馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

49 / 61
最近好きな実況は、エフフォーリアの実況聞くこと。
昔であれば、馬場さんのオグリローマンの実況です。


48話 マイル王、世界への飛翔 離れない窮愁

トレーナーとタイキはフランスへ旅立ち、不慣れな飛行機を利用しフランスのとある寮を借りてトレーニングに励もうとした時、桐生院とミークが何故かその場に居た。

 

佐竹「桐生院とミーク……何してるの?」

 

桐生院「えっ?勉強も兼ねて、先輩のフランス遠征に便乗しただけです」

 

ミーク「……私はトレーナーに付いて来ただけ」

 

タイキ「ミークは海外レースに興味はあるんですカ?」

 

ミーク「……う~ん、あります。けど、まだ自信はありません」

 

桐生院「焦る事はありません、自国で成果を上げていけば必ずいい結果が得られます。頑張りましょう、ミーク」

 

ミーク「……はい!」

 

四人は話をしつつ、トレーニングコースへと向かった。フランスの夏は日本に比較的似てはいるが、日本のようにジメジメした湿気のある暑さではなかった。早速トレーニングを始め、タイキにはこのフランスの土地に慣れてもらう為にコースをランニングするように指示した。タイキが駆け出した直後、桐生院が質問してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生院「あの、先輩。もっと早く遠征して、こちらの環境に慣らしてもよかったのでは?」

 

佐竹「そうなんだけど、色々事情もあるんだが……普段と変わらずトレーニングをしたいと思ったんだ。海外レースだから特別変わったトレーニングをしようとか、普段以上に気を遣うとか、やったところでいい結果は生まれないと思うんだ。だから自分達が普段やっている事をいつも通りやるだけだと思う」

 

桐生院「成る程、何かをしようとしてもいい結果は生まれないって事ですね。参考になります……そのアイデア、パクってもいいですか?」

 

佐竹「パクるって表現は良くないけど、参考になるんだったらスズカやライス、ミークと相談したらいいさ」

 

桐生院「はい、ありがとうございます!」

 

二人で話していると何故かヘリコプターが上空を飛んで旋回しているのが見えた。そして高度を落として着陸し、降りてきたのは学園に居るはずの理事長だった。

 

理事長「奮励ッ!順調か、佐竹トレーナー?」

 

佐竹「理事長どうしたんですか?しかも、今は出張中じゃあ……それにここの厩務員さんに許可は……」

 

理事長「心配無用ッ!予め許可は取っている、ここに来た目的は君とタイキ君の海外遠征の支援を目的とした全面協力ッ!我がトレセン学園から様々な食材を取り寄せてきた。何か必要な物があればいつでも……」ドシ

 

佐竹「り、理事長、自分達普段と同じように調整していきたいので……大変有り難いのですが、今回は……」

 

理事長「う、うむ……そうか。では、何かあればいつでも言ってくれて構わない。それではわたしはこれで、さらばだッ!」

 

佐竹「えっ!?もう行くんです、か…………帰るの早いなぁ」

 

桐生院「理事長って嵐の権化ですよね……」

 

佐竹「間違いないな……そう言えば桐生院はどれくらい滞在するんだ?」

 

桐生院「レースが終わるまでです、スズカとライスには代理でトレーナーを依頼したので大丈夫です」

 

佐竹「一か月もいるのはちょっと、しんどくない?」

 

桐生院「いえ、先輩の指導を見れると思えば何も」

 

佐竹「そうですか……」

 

そしてトレーニングが始まり数日が経ったある日、桐生院からまたも質問をされたトレーナー。普段と変わらないとはいえ、のんびりし過ぎなのでは、寝ている時の方が多い、と指摘を受けたがトレーナーは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「海外へ行くと返って張り切り過ぎてオーバーワークに繋がる事が多々ある。調子を上げるのは難しい事ではないけどオーバーワークの場合、いい状態に戻すのは困難。だから、普段と変わらず今までやってきた事を貫き通せばいいんだよ」

 

桐生院「確かにそうですけど……」

 

佐竹「まぁ、不安になるのは分かるけどな。後はどういう結果になっても後悔しない選択をするだけだ」

 

タイキ「トレーナーさん、坂路の上にあるリンゴ、食べてもいいですカ?」

 

佐竹「自由に食べていいって言ってたから、食べてきていいよ」

 

タイキ「後でトレーナーさんにもあげますネ!」

 

桐生院「トレセン学園に居る時よりも自由じゃありません?」

 

佐竹「ここには他のウマ娘も少ないし、陽の光が当たらない部屋を用意してもらったり色々良くしてもらってるよ」

 

桐生院「海外ではイライラしてしまう娘もいますからね」

 

普段以上にリラックスするタイキとトレーナーは、ジャック・ル・マロワ賞を間近に控え順調にトレーニングを積んでいった。そして出走レース当日、二人はドーヴィル競バ場に向かいタイキは更なる栄冠を掴む為、走り出したい気持ちが溢れていた。レース場に到着し、前日に降った雨で重バ場の発表になった。だが、タイキの持ち前の力強い走りでは有利に働いてくれると思ったトレーナーはほくそ笑んだ。しかし、予想だにしない事が起こった、本来怪我で出走できなかった『インティカブ』が出る事になっていた。前走のクイーンアンステークスでは、二着に八バ身差をつけての勝利。その圧倒する走りで人気が高く、ジャック・ル・マロワ賞に出走する事となっていた。本来は、怪我で出走叶わずその後も思うように成績が振るわないまま引退してしまった。余談だがインティカブの子供であるスノーフェアリーはGⅠを六冠獲得している。特にエリザベス女王杯の直線での豪脚は他が止まって見える程であった、その父であるインティカブは間違いなくポテンシャルは高い。そして出走の時間が近づき、タイキはバ道を通ってレース場に向かうとインティカブと初めてそこで対峙する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インティ「よぉ、アンタがタイキかい?」

 

タイキ「アナタがインティカブさんですか?」

 

インティ「おぉよ。お前、何でも連勝続きらしいじゃないか?だが、残念だけどここで連勝はストップだよ、このレースではオレが勝たせてもらうよ」

 

タイキ「いいえ、今回もワタシが勝ちますッ!自分で選んだ道で、信じてくれる仲間やトレーナーさんの為にも、アナタには負けられませんッ!」

 

インティ「ふんっ、いい面だね。調子が悪くて本気でぶつかれないような、根性無し野郎だったらぶん殴ってやろうと思ったが、今日のレースは面白くなりそうだッ!」

 

その後二人はお互い無言で握手を交わし、再びレース場へと歩み出して行った。そしてここ、フランスのノルマンディーにあるドーヴィル競馬場でファンファーレが轟いた。次々ウマ娘がゲートに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実況「ノルマンディー海岸の女王と謳われる町、ここドーヴィル競バ場。茹だるような烈日に各国のウマ娘達が女王の戴冠を待ちわびています。マイル路線の最高峰、芝1600mジャック・ル・マロワ賞。一番人気は安田記念を制した、タイキシャトル。二番人気はインティカブ、前走では二着に八バ身差をつけての勝利。三番人気はアマングメン、今日も鋭い末脚を見せる事が出来るんでしょうか。各ウマ娘ゲートイン完了…………スタートしました」

 

実況「さぁ、一体何が行くんでしょうか。先ずは四番人気のケープクロスがレースを引っ張るように先頭に出た。そして一番人気のタイキシャトルは追走するように二番手に着きました、そしてその後方にインティカブが不気味に息を潜めるようにタイキシャトルを追っている。800mを通過し、まだケープクロスがリードしています。おっと!ここでインティカブがペースを上げたッ!二番手のタイキシャトルに並びかける。ケープクロスが徐々に後退して行く中、アマングメンも上がってきたッ!これは三人の接戦になったッ!残り200mで次に抜け出すのはッ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インティカブは思惑通りに事が運び、脚にはまだ力が残っていた。

 

インティ(コイツのデカい体のお陰でいい風除けが出来て助かったよ。ここから抜かせてもらうよッ!アンタが二度と立ち直れない程、惨めな負け方でねッ!!)

 

更に足を延ばすインティカブ。だが、それに合わせるようにタイキも抜け出し半バ身差のまま、距離は縮まらなかった。

 

インティ(何ッ!?コイツ、何でオレの脚について来れるんだ?!まだこれ以上速く走れるのかッ?!しかもコイツ…………笑ってる、このレースで)

 

タイキはレース中でも離れている友や家族、関わってきた人達の事を想い浮かべながら走っていた。それが熾烈なマイル戦だったとしても、今のタイキには何も苦ではなかった。

 

タイキ(軽い……こんなに重い芝でも飛んでいけるような。トレーナーさん、こんな……こんな我儘でどうしようもないワタシが居られたのは、アナタの(ことば)のお陰です)

 

インティ「このッ!……」

 

タイキ「ダッシュ、ダッシュ!、ダァァァァァァッシュゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実況「タイキが先頭ッ!タイキが先頭ッ!インティカブも並びかけるが縮まらないッ!三着のケープクロスも真ん中から上がってくるが二着とは四バ身、タイキの勝負根性が炸裂ッ!これがマイル王だッ、タイキシャトルゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

実況「決まりましたッ!煌めく太陽に照らされて今、不世出のベストマイラーが誕生しました。シーキングザパールに次いで、海外GⅠ二勝目になりました、タイキシャトルの粘り勝ちッ!ますます彼女のこれからが楽しみですッ!」

 

走り終えたタイキは、トレーナーの下へ駆け寄りハグをかましてきた。大変喜ばしい事なのだが、加減を少しでも覚えて欲しいと思った。そして再びバ道を通りウイニングライブに備えようとした時、インティに呼び止められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インティ「いいレースだったよ、あそこまで離されるとは思わなかったよ。次、ぶつかる事があったら勝ちを譲らないからね、覚えておけよ」

 

タイキ「何度でも相手になります、その時までトレーナーさんといつまても待っていマス!」

 

二人は固い約束を誓い、ウイニングライブを完璧にこなし、再びタイキはトレーナーの下に詰め寄りご褒美と称して膝枕を要求してきた。二人は借りている寮に戻り、直ぐ様部屋に入るなりそのままトレーナーの膝に頭を載せてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

タイキ「トレーナーさん……ワタシ、勝てました。ワタシ…………グスッ……」

 

その後はトレーナーのお腹に蹲るように泣き叫んだ。タイキがどんな想いが込み上げてきたのか分からないが、トレーナーはただ優しく抱き締めた。それに応えるようにタイキも抱き締め返し、トレーナーも静かに泣いた。トレーナーはタイキが泣き止むのを待ち、再び膝枕の状態になった。

 

タイキ「トレーナーさん……いつもワタシの我儘を聞いてくれて、ありがとうございます。あの娘に勝てたのは、トレーナーさんのお陰です」

 

佐竹「俺は何もしてない、君の友達に助けられただけだよ。ステイの助言がなかったら、どうなっていたか……」

 

タイキ「でも、必死に考えてくれた事には変わりありません。手を差し伸べてくれなかったら……ワタシはこのレースに勝つ事も、この場にだって居なかったかもしれません。だから、感謝してるんです」

 

佐竹「ありがとう……」

 

タイキ「湿っぽいのは終わりにして、ワタシはトレーナーさんの膝を堪能シマース♪」

 

佐竹「ふっ、甘えん坊はいつまでも直らないな」

 

タイキ「ふ〜ん♪……意外とトレーナーさんの太もも、柔らかいデスネ。脚細いのに不思議ですね」

 

佐竹「普段から体を動かす習慣がないからだと思うけど、鍛えた方がいいのかなぁ……」

 

タイキ「トレーナーさんはそのままでいいデスヨ、ありのままのトレーナーさんで……」

 

佐竹「ふふっ……」

 

タイキ「あっ!トレーナーさん、帰ったら焼肉パーティーしませんか?他のみんなも誘って!」

 

佐竹「いいな!帰ったら早速準備しよう」

 

二人はフランスの最後の夜を過ごし、ドーヴィルを飛び立った。そして直ぐ様タイキは、誘えそうなウマ娘を探しトレーナーは手頃なお店を探し準備が整い夕方、トレーナーは少し空いた時間にサンデーに貸してもらった『ハンカチ』を返しに行く事にした。何処にいるか先ずは探し、理事長室に行ったがだけも居なかった為グラウンドに向かうと全てのコースを見渡せるベンチに座り、ウマ娘のトレーニング風景を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「サンデーさん、ここに居たんですか」

 

サンデー「ん、どうしたの?私に用事?」

 

佐竹「はい、前に電車でハンカチを貰ったじゃないですか。これ、お返しします」

 

サンデー「別に良かったのに。何だったら君が持っててもいいよ、嫌だったら他の娘にあげてもいいし」

 

佐竹「でも……」

 

サンデー「それじゃ」

 

そう言い残し、サンデーはその場を消えるように去っていった。トレーナーは困りながらも胸ポケットに入れ、タイキと約束している店に急いだ。トレーナーが店に入り個室の部屋に顔見知りのメンバーしか居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイキ「遅いですよ、トレーナーさん!」

 

スズカ「こんばんは、トレーナーさん。お先に始めてました」

 

エア「何故私まで……」

 

ステイ「うめー」パクパク

 

先に始めていたのは、以下の三名。タイキは他にも何人か声を掛けたのだが、予定がある、と断られてしまったらしい。トレーナーも揃い始める事が出来たが若干一名、我慢しきれず食べているが今日はタイキの為に集まってくれたメンバーである事に変わりはない、思う存分楽しむ事にした。

 

タイキ「トレーナーさん、このビビンバ美味しいですよ!」

 

佐竹「わ、分かったから自分で食べるから!?」

 

エア「全く……相変わらずだな。まぁ、今回は大目に見るとしよう」

 

スズカ「ふふ、海外G1制覇だもの。はしゃぐのも無理ないわ、唯、人前でイチャつくのは止してほしいけど……」

 

ステイ「カルビうまー……タイキ、玉ねぎあげる」モグモク

 

常に食べているステイも何だかんだ祝う気持ちはあり、他の二人もタイキの相変わらずな対応に呆れはするものの、この光景が見れることに嬉しさも感じていた。暫く食べているとスズカがトレーナーの胸ポケットからはみ出ている、ハンカチを見つけ問いだした。

 

スズカ「あの……トレーナーさん、その綺麗なハンカチどうしたんですか?」

 

佐竹「あぁ、とある人からいらないから貰ってくれって頼まれたんだ。大きめのハンカチだから、使い道はあるんだけど……如何せん、俺には必要ないものだし……どうしようか悩んでいたんだ」

 

スズカ「あの、よければ私に頂けないでしょうか?凄く綺麗なハンカチですので」

 

佐竹「いいよ、スズカにあげる」

 

スズカ「ありがとうございます!トレーナーさん、とある方ってどんな方なんですか?」

 

佐竹「今、理事長代理として赴任してきたサンデーサイレンスさんだ」

 

スズカ「何方ですか?」

 

エア「スズカが探している相手だろう?、全く……以前話したときに自分の前に走る人が居て追い付けないと言っていた人が、今の理事長代理だ」

 

スズカ「そ、そうなの?」

 

ステイ「第一に名前で分かるだろう、本当に走ることしか興味ないな。しかも、代理が登壇した時お前寝てただろう?そんで顔に落書きしたら一日中そのままで笑っちまったよ、ハハッ」

 

スズカ「もう〜すごい恥ずかしかったんだから///」

 

スズカのかわいい話を聞き、その場は盛り上がってタイキの祝勝会はお開きとなった。そして月日は流れ、ウララのレースがまた刻一刻と迫ってきた。再びメイセイオペラとのレースに備えるためにウララの英気を養ってもらうとトレーニング終わりにトレーナーの手料理を食べさせることにした。そこに丁度、桐生院御一行も練習終わりのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生院「あれ、先輩達もトレーニング終わりですか?」

 

佐竹「丁度終わってウララに料理を振る舞うと思ってな、今から買い出しだ」

 

ウララ「トレーナーの料理とっても美味しいんだぁ〜、その時はシチューを食べたの。また食べたーい!」

 

ライス「そうなんだ、ライスもお兄さまの手料理食べてみたい……」

 

スズカ「シチュー……」ジー

 

ミーク「…………」グゥ~

 

佐竹「はぁ……仕様がないな。もう少し凝ったものを作ろうとしたんだが、人数が多いからホワイトシチューとハンバーグにするか……」

 

ウララ「やったー、ハンバーグ!」

 

ライス「いいの、お兄さま?」

 

スズカ「トレーナーさんのシチュー……」ジー

 

ミーク「…………」グゥ~

 

桐生院「すいません、先輩。トレーニング後なので、みんな食欲には勝てませんね」ダラ~

 

佐竹「おい、涎拭けよ……」

 

腹ペコウマ娘と人が一気に四人増え、料理を少し簡単なものにすることにしたトレーナーはハンバーグにシチューをかけるような形することにした。近くのスーパーで済ませることにしたが、ウララが頻りにプリンやらアイスやらを入れようとするのをライスやスズカが止めに入った。桐生院とミークは自分達の買い物をして、足りないものを補充していた。買い出しも終わり、学園に戻って先ずは下準備から開始した。献立が二つだけでは寂しいので、ポテトサラダも添え付けで作ることにした。野菜を切る作業や挽肉をこねる作業は、桐生院達が手伝ってくれて早めに料理が完成した。家庭科室の食器を並べている間にみんな、お腹を鳴らしながら準備していたので早速食べることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「いつも美味しいシチューだー!」

 

ライス「ウララちゃんは、いつもこんなに美味しい料理を食べてるんだね。いいなぁ」

 

スズカ「美味しい……」

 

ミーク「……桐生院トレーナーの方が美味しいですけど、佐竹トレーナーのも美味しいです」

 

桐生院「そうですね。先輩、これから毎日私のために作ってくれませんか?」

 

佐竹「図々しいぞ、桐生院……あと、他の男に今の言葉は使うなよ、勘違いするから」

 

桐生院「うん?」

 

暫くはトレーナーを称賛する声が続き、その後の食事は大量の食材が消えた。少し余裕を持たせて、トレーナーは次の夕食分まで残そうと思ったが甘い考えだった。トレーナーはうなだれながら食器をライスと片付けていた時、ライスからスズカの今後の近況を教えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライス「スズカさん、天皇賞を目標に走るんだって。トライアルの毎日王冠を先ずは制覇してお兄さま、お姉さまに自分の走りを見てほしいんだって。本当は言っちゃ駄目なんだけど……でも頑張ってる姿はやっぱり言わないと伝わらないと思って、ライス我慢出来なかったんだ。スズカさんには内緒だよ、お兄さま」

 

佐竹「そ、そうだな……」

 

ライス「ん?どうしたの、お兄さま?」

 

トレーナーは自分の担当との練習の日々に、スズカの天皇賞(秋)の対策を忘れていた。これからの結末を知っているトレーナーとしては、今から解決策を考えたとして付け焼き刃にしかならない。青ざめているトレーナーを心配してライスは、顔を伺う。それに気になど止めず、手を滑らせ食器を落としてしまった。

 

ライス「うわっ!?お兄さま大丈夫、怪我してない?!」

 

佐竹「あ……ご、ごめん……」

 

そしてトレーナーは何をするにも手がつかず、呆けることが多くなった。そしてそのままウララの南部杯まで続き、まだ治っていなかった。トレーナーはウララと共に東北の地、岩手にバスで向かっていた。大事なレースにも関わらず、トレーナーは心ここにあらずと言った所でウララもその異変に気付いていた。バスの車内でなんとかトレーナーを自分なりに気遣うのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「ねぇ、トレーナー!椀子そばだってー、二人で食べに行こうよ!」

 

佐竹「あぁ……そうだな」

 

ウララ「盛岡冷麺もあるよ。ほら、こんなにたくさんのお店があるよ!」

 

佐竹「あぁ…………」

 

ウララ「トレーナー、どうしたの。具合悪いの?」

 

佐竹「大丈夫だ……」

 

ウララの気遣いも虚しく、トレーナーの反応は心配になるほどの対応。そして盛岡競馬場に近づき、館内の控え室に向かう途中でメイセイオペラと出逢った。ウララとメイセイは久しぶりの再会もあり、お互い手を握り歓びを分かち合っていた。だがその中で一人、メイセイからでも分かるほどトレーナーの暗い顔が悪目立ちしていた。

 

メイセイ「あの、ウララさん。トレーナーさん、どうしちゃったんですか?えらい落ち込みようですけど……」

 

ウララ「わたしもわかんない……。具合悪いの?って聞いたんだけど違うみたい……」

 

感動の再会も素直に喜べずにいる二人、そしてウララにとって初めての盛岡競馬場でのレース、そして地元出身であるメイセイとの対決は相手のホームグラウンドで戦うということ。ウララとトレーナーはそれぞれ不安を抱えながらのレースとなる、これが身体にどのような展開になるかわからない。そしていよいよ、レースが始まる……。

 

 

 

 

 

 

 




遅いペースですが、気長に見て頂ければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。