馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

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トレーナー争奪ステークスになってるなぁ……。


35話 スぺの薬の副作用 スぺの素直な気持ち

あれから数週間経ち、スぺの問題も解決して喜ばしい事なのだがスぺだけは何か焦っていた。

 

スぺ「悩みを解決できたのは良いんですけど……」

 

問題解決をして喜ぶところなのだが、それによりトレーナーと接する機会が減っている事に何故か焦りを感じていた。それに加えてこの間のルドルフの件もあってスぺはよくわからない衝動に駆られていた。

 

スぺ「私……こんなにわがままだったかなぁ。トレーナーさんには助けて頂いて感謝しきれない。でも、それしか切っ掛けがなくて、もう振り向いてもらえない……振り向いてもらいたい。トレーナーさんとの切っ掛けを作るにはどうすれば……」

 

今のスペは正常な思考ができていない状態でいる為、トレーナーが何かあれば力になると言う言葉を完全に排除している。切っ掛けがなければ会ってはいけない、という固定観念が邪魔をしてしまっている。『薬の効力もある』今のスペには、どんな言葉を投げかけても届かない。その切っ掛けをスペは思い付くのだが、最悪の結果に結び付いてしまう……。少し時は流れて、スペはまたある光景を目にする事になってしまった。スぺは改めてトレーナーにコーヒー豆をプレゼントする為、朝早くに渡そうと思い立った。だが……。

 

 

 

 

 

 

スぺ「トレーナー……さん……」

 

トレーナーが出てきたタイミングに合わせ声を掛けたのだがその後ろからタイシンが現れ、又もや手渡すタイミングを逃してしまった。

 

タイシン「はい、これ。お弁当……今日、お肉多めに入れといたからこれ食べて頑張って……」

 

佐竹「今日もありがとう。それと……スぺ、どうしたんだ?」

 

スぺ「い、いえ……やっぱり何でもないです。ごめんなさい、トレーナーさん」

 

走り去っていくスぺに何も声を掛けれず、呆然と立ち尽くす二人。

 

タイシン「あの娘、何しに来たの?」

 

佐竹「いや、わかんない」

 

唯々二人はスぺの行動がよくわからず、その場を後にしたトレーナーとタイシン。スぺは二人の関係性を目撃し、また勝手な思い込みが発生してしまった。

 

 

 

 

 

 

スぺ「はあ……はあ……私がプレゼントしなくてもトレーナーさんは……沢山慕われてる。だから、このプレゼントもいらない。私が手助けしなくても、他の娘が何とかしてくれる……でも、私はもっとトレーナーさんと仲良くお話しがしたい……もっと近くで寄り添いたい……もっと特別な何かを……ああ、そうか。『こうすればいいんだ』……」ハイライトオフ

 

最悪な結末を思いついてしまったスぺ。薬の効果ではあるが彼女の潜在意識、つまり彼女のトラウマにも似たような感情が引き出されてしまった。彼女の闇の部分が開花してしまった事により、トレーナーはまた巻き込まれていく。そして次の日トレーナーは休日、行きつけの喫茶店でコーヒーを飲んでくつろいでいた。いつもの席に腰を掛け、流れる人の風景を窓越しに眺めながら一杯のコーヒーを飲み干した。店を出て暫く公園を散歩していた時、何故かそこにずぶ濡れのスぺが棒立ちで空を見つめていた。奇妙に思ったが、先ずは声を掛けようとした。

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「スぺッ!?どうしたんだ、そんなに濡れて……」

 

スぺ「あはっ♪トレーナーさん。いえ、誰かに突き飛ばされたみたいで……」ハイライトオフ

 

スぺ(やっぱり、逢いに来てくれました♪)ハイライトオフ

 

佐竹(やっぱり?どういう意味だ?)

 

佐竹「取り敢えず、学園に戻ろう。誰に押されたんだ?何か特徴とか……」

 

スぺ「う~ん……同じ制服を着ていたので学園の方だと思います」

 

佐竹「そうか……またこうなるだろうと思ったが、大丈夫だ。俺がスぺを守ってやるからな!」

 

スぺ「はい!ありがとうございます、トレーナーさん!」ハイライトオフ

 

佐竹(ん?それにしては前回より随分明るいな。寧ろこの状況に喜んでいるような……)

 

そして二人は学園に戻り、トレーナーはスぺの犯人像を基に探し出すのだが誰も一致しなかった。部分的に一致していたとしてもその娘は授業に出ていて先生の証言も取れてアリバイもちゃんとあった。だが、スぺのイジメはエスカレートしていくばかりで今度は階段から押されたと言われた。軽い打撲で済んだらしいが打ちどころが悪ければ最悪どうなるか分からない。心配するトレーナーと反比例するようかのようにスぺはトレーナーと逢う度に笑顔を浮かべていた。これは怪しいと思ったトレーナーは、スぺに聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

佐竹「なぁ、スぺ。本当に突き飛ばされたのか?」

 

スぺ「……」

 

スぺは何も答えなかった。長い沈黙の後、凄まじい勢いでトレーナーの頭の中にスぺの言葉が流れ始めた。

 

スぺ(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)ハイライトオフ

 

その言葉の羅列を聞いてトレーナーは一歩後退った、それに合わせるようにスぺはトレーナーに強く抱き着いた。近くで見ると分かるのだが、スぺの瞳は黒に近い深い紫色で濁っていた。

 

佐竹「ス、スぺ!?落ち着けって、痛ッ……」

 

スぺ「嫌です!!私はトレーナーさんと離れたくないです!何処にも行ってほしくないんです!今止めなかったらトレーナーさん……私の事見てくれなくなっちゃいます!!『あの時』みたいにッ!!」ハイライトオフ

 

佐竹「何処にも行かないよ!?痛いから一旦離してっ」

 

スぺ「それは絶対……『約束』できるんですか!?出来るんだったらハッキリ言っ……てくだ、さい……」

 

ドンドンスぺの言葉に力が無くなっていくと後ろにタキオンが立っていた。

 

タキオン「おかしいねぇ、数日で薬の効果は消えると思っていたんだが……過信しすぎたようだね」

 

佐竹「タキオン!スぺは大丈夫なのか?!」

 

タキオン「安心したまえよ、トレーナー君。少しクロロホルムで眠ってもらってるだけさ、それより君の方が心配だよ、肋骨は潰れてないかい?」

 

佐竹「俺は大丈夫。それよりスぺ、どうなっちゃったんだ……」

 

タキオン「分からない。唯、彼女にある潜在意識のトラウマ。或いは、彼女自身も知りえない過去のトラウマや不安、恐怖、薬の副反応によって呼び起こされたものだと思うがね。見るからに君に構ってほしかったような感じもしたが……。詳しい事は本人に聞いてみないと分からない、取り敢えず保健室へ運ぼう」

 

二人でスぺを保健室へ運び、静かにベッドに寝かせた。先程の言動が嘘のようにスぺは寝息を立てていた。落ち着いたところでタキオンに薬の事を聞いた。

 

 

 

 

 

 

佐竹「タキオン、薬の効き目っていつまでだ?」

 

タキオン「効き目はもう切れてるよ、あれだけ感情を爆発させればその分効果も薄まる。念の為、中和剤は打っておいた……心配いらないよ。それにしてもトレーナー君もクックックッ……よく悪い方を引き当てるね~」

 

佐竹「偶々だろ!?だって、効果はランダムってタキオンが言ったんだろ……。それを偶々当てただけだし……」

 

タキオン「ハッハッハッハッ、逆に運がいいね~それを知っていれば不幸な事も回避できるんじゃないかい?クックック……」

 

佐竹「もとはと言えばお前のせいだろ!?」

 

タキオン「まぁまぁ、そんなに怒らないでくれ。それでは私は戻るとするよ、研究が途中なんでね。ではね、トレーナー君」

 

佐竹「……。はあ……まぁ、でも誰も大事にならなくてよかった」

 

一人でそう呟き、スぺが目覚めるまで待とうとした時また保健室のドアが開かれタキオンが忘れ物を取りに来たと思い、その人物に声を掛けた。

 

佐竹「どうしたタキオン、忘れ物か?」

 

?「包帯、包帯……。うん?私、タキオンじゃないよ?」

 

佐竹「あっすいません、間違えました。あの……どちら様でしょうか?」

 

?「いや~名乗る程じゃないんだけど……あ、どうしたのこの娘?」

 

佐竹「あの……他の娘の薬にやられちゃって寝込んでるところです。もう少しで起きると思うんですけど……」

 

?「へー、変わった娘もいるもんだね!どれどれ~」

 

その人はスぺを暫く眺めた後、頭を撫でて頷いていた。どこか母にも父にも似た慈しみの表情を浮かべながら。

 

?「よしよし……あっ、ごめん。今、怪我してる娘いるの忘れてたー!それじゃあ、またねー!」

 

急いで包帯を取りそそくさといなくなってしまった。どことなく誰かに似ていたのだが考えても仕方ないと思い、スぺの方に視線を移した。

 

佐竹「……。誰なんだろう、まぁいいか」

 

本を読みながら待ち、スぺは夕方に目を覚ました。

 

 

 

 

 

佐竹「おお!スぺ、大丈夫?」

 

スぺ「あれ?トレーナーさん?何で私……保健室に?」

 

佐竹「話せば長くなるんだが……」

 

トレーナーはスぺの身に何が起きたか説明した。

 

スぺ「そうなんですね……。私、随分トレーナさんに迷惑かけたんですね。すいません……」

 

佐竹「もとはと言えば、タキオンが悪いんだけどな。まぁ、治ってよかったよ」

 

スぺ「……あのトレーナーさん。私が、『何処にも行かないって約束できるんですか?』って説明してくれたじゃないですか」

 

佐竹「言ってたね」

 

スぺ「私その時、意識の無い状態だったので寝ているような感覚だったんです。それで、夢を見ていたんです。私の記憶にない思い出が……」

 

スぺの夢は、自分の事を可愛がっていた人と別れなくてはいけない夢だったらしい。確かにこの世界のスペシャルウィークは育ての親とは離れて暮らしているが、二度と逢えない訳では無く連絡は取り合える、元ウマの方であれば二度と逢う事は叶わない。恐らく、そのエピソードとリンクしてスぺの潜在意識の中で夢として現れたとしか説明できない。

 

スぺ「眠っている間もトレーナーさんが見えていたんです。それで夢の話と同じようにトレーナーさんも何処かに行ってしまうって……それで」

 

トレーナーはその後の言葉を言い終わる前に勝手に体が動き、抱き締めていた。スぺも抱き締められた事で何故か目頭が熱くなり泣いていた。

 

スぺ「うっ、うぅ……うわああぁぁぁぁぁぁ」

 

トレーナーは何も考えずスぺの背中を擦った、スぺの涙が枯れるまで。暫くしてスぺも泣き止み、トレーナーはスぺを栗東寮に送り別れた。トレーナーは明日スぺの様子を見てから大丈夫かどうか判断しようと思い、トレーナー寮に戻って行った。スぺはと言うと、心の整理がつかないままでトレーナーとこれからどう接していけばいいか考えている時、スぺの母から電話が鳴った。

 

 

 

 

 

スぺ母「もしもし、スぺ?」

 

スぺ「何?お母ちゃん」

 

スぺ母「……。アンタ、元気ないね。どうしたの?」

 

スぺ「何で分かるの?!」

 

スぺ母「分かるさぁ、何年一緒にいたと思ってるんだい?何があったか話してみな。」

 

今日起こった事を母親に話した。

 

スぺ母「そうかい……。それだけ迷惑かけたら、もうこれ以上一緒にはいない方がいいけど……でも今は、離れたくないんだろ?なんだかんだ言って」

 

スぺ「うん、最初の頃は思わなかったけど……薬の効果もあるか分かんないけど。今は一緒にいたい……」

 

スぺ母「なら、いいじゃないか。迷惑もかければいいし、一緒にいればいいし。別にそのトレーナーさんもそこまで嫌がってないんだろ?」

 

スぺ「多分だけど……でも!」

 

スぺ母「あぁもう!!煮え切らないね!離れたくないって思ってんだったらハッキリしな!ちゃんと決まったらウチに連れてきな。母ちゃん切るよ」ブチッ

 

スぺ「えっ!?お母ちゃん?!えー……。そう言えば栗東寮でトレーナーさんと別れた時もトレーナーさんと他のウマ娘さん、仲良く話してて嫌だったし……。あっ、これが答えかな……お母ちゃん、私頑張ってみる!!」

 

何となく答えが分かり決意するスぺ、そしてスぺの母は最初に電話した目的を忘れている事に気付いた。

 

スぺ母「はっ!?野菜送ったの電話で言うの忘れてた!!」

 

後日、スぺは決意表明の為にトレーナーの下へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

スぺ「トレーナーさんっ!!」

 

佐竹「おお……どうした?」

 

スぺ「私、頑張りますから!!絶対、他の娘に負けませんからっ!!」

 

佐竹「あ、ああ……頑張れよ?」

 

スぺ「あと、プレゼントのコーヒー豆です。それじゃ!!」

 

トレーナーは何の事かさっぱり分からずにいたが、様子を見に行く前に元気な姿が見れてホッとした。但しトレーナーは、スぺが今言った事はレースでは負けないという風に聞こえていただろう。そんな事は露知らず、スぺはトレーナーに対して猛アタックを仕掛けてくることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




担当の娘メインでやろうと思ったら、こんな事に……何でや?
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