そのウマ娘、星を仰ぎ見る   作:フラペチーノ

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これは、なんてことないスターの日常を書いたお話です。
最悪飛ばしても本編には影響ないようにはします。

まぁ何が言いたいかっていうと、もしかしたら好き嫌いが分かれるから気をつけてくださいって事です。




【スターの日常】でもうまぴょい伝説の歌詞って素面で作ったらしいよ

 ウィニングライブ。

 それはレースに参加したウマ娘達が、応援してくれたファンへの感謝の気持ちを表すライブの事である。レース上位入賞者がセンターに近いポジションで歌う事になり、多くのファンが楽しみにしているイベントだ。

 なんでレース後にアイドルみたいにライブする事になるのか全く分からない。

 が、これがこっちの世界での当たり前になってしまっているので、違和感を感じる俺の方が異端なのかもしれん。

 しかも中央のトレセン学園はレースだけでなく、ウィニングライブにも力を入れているので「ウィニングライブを真面目にやらないウマ娘はトレセン学園生徒として失格」とまで言われてしまっている。

 

 レースにダンスに歌の練習って下手なアイドルより大変では?

 

 だが、やらなきゃいけないのは仕方がない。

 なのでトレーニングの日の一部を休みにし、気分転換も兼ねてテイオーと一緒にカラオケに来たのだが……

 

「────I believe 夢の先まで~♪」

 

 テイオーがカラオケに来て最初に入れた曲「Make debut!」を歌い終えた。

 

 いや、歌うっま。 しかもダンスもうっま。

 

 歌いながらちゃっかりセンターでの振り付けでダンスも踊っていたテイオーは、「次の曲何にしようかなぁ」と言いながら機械を弄っている。

 テイオーは踊りやすそうなラフなTシャツとズボンを着ており、元気な少女って感じの私服だ。俺? 俺はいつもの帽子とスーツ。

 

「テイオー……歌とダンス上手いな……」

 

「ふっふっふっ……ボク、歌とダンス得意なんだよね。やっぱりウィニングライブは完璧にやらなきゃ」

 

 ウィニングライブの練習はトレーナーが指導する……という訳では無く、外部のコーチがいたりもする。因みにトレーナーになる為にダンスは必須科目ではない。勿論出来たほうがいいのだが。

 俺はダンスに関してはお手本の動きをコピーすればいいので、ギリ指導出来る方だろう。

 

 歌い終えてしばらく経つと画面に先程の歌の点数が出てきた。

 

 えっと……95.6点。高い。

 

 高得点を叩き出したテイオーはご機嫌そうだ。

 これはウィニングライブに関しては特に問題無さそうかな。

 楽しそうに選曲している様子を飲み物片手に眺めていると、テイオーが俺に話しかけてきた。

 

「ねぇ、トレーナーも歌ってみてよ!」

 

「え」

 

 実は俺は歌にはかなり疎い。というか、知っている曲がなかなか無いのだ。こっちの世界では、前世で知っていた曲が有ったり無かったりする。ウマ娘がいる影響で文化にもズレが出ているのだろうか。

 あとそんなに歌に自信が無いというのもあるが。

 

「じゃあ……これで」

 

「お? 何歌うの?」

 

「国歌、斉唱」

 

「ちょっと待ってトレーナー! それカラオケに来てまで歌う曲じゃないよ!」

 

 駄目か…… じゃあ卒業式でよく歌われてる曲で……

 

「なんでそうチョイスが独特なの!?」

 

「とは言っても俺あんまり今時の曲知らないぞ……」

 

「もうしょうがないなぁ…… ボクが選んであげるよ。ウィニングライブで歌う曲なら知ってるよね?」

 

「まぁそれなら」

 

 ウィニングライブで歌われる曲はある程度決まっている。なので使用される曲であれば歌詞自体は覚えているのだが…… 

 

 テーテーテーテッテテテテー♪ 

 

 部屋に聞き覚えのあるメロディーが流れる。あれこれって……

 

 更に画面の方から「いちについて……よーい」と掛け声が聞こえてくる。間違いないこれは

 

「はい! うまぴょい伝説!」

 

「すみませんテイオーさん勘弁してください」

 

 テイオーが「えーー」と言いながら俺の方を見る。

 

 うまぴょい伝説──それは数あるウィニングライブで歌われている曲の中で一番意味が分からない歌詞を持った曲だ。歌詞だけではなくダンスの振り付けもなかなかいかれており、これを作った人はワインを二本開けて作ったと噂されている。

 

「今日の勝利の女神は私だけにちゅうする」って何だよ。どんな歌詞だよ。赤チンとは一体……

 

 流石にうまだっちからのうまぴょいはしたくないので、俺はさっきテイオーが歌ってた「Make debut!」を選曲して歌う事にした。

 

「響けファンファーレ♪ 届けゴールまで♪」

 

 一応一番歌いやすいように立って歌ってみたのだが、何故かテイオーにじろじろ見られる。

 なんか変な所あったかな…… 音程は極端にズレてないと思うけど。

 

「────I believe 夢の先まで~♪」

 

 じゃん!と言う音ともに歌が終わる。カラオケ行く機会なんて無いからうまく出来てるか不安だ。

 気になってテイオーの方を見てみるとぱちぱちぱちと拍手してくれた。

 

「トレーナー普通に上手いじゃん! これならウィニングライブ出ても問題無いよ!」

 

「いやトレーナーはウィニングライブ出ないから」

 

 そうテイオーに返事をすると、画面の方には88.5点という点数が表示される。

 高いのか分からないが、全国平均が84点と表示されているのを見るとちょっとうまいくらいなのかな?

 

「実はカラオケの点数って実はあんまりあてにならないんだよね」

 

「そうなのか?」

 

 テイオー曰く、カラオケで高得点を出すのはコツがあって歌が上手いのとカラオケで点数高いのとではまた別の技術がいるらしい。

 

「やけに詳しいな」

 

「まぁね! よく小学生の頃にカラオケ行って高い点数出すのに夢中になってたから」

 

 ウィニングライブの練習を小学生の頃からやってたからこんな歌が上手いのか。

 因みにダンスはカイチョーことルドルフの真似してたらいつの間にか大体出来るようになってたらしい。これが天才か……

 

「久しぶりにカラオケに来たしいっぱい歌っちゃお!」

 

 そう言い始めてからのテイオーは凄かった。ウィニングライブの曲から、良くCMで流れている曲、俺が知らない曲まで入れまくって歌いまくり。よくここまでいっぱい曲知ってるな。

 俺も時々歌ったが、八割テイオーが歌いっぱなしだった。

 

 そして三時間後。

 

「いやー楽しかった! こんな歌えたの久しぶり!」

 

 あんだけ歌ったのに全く息が切れてないテイオーを横に俺達はカラオケ店を後にした。

 よく三時間も歌い通せるもんだ。

 満足気な顔をしながら楽しそうに尻尾を揺らして俺の隣を歩いている。

 

 携帯の時計を見ると時刻は昼の十二時頃。丁度お昼の時間帯だ。

 

「なぁ、テイオーなんか食べたいのあるか?」

 

「ハンバーガー!」

 

~~~~~~~~

 割とジャンクな食事を終えると時刻は午後の一時頃。

 まだ寮の門限まで時間があると言う事で「どっか行きたい所ある?」って聞いたら「ゲーセン!」と言われたので俺達は近くのゲーセンに向かう事にした。

 

 俺はゲームはよくやっているのだが。ゲーセンに行くのは初めてだ。まぁ最近忙しくてゲームにも触れられていないのだが。

 

「おーここかゲーセンか…… なかなかやかましいな」

 

 ゲーセンに入ると周りからゲームの音が鳴り響いている。

 意外と敏感なウマ娘の耳にとっては帽子越しでもかなりうるさい。テイオーは慣れているのかそこまで気にしていなさそうだ。

 

「あっ! カイチョーのぱかプチがある!」

 

 テイオーが指をさした方を見ると、そこにはクレーンゲームの筐体の中に入っているルドルフのぱかプチがあった。

 ぱかプチ──それはウマ娘をデフォルメにした人気のぬいぐるみシリーズだ。手の平サイズの物から、大きめの物だと抱きかかえるサイズのものまである。ぱかプチのモデルに選ばれるのはウマ娘達にとって一種のステータスになっていたりする。

 

「なんだ欲しいのか?」

 

「いや、カイチョーのグッズは一通り持ってるから別に……」

 

 あっ、そうなのね…… そう言えばテイオーってルドルフオタクだったか。

 

「いつかさ、ボクのぱかプチが出たらこんな感じで並ぶのかなぁって」

 

 テイオーのぱかプチか…… 三冠なんて制したらグッズのオファーがいっぱい来るのかな。 

 まぁそんな未来の為にも

 

「今は練習頑張らないとな。今日は休みだけど」

 

 練習する時は練習する。休み時はしっかり休む。メリハリつけてやってかないとな。

 

「……うん! じゃあトレーナー! 何か対戦ゲームしようよ!」

 

「ほう…… いいのかな『帝王さん』? 負け越しちゃうぞ?」

 

「へー…… 『ねずみさん』も言うね……」

 

 『ねずみさん』と言うのは俺がネットゲームをやっている時に使っていたハンドルネームだ。『帝王さん』はテイオーの方のハンドルネーム。

 元はと言えばテイオーとの出会いもネットからだった。その頃はまさかこんな事になるとは思っても無かったけど。

 

「先に二勝勝ち越した方の勝ちにしよう! まずはレースゲームにしよっか」

 

 そんなこんなでテイオー、『帝王さん』とのゲーセン対決が幕を開けた。

 

 

「ちょっテイオー運転上手すぎだろ! なんでそんなドリフト上手いんだよ!」

 

「えーー、トレーナーが下手なんじゃないの?」

 

 

「トレーナー端っこで飛び道具するのズルい! 近づいてきてよ!」

 

「これも立派な戦術ですー!」

 

 

「音ゲー初見は流石にきついね…… って、え」

 

「甘いな初見フルコンは基本だろ」

 

「ねぇズルした? 実は初見じゃないでしょ」

 

「目はいいからな あとは手が追い付けばいいだけだ」

 

 

「はぁ……はぁ……流石にダンスゲームはキッツ……」

 

「あれぇ? さっき、初見でもフルコンは余裕って言ってなかった?」

 

「目が追い付いても足が追い付かないんだよ…… ウマ娘用難易度ってなんだ……」

 

 

 二人ともゲームの実力が基本同じと言う事もあってか、なかなか決着がつかない。更に負けず嫌いな性格も相まってか、一戦一戦も長くなってしまい結局どちらも勝ち越す事が出来なかった。

 

 そしてゲーセン内の対戦出来るゲーム全てで対戦し終えた結果。

 俺とテイオーが見たのは、とっくに寮の門限を超えた時間を知らせる時計だった。

 

「……」

 

「……」

 

「……帰るか」

 

「……だね」

 

 さっきまでヒートアップしていた気持ちが一瞬で落ちるのが分かる。

 外は既に日が沈んでおり、周りのお店や外灯の灯りによって道が照らされている。

 そんな歩道を一緒に歩いていると、テイオーが話しかけてきた。

 

「今日すっごい楽しかった! ありがとトレーナー!」

 

「俺も楽しかったよ。また来ような」

 

「うん! 次は負けないからね!」

 

 カラオケにゲーセンなんてまるで学生同士の遊びみたいで年甲斐もなくはしゃいでしまった。

 

 ……あれ? 俺、年齢的には高校一年生か。じゃあ、これは年相応……?

 

 俺が精神的年齢と肉体的年齢の間で揺れ動いていると、テイオーが俺の一歩前に出る。

 

「最後に寮まで競争だよ! 先に着いた方の勝ちね!」

 

「それはズルいだろ!」

 

 そう俺が抗議するもテイオーが駆け足でウマ娘専用レーンを走っていく。

 

 あ、しっかり指導した方の走り方で走ってる。気を付けられてて偉い。

 

 テイオーに走りで勝てる訳がないのでゆっくり、それでも人と比べたら大分速いスピードでテイオーを追いかける。

 あまり距離が離れていなかったのか、直ぐにテイオーの背中が見える。一応大分抑えて走ってるみたいだ。時々後ろの方振り向いて俺の事確認してるし。

 

 あぁ、本当に今日は楽しかったな。また遊びたいな。

 

 そんな気持ちを胸に、俺とテイオーは帰路につくのであった。

 

 

 

 

 因みに寮長のフジキセキさんにはめっちゃ怒られました。すみませんでした。




二日連続投稿のお時間でした。こんにちはちみー!(挨拶)
日常回は作者のノリがいいので筆が早いのだ。次は流石に本編です。
これ投稿した後、リアルが忙しくなってしまうので次の投稿が遅れてしまうかもしれないです。ごめんなさい。

余談ですが私の好きなウマの娘の曲は「ユメヲカケル」と「Lucky Comes True!」です。


良かったら評価や感想をくださると嬉しいです。執筆のモチベに繋がります。

テイオーがスターにお風呂場とかで尻尾のケアを教えたりする日常回に関して

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