馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

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最近アレルギーがある事に気付きました。


42話 練習の成果 フラッシュの苛立ち

トレーナー室で待って数時間が経った。今更気付いたがニッポーに部屋を教えるのを忘れていた事に気付き、行き違いになるのもダメだと判断し待っていると廊下に足音が響いてきた。ニッポーが荒々しくドアを開けた。

 

ニッポー「よう!トレーナー。何処か分かんなかったから虱潰しに探したぞ。てか、お前……寝取りトレーナーとか呼ばれてんのか?まぁ、オレは気にしないけどよ」

 

佐竹「……忘れてください。それより、トレーニングコースに向かいましょう、ウララも呼びますんで」

 

ニッポー「どんな奴か楽しみだなぁ」

 

練習場に向かい、ウララとニッポーが初対面した。ニッポーにウララを紹介するとウララに……。

 

ニッポー「ちっさっ!!」

 

ウララ「うん?何が小さいの?」

 

ニッポー「身長だよッ!飯食ってんのか?」

 

ウララ「うん!いつも大盛りだよー!わたしはハルウララ、よろしくね!」

 

ニッポー「おう!オレはニッポーテイオー。よろしくな!」

 

ウララ「ニッポーちゃんって呼びにくいから……ポーちゃん!」

 

ニッポー「その呼び方やめろッ!弱く聞こえるだろうが!」

 

何だかんだあり、並走する事になったのだがニッポーは芝しか走った事がない。それでも相手の土俵で勝負する事に決めたニッポーはダートで走る事にした。取り敢えずニッポーは並走して実力を見てどうしてウララの調子が上がらないか理由を聞きながらダートコースへ移動した。距離は今のウララでも十分通用する、1600メートルのお互い得意とする長さに設定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニッポー「全力で来いよッ!」

 

ウララ「負けないよー!」」

 

佐竹「じゃあ、始めるぞ。よーい……ドンッ!!」

 

ニッポー「フッ!!」

 

ウララ「うわっ!?」

 

横にいるはずのウララに砂がかかる程の脚力。芝適性が高いニッポーで力のいるダートを走れば互角の勝負に持ち込めると思ったが、不良や重でも好走できるパワーのあるウマ娘。スタートから飛ばしていくニッポーをウララが追走するような形。

 

ニッポー「追いついてこれるか?まだまだ飛ばすぜッ!」

 

ウララ「むぅ~……うららららららー!!!」

 

ニッポー(根性だけは一級品だな。終わりまで保てればの話だが)

 

そして直線に向いた二人。ウララはニッポーに付いて行くのがやっと、という流れで進んで行き三バ身差でニッポーの勝利。調子が良ければ恐らく、同着か半バ身だと思ったがウララの脚は予想以上に深刻だった。トレーナーはニッポーに助力を願ったが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニッポー「う~ん……ダメだ」

 

佐竹「次のレースまで時間が無いんですッ!お願いします」

 

ニッポー「ダメってそういう意味じゃない。ウララは説明しても分からないだろ?だから、オレの背中を見せて覚えさせる。オレも口で説明されても分からないからなッ!」

 

佐竹「そうですか……でも、背中で見せるってどういう事ですか?」

 

ニッポー「まぁ、見てなって。お~いウララ、何回か一緒に走るから後ろについてこい!」

 

ウララ「うん!わかったー」

 

ニッポーとウララはランニングをするペースで、何周も走りトレーニングコースの使用時間まで続けた。終わり際にニッポーからウララについて告げられた。

 

ニッポー「スタートダッシュが良くない。真横の相手に集中しすぎて自分の走りが全然できてない。今はこれ位だな」

 

佐竹「ありがとうございます、ここまでして頂いて」

 

ニッポー「おう!唯、パワーと根性は申し分ない。何なら今日だけじゃなくて調子が戻るまで見てやるよ。春まで暇だし」

 

ニッポー(乗り掛かった舟だし、放っておけないからな)

 

佐竹「はい!俺も全力でサポートするのでお願いします!」

 

佐竹(やっぱり本来、お父さんだし思う所があるんだろうなぁ)

 

ニッポー「おぉ……暑苦しいねぇ、まぁ嫌いじゃないけど。後、改善できるかはウララ次第だな」

 

佐竹「そうですね…………ウララ、どうだった?ニッポーさんと走ってみて」

 

ウララ「速かったー!悔しいー!」

 

ニッポー「ははっ!その気持ちは大事だぞ。勝負事に関しては貪欲な方が勝つ為の近道、ウララ頑張れよ!」

 

ウララ「はーい!ウララ頑張るよ!」

 

一足先にニッポーはトレーニングコースから離れて食堂に向かって行った。トレーナーとウララは食堂に話しながらゆっくり向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「優しいね、ポーちゃん!ウララの悪いところ全部教えてくれたもん!次のトレーニングも楽しみー!」

 

佐竹「ちょっと怖いイメージあったけど、優しい人でよかったな。これで何とかなればいいんだけど……」

 

ウララ「大丈夫だよ、みんなに教えてもらったら一着絶対取れるよ!」

 

佐竹「そうだな、ご飯食べて明日も頑張ろ」

 

ウララ「人参アイス食べたーい!」

 

佐竹「アイスはご飯の後!」

 

ウララ「えぇーー!?」

 

二人で会話を楽しみ、食堂ではいつもよりたくさん食べ今後のトレーニングに備えた。数日過ぎていき、ウララはニッポーにトレーニングの日々を送っていた。ウララはニッポーの走り方を観察しているのだが中々コツを掴めずにいた。気持ちは前のめりであってもいい結果には結びついてこない、ニッポーにもまだ何か思惑があるのかと思うが……もう、ウララには時間が無かった。誰が見てもあせるウララの姿を目の当たりにするとヒントの一つでも教えてもいいのでは?とニッポーに進言するが『自分で掴む事に意味がある』と、返された。その日のトレーニングでももどかしい気持を抑えながら二人の姿を眺めていた所に、シービーがトレーナーの下に近づいてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シービー「どう?ウララの調子は?」

 

佐竹「このままだと、最悪のままレースに出る事になるかもしれないですね……ウララがニッポーさんから何か掴めればいいんですけど」

 

シービー「えっ、ポーちゃん帰って来てたんだ。ウララと一緒に練習してる娘誰かなぁって思ってたんだよねぇ。ポーちゃんなら安心かな」

 

佐竹「何でですか?」

 

シービー「ポーちゃん、結構体で覚えろッ!みたいな教え方するけど色々考えてやってるから大丈夫だと思うよ」

 

佐竹「そうですか……じゃあ見守るしかないのかぁ」

 

東海ステークスまで残り僅かの中、ウララはニッポーと特訓を続けていた。二人は並走をひたすら続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「えっほ、えっほ……ポーちゃん今日もずっと走るの?」

 

ニッポー「何でも積み重ねだぞ?いいから走れ~」

 

ウララ「はぁ~い……」

 

外周が終了し、再びニッポーの走法を観察するウララ。ひたすら足元を見続け、ウララはニッポーのスタートに気付いた。最初の踏み出しがジグザグに走行している事にヒントを見い出した。

 

ウララ「わかったー!」

 

ニッポー「おっ!やっとわかったか?」

 

ウララ「こうするんでしょ?」ザッザッ

 

ニッポー「そうそう、砂を横に蹴る感じで走るんだ。これでスタート時に滑らずに力が伝わりやすくする。唯これは少しやるだけで、脚への負担がデカい。その代わり蹴る際の脚力は遥かに強くなるッ!直ぐには強くなる訳じゃない、だがウララの元々のポテンシャルと加われば鬼に金棒だ!」

 

ウララ「鬼になれるの!?強そう!よーし、やるぞー!」

 

ニッポー「あははっ」

 

ウララがコツを掴んだ時のニッポーの目が少し下に垂れ、優しい表情に変わった。ウララ以上にニッポーが嬉しそうに見えた。トレーナーはニッポーのジグザグ走法を見せて気付かせる所まで分かったのだが、何故軽い並走を何回もさせたのか分からず本人に聞いてみた。

 

ニッポー「当たり前にやってる事って忘れるもんなんだよ。だから体に思い出させたり染み込ませたりしてたんだよ。焦れば焦るほど自分の走り方って忘れるもんなんだよ……オレもあったし」

 

佐竹「そうなのか……でも、ありがとうございます。これで東海ステークスに間に合いそうです」

 

ニッポー「いや、練習で改善出来たとしてもレースでそれが発揮出来ればの話だ。まだウララは重賞を勝ててないんだろ?」

 

佐竹「はい……オープン戦は何回か勝ててるんですが中々……」

 

ニッポー「ここまでの能力で勝てないのは自分に降りかかる『プレッシャー』だろうね……期待ってぇのは、それだけ重くのしかかるんだよ。それに何であの娘が走り方を忘れたか分かる?」

 

佐竹「えっ?」

 

ニッポー「アンタの期待に応えたいからだよ……だから『走る楽しさ』を忘れかけてるんだよ」

 

佐竹「ッ!?」

 

ニッポー「後はトレーナーの仕事だよ、頑張んな」

 

いつも笑顔を振り撒くウララに今まで気付けなかった自分が不甲斐ない気持ちでいっぱいだった。確かに今までの練習でも笑顔の数が減っていた。そしてトレーナーは練習をしているウララの下に向かった。汗をかくウララにタオルとドリンクを渡してウララのレースへの気持ちを聞いた。

 

ウララ「ウララ……走ればいいと思ってたの、楽しく一着が取れれば。でも、少しずつ勝ってくとね……みんなの笑った顔が嬉しくて、勝たなくちゃって、負けたくないって。それで今度負けた時はね……みんなの悲しそうな顔見ちゃうと、次こそ頑張らなきゃってなるの……だからトレーナーのトレーニングが終わった後、自分で練習してたの。ごめんなさい」

 

佐竹「そうなのか……でもウララ、自分の気持ちを押し殺してまで一着に拘らなくてもいいんじゃないか?確かに負けて悲しませたりする事はあるけど、みんなウララの笑顔が見たいから応援するんだと思うぞ?だから、そんなに深く考えなくてもいいんじゃないか?」

 

ニッポー「トレーナーの言う通り、考えすぎない事だね。負けたら負けたで次に繋げればいいし、応援してるファンはウララの走ってる姿が見たいんだよ。楽しんで走ったもん勝ちだよ、レースは」

 

ウララ「じゃあ!あまり考えないようにする!わたしの走ってる所を見せればいいんだよね?トレーニングも頑張るぞー!!」

 

ニッポー「よかったなトレーナー、いつもの笑顔に戻って。これでレースじゃ負けなしだね」

 

佐竹「負けなしかどうかは分からないですけど、やっぱり笑顔が一番似合いますねウララは」

 

ニッポー「フッ……だな」

 

そして東海ステークスまでの間、トレーニングは順調に進んで行き当日を迎えた。中京競バ場にはいつものようにウララのファンがたくさん訪れていた。パドックでは元気な姿で手を振りいよいよレースが始まろうとしている最中トレーナーとウララは控え室で気持ちを切り替えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「ウララ、いよいよだな」

 

ウララ「うん!待っててねトレーナー。直ぐに一着取ってきちゃうから!」

 

佐竹「あぁ、みんなで応援して待ってるからな」

 

二人は別れ、トレーナーは観客席に行きウララは出走の準備をする為にレース場へ向かった。トレーナーがスタンドに立っているとニッポーに声を掛けられた。個人的に中京に来たとの事、恐らくウララが心配だったのだろうと思った。少しトレーナーは気になった事を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「あの……ニッポーさん。少し気になった事聞いていいですか?」

 

ニッポー「あぁ、いいよ。何だ?」

 

佐竹「何でここまでしてくれたんですか?仮にも同じ競争相手なのに……」

 

ニッポー「何だそんな事か、単純にフェアじゃないだろ?それに分かんないけど……放っておけないんだろうね。ウララを見てると」

 

佐竹「放っておけないのは分かりますね、あの純粋な笑顔を見てると何かしてあげたくなります」

 

ニッポー「それにありがとうね、ウララの担当になってくれて」

 

佐竹「えっ?何でニッポーさんがお礼を……」

 

ニッポー「いやぁ、これはたづなさんから聞いた話何だけどね。あの娘、いくら模擬レースで走ってもビリだったからさ。トレーナーが中々付かなったんだってさ、だからたづなさんも複数人担当してるトレーナーの所に入れてあげようとしたらしいんだけどウララがそれを拒んだらしいんだ。一着取れるまで要らないって。自分の担当が決まらない中、他の娘はドンドン担当が決まっていく姿を見るのは辛かったと思うよ?本人は顔に出したりしないけど。今回の一件だって顔色一つ変えないからね……気付かないのも当然だ。でも、アンタがウララを救ってくれたんだ。まだ勝った事がない奴を担当にするなんて普通はしないからね。だから……ありがとう」

 

佐竹「でも、俺そんなつもりで……」

 

ニッポー「分かってる、トレーナーは唯ウララの能力に光るものを感じたんだろ?結果はどうであれアンタのトレーナーになったんだ。幸せだと思うよ、ウララは。今だってアンタの言葉を信じて疑わないからね。まぁ、誰の言葉を聞いても疑わないのはどうかと思うけどね……」

 

佐竹「知らない人でも付いて行こうとしますからね……」

 

二人が話している最中、ファンファーレが鳴り響いた。そして次々とゲートに収まっていき、ウララは真剣ではあるが笑顔は崩さなかった。今日のバ場状態は良であるがダートは滑りやすい、ジグザグ走行を教わったとはいえレース場でどういう働きをするか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ(頑張って走るだけ!それで勝てたらトレーナーに褒めてもらうんだ!)

 

そして合図が出され、ゲートが開くのだが考え事をしていたウララは大きく出遅れ場内がどよめいた。いつもは中団の位置なのだが最後方で流れる形になってしまった。それでもウララは落ち着いて他のウマ娘を追走するように動いた。

 

ウララ(出遅れちゃったけど大丈夫!トレーナーとポーちゃんに教えてもらった事、全部出せばッ!)ドンッ

 

モブ娘「えっ!?何?!」

 

ウララが力を込めて踏み込んだ時、砲弾のような低い音が響いた。今まで鍛え上げた脚力と不安を取り払ったウララは強かった。800メートルを通過し、残りの1000メートルでスパートをかけた。一人だけ速さが違った……もうウララ止める事は出来なかった。そして残り200メートルで先頭と並びかけていった。二人が並んだ時、商店街の人達も必死に応援した。

 

おじさん「ウララちゃーんッ!頑張れー!

おばさん「もうちょっとだよッー!」

 

ウララ「負けないぞーー!!」

 

あっと言う間に先頭をかわし二着と三バ身差で圧勝、これでウララも初の重賞となった。ウララは息を切らしながらスタンド前に大きく手を振り、トレーナーとニッポーの下に駆け寄った。

 

ウララ「トレーナー!ポーちゃん!わたし、勝ったよ!やったやったやったー!!」

 

佐竹「うぅ、ぐすっ……おめでどう、ウララ」

 

ニッポー「アンタ、担当が勝つ度に泣いてんのか?はぁ……頑張ったね、ウララ」

 

ウララ「うん!あははっ、トレーナー鼻水きたなーい」

 

そして控え室に戻り、ウイニングライブの準備をして臨んだライブはGⅠ並みの歓声が響き渡った。ライブは大成功を収め、その後は学園に戻り盛大に食堂で祝った。パーティーも終わったところでみんな解散して、トレーナーも寮に戻る途中廊下でフラッシュを見かけた。何やら小さな声で呟いていたので声を掛ける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラッシュ「今度こそレースで勝たなくては。それまでの時間で行えるトレーニングを……」ブツブツ

 

佐竹「どうしたんだ、フラッシュ?暗い顔して」

 

フラッシュ「キャッ!?だ、誰ですか!?……あっ、トレーナーさん……。申し訳ございません、大きい声を出してしまって」

 

佐竹「俺こそゴメン、そんなに驚くと思わなくて。それよりどうしたんだ?考え事してたように見えたけど」

 

フラッシュ「あっ、そうか!トレーナーさんに頼めば…………いえ、ダメです」

 

フラッシュ(この間の件もありますし、そこまでして頂く訳には……)

 

佐竹「フラッシュ、俺でよければ力になるけど」

 

フラッシュ「い、いえ大丈夫です!トレーナーさん今夜は冷えるらしいので暖かくして早めに寝た方いいそうですよ。それでは!」スタスタ

 

佐竹「あっ、フラッシュ…………どうしたんだ?いつもよりピリピリしてるな、フラッシュ。料理食べさせた時と随分変わったな」

 

エイシンフラッシュは日本の厩舎に入厩した際、とても神経質で背景や匂い、少しの物音でも過敏に反応し苛立つ事が多々あったそうだ。トレーナーはそんなフラッシュが気になり、暫く彼女に何があったか見守る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ウララみたいな娘いないかなぁ、その前に捕まるか……。
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