までグリーン・タブレットで浪費した分をチャラにする勢いで。

 

 「江風さん、皆さん!私の後ろへ!アーデムが大技を出します!」

 「!」

 「かつて賢しき女ども座せり。此は万象を砕く力なり!『テトラグラマトン』!」

 「名前からしてもうやべェ!」

 

 アーデムは周囲に四本の極太レーザーを召喚しそれらを回転させて全てを薙ぎ払いにかかってきた。てーとくが受け止めてくれたから全員無事だったが、いなければどうなっていたことやら。

 

 「っぐ、貴様は自分で対処できただろう、守護輝士!」

 「アーデムも追い詰められている」

 「ホントマイペースだな。だがその通りだ、終わりだ、アーデム!」

 「総員斉射!」

 「死ねェ!」

 「アーデム=セイクリッド!」

 「これも一つの結末……一つの起点さ……!」

 「お前の好き勝手もここまでだ!この……馬鹿野郎が」

 

 それらの集中砲火を受け、やっとアーデムも倒れた。そしてぞわりと悪寒が増す。

 

 「なんだ……?雷の姐さん、阿賀野を遠くに引き離して!まだ、何かある!」

 「分かったわ!」

 「ふふ……原初の魔法使いであるこの僕もあっさりと超えていくんだね……だけど、これでいい……これでいいんだよ、炎雅。神降ろしは、これで為される」

 「……神、降ろし?どういうことだ、アーデム!」

 「まさかこの印章は……破壊した跡も先のエーテル爆発で修復されて……!?」

 「……いかに想像、具現の産物といっても神が無償で顕現するわけがない。その降臨には、それに相応しい供物が必要。神が入るための、器が必要だ」

 

 言っていることが理解できてしまう。つまり、アーデム=セイクリッドは自身の敗北の可能性まで織り込んでとてつもないことをしようとしていたのだ。

 

 「……それも、生半可な器では為しえない。器にもまた、相応のものが求められる」

 

 そうだ。器という媒体が貧弱であれば、格が低ければ降ろせる存在の格は下がる。そして、それは世界再編(パラダイムシフト)などというものを目指すこの男が許すはずがなかった。

 

 「例えば、人の範疇を超え、神の呪いを受け長い長い時を生きてきたものの、身体とかね」

 

 そう言った直後、アーデムが虚空より伸びた蔦にからめとられる。

 

 「ぐ……う……っ!」

 「アーデム!」

 「……そう、それでいい。器たるべきは、この僕の身体だ。創造の神よ、我らが父よ。これは、貴方の創った器です。……降りるに厭とは、言わせませんよ?」

 

 言い終わった瞬間、私達は光に包まれた。

 

 

 同時刻 卯月視点

 

 

 「この気配は……」

 「なんだ、このとてつもない気配は!?」

 

 梓たちの向かった方からとてつもない――バミューダの怪異をもしのぐような――気配がした。

 

 「ふ、へ、はははっ……!よ、よいのですかファレグよ!あちらに加勢に行かなくて……ぶえっ!?」

 「そらよ!」

 

 オフィエルをファレグが投げ飛ばし、アタシが蹴りを入れ、それをファレグが再び掴む。

 

 「……別に私が行く必要もないでしょう。私は、人の力を信じておりますから。さ、続けましょうか」

 「ひいっ!」

 「梓や江風達もいるんだから大丈夫か。……頼むぜ」

 

 

 謎の空間 江風視点

 

 

 「……ここ、どこ?さっきまでの場所と、違う」

 「気持ちのいい風に心地よい光……。……こんな環境、現実味がない」

 「巨大な木の上か?なンというか、『聖域』って感じだな」

 

 そう言いながら周囲を確認する。私、てーとく、八坂兄妹、鷲宮、守護輝士に矢矧。雷の姐さんと阿賀野は転移範囲から外れたようだ。そして威厳のある声が響く。

 

 「……そうであろう。ここは我が庭。人の身には過ぎたる場よ」

 「!?だ、誰っ!?」

 「不遜な言葉だな、人の子よ。呼んでおきながら、なお我を何と問うか」

 「……まさか、てめえが」

 「……いかにも我はこの星を、宇宙を創りし存在でありこの宇宙、そのものである」

 

 光が形を成して、木を纏った異形の人型になる。本能が告げる。これが、こいつこそがアーデムが呼び出した『神』だ。

 

 「アーデムの身体を器に、神を降ろすってのはそういうことかよ……!しかし、宇宙の創造神のご登場とはいきなりぶっとんできやがったな」

 「……不意不測の形ではあるがこうして形取ったのであればこの身の役目、果たさねばなるまい」

 「流石神。契約とかに律儀なモンだぜ」

 

 色んな宗教の神話に出てくる原初の神など理不尽の権化ばかりだったと思ったが、この神は義理堅いようだ。

 

 「この地、この星を糧としていざ、新たなる宇宙の創造を行わん」

 

 それはアーデムの望みであり、そのためにこの神は呼び出されたのだ。

 

 「星を糧に創造って……地球を壊す気!?」

 「今の人類、この星この宇宙にとっては、な。だが案ずるな、生まれ変わった宇宙は新たなる人類が引き継ぐだろう」

 「……親切に解説してくれるのね」

 「終(つい)えた世界は、糧としての価値しかなくそれを人が望むのであれば……我はそれを為すのみだ」

 「そんなこと……させないッ!」

 「人類が全員ンなこた望んでねェっての!」

 

 私達が一斉に抜刀する。

 

 「ふむ、刃を向けるか。創造の神に」

 

 そう神が言うと全員の具現武装が消滅してしまった。

 

 「天叢雲が……消えた……!?どうして……!」

 (ッチ、ツインダガーも消えちまった……が)

 「其は我が一部を用いて具現したもの。我に通じる由もなく、我の意に従い霧散する。それが道理であろう」

 

 そう解説してから神々しい木の大剣を八坂に向けて振るう神。それに対して守護輝士がブロックした。ついでてーとくも飛び掛かる。

 

 「はああっ!」

 「そこだ」

 「……?何故、力が霧散していない?」

 「この世界の力ではないから、とでも言えば満足ですか?」

 「……成程。貴殿等は別の宇宙、別の次元からの来訪者か。ならば、我の管理外なのも道理。守護輝士、ルーファ。この退廃しきった星のために尽くしてくれたこと、感謝する。あとは、創造神たる我が引き継ごう。ゆるゆると、お帰り願えるか」

 「ふざけるな、私は、この星の人達と――」

 

 言い切る前にてーとくと守護輝士が光に包まれて消えた。

 

 「あれも……我が世界のものにあらず。共々、お帰り願うとしよう」

 

 そう言って神は天空に手を伸ばした。おそらくそれはアークスシップであり――

 

 「おい、この星にはてーとくの仲間たちが多数展開してるンだぜ?」

 「無論、全て共々お帰り願った」

 「マジかよ……」

 

 無茶苦茶である。だが、宇宙の創造神がその権能をフルに発揮できたのであれば可能なのかもしれない。

 

 「守護輝士……っ!あの人を、どこにやったの!?」

 「来訪者は、あるべき場所へ帰ってもらった。その尽力に感謝は絶えぬが、此はこちらの問題。あとは我が宇宙を創り直すのみ」

 「……っ!……これで、終わりなの?……ここまで頑張ったのに、こんな終わり方が、あたしの結末なの?そんなの……嫌だ……!あたしはまだ何も、成し遂げてない!」

 (……そうだ、八坂火継。まだ、君には為すべきことがある」

 「!!」

 「何だ、この雑音は……?」

 「……地球の子よ。我が子らよ。聞こえているか、私の声が」

 「その声……マザー!?」

 「我が内に不純物……だと……!いつの間に……!」

 「マザー、そこにいたんだ……!」

 

 マザーの意識は体になく、アーデムに吸収された方の力にいたらしい。

 

 「まだ、この星に名前が無く月というものが存在しなかった頃……遠い遠い、昔の頃だ。……私の大半は月となったが、私の一部は地球と共になった。そして貴様の具現に使われているエーテル。それもまた、私より生じたもの……私は貴様の一部だ、地球意志。創造の神が自己否定はできまい?貴様がどれだけ願おうとも、私は消せんよ」

 「ち……砕けた星の欠片か……だが、この身の主導権は我にある。雑音など、ゆくゆく取り除けばよい。……まずは、些事より片づける」

 「させるかよ、馬鹿が」

 

 私は『艤装の主砲』を撃つ。

 

 「何っ!?」

 「江風!?」

 「艦娘はエーテル由来じゃないって言うからもしかしたらと思ったら、なァ!矢矧、お前もできるだろう、手伝え!マザー、時間稼ぎは任せて!なんならぶっ倒してやる!」

 「その力……別の宇宙からの力が源か。そしてこの星に溶け込んだもの。こうも不純物が混ざりこんでは、消すことも叶わぬ……!」

 「そこについて詳しく教えてもらいたいが……まずはテメェを呼び出したヒト以外の意志をその身で受け取りな!偏向バーニア展開、行くぜ!」

 

 グリーン・タブレットは使えないが最低限の戦いができる。それならば十分だ。

 

 「滅びよ」

 「植物の種!?追尾弾か!」

 「撃ち落とす!」

 「避けちまえば、よォ!」

 「滅び果てよ!」

 「ッーー!」

 

 神が距離を取ったまま突きの体勢を取り、凄まじい衝撃波を前方に放った。

 

 「ッチ、掠っただけで少破かよ……羽黒の耐久が羨ましくなるよ、まったく!矢矧、足止めるなよ!」

 「軽巡洋艦でも喰らったら不味そうね……!魚雷の比じゃないわ!」

 「前衛は私がやる!援護射撃頼んだ!」

 「ええ!」

 「足搔いて見せるといい」

 

 それから私達が撃ち込んだ砲撃は多くが斬り払われ、当たっても大したダメージが入っていないようだった。逆にあちらの直撃を受けたら一撃でやられそうだ。

 

 「ッチ、エーテル製の身体だからそっちに属性合わせないと駄目ってことかよ!」

 「深海棲艦に対する実弾のような状態なのね……!」

 「貴殿等の奮闘はしかと受け取った。諦めて果てるといい」

 「「冗談じゃない!」」

 「生まれ出でよ!」

 

 神の周囲に衝撃波が発生する。だが、これが終われば隙が出来る。

 

 「ギリギリねじ込んで……『シンフォニックブレイク』!」

 「開闢の蔦よ!」

 「なっ、バリア……ってぐあっ!」

 「江風!」

 

 バリアによって攻撃を阻まれ、同時にそのバリアから生えた人の胴体程もある蔦に殴り飛ばされる。一瞬、意識が吹き飛ぶ。

 

 「っぐ……中破、か」

 「このおっ!」

 「無駄だ」

 

 矢矧の巡洋艦砲も有効打足りえない。だが、撃たない選択肢はない。

 

 「ならば……これより、神罰を与える!」

 「ッ、やべぇ、全力で逃げろ!」

 「雷!?そうそうあたって……あがぁ!?」

 「回避先にも落雷置いておくとか殺意高すぎるだろ……って、なんだこの悪寒」

 

 矢矧の被弾に毒づいた直後、神が地面に剣を叩きつけ、私達の体より大きな茨が大量に出現し広がり円を描くように迫って来た。

 

 「これが本命、ってかまだ落雷が!矢矧!」

 「うぐ……」

 「連続被弾で動けないか……って不味い!」

 

 こんな極悪コンボを喰らったら一巻の終わりだ。私は矢矧に飛びついて無理矢理茨の挙動から外す。

 

 「滅び果てよ!」

 「やばーー」

 

 せめて矢矧だけでも庇おうとして、再びの衝撃波に完全に飲み込まれた。

 

 「うっ、あっ……」

 (こりゃもう江風として無理だ。艦娘化解除するぜ)

 「轟沈判定か、大破ストッパーも無効化されてやがるか……矢矧、大丈夫か?」

 「う……」

 「矢矧は大破状態か。……の上で大破の衝撃慣れして意識保ってる私が異常なだけ、か」

 

 そう言って立ち上がり、胸元から拳銃を取り出す。

 

 「その混じった力、失って尚抗うか」

 「諦めるって選択肢は『まだ』取る気はない。それにコイツは非エーテルの実銃だ。消せるとは言わせねェ!」

 

 非常用に支給された一般的な拳銃である。憲兵隊が使う高火力品でもない最終手段。私はそのトリガーを迷いなく引く。

 

 「多くが逸れている。貴殿は限界だと気付くと良い」

 「それでも、それでも!」

 

 ふらついて照準が定まらないがマガジンを取り替えてもう一度。

 

 「ならば滅びよ!」

 「追撃弾……がっ!」

 「蒼!」

 

 八坂達の元へ弾き飛ばされたらしい。骨も何本かやられている。限界だ。

 

 「貴殿はよく抗った。その意志もしかと伝わった。まだ未来を諦めていない人類が多いことも伝わった」

 「だったら、もう、やめてくれてもいいンじゃねェかな……」

 「しかし我は絶望の意思によってこうして形どった。ならば為さなければならない」

 

 そう言って神は剣を振りかぶる。

 

 「アーデムに喚ばれていないアンタと話をしてみたかったよ。……だけど、私の勝ちだ」

 「最期まで口の減らないーー!?」

 

 刹那。鷲宮が持っていたエスカ端末から光が走り、私と神の間に顕現した。天叢雲を持った守護輝士だ。そしてもう一条の光が頭上に飛び、てーとくとなって剣を振り下ろした。

 

 「私の部下を、やらせはしない!!」

 「なっ……!?」

 

 想定外の反撃に後ずさる神。

 

 「馬鹿な、戻ってきただと!?立花蒼、貴殿はこれを見越していたのか」

 「はあっ、はあっ、人の創造神なのに忘れてンのか?人は1人で戦うに非ず、仲間と連携してこそ強みを活かせるのさ。……だから私の役割は、てーとくが帰ってくるまでの時間稼ぎだった。……アンタが律儀に色々返してくれるからより時間を稼げたよ。感謝するぜ」

 「オラクルと地球の接続はアルさんとその中にいたマザーさんの残滓が行ってくれました。後はこちらのオペレーターが繋げば……こうして復帰が可能だったというわけです」

 

 そうしててーとくが神を牽制している間に守護輝士が八坂に手に持った天叢雲を手渡す。

 

 「これ……天叢雲……?霧散したはずなのにどうやって?」

 「エーテルの扱いならば幻創造神(やつ)よりも、私に長がある。それだけの話だ」

 

 そういってダークファルス化したアルがマザーの声で現れた。

 

 「あ、アルまで!?でも、その喋りは……マザー?」

 「アルの承諾を得て、一時的に身体を借りた。それよりも八坂炎雅、鷲宮氷莉……二人とも、私の手を取れ」

 

 迷わずマザーの手を取る二人。そうするとマザーから流れたエーテルによって二人の具現武装が復活した。

 

 「グラム!」

 「オレの具現武装まで……!」

 「……彼の者は神といえど、下地にあるのはアーデムの成した、エーテルによる具現化現象。而してあれは、本物の神にあらず」

 

 私達の攻撃が通用しなかったのは、そして律儀にアーデムの意志を遂行しようとするのはやはりそういうところがあったのだろう。

 

 「なればこそ、人類の力で打ち倒してみせよ。その力で、その想いの全てを込めて。そのための場は、私とアルが保とう」

 「うん、わかってる。……だからお姉ちゃん、頑張って!」

 

 その様子を見て激昂する様な、狼狽える様な、どこか期待するかのような声で神が言う。

 

 「地球の……宇宙の具現である我に刃向かうというのか、人類。新たなる創造を、次なる進化を求めずに貴様達は、ただ退廃していくだけを望むと……そのような愚かしい結論を、立花蒼に限らず出すというのか」

 

 それに対して鷲宮、八坂炎雅、八坂火継の順番で応えていく。

 

 「……それは、違うよ。わたしたちは、わたしたちの足で歩いてる。未来へ向かって、はっきりと!」

 「躓いたり、後ずさりしたリ間違った方向に進んだりすることもあるが人類は立って、歩いてってるんだよ!」

 「立ち止まることもある、振り返ることもある。間違えたって後悔することもあるし……取り返しのつかないことも、いっぱいする。それでも、あたしたちが歩いてきたこの道があたしたちの進化の道で、未来への道なんだ。そしてまだこの道は、先に続いてる……それを、誰にも邪魔なんてさせるもんか。たとえ、神様にだって!」

 

 それらを聞いたてーとくが満足そうに続ける。

 

 「だからこそ私は異次元の者でありながら、彼らと共にあろうと決意したのです。貴方の生み出した地球人類の意志の強さを、ひたむきさを侮るな、神よ。それに……私達が来るまで江風さん達に散々妨害されたのでしょう?それで思い知ったはず。それでも足りないというのなら、我々が改めて教えて差し上げます」

 「神の定めた未来を拒む……愚か、愚か愚か、まこと愚かなり。滅びよ、人類。滅びよ、地球。我が創造の失敗は、新たなる創造で取り戻す。貴様達を抹消し、そして再び創り直す。この星を……この宇宙を」

 「地球を創り直す必要なんてない」

 「ありがとう……守護輝士!」

 

 その守護輝士の啖呵を皮切りに戦闘が始まった。

 

 「江風さん、矢矧さんとじっとしていてください!ここは私達に!」

 「うん、お願い。もう私は戦えない。だけど、その神の戦術は見た!サポートするよ!」

 

 てーとく達のフォトンやエーテルはしっかりと神に効果があるようで、激戦を繰り広げる。

 

 「滅び果てよ!」

 「衝撃波が来る!気を付けて!」

 「受け止める……!」

 「なんという膂力!」

 「次は――」

 

 私たちの戦いを見ていた八坂達と順応性の高いてーとくと守護輝士。戦いはこちら側が有利になっていた。

 

 「うぅ……間に合った、のね」

 「起きたか矢矧。あぁ、すげェよな。私達に一方的にやってきた神様と対等に戦ってるンだ。眩しいよ」

 「そこまでを繋げたのは、貴方よ。もっと誇ったらどうかしら」

 「そう、なのかな」

 「実力と実績に見合った自信も大事よ。私だけでは維持も出来なかった……ちゃんと誇ってくれないと、私が困るのよ」

 「そう、かァ」

 

 あまり実感がない。だけれどもこの戦いを導けたこと、少しは誇らしいと思ってもいいかもしれない。

 そうして観ている間、てーとく達が私達を巻き込まないように立ち回っているのもあるが神も私達をあえて巻き込まないように立ち回っているように見えた。やはり、言葉ではああ言っているけれど、『役割』に従順であるけれど神様自体の想いが別にあるのだろう。

 

 「はあああああああっ!」

 

 連携の末、八坂が天叢雲で浄化で斬るように一刀両断する。そして神が膝をついた。

 

 「人が神を超え……神を討つというのか」

 「はあっ……はあっ……はあっ……!」

 「理解……できん……なぜ……創造を、新生を拒む。その先に待つのは……滅びのみ。知っているはずだ、人類」

 

 その神の言葉に八坂が応える。

 

 「拒んでいるわけじゃない。ただ、貴方を頼らなくても、人は……あたしたちは、自分で歩いていけるから。……ねえ、神様。あたしたち人間は神様みたいに完璧じゃないし、間違えもする。見ていて、歯がゆいことばかりだと思う。それでも……それでもここまでやってきたの。間違えて間違えて間違えて間違えて……見つけ出した未来が、今この時なの。だから見守っていて、神様。あたしたちの行く末を……未来を……!」

 「神すら超えて……創る未来……ふ、はは……ははははは……!……それこそ、想像もつかん未来よ」

 

 楽し気に、嬉しそうに神は笑う。やっぱりこの神様の想いは。

 

 「だが……神は不滅。人が願えば、我は再び具現する」

 

 第二第三のアーデムが出ればまたこのようなことになるということだ。

 

 「だったらそのたびに人の力ってのを示してみせる。神様を頼らなくても大丈夫、って」

 「……それは、人類の意志か?」

 「……違う。これは、あたしの……八坂火継の、意志よ」

 「……よかろう。次に我が形取るそのときまで……この星の行く末を、任せよう」

 

 そう満足げに言って神は消えそうになり――

 

 (立花蒼よ。八坂火継を見届けるのに、貴殿の目線を借りるぞ)

 「……え?」

 

 そうして視界が再び光に包まれた。

 

 

 アースガイド地下最奥部

 

 

 アーデムが空から降りてくる。茨の拘束が解けたからだ。見回すと雷の姐さんが見えた。

 

 「皆、無事だったのね!?いや、江風変身解けてるしなんか負傷してない!?」

 「轟沈プラス骨何本かやられましたね……」

 「大変じゃない!すぐに治療するわよ!」

 「うっ、大声が、響く……!」

 

 そうこうしている間に八坂炎雅とアーデムのやりとりが進む。残ったエーテルの残滓が再び牙をむくかもしれない、と。だけどそれにまた対抗して見せると。八坂炎雅の答えに満足したアーデムが消滅した後、アルが姿を現した。

 

 「アル!」

 「ぼくは大丈夫。だけど、マザーは……」

 「マザー……わたしたちのために……?」

 「違う。もとよりこの身は尽きていた。今ここにあるのは、奇跡の具現に他ならない。故に、君達が気にやむことではない。これでよかったのだ。神の手も母の手も離れ……子たちが己の足で歩きだす。それこそが、地球の新たなる段階。君達が紡ぎ出すべき、未来だ。

 ……守護輝士。私は、オリジナルのようになれただろうか。……シオンのように、なれただろうか」

 「マザーはマザーだ」

 

 守護輝士の言葉に満足そうに頷くマザー。だけれども……

 

 「……そうか、ならば我が復讐も……これにて終わりだ」

 「もう、大丈夫。時々間違えもするけど、きっと大丈夫。この星は、あたしたちは大丈夫だから……!ゆっくり休んで、マザー」

 「……いい話のところ申し訳ありませんが、貴方はまだ死にませんよ、マザー」

 「「え?」」

 「第130鎮守府の水野夏奈さんから連絡です。第130鎮守府に保管していた貴方の身体。そのバイタルが安定してきたとのことです。アーデムを、そして彼が顕現させた神を撃破しきって流出するエーテルがなくなったからでしょうね」

 「待て、そうすると私は……」

 「格好がつかない、ですか?諦めてください。そういう『運命』を江風さんが掴んだのですから」

 「……きひひっ」

 「もう、台無しじゃない蒼!でも、それならちゃんと見守っていてね、ちゃんと療養もすること!いいよね、マザー」

 「……ああ」

 

 そしてマザーの意識は散逸した。恐らく第130鎮守府のマザーの身体の方に戻っていったのだろう。

 

 「……みんな、帰ろう。あたしたちの居場所に」

 「あぁ」

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