取り敢えず会わない事には始まらないと思い、スペの教室を訪ねた。
佐竹「スペシャルウィークいる?」
ウララ「トレーナー!?どうしたの?」
佐竹「ちょっとスペに用事が……」
ウララ「おーい!スーペちゃん!トレーナー呼んでるよー」
スペ「は、はい!?」
佐竹「少しだけ話いい?」
スペ「分かりました……」
話をする為スぺを自分のトレーナー室へ案内した。
佐竹「何で呼ばれたか分かる?」
スぺ「……私の苛めの事でしょうか?」
佐竹「そう。苛めについて詳しく知りたいと思って……辛ければ話せる範囲でもいいから。大体の事は把握してるつもりだけど」
スぺ「私が悪いんです……私がのろまでみんなに付いていけないのが……私、他のウマ娘さん見るの初めてで、色んな質問もしていたのでそれに嫌気が差したんだと思います。それでも、セイちゃんやウララちゃんはフォローしてくれるんですけど……」
佐竹「そんなに責めることはないと思うよ。スカイやウララはそんな事なかったんだろ?」
スペ「はい……でも、セイちゃんやウララちゃんはみんなに好かれていたので、私も皆さんと仲良くなりたいです……」
佐竹「みんなから好かれるのは稀な事だし、いい友達を見つけた方がいいと思うよ」
スペ「でも……」
スペは、それでもみんなと仲良くしたいらしい。他の娘が責めてくるのは自分に落ち度があると勘違いしているようだ。そろそろ授業が始まるので、何かあればトレーナー室を訪ねる様に促した。少し日にちが経ち、またスペが落ち込んでいる姿が目に入った。
佐竹「スペ、どうしたんだ?」
スペ「あっ……トレーナーさん。な、何でもないですよ」
明らかに落ち込んでいるのに、それを押し殺して笑顔を無理やりつくった。取り敢えず、トレーナー室で事情を聞いた。何でもいつものメンバーからトイレに呼ばれ、学校に来るなと言う言葉を延々と投げられたらしい。休み時間になると毎回呼ばれたスペは、精神的に不安定な状態だった。その状態で一人にできなかったトレーナーは……。
スペ「私が……いなければ……」
佐竹「なあ、スぺ……一緒にトレーナー室で寝るぞ」
スぺ「えっ!?トレーナーさんと同じ布団で?!」
スぺ(知り合って間もないのに……怖い)
佐竹「違う!違う!一人にしたら不安だからトレーナー室で一緒にって事!やましい気持ちとかないから!?……スぺが嫌ならいいけど、別にいいならフジさんに許可もらってきて欲しいんだけど……」
佐竹(素直に傷つくなぁ……)
スぺ「早とちりしてすいません……自分でも何をするのか分かりません。それにこれだけトレーナーさんにお世話になっているので一緒にお泊りできるようにフジ先輩に頼んできます!」
佐竹「そんな気合い入れなくてもいいけど……何時来てもいいから」
スぺ「直ぐ!許可もらってきます!!」
スぺは急いでフジさんの下に駆けて行った。急ぎ過ぎて他のウマ娘とぶつかる事もしばしばあったが、彼女は一人一人に謝りながら進んで行った。トレーナーはそんな彼女の素直な所、真っ直ぐで愛嬌のある姿を見て、嫌われる要素が見つからなかった。寧ろ魅力的に映った。より一層救いたいと思った。トレーナーはスぺが来るまで待つことにした。
私は、急いでフジ先輩に許可をもらいに栗東寮に向かった。トレーナーさんの気持ちを無駄にしない為。
スぺ「フジ先輩!!」
フジ「おおっ!?どうしたんだい?慌てて……」
スぺ「トレーナーさんの所に泊ってもいいですか!!」
フジ「佐竹トレーナーさんの事?う~ん……いくらトレーナーさんでも一緒は……」
スぺ「お願いします!トレーナーさんは……私が落ち込んでる時に、傷つかない言葉を選んで優しく接してくれて泣き止むまでお菓子を食べさせてくれました。まだ、担当でもない私を……。だから、ちゃんと問題に向き合ってトレーナーさんに応えたいんです!」
フジ「はあ……いいよ。お菓子の下りは兎も角、ここまで感涙するスピーチを聞いたら寮長として許可を出さなきゃいけないね。彼も変な事はしないと思うけど……もし、不安な事、嫌な気持ちになったらトレーナーさんの所に泊ってもいいよ。理事長にも伝えておくよ、ウマ娘の事を第一に考えてくれるからダメとは言わないと思うし」
スぺ「あっ!ありがとうございます!!早速伝えてきます」
また急ぎ足で去って行くスぺを見ながらフジは呟いた。
フジ「意外と大丈夫そうに見えるね。スぺもトレーナーさんの担当みたいにならなければいいけど……」
スぺはフジに許可をもらいトレーナー室に向かった。一方トレーナーは……。
トレーナーは、少し前にルドルフから貰ったコーヒーミルで豆を挽いていた。手動式で豆の挽く音と香りを楽しみながらスぺを待つことにした。自動式でもいいのだが、手動の方が楽しい。これは完全に好みであるが、豆を挽くのが楽しすぎてコーヒー豆が直ぐ無くなる。ゴリゴリ挽きながら待っていると廊下から足音が聞こえてきた、そしてスぺがドアを壊す勢いで入ってきた。
スぺ「トレーナーさん!!お泊りオッケーだそうです。あと、困った事があったらトレーナーさんの所にいつでも泊ってもいいそうです!」
佐竹「ダメだと思ったのに……トレーナー室って泊まる用の所じゃないんだけど……まあ、俺はトレーナー寮に寝ようがこっちで寝ようが変わらないけど……困ったらいつでも言って」
スぺ「ありがとうございます!うん?いい匂いですね。コーヒーですか?」スンスン
佐竹「ああ、俺コーヒー好きなんだよ。この間コーヒーミル壊しちゃってルナさんに買ってもらったんだ。ごめんね、コーヒー臭い部屋で」
スぺ「い、いえ……寧ろいい香りだと思いますよ。あのトレーナーさん、ルナさんって誰ですか?」
佐竹「愛称じゃ分からないか。シンボリルドルフ、トレセン学園の会長。転入した時に一回会ったろ?」
スぺ「はい、一度会いました。ルナさんって言うんですね」
スぺ(どういう関係なんだろう?)
佐竹(確かに……どういう関係なんだ?)
佐竹「そう言えば……何だかんだ、あの人俺が壊したり足りない物を教えてないのにくれたりするんだよ。すごくない?」
スぺ「へえ~、聡明な方ってそんな事出来るんですね!すごいです」
スぺと夜になるまで話、意外と落ち着いている雰囲気だった。そこまで気にする必要もないと思ったが少し聞いてみた。
佐竹「スぺと話してて大丈夫な感じするけど……」
スぺ「トレーナーさんみたいな方々はいいんです……だから、トレーナーさんは話している時それが感じにくいと思うんです。私、田舎に住んでいたので他のウマ娘と会ったこともないので、話そうとすると緊張して上手く話せなかったりずっと、質問ばかりする事が多いんです……」
佐竹「人間とウマ娘だと触れ合った回数が違うもんな……どうすればいいかな。あっ、そう言えばスぺの学年で俺の授業あるよな?」
スぺ「課外授業の事ですか?トレーナーさんが担当なんですか?」
佐竹「そう。解決できるか分からんけど、悪い結果にはならないと……思う」
スぺ「そうですね。……そうなればいいですね」
佐竹「暗い顔しないの。スぺは笑顔が一番」
スぺ「は、はい///ありがとうございます」
何とか解決の糸口は掴めた所にゴルシがトレーナー室に訪れた。
ゴルシ「よっ!トレーナー。消しゴム遊びしようぜ!……ってスぺじゃん、オッスー。こんな所で何やってんだ?迷子か?」
スぺ「ゴールドシップさん……こんばんは」
佐竹「二人知り合いなの?」
ゴルシ「スぺが食堂行けなくて迷子なってる時と職員室の場所が分からん時に案内してやったんだよ」
佐竹「お前……意外と優しいな……」
ゴルシ「意外とは余計だ!困ってたんだから当たり前だろ」
スペ「この間は、ありがとうございました!ゴールドシップさん」
ゴルシ「おう!今度はゴルシちゃんにもなんか奢ってくれよな♪ところでスペ、寮に戻らなくていいのか?もう夜だぞ」
スペ「今夜トレーナー室で寝る事になったんです!トレーナーさんと!」
ゴルシ「……おい、トレーナー。どういう事だ……説明しろ」
佐竹「いや……色々訳があるんだよ」
ゴルシ「見損なったぞトレーナーッ!!オレという者がありながらスペがいいのか?アタシの方がプロポーションは完璧だろっ!ホント……ミソコナッツだわ……」
佐竹「何先走ってんだ?!違うし、あと意味わからんっ!スぺも、もう少し詳しく言ってやってくれ……」
スぺ「は、はい!落ち込んでる私に気を遣って不安に思ったトレーナさんが、トレーナー室に泊めてくれることになったんです」
ゴルシ「あんまり変わんねえじゃねえかっ!!蹴り倒す……」
紆余曲折はあったが何とかゴルシに説明する事が出来た。スぺの事情を聞いたゴルシは怒りを隠せなかった。
ゴルシ「何だそいつら……アタシが宇宙に飛ばしてやろうか?」
佐竹「ダメだからな?宇宙に飛ばすの……ゴルシは変な奴だけどいい奴だから……いい奴なんだけど」
ゴルシ「何だよ……いい奴でいいだろ?」
スぺ「あははっ、はあ……ありがとうございます、二人のお陰で少し元気になれました」
佐竹「これで元気になったんならよかった」
ゴルシ「アタシは納得してねぇけどスペがいいならいいや〜」
その後ゴルシはトレーナー室を退室していき、スペとトレーナーはお風呂に入りトレーナーはソファー、スペは布団で寝る事になった。お互い寝るタイミングでスぺが……。
スぺ「トレーナーさん……私、トレーナーさんのお陰で上手く行きそうな気がします。それに……ゴールドシップさんを見たら強く生きなきゃなぁって思ったんです」
佐竹「あいつの生き方は参考にしない方がいいけど、ヒントが掴めたならよかったよ。課外授業に備えて今日はもう寝よ」
スぺ「はい!おやすみなさい、トレーナーさん」
スぺ(ありがとございます……)
佐竹「おやすみ」
二人は眠りに就き、不安な課外授業に向けて考えるトレーナー。スぺが一日でも早く『元気な笑顔を届けられるように』。また別の話で、この状況に気付いていないトレーナーはとあるウマ娘にとんでもない目に合う事になる……。
マンカフェとコーヒーミル挽いて一緒にコーヒー飲みたい。