馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

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変更点があります、キンイロリョテイと書いていたんですが
ステイゴールドに直す事にしました。ステイゴールドだけ名前を
変えるのはおかしいと思ったので、すいません。


47話 玉座の呪い 彼女の苦闘

トレーナー室に向かう途中の廊下でニホンピロウイナーと出会った。彼女に事の経緯を話し、ウイナーからいくつかアドバイスをもらい、先ずは彼女と会わないと話が進まないとの事なのでタイキに会わせる事にした。トレーナー室で待ち合わせる事にして、タイキを呼びウイナーを紹介した。タイキは終始驚き、興奮した状態で詰め寄りウイナーと抱き合い憧れの存在に会えた事に感動が隠せなかった。ウイナーも自己紹介を済ませ、早速本題に切り込んだ。

 

ウイナー「タイキ……走るの嫌がってるんじゃない?」

 

タイキ「そ、そんな事ないですヨ~……」

 

佐竹「タイキ、それ本当か?!本当だったら教えてくれッ!」

 

タイキ「…………。言えません」

 

佐竹「どうして……」

 

ウイナー「トレーナーさん、無理に聞き出すのは良くないよ?……タイキ、話したくなったら誰でもいいから話しな。ため込むのが一番良くないから、アタシ達以外でもいいから」

 

タイキ「ハイ……すいません」

 

ウイナー「それじゃあトレーナーさん。後はそっとしてあげて、アタシ達も行こう」

 

佐竹「はい……タイキ、ゆっくり休めよ?」

 

タイキ「ハイ、失礼します」

 

寮に戻るタイキの後ろ姿はどこか小さく見え、いつもの元気な姿はそこにはなかった。ウイナーは自身の憶測ではあるが、何故タイキが消極的な姿勢になっているのか話してくれた。

 

ウイナー「憶測だけど、タイキ……何かに怖がってるんじゃないかな?だから、走りに力が無いんだよ」

 

佐竹「どうすればいいと思います?」

 

ウイナー「う~ん……アタシも思いつかないけど、トレーナーさんならいい考えが浮かぶんじゃないかなぁ?勝手な思い込みだけど。後は頑張ってみて」

 

佐竹「そうですね……何とかしてみます」

 

トレーナーは今後のタイキを様子を見る事にし、トレーニングで理由を探っていく事にした。だが、トレーナーは自分のある事に異変を感じていた。

 

佐竹(そう言えば、『嫌でも聞こえる心の声』が全く聞こえない……何でだ?)

 

今まで心の声が聞こえていたが全く聞こえてこなかった、タイキの悲痛な叫びが。生まれ持った能力が消えた事に動揺が隠せなかったトレーナー。だが、弱音など吐いていられなかった、トレーナーはタイキの不安定な状態を一刻も早く何とかしたかった。この結果が更に事態を悪化させる事になる。そしてトレーナーはこの状況を打破しようと考える為、トレーナー室に籠る事が多くなっていき、タイキと逢う機会が減っていった。数日経ったある日、トレーナーが気分転換で学園内を歩いているとタイキが中庭のベンチで座っていた、空を見上げるように茫然と。そこでポツリとタイキが呟いた、『怖い』と。トレーナーはその言葉を聞いて透かさずその意味を聞いた。そして前まで口に出さなかったタイキが吐き出すように喋り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイキ「ワタシ、最初の内は楽しくて嬉しかったんです……レースで勝つ事が。スズカが強くなっていって、そんなスズカとレースがしてみたい、以前のワタシならそう思っていました、勝ち続けた事でワタシはマイル王なんて二つ名をもらって最初は喜びました。でも、勝ち星が増えていく毎に、負けていく他のウマ娘を見ると怖くなるんです……次も勝たなくちゃいけない、負ける事さえ許されない、そんな『プレッシャー』に押し潰されそうな時があるんです。マイル王と呼ばれ、この玉座に座り続けなければいけない……この呪いに」

 

この言葉を聞いてトレーナーは何とか励まそうと必死に考えた。だが、咄嗟に出た言葉が良くない方向に向いてしまった。

 

佐竹「でも、ルドルフだってそんな期待に応えて戦い続けてきたんだ。だから、タイキもきっと……」

 

タイキ「そんな無責任な事、言わないでくださいッ!!ワタシは……会長じゃありませんッ!!」

 

佐竹「ッ……ごめん」

 

失言し直ぐ様謝罪したが、箍が外れたようにタイキは激しく怒りを露わにした。

 

タイキ「誰かが出来たから、君も成し遂げられる、なんて……今のワタシには重荷にしかなりませんッ!会長さんとワタシは根本的に目指すものが違います……」スッ

 

そうタイキは言い残し、その場を去って行った。

 

佐竹「…………俺って自分の能力に助けられてただけなんだな……何で当たり前な事も見失うんだろう、ちゃんと考えれば分かるはずなのに……」

 

自分の能力に頼り過ぎていた事で、言葉の選択を誤ってしまったトレーナー。そして二人はその日以来、口を利く事は無く時は流れ、安田記念を迎えた。レース場の待合室でタイキが来ないか待っていると、タイキが来てくれた。タイキは突け放すような事は言っていたが、レースには出てくれるんだ、と思い声を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「久しぶりだな、タイキ。来てくれたんだな」

 

タイキ「…………」

 

しかし返事は返って来ず、部屋はまた静寂に包まれた。そして時間が迫り、レース場に向かうのだが移動中も何の会話もないまま、トレーナーは応援スタンド前で見守る事になった。結果から言えば、タイキのギリギリでの勝利。いつもの力強さがない走りでも一着が獲れる、だがGⅠを獲った顔とは思えない程影が差していた。走り終えたタイキにおめでとう、と声を掛けたがその場を逃げるように何も言わず立ち去って行ってしまった。トレーナーは落ち込みはしたがそれでも自分の過ちは正そうと、タイキに寄り添い続け彼女の負担を少しでも減らし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「タイキ、今日はプールで練習するか?」

 

タイキ「…………」

 

昼食の時も栄養に偏りが無いようにメニューを選び、例え無視され続けてもトレーナーは寄り添い続けた。

 

佐竹「タイキ、どうだ?このスープカレー。野菜がいっぱい溶け込んでて美味しそうだぞ~」

 

タイキ「…………何で」ボソ

 

タイキは突き放す言い方をしたはずなのに、まだ自分に寄り添ってくれるトレーナーにタイキは罪悪感を感じていた。もう走りたくないと言った手前引くに引けない感情に、もう一度走る事を決断するがまだ戸惑っていた。日が傾き、夕方に再度練習する事になったが先日の安田記念の事もあって、トレーニングは早めに切り上げる事にした。だが、タイキは俯いたままその場から動こうとはしなかった。トレーナーは心配になり声を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「どうした、タイキ。何処か痛いのか?」

 

タイキ「……唯ワタシが我儘な子供みたいじゃないですか……」ボソ

 

佐竹「うん?痛かったらおんぶするぞ?」

 

タイキ「あれだけ酷い事を言ったのに、どうしてトレーナーさんはここまでしてくれるんですか?!何でも一人で抱えて……解決しようとして。トレーナーさんの怪我の時だってそうですッ!ワタシ達の負担にならないように全部背負って……全部、全部全部ッ全部ッ!!。ワタシは何の為に居るんですか?教える立場と教えられるだけの存在ですか?トレーナーさんの指示を聞くだけのウマ娘ですか?……ワタシが……トレーナーさんより子供で頼りないからですか?!」

 

佐竹「お、落ち着け、タイキ。子供なんて思って…」

 

タイキ「ワタシ……もう、どうしたらいいかわかりませんッ!」

 

そう言い残し、タイキは涙を浮かべながらまた走り去ってしまった。追いかけようとした時、とある小柄なウマ娘に呼び止められた。

 

?「アンタ、タイキのトレーナーか?」

 

佐竹「君は?」

 

ステイ「アタシはステイゴールド。タイキと同級生だよ」

 

あの時ゴルシが話していた、愛さずにはいられない名バ、ステイゴールド。生涯成績50戦7勝、その彼女が仁王立ちしながらトレーナーを見据えていた。目の前に現れた事にトレーナーは驚きはしたが、今はタイキを追い掛けなければいけない状況だったので急ごうと動いた。

 

佐竹「今、タイキを追い掛けなければいけないので。すいません」

 

ステイ「ダメだ。訳を話せ、何でアイツが泣きながら走って行ったか。場合によっちゃあ蹴り殺す」

 

脅されたトレーナーは、事の経緯を話した。それを聞きながらステイゴールドは頷きながら自分に任せろと言わんばかりに、肩を叩きながら満面の笑みで応えた。

 

ステイ「そういう事ならアタシに任せろッ!調子に乗ったタイキの性根を引き千切ってやるからよ」

 

佐竹「あ、あはは……」

 

佐竹(叩き直してやれよ、引き千切ったら元に戻らねぇぞ?)

 

ステイゴールドは何か妙案があるらしく、タイキをもう一度この練習場に呼び戻してくれるそうだ。史実のステイゴールドもヤバい奴ではあるが、この世界でも同じだとトレーナーは悟った。ステイゴールドはタイキを探しに猛ダッシュし、トレーナーを一人取り残されてしまったが直ぐ様戻ってきた。タイキはステイに引きずられながら抵抗していたが、トレーナーが見え始めるとタイキは暴れるのをやめた。ステイはタイキを真っ直ぐに立たせ、急にステイが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステイ「タイキ、そのトレーナーに『勝つのが怖い』って言ったそうだな。今度はアタシの目を見て、もう一度言ってみな」

 

タイキ「ッ…………」

 

ステイ「アンタ、思い上がるのもいい加減にしろよッ!アタシがデビュー戦を勝つまで五回もかかってるんだよ?そこから二つ勝ち星を挙げたけど、阿寒湖特別を勝ってから今何連敗してると思ってる、九連敗だよ?そのせいで阿寒湖特別を引き合いに出されてずっと弄られてるけど……。その九連敗の中でアタシはまだ掲示板に入着出来てるから名前覚えてもらってるけど、タイキ……アンタが踏み台にしてきた娘達の名前、覚えてる?」

 

タイキ「うっ、それは……」

 

ステイ「名前も覚えてもらえない娘達に、先の言葉……言える?」

 

タイキ「…………」

 

ステイ「アタシ今度のレース、宝塚記念に出るから。絶対一着取ってアンタを見返してやる!スズカに目にもの見せて、ここからアタシの下克上だッ!後、レースを見に来るか来ないかは知らないけど、自分に向き合って進むのか、そのまま腐るのかはタイキ次第だよ。後はトレーナーと決めな、じゃあね」

 

タイキ「ステイ……」

 

佐竹(俺、立ち会う必要あったのかなぁ……言う事だけ言って帰っちゃったし)

 

タイキ「あの、トレーナーさん。ステイの宝塚記念、見に行ってもいいですか?」

 

佐竹「いいよ。思う存分見に行こう」

 

タイキはステイに促されるがまま、宝塚記念を見る事に決め、その時のタイキの心情はトレーナーには分からなかったが何かつけ動かされたように瞳の色は仄かに色を取り戻しつつあった。そして当日を迎え、トレーナーはタイキと共に阪神競バ場に訪れた。二人はステイが居る、控え室に向かった。トレーナーはステイに激励の言葉を送り、タイキは静かにそれを見守っていた。それを見たステイはタイキに向き直り……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステイ「ちゃんと来たね。タイキ、今日でアタシの連敗記録はここで終わりだよ。スタンド前で耳から煙が出るくらいビックリさせてやるからッ!」

 

タイキ「うん……ファイトです、ステイ」

 

佐竹(耳からってフレーズには触れないんだ……)

 

ステイ「よっしゃー!『アイツ』にいい報告が出来るようにやってやるぜッ!」

 

時間になりステイは、レース場に向かった。今回出走するメンバーは錚々たるメンバーで行われる。その中でステイゴールドは九番人気、前走では三着、二着が続いたがこのメンバーでは人気は落ちる。

 

人気

①  サイレンススズカ

②  メジロブライト

③  エアグルーブ

④  シルクジャスティス

⑤  サンライズフラッグ

⑥  メジロドーベル

⑦  ローゼンカバリー

⑧  ミッドナイトベット

⑨  ステイゴールド

 

ファンファーレが轟き、各ウマ娘がゲートに収まり体制が完了しスタートした。ステイゴールドはエアグルーブに追走するように、後ろで構える形。サイレンススズカはいいスタートを切り、自分のペースで動いていきレースを引っ張る形になった。スタンド前を通過し、大歓声に見守られながら最初のコーナーを回った。二つ目のコーナーを回り、向こう正面に差し掛かりステイゴールドは五番手のエアグルーブをマークし続け六番手、最終コーナーに入りステイゴールドが動き始めエアグルーブを追い抜き、直線を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実況「さぁ!最終コーナーを回って直線に向かいます。このままサイレンススズカの逃げ切りになるのか?!おっと!?間からステイゴールドが上がってくるッ!迫るステイゴールド、迫るステイゴールドッ!サイレンススズカはまだ余裕がある。大外からエアグルーブがやってきたッ!だが、二着争いだ!これは届かない。ステイゴールドも頑張ったが勝ったのはサイレンススズカだッ!春のグランプリウマ娘はサイレンススズカですッ!エアグルーブは三着です」

 

ステイ「クソ……クソォォォォォォッ!!」

 

そしてレースは終わりを迎え、ステイはひたすらに叫び続けターフに拳を叩きつけた。トレーナーとタイキは控え室に向かい再びステイの下に訪れた。静かな部屋でステイに声を掛けたのはタイキだった。

 

タイキ「惜しかったですね、ステイ。後もう少しでした」

 

ステイ「本当に少しだった。悔しかった、仕掛けるのをもっと早くしておけばよかったって思うけど、上手くいかないのが当たり前だし。タイキ、アタシのレース見てどう思った?」

 

タイキ「やっぱり負けるのは……辛いです。ステイはまだ、負けてる回数が多いからそんな楽観視出来るんです。ワタシはやっぱり……」

 

ステイ「ねぇ、タイキ。今の二度と言わないで、それは唯の冒涜だから。それに一度負けたぐらいでそれで終わりなの?夢はそこで終わりなの?……自分の夢も追いかけられない半端な奴に『その先の輝き』は掴めないよ。夢に食らいついて、当たって砕ける気概を見せろッ!アタシはまだまだ諦めない、アタシの『旅路』は始まったばかりだッ!覚悟を決めろ、タイキシャトルッ!このままプレッシャーに押し潰され腐ってターフを去るか、その先の勝利に手を伸ばすか。選べッ!」

 

タイキ「ワタシは…………まだ走りたい。ワタシが選んだ道でも信じて前に進むだけです、ステイのように諦めませン!」

 

ステイ「よし、よく言った!タイキの次走まで、アタシが付き合ってやるよ。行くぞッー!!」

 

タイキ「イェーイ!」

 

佐竹(次ってジャック・ル・マロワ賞だから数日したらフランスに行かなきゃいけないんだが……)

 

何とかタイキの気持ちが前に向いてくれただけでも良かった、と思うトレーナー。しかしは今度のレースはフランスのマイルG1の最高峰であるジャック・ル・マロワ賞、海外の猛者達が犇めき合う熾烈を極める戦いになる。調子が戻ったとはいえ、果たしてタイキは海外のウマ娘に対してどう立ち向かうのか。そして三人が知らない所でルドルフとウイナーが耳を澄ませ、会話を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフ「一時はどうなるかと思ったが、何とか持ち直してくれてよかったよ。これで意気軒昂、このまま勢力を伸ばしてくれるといいのだが。しかし、ウイナーの慧眼には恐れ入ったよ、いつから彼女の心を見抜いていたんだ?」

 

ウイナー「誰かさんと似たような境遇だったから、直ぐ分かっちゃったの♪」

 

ルドルフ「うん?それは誰の事だ?」

 

ウイナー「さぁ~♪」

 

二人もホッと胸を撫で下ろし、その場を後にした。そしてそこから数日が経過し、トレーナーとタイキはフランスに飛び立った。レースの本番を目安にトレーニングが行えるように一か月前に設定した。まだお互い不安を抱える中であっても二人は何故か勝てる自信があった、そしてここフランスでのトレーニングが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




ステゴのストーリー見てぇ……。
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