馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

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56話 最後は笑って

トレーナーが倒れたその後、スカーレットは自分の脚でトレーナーを担ぎ病院へと運んだ。その間スカーレットは病院までの道中、『死なないで』と願い続けイルミネーションと雪が降りしきる中、全力で走った。

 

ダスカ「お願い……。死なないで……」

 

そしてスカーレットは、気が動転している中で受付に必死に助けて下さい、と言い続けた。その姿を見た職員の方は直ぐ様、トレーナーを救急治療室へと搬送しスカーレットは側の長椅子に腰掛け、祈るように座った。少し時間が経ち、ブーケが訪れた。ブーケが何故ここに来たかと言うとトレセンで二人を待ち伏せ、近況報告として色々聞き出そうとしたが中々帰って来ない二人を心配し迎えに出て町で散策していると、スカーレットが涙を流しながらトレーナーを抱え病院へ運ぶ姿を目撃し病院へと入ったと言う。その後ブーケは、関係者に電話しトレーナーの状況を説明をするとたづなさんに理事長、サンデーが駆け付け四人はスカーレットに事情を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブーケ「スカーレット。話せる範囲でいいから、お母さんに話してごらん?」

 

ダスカ「……食事をしている時は普通だったの。それで帰る途中、話ながら歩いて振り向いたら……振り向いたら……」

 

ブーケ「わかったわ、ありがとう。この件に関して、皆さん承知のとおりですが意識が無くなるという事は……」

 

理事長「皆無……。今までトレーナーは倒れはするものの、意識までなくなることはなかった」

 

たづな「病院でも原因が分からない以上、私達は待つ事しか出来ないですね……」

 

サンデー「あの……みんなに話しておきたい事があるんです」

 

そう言って口を開くサンデーは、トレーナーがこの世界の人間ではない事を説明した。それ故にウマ娘の知識が豊富なのは、トレーナーの世界でも同じ名前の者が多く存在している事を知っていたからだ、と聞いた四人は驚愕していた。

 

たづな「そうだったのですね。それでは、レース後にトレーナーさんの脚が動かなくなるのはそれが原因?」

 

サンデー「推測ですが、恐らく」

 

理事長「他の者は知っているのか、トレーナーが違う住人だというのは?」

 

サンデー「いえ、皆さんだけです。ですがいずれにしても、他の娘達にも言わなければいけないと思いますので」

 

ブーケ「そうですね……では、皆様。トレーナーさんが目覚めるまで待ちましょう」

 

ダスカ「…………」

 

そして時間は経ち、日付が変わる頃治療室から先生が出てきた。それを見たスカーレットは、透かさず声を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダスカ「先生っ……。トレーナーは……?」

 

医者「命に別状はありません」

 

サンデー「よかった……」

 

医者「ですが、今までとは異なる症状が……」

 

理事長「異なる症状とは……」

 

医者「右半身不随です。恐らく、右足から連鎖する形で起こったと思われます。そして我々にも、原因は何一つ分かりません。脳や脊髄に異常が診られたわけでもない、健康そのものなのですが我々も何一つ分からず……すいません」

 

ブーケ「そうですか……。トレーナーさんの病気は治るのでしょうか?」

 

医者「現段階ではわかりません。ですが、最善は尽くします」

 

たづな「お願いします」

 

医者「詳しいことは明日の朝にお越しください、皆さんも疲れていると思いますので。病室は503になります」

 

言われた通り五人は病院を後にし、トレセン学園へと戻った。理事長とたづなさんは学園の仕事を空ける事は出来ないので、サンデーや他の担当のウマ娘に頼む事にした。そして朝を迎え、サンデー達は病院へ向かいトレーナーの病室へと入った。トレーナーは横たわり、普通に寝ているようにも見えたが右目が開いていなかった。そして動かせるのも、左半身だけである。そしてサンデーがトレーナーに、容態を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンデー「トレーナー、体大丈夫?」

 

佐竹「左手は何とか動かせるので、大丈夫です。利き腕じゃないのが辛いですが……」

 

ダスカ「トレーナー、ごめんなさい。直ぐに気付いてあげられなくて……」

 

佐竹「スカーレットのせいじゃないから心配するな。突然意識を失ったんだ、無理もないさ。それにしても、ここまで運んでくれて本当に助かったよスカーレット」

 

トレーナーは慣れない手で、スカーレットの撫でた。それにスカーレットは少し安心し表情が柔らかくなった。そしてタイキやウララもお見舞いに来てくれ、心配そうな目でトレーナーを見つめていた。

 

タイキ「トレーナーさん、何所か痛くないですか?」

 

ウララ「ウララ、ジュース買ってきてあげようか?」

 

佐竹「何所も痛くないから大丈夫、まぁ右半分は感覚ないけど。ウララも、そんなに気を遣わなくていいからな?」

 

サンデー「君は病人になると、普段よりモテるよね……」

 

佐竹「どういう意味ですか、それ……」

 

サンデーに冗談を飛ばされながら、トレーナーは明るく振る舞った。そうしないと、担当の娘が隙あらば暗い顔をするからである。他のウマ娘達も、トレーナーの元気な顔を見て少し落ち着いてきた頃、勢いよく病室のドアが開いた。そこに入ってきたのは、まだ入院中のスズカだった。

 

スズカ「トレーナーさん、体が動かないって聞いてっ」

 

佐竹「よっ、スズカ。もう怪我は、大丈夫そうだな」

 

スズカ「そんな事より、トレーナーさんのっ……」

 

サンデー「スズカ。心配する気持ちも分かるけど、病院は静かに」

 

スズカ「はい……。無理はしないで下さいね、トレーナーさん」

 

佐竹「了解」

 

サンデー「そうだ、トレーナー。君の素性、違う世界から来たって関わりのあるウマ娘には話してあるから。こんな怪我して、病名も分からないんじゃ説明つかないでしょ?」

 

佐竹「そうですね。今までの事を考えれば、説明できませんもんね……」

 

トレーナーは自分が違う住人でも、変わらず接してくれているウマ娘に対して少し肩の荷が下りた。そして何時間か病室で話し、サンデーを含め担当の娘は昼前に帰って行った。残ったスズカと、暫く会話をして楽しんだ。夕方まで話し込み、スズカも検査に呼ばれトレーナーは一人になり窓を覗く夕陽を見つめていた時、タキオンが入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「やぁ、トレーナー君。体調はどうかな?」

 

佐竹「タキオンか。動かない事以外、健康だよ」

 

タキオン「知らなかったよ。君が違う世界から来たなんて」

 

佐竹「いつか言うつもりだったんだが……騙して悪かったな」

 

タキオン「謝る必要なんてないさ、言い出し難い事くらい十分に理解できる。それで本題に入るんだが、いいかな?」

 

佐竹「本題?」

 

タキオンの言う事に全く真意が読めなかったが、トレーナーはそのまま静かにタキオンの声に耳を傾けた。

 

タキオン「今まで君の原因不明の病について、私なりに研究し続けてきたが……前にも言った通り医者が分からないものに手は付けられない。仮に君の原因を突き止めたとして、医療の知識が無い私が特効薬を作る事は極めてリスクが高い。治る可能性を見い出したとしても、恐らく副作用が強く出てしまう。これが原因で君の命に危険を及ぼしたとしたら……トレーナー君に使おうとは思わない。それでも君が推進するのであれば止めはしない、だが私は……決して使いたくないっ」

 

佐竹「わかった。でも、また治るかもしれないだろ自然と」

 

タキオン「トレーナー君。私の推察でしかないが、その症状は脳の異常から見られる兆候だ。脳からの指令で体は動く、だが君の脳に異常が診られないとなればその不随の原因は分からないんだ。超常現象や呪術の類でなければ説明がつかない……すまないトレーナー君、私の力不足だ」

 

佐竹「専門家でもないのに、そこまで説明できるのは凄いと思うぞ。タキオンのお陰で色んな知識をもらってるから、こっちはありがたいよ」

 

タキオンでも手立てが無いと分かったトレーナーは諦めはしたが、自分の今の仕事にはそこまで支障が無いと楽観的に考えタキオンと少し談笑し学園へと帰って行った。次の日を迎え、今日訪れたのはシービーにルドルフ、ブライアンにエアグルーヴにテイオーだった。三冠が三人に帝王と女帝が並ぶと、壮観だった。王族が謁見しに来たみたいな気持ちになるトレーナーだった。ある程度世間話をして、シービーがトレーナーの違う世界の方に興味を持ったようで色々質問してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シービー「ねぇ、トレーナー。トレーナーの元々住んでたところって、どんな感じなの?」

 

佐竹「こことあまり変わらないけど、シービーやルナさんみたいにウマ娘は存在しませんね」

 

ルドルフ「では代わりに何がいるんだ?」

 

ウマ娘という概念が無い世界のウマの事を、トレーナーは細かく説明した。四足歩行で姿形は全くの別物で、名前など成績記録が同じである事を話した。そして拙いトレーナーのウマの絵を具体的に見せた。

 

ブライアン「四つん這いなのだな……。トレーナーの命令でこうしているのか?」

 

佐竹「違うわっ、こういう立ち方なの!」

 

エア「だがこの生き物、服を着ていないぞ。露出狂なのか……」

 

佐竹「着るって概念が無いの!」

 

テイオー「こっちの世界で、トレーナーとデートしてみたーい!」

 

佐竹「一緒に行ければいいんだが、如何せん行き方が分からないからなぁ……。まぁでも、こっちも居心地は良いし別にいいんだけどね」

 

ルドルフ「……だがトレーナー君、君は元の場所に戻りたいのではないか?いくらこちらで過ごしていても」

 

佐竹「そうですけど……三年以上も過ごしてると、こっちに居る娘達も心配なので離れたくないんですよね」

 

シービー「でも、向こうにも心配してる人達は居るんじゃないの?両親とか」

 

佐竹「俺も心配してるところですけど、一番心配してるのは俺が担当していたウマなんですよね」

 

ブライアン「向こうでも担当していたのか?」

 

トレーナーは昔、功労馬繋養施設で働いていた。担当していたのはチョウカイキャロル、シンボリクリスエス、ノースフライト、マヤノトップガン、ビワハヤヒデ、エイシンサニー、スティンガーなどをあげた。入社した当初は、ウマにも色んな癖があり人間味が溢れ、触れ合うだけで楽しかった。そんな話をしてルドルフは、クリスエスの名前に食いついた。

 

ルドルフ「トレーナー君。クリスエスはどんな様子だった?」

 

佐竹「機嫌が悪いと滅茶苦茶怒りますけど、普段は大人しくて可愛いですよ。欠伸が多かった気がしますけど」

 

ルドルフ「そうか、性格は一緒なんだな。確かにあまり活発に動く方ではないし、普段は喋らないからな」

 

色んな特徴が酷似している事を知ったルドルフは、様々なウマ娘の話を聞いてきた。そんな会話をしているとオグリやゴルシ、BNWの三人にスぺやフラッシュが来てくれた。そしてそこから、立て続けにお見舞いするウマ娘が増え、病室は狭くなり泣きながら抱き着てくるウマ娘でごった返した。そんな状況に困りながらも、楽しいと感じたトレーナーは申し訳ないと思っていた。早く治して、またみんなと一緒に生活したいと心の中で呟いた。日が暮れ、みんなが居なくなった頃、先生が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医者「経過報告で、少しよろしいですか?」

 

佐竹「どうしたんですか、先生?随分暗い顔ですけど」

 

医者「あの……以前のように、数日経てば治ると高を括っていましたが中々治りませんね」

 

佐竹「流石に、限界が来たんだと思います。自分でもわかります……なんとなく無理なんだろうなって」

 

トレーナーは自分の体がもう動かないだろう、と薄々感じていた。原因不明という事もあるだろうがトレーナーの中では、なんとなくの勘だった。先生は言いずらそうに、トレーナーの容態を告げた。

 

医者「結論から言いますと、処置は不可能です。機能訓練、即ちリハビリを熟す事で時間はかかりますが、改善は見込める場合もあります。ですが、神経細胞が存在していればの話です。この話から分かるように、トレーナーさんの右半身の神経細胞は全くありません」

 

佐竹「無いってどういうことですか?」

 

医者「写真で撮りましたが、切り取られたように半分ありませんでした。ですので、神経細胞を刺激しリハビリを行う事さえ出来ないのです。これはもう、手の施しようがありません」

 

佐竹「そう、ですか……ありがとうございます、先生。俺の事は構わず、他の患者さんを気遣ってください」

 

医者「ですがそれではトレーナーさんがっ……」

 

佐竹「全く動けない訳じゃないので、大丈夫ですよ」

 

医者「…………」

 

その後トレーナーが放った言葉に先生は、何も言うことが出来なかった。そのまま先生は退室していき、トレーナーは一人になり先程言われた事を思い返すと涙が出た。直視できなかった、自分の体がもう自由に動かせなくなることがここまで追い詰められる事だとトレーナーは言われた事で気付いた。そしてトレーナーは眠れぬ夜を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「はぁ……やっぱり、自由に動かせないってストレスだな……うん?」

 

トレーナーが月明かりに照らされ左手を月に翳していると、なんとなく透けている事に気付いた。驚いたトレーナーは、手鏡を持ち自分の顔も確かめた。そして時間が経過するごとに透け、トレーナーは何が起こっているか分からなかった。

 

佐竹「何だこれ、透けてる……どんどん薄くなるな、ヤバいんじゃないか」

 

自分の身に起きていることに何を意味しているのか分からないトレーナーは、取り敢えずブザーを鳴らそうとするが、いつもある場所に無かった。ウマ娘に泣き付かれた時に、ズレて左手に届かない位置にあったことで看護師が呼べない状況となった。トレーナーは消えていなくなる前に、ウマ娘達に遺言を書き残すことにした。慣れていない左手で書く字は、想像以上に下手くそで読めるか分からない字だった。それでも、関わったウマ娘達のエピソードを書くと意外に早く終わった。

 

佐竹「よし、こんなもんか。俺もとうとう、お迎えか……別れの言葉も無しに逝くのは、正直辛いけど……アイツ等なら大丈夫だろ。さようなら、みんな……」

 

そう言い残して消えていったトレーナーのベッドの上には、アクアマリンのペンダントがあった。オグリと御揃いのペンダントを肌身はなさず、身に着けていたトレーナーの物だった。大きいベッドにどこか不釣り合いで、寂しく置かれていた。次の日の朝、この日は桐生院とライス、ミークが来る予定だった。そしてライスが最初に病室へと走りながら入り、トレーナーに挨拶をしようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライス「お兄さま、元気?今度ね、新しいクッキー作ったから一緒に……あれ、お兄さま?」

 

桐生院「はぁ……はぁ……ライス早いってば……って先輩は?」

 

ライス「お兄さま、居ないみたいだから看護師さんに聞いてくるね」

 

ミーク「……あれ、トレーナーは?」

 

桐生院「今、ライスが先輩の居場所、聞いてきてくれるみたい」

 

ミーク「……ふ〜ん。あれ、これって……」

 

ミークは、机の上に置いてある紙に気付いた。すると、奥からライスが勢いよく入ってきた。事情を聞くと、看護師もトレーナーの居場所は分からないらしい。慌てるライスや桐生院に、ミークが先程見付けた紙を桐生院に手渡した。

 

ミーク「……これ、机に置いてあった」

 

桐生院「えっ……どういうこと?」

 

ライス「お姉さま、貸してっ!…………えっ」

 

驚愕する桐生院に、ライスはその紙を取り読み上げる。

 

『別れを告げず、居なくなることを許してください。俺がこの手紙を書く理由は、もう時間が残されていないからです。少しの時間でも、君達のことを書かせてください』

 

ライス「何、これ……」

 

ライスは、トレーナーが書いた自分宛てのエピソードの部分を読んだ。そこにはライスへの想いが、綴られていた。

 

 

 

『最初の出会いは、困っているライスが放っておけず助けたのが最初だったな。ライスは割と早とちりするタイプで、直ぐ落ち込んで、相手を責めたりしない優しいウマ娘だった。そんな君を見て、俺は力を貰えた。直向きにレースに挑もうとする姿勢と諦めない強さに、俺は勇気を貰えた。そして、宝塚記念での勝利はとても嬉しくて涙が出た。俺の世界のライスはこのレースで命を落とすんだ。だから、君が無事にレースを終えて帰ってきてくれたことに感動して凄く喜んだ』

 

 

 

ライス「だからあの時、お兄さまはライスをレースに出ないように呼び掛けてたんだ……」

 

 

 

『最期になるけど……ライスはとても優しくて最高のウマ娘だ。これからも、困ってる人がいたら迷わず助けてあげて支えるんだぞ。バイバイ』

 

 

 

ライス「……何で、何でお兄さまなの?やだよ……こんなお別れなんて。あんまりだよ……離れたくない、離れたくないっ、離れたくないっ!……ライスはまだ、お兄さまに何もしてあげられてないのに……」

 

何度も叫ぶライスに、桐生院達は何も言えなかった。突然居なくなった事への消失感、まだその実感が沸かない三人は関わりのあるウマ娘へ手紙のことを学園に戻り、話した。その話題を話すと、みんな半信半疑で認めようとしなかった。トレーナーを探そうと躍起になる娘も出始めたが、ルドルフに止められ収束した。そしてライスは、ベッドに置いてあったペンダントをオグリに渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライス「オグリさん、これベッドに落ちてました。オグリさんと同じものですよね?」

 

オグリ「そうだ。トレーナーが、私の為に選んでくれたペンダントだ。いつも……持っていてくれたんだな……。やはり、居なくなってから気付くものだな……もっと触れ合いたかった……」

 

ゴルシ「なぁ、ライス。病室に入った時には、トレーナーはもう居なかったのか?」

 

ライス「うん。入った時には、手紙とペンダントだけ……」

 

タイシン「動ける訳ないのに何処に行ったんだ、アイツ……。それに、時間が残されてないって……どういうこと?」

 

手紙の文章にある、時間が残されていない、という文に疑念を抱くウマ娘達はその場で考えた。考えが浮かばない中で、トレーナーを失った喪失感で泣き始めるウマ娘が出始めた。

 

スぺ「このまま帰って来なかったらどうすればいいんですかっ!?私……トレーナーさんに何も恩返しできていません。不安だった毎日を、照らしてくれたのはトレーナーさんです……元気な自分でいられるのもトレーナーさんのお陰なんですっ……そんなトレーナーさんを失ってこの先、どうしていけばいいか……分かりません……」

 

その言葉を漏らしたスぺに同調するように、他のウマ娘も弱音を次々と吐露していった。その中で、ウララが一番気持ちが不安定だった。

 

ウララ「ウララ達の事、嫌いになったのかな……」

 

ダスカ「ウララさん、大丈夫です。トレーナーはそんな人じゃないですよ……ったく、あのバカ

 

フラッシュ「でも、理由もなく失踪する方でもないですし……本当にどうしたのでしょう」

 

模索し続けるが一向に答えが見つからず、四苦八苦するウマ娘達。その中でタキオンが、唯一仮説を立てた。

 

タキオン「……消えたという方が説明がつくんじゃないかい?」

 

ライス「消えたってどういうこと?」

 

タキオン「手紙にあるように、別れを告げずに、ってあるだろう。明らかに惜しんで書いているように思えるんだ」

 

ダスカ「じゃあ、トレーナーは何処に消えたんですか?」

 

タキオン「分からない。恐らく、この世界以外の何処かだろうねぇ……」

 

シービー「じゃあ行こうよ、トレーナーの所に」

 

タキオン「当てもないのに、どうやって探すんだい……。ましてや違う世界の人間だよ?」

 

シービー「転送装置でも作ればいいんじゃない?」

 

タキオン「簡単に言うが、薬と違って短期間で作れる訳じゃないんだ。転送装置なんて何年掛かるか……」

 

シービー「作れるんだね?」

 

シービーの強い目力に押され、タキオンはやれやれと言った感じで自分の研究室へと帰って行った。他のウマ娘達は、それでも成功する確率の方が低いと考え悲観的に捉えていた。

 

オグリ「トレーナーに逢えなかったら、一体誰のご飯を食べればいいんだ……」

 

ルドルフ「憂う所が違うと思うが……。だが、トレーナー君が居ないと、ここまで心が乱れるとは。君はもう、無くてはならない存在なのだな」

 

一方その頃、トレーナーはとある病室で目覚めた。見覚えのある天井ではなく、違う病院だと気付くトレーナーは横を見ると自分の両親が泣いていた。説明を聞いたトレーナーは、三年以上昏睡状態が続いており今日意識を取り戻したという。そして暫くリハビリに専念し、半年後に退院をすることとなった。その後は仕事に支障はなく、いつも通りの生活を取り戻していった。トレーナーはいつものように、飼葉や掃除など仕事を熟し馬達に変わりがないことに安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「久しぶりだな、元気してたか?」

 

(大丈夫だったの?)

 

佐竹「後遺症もなくて元気に動けるようになったよ。後、お前達の先輩に会ってきたよ」

 

(先輩?)

 

佐竹「昔の名馬に会ってきたんだよ。夢なのか現実なのか分からなかったけど……」

 

(何だそれ)

 

佐竹「お前も戦ったら、いい線までいけるんじゃないのか?」

 

(アタシを舐め過ぎだ!)

 

佐竹「あははっ」

 

佐竹(でもやっぱり、寂しいな。夢だったのか現実だったのか分からないが、本当に貴重な体験だったんだろうな……)

 

トレーナーは自分の仕事熟しながら、あの出来事は昏睡状態からくる貴重な体験だと思い軽くその場は流したが、少し寂しく感じていた。三年以上という短い期間、夢の中での出来事であっても情というのは簡単には消せない。沢山の夢を与えられた期間、一番側で体感していたトレーナーがよく分かっていた、現実だった、と。その忘れられない思い出を思い出し、トレーナーは厩舎ですすり泣いた。その後、少しでも忘れようと思い仕事に没頭した。次の日を迎え、トレーナーは担当馬の餌や水を替え掃除をして放牧させ朝の仕事を終わらせた。蹄の長い子の手入れを頼む為に、装蹄師に予約の電話を掛けようとした時、外でトレーナーの後輩が言い争いをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予約をしてくだされば、お越し頂けるので。急な訪問は困ります」

 

「確認するだけでいいんだっ、名前だけでも!」

 

女性と口論している様子で、一向に引き下がろうとしなかった。だが、あまりに強引だったので警察に連絡すると発言すると女性は流石に引き下がり、そのまま帰って行った。トレーナーは後輩の下へ行き、事情を聞いた。

 

佐竹「どうかしたか?」

 

「マナーも守らない上に、従業員の名前を教えて欲しいって聞いて来たんですよ。不愉快だったんで追い返しました」

 

佐竹「ふ~ん……」

 

遠目で帰る後姿を確認するトレーナーは、長く茶色の髪に学生服風の格好で珍しいと思った。だが、どこかで見たような後ろ姿に既視感を覚えたが気にすることはなかった。また違う日にトレーナーが、馬糞の処理で農家に出荷作業をして車で出ようとした時、見覚えのある娘が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「~♪……えっ、タキオン?」

 

タキオン「やっぱり、ここに居たね。トレーナー君」

 

佐竹「夢じゃないよな……」

 

タキオン「夢じゃないさ、ここで一緒に話してるだろ?」

 

佐竹「どうやってここに来たんだ?」

 

タキオン「転送装置を作ったのさ、中々苦労したがね……だがこれで、他の娘達も喜ぶだろうねぇ」

 

佐竹「タキオン以外も来てるのか?!」

 

タキオン「当り前さ。そうしなかったら、彼女達に殺されるからねぇ。気を付けた方がいいよ、トレーナー君。逢えなかった分の埋め合わせがどれ程のものか、覚悟する事だね」

 

そして外まで車を回すと、大勢のウマ娘達が出迎えた。髪が伸びてボサボサの娘と、服が破けてボロボロの娘も居た。だが、再会を果たしたトレーナー達は抱き合い喜び合った。

 

タイキ「トレーナーさん、寂しかったです……。でも、また逢えて嬉しいです!」

 

佐竹「手紙だけ置いて居なくなって、ごめん」

 

ウララ「うわぁぁぁぁん、トレーナーだぁぁぁ……」

 

佐竹「ごめんな、ウララ。心配かけたな」

 

ダスカ「ホントよ。一生逢えないと思ったじゃない……」

 

佐竹「俺は諦めてたけど、お前達は本当にすごいな」

 

そして他のウマ娘達から抱擁を受け、中々離してくれない娘も居た。その間のルドルフとテイオーの目がヤバかった。オグリは料理をせがみ、スぺは再開してから泣きっぱなしでタイシンは袖を掴んでバカ、と小さい声で呟いていたが、どこか嬉しそうだった。スズカとライスは、トレーナーに手作りのクッキーを手渡してきた。ゴルシは何故か阿波踊りをしてフラッシュはそれに付き合わされていた。そして最後にシービーが……。

 

シービー「今度は、一生離さないでね♪」

 

佐竹「お、おう……」

 

普段から重めな言葉を使わないシービーにトレーナーはびっくりし、少し恥ずかしかった。そしてそれからは、転送装置のお陰で行き来出来るようになりトレーナーは前と同じようにウマ娘達と楽しく過ごしました。

 

 

 

 

 

 

 




ここまで呼んでくれた方々、ありがとうございます。
駄文を読んで頂けて感謝です。
アンケートの三人は、少し時間空けて書きます。

どのウマ娘とイチャイチャしたい?

  • タイキシャトル
  • ハルウララ
  • ダイワスカーレット
  • ミスターシービー
  • シンボリルドルフ
  • オグリキャップ
  • サイレンススズカ
  • ゴールドシップ
  • トウカイテイオー
  • ライスシャワー
  • ナリタタイシン
  • スペシャルウィーク
  • エイシンフラッシュ
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