馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

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夏も終わりやぁ……。


その後の世界
タイシン編 水族館デート してあげられる事


転送装置のお陰で、ウマ娘達が頻繁にトレーナーの一人暮らしの家に遊びに来る事が多くなった。6月上旬、いつもの如くトレーナーが牧場の宿舎で目を覚ますとタイシンが台所でエプロンをして立っていた。

 

 

 

佐竹「う~ん…………あれ、タイシンどうしたんだ?こんな朝早く……」

 

タイシン「トレーナー、いつも朝早いでしょ。ほら、起きて朝ごはん食べな」

 

佐竹「まだ4時だぞ~?」

 

タイシン「つべこべ言わずに起きろ!」

 

 

 

叩き起こされるトレーナは、促されるままタイシンに従った。朝食は日本人らしい、ご飯に味噌汁、焼き魚にお浸しに漬物が添えられトレーナーは美味しく平らげた。トレーナーが食器を洗っていると、タイシンから今日の事について喋り始めた。

 

 

 

タイシン「今日、トレーナー休みだよね?」

 

佐竹「休みだけど、何もこんな朝早く来なくても……」

 

タイシン「い、いいじゃん別に……早く来た方が長い時間いれるし……

 

佐竹「それにしたって早過ぎだろ……」

 

タイシン「っ!?……何でこういう時だけ、耳良いんだよ!?」

 

佐竹「それで、今日は何処に行くんだ?」

 

タイシン「こっちの水族館に行って見たいなぁって思って。……何か予定があるなら、止めないけど」

 

佐竹「いいな、行こう。少し遠いが、結構大きい水族館があるんだ」

 

タイシン「今すぐ行こう!」

 

佐竹「こんな朝早く行っても、まだ空いてないぞ?!」

 

タイシン「トレーナーの車で移動しながら、時間潰せばいいじゃん」

 

佐竹「そうね……取り敢えず準備しますか」

 

 

 

二人は水族館に向かう準備を整え、トレーナーの自家用車で行く事となった。牧場の場所から遠い為、高速道路を使って移動となり途中パーキングエリアで休憩を挟みながらタイシンと楽しみ足湯施設がある、休憩場へと二人で入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイシン「珍しいね。こんな所に足湯があるなんて」

 

佐竹「長時間運転すると、血流が悪くなるからその為に設けられた施設だし、温泉なんかもあったりするらしいぞ?」

 

タイシン「へぇ……確かにずっと運転してると疲れるし、いいんじゃない?」

 

佐竹「入ってみる?」

 

タイシン「アンタが一緒なら……///」

 

顔を背けながら応えるタイシン。二人は早速裸足になり、足湯に浸かった。温度は少し熱いものの我慢できない程では無く、徐々に慣れていった。

 

佐竹「あぁ~……」

 

タイシン「やめてよ、親父くさい……」

 

佐竹「仕様がないだろ?気持ちいいんだから。タイシンだって気持ちいいだろ?」

 

タイシン「まぁ、そうだけど」

 

 

 

屋外に設置されている為、お土産を買いに来る客が往来する場。その為、座っている二人に目線が注がれタイシンは、この状況下でどのような関係に見られるのだろうかと考えていた。それが気になり始めたタイシンは、トレーナーに聞いてみた。

 

 

 

タイシン「ね、ねぇ、トレーナー。アタシ達って、どういう関係に……///」

 

そう言いかけたタイシンを遮り、トレーナーは……。

 

佐竹「あぁ~、アイス食べたい」

 

タイシン「っ!?……この、バカ!」

 

佐竹「うわっ!?急にお湯かけんなよ……服、ビショビショじゃん……」

 

タイシン「バーカ…………ふふっ♪」

 

 

 

怒りながらも何処か楽しそうなタイシンは、トレーナーとの足湯を終え再び車に乗り込み水族館へと向かった。長い運転の末、ようやく辿り着き二人は水族館の入り口の前に立った。タイシンは常時無表情だが、今の尻尾は尋常ではない程、揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイシン「人、結構入ってるんだ」

 

佐竹「移転工事したから、その分お客さんも多いんだろ?取り敢えず、チケット買って……」

 

販売スタッフの下へ行き、チケットを買いに行った。

 

佐竹「取り敢えず、大人二枚でいいだろう」

 

タイシン「流石に子供には見られないだろうし……」

 

「ご利用ありがとうございます。本日、恋人デーとなっておりますので三割引きとなっております。是非、ご利用ください」

 

佐竹「安くなるなら、こっちにするか」

 

タイシン「ちょっ!?そんな簡単に……」

 

佐竹「嫌か……?」

 

タイシン「別に……///」

 

 

 

購入を済ませ、二人は一階のフロアにある少し暗い雰囲気のフロアに一面大きなガラス張りの水槽に様々な魚、個性的な生物を取り扱った自由な海を表現したものとなっていた。水の光に照らされた館内は、とても幻想的に彩られタイシンはこの光景を目にし、言葉を数が少なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイシン「すご……」

 

佐竹「俺も初めて入ったけど、凄いな……」

 

タイシン「これ、なんて魚?」

 

佐竹「う〜ん……分からんけど、下の写真だとマイワシだって」

 

タイシン「へぇ〜……海の中ってもっと綺麗だろうなぁ……」

 

感慨に耽るタイシンは水の中を眺め、魚達の姿を追い楽しんでいた。そんなタイシンの姿を見てトレーナーは、とても綺麗に映り見惚れていた。

 

佐竹「…………」

 

タイシン「?……どうしたの」

 

佐竹「い、いや、何でもない……///」

 

タイシン「そう?……じゃあ、次行こ」

 

次のコーナーは、深海を表現した暗い雰囲気で赤いライトのみが点灯する静かな空間が広がっていた。暗い中をタイシンは走り出し、ライトに照らされた一つの水槽の下で止まった。その中にいたのは、ダイオウグソクムシ。タイシンは、ガラスに手を付きながら珍しい物を見るような目で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイシン「全然、動かない……。ダンゴムシみたい」

 

佐竹「俺も最初、写真で見た時はデカいダンゴムシだと思った。でも、可愛いよな」

 

タイシン「うん、かわいい……」

 

長い時間タイシンは、ダイオウグソクムシを眺めていた為、トレーナーは他の深海魚を探しに行きその場を離れた。

 

佐竹「俺も別の深海魚見よ〜」

 

数分が経ち、タイシンは満足し次に移ろうとした時、トレーナーが居ない事に気付き辺りを見渡す。

 

 

 

タイシン「あれ……トレーナー何処?」

 

 

 

最小限の明かりとなっている為、顔を認識することが出来ず探しに行こうかどうか考えていると、トレーナーが駆け寄った。

 

佐竹「ごめん、邪魔しちゃ悪いと思ったから声掛けずに離れた。今度は逸れないように、手繋ごう」

 

トレーナーはそう言いながら、タイシンの手を握った。

 

タイシン「あっ……う、うん……///」

 

トレーナーに手を引かれるタイシンは、顔が緩みっぱなしの為、顔を俯かせトレーナーになんとか見られないように努めた。二人は階段を上がり、ニ階にあるイルカショーを観戦する事にした。

 

 

 

 

 

 

佐竹「今の時間、イルカショー見れるって。うわ、結構人いるな。タイシン、ここ座ろ」

 

タイシン「うん……///」

 

3000人収容できる観客席に二人は座り、始まるのを待った。会話の最中もタイシンが恥ずかしそうにしているのは、トレーナーが一度手を繋いでから中々『手を放してくれない』のが原因である。タイシン自身はイルカのショー以前に、この現状にパニックを起こしている為、何も集中できなかった。そしてショーが始まった。

 

佐竹「おぉ……すげぇ。見たか今の、凄くないか?」

 

タイシン「えっ!?……そ、そうだね……///」

 

興奮するトレーナーと裏腹に、タイシンの脳内はトレーナーの手の感触と温もりに支配されている為、何も入ってこなかった。ショーは終わりお昼になり、フードコーナーに向かった。向かう途中も、手は繋ぎっぱなし。

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「いや~、楽しかったな!」

 

タイシン「あ、あのさ……そろそろ放してくれない……///」

 

佐竹「あっ、ごめん!?……もしかして、ずっと繋いだままだったか?」

 

タイシン「そうだけど、別に嫌って訳じゃなかったし……」

 

佐竹「そっか、よかった。フードコートが一階にあるから、そこで何か食べよう。タイシンもお腹空いてるだろ?」

 

タイシン「……空いた」

 

佐竹「よし、行くか」

 

そしてフードコートへと向かい、着いた頃には沢山の客で賑わい家族連れやカップルが多数、食事を始めていた。トレーナー達も空いている席を見付け、二人用のテーブルに腰掛けた。メニュー表を開き、色取り取りの海鮮に因んだメニューに二人は心が躍った。トレーナーは海老が乗った天丼にする事にして、タイシンに決まったか聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「タイシン、決まった?」

 

タイシン「……トレーナーと同じでいいよ」

 

佐竹「いいの?こんなに沢山あるのに……」

 

タイシン「アンタと同じ物が食べたいのっ!……バカ

 

佐竹「そ、そう?…………変なの」

 

同じ物を頼むタイシンに対してトレーナーは、疑問に思ったが気には留めず注文をして食事が来るまで待った。そしてメニューが運び込まれ、結構なボリュームに驚くトレーナーだった。トレーナーは内緒でマンゴープリンのシェイクを頼んでいた。それに気付いたタイシンは、食べきれるのかどうか、と説教をしてきた。

 

 

 

タイシン「ねぇ、シェイクまで頼んで食べきれるの?」

 

佐竹「大丈夫だって、飲み物だから」

 

タイシン「はぁ……だといいけど」

 

トレーナーは早速、天丼に手を付けた。

 

佐竹「うまっ!?海老めっちゃプリプリ!」

 

タイシン「食うの早っ!?…………ふふっ、かわいい

 

佐竹「……?何で笑ってるんだ」

 

タイシン「別に♪……いただきます」

 

 

 

子供のように食事にありつくトレーナーを見てタイシンは、また新しいトレーナーの一面を知れた事に喜びを感じた。ボリュームがあるとはいえ、タイシンは軽く平らげトレーナーの食べる姿を眺め食べ終わるのを待った。トレーナーも完食はしたが、やはり予想以上に多かった為シェイクが半分残ってしまった。

 

 

 

佐竹「うっぷ……入んない……」

 

タイシン「だから言ったじゃん。どうすんの、そのシェイク?」

 

佐竹「う~……タイシン飲んでくれない?残すのも勿体ないし」

 

タイシン「えっ!?……だって、間接キスじゃ……

 

佐竹「頼むぅ~」

 

タイシン「仕様がないな……今回だけだからね///」

 

トレーナーからシェイクを手渡され、タイシンは暫くストローから目が離せなかった。そして口を近づける度に、邪な思いがドンドン大きくなり恥ずかしくなっていった。遂にストローに口を付けシェイクを吸い出すが、味が分からなかった。

 

 

 

タイシン「チュ~……///」

 

佐竹「食べ終わったから、他の場所も回るか」

 

タイシン「こっちの気も知らないで……」

 

佐竹「何か言った?」

 

タイシン「何でもない。ほら、行こ」

 

 

 

今度はタイシンの方から手を引き、他の館内を見て回った。夕方になるまで二人は水族館を楽しみ、タイシンは常に笑顔だった。車で帰宅する前に、タイシンが海を見たいと言い出し水族館近くの砂浜で二人は腰掛けた。お互い今日の感想を言い合った。

 

 

 

佐竹「楽しかったな。ペンギンの触れ合いで、タイシンの緩み切った顔。写真に撮っておけばよかった」

 

タイシン「可愛いんだから仕方ないじゃん……///。アンタだって、ずっとはしゃいでたじゃん」

 

佐竹「普通にタイシンと一緒だったから、楽しかったんだが?」

 

タイシン「……ズル」

 

佐竹「タイシンは楽しくなかったのか?」

 

タイシン「そんな訳……ないじゃん……///」

 

佐竹「あ、そうそう。タイシンに渡そうと思って、買っておいたんだ。いつタイミングが合うか、分かんないからさ」

 

タイシン「何……?」

 

佐竹「まだ早いけど、プレゼント。6月10日でしょ、誕生石のサンストーンを贈ろうと思ってさ」

 

タイシン「え……覚えてたんだ」

 

佐竹「当たり前だろ。気に入らないかもしんないけど……」

 

タイシン「……っ」

 

 

 

タイシンはトレーナーから手渡されたプレゼントを開けた。そこには、サンストーンという橙色のペンダントが収められていた。タイシンはこれ程までに自分を大切に思ってくれている事に、トレーナーに対する愛情が更に深まった。そんな気持ちが溢れたタイシンは、無意識にトレーナーに抱き着き押し倒した。

 

 

 

佐竹「どうした、タイシン!?急に抱き着いて……」

 

タイシン「何もしてあげられなくて、ごめん……」

 

佐竹「え……そんな事ないだろ。学園に居る時だって、弁当作ってくれたり……今回だって朝ご飯作ってくれたり、遊びに誘ってくれたり……」

 

タイシン「そうじゃないっ……トレーナーが病気で悩んでた時、寄り添ってあげられなくて。アタシが側で……

 

佐竹「隠してた俺も悪いし……」

 

タイシン「それはトレーナーの優しさでしょっ!?……そんなトレーナーに甘えて、何もしてこなかった自分がほんっと……腹立つ。今回だってそう、アタシはトレーナーとただ出掛けたい邪な考えで擦り寄って……。トレーナーはアタシの事を考えて、プレゼントまで用意してくれてた……。自分が惨めになる。何かもう……花に擦り寄る虫みたい……」

 

佐竹「タイシン……」

 

 

 

トレーナーはそれ以上かける言葉が見つからなかった。タイシンは抱き着いたまま、堰を切ったように泣き出した。トレーナーはただ慰める事しか出来ず、タイシンの背中を擦った。太陽も沈み始め、星が見え始めた。タイシンは依然、抱き着いたままだったがトレーナーは声を掛けた。

 

 

 

佐竹「なぁ、タイシン。邪な気持ちって、そんなにいけない事でもないと思うんだ。ただ、相手を陥れようとか、相手を傷付ける行為は絶対ダメだけど……タイシンは俺を、辱める為とか嫌がらせの為にご飯作ってくれたり遊びに誘った訳じゃないだろ?」

 

タイシン「当たり前じゃん……」

 

佐竹「じゃあ、タイシンのそれは邪な気持ちなんかじゃない。相手の気持ちを汲んで、相手に尽くそうとする気持ちが前に出た結果だから全然惨めなんかじゃない」

 

タイシン「そうかな……」

 

佐竹「そうだろ。普通は、好きでもない相手と一緒に出掛けようとは思わないだろ?……それに、他の男とタイシンが出掛けてる所なんて見たくないし……今回、誘ってもらって嬉しかったし……///」

 

タイシン「……っ///……ふ~ん、トレーナーでも嫉妬するんだ♪」

 

佐竹「そりゃあ、するだろ。仲良かったのに、次の日の休みに偶々見かけたら男と歩いてて後々聞いてみたら彼氏だったパターン。どん底に落とされた気持ちになるだろ……」

 

タイシン「アタシだったらそんな事しないけど……」

 

佐竹「マジで!?」

 

タイシン「はっ、今の聞こえてたの?!有り得ないっ!」

 

佐竹「仕様がないだろ、聞こえたんだから?!」

 

「あのカップル、可愛い」

 

 

 

砂浜を歩く観光客に言われた事で二人の口論は止み、二人は恥ずかしくなり急いで車で帰る事にした。

 

 

 

佐竹「帰るか……」

 

タイシン「うん……」

 

 

 

車中は静かに時間が流れ、牧場へと帰った。

 

 

 

佐竹「今日は楽しかったよ」

 

タイシン「アタシも……まぁ、楽しかった。それじゃ」

 

 

 

 

タイシンは名残惜しそうに顔を向け、トレーナーと別れた。そして学園に戻ったタイシンは部屋に入り、トレーナーから貰ったペンダントを首に掛け鏡を眺めていた。

 

 

 

タイシン「ふふっ♪」

 

クリーク「タイシンちゃん、とっても嬉しそうですね。どうかしたんですか?」

 

タイシン「うわっ!?……クリーク、いつの間に」

 

クリーク「今、お風呂から上がってきたんです。そうしたら鏡に向かって嬉しそうに微笑んでるタイシンちゃんを見たので、つい声を掛けてしまいました。そのペンダント誰に頂いたんですか?」

 

タイシン「こ、これは……///」

 

クリーク「あぁ~。もしかして、トレーナーさんですか?いつもお世話してくれていた」

 

タイシン「いいからっ、早く寝なって!」

 

クリーク「あらあら、強引ですね」

 

 

 

無理矢理クリークを寝かし付け、タイシンも自分のベッドに潜り再びペンダントを見つめ続けるタイシン。

 

 

 

タイシン「アイツも中々、センスいいじゃん♪」

 

 

 

とは言いながら、トレーナーから貰えれば何でもいいタイシン。その夜は寝落ちするまで、ずっと眺め続けた。休み明けの登校時、タイシンはペンダントを着けて登校する事にした。

 

 

 

タイシン「よし……」

 

 

 

そして教室へと入り直ぐ様、机に座りまた同じようにペンダントを見続けた。そしてウイニングチケットが教室に入り、至近距離でタイシンに挨拶をした。

 

 

 

チケット「おはよー、タイシーン!」

 

タイシン「…………」

 

チケット「あれ?可笑しいな……。タイシン、聞こえてるー?」

 

タイシン「…………」

 

チケット「おーい、タイシン。どうしよう……タイシンが宝石を見ながら壊れちゃったっ!!」

 

 

 

呼び続けるが全く反応を示さないタイシンに、戸惑いを隠せないチケット。そこにハヤヒデも登校し、いつものように挨拶を交わす。

 

 

 

ハヤヒデ「おはよう、チケット。……どうかしたのか?」

 

チケット「聞いてよハヤヒデ。タイシン抜け殻みたいに反応しなくなっちゃったんだ」

 

ハヤヒデ「抜け殻とはどういう……」

 

 

 

ハヤヒデは言いながらタイシンの方を向いた。タイシンの緩み切った顔を見て、ハヤヒデは驚愕した。今まで共に学園生活を歩んできた友が、あれ程だらしない顔面を晒す事などなかった。そんな顔を見た為、ハヤヒデの脳はショートし思考できなかった。

 

 

 

チケット「ね、変でしょ?さっきから呼んでるのに、応えてくれないし」

 

ハヤヒデ「タイシンが見つめているのは、宝石か?」

 

チケット「そうだと思うけど、誰から貰ったのか聞きたいのに全然聞いてないし……」

 

ハヤヒデ「……試しなのだがチケット。あの宝石を一瞬、手で遮ってみてはくれないか?」

 

チケット「えぇ!?……やってどうするの?」

 

ハヤヒデ「少なくとも、意識はこちらに向くと思うがやってみるほかあるまい……」

 

 

 

そしてチケットがタイシンに近付き、タイシンの宝石を隠した。途端にタイシンは……。

 

 

 

タイシン「あれ……ない。何処……?」

 

チケット「え……」

 

タイシン「ない……ない、ない、ないっ。何処、アタシの宝物!?」

 

ハヤヒデ「チケット、離せ!」

 

チケット「は、はい!?」

 

 

 

チケットが手を離したことで、宝石が露わになり正気を取り戻していくタイシン。この惨状にハヤヒデは重く捉えてしまい、この現状に落胆した。そしてそこで、タイシンが正気を取り戻した。

 

 

 

タイシン「あれ、チケット。どうしたの?」

 

チケット「あっ、タイシン。戻ってきた、良かったああぁぁぁ……」

 

ハヤヒデ「タイシン、大丈夫か?」

 

タイシン「何が?」

 

チケット「覚えてないの?!」

 

ハヤヒデ「これは重症だな……。それでタイシン、そのペンダントはもしかして……」

 

タイシン「あぁ、これ。休みの日にトレーナーの所に遊びに行って、誕生日プレゼント貰った」

 

ハヤヒデ「やはりな。トレーナー君もとんでもない事をしてくれたものだ……」

 

チケット「ねぇ、ハヤヒデ。もし、またトレーナーさんが居なくなったらタイシン本当にヤバいかもよ?」

 

ハヤヒデ「あぁ、このまま依存してしまったらどうなるか……。トレーナー君の安否も……」

 

佐竹「俺がどうしたって?」

 

チケット「トレーナーさん!?」

ハヤヒデ「トレーナー君!?」

 

タイシン「……っ!」

 

 

 

トレーナーがトレセンに顔を出した事でタイシンは身なりを整え始め急に、しをらしい態度になった。トレーナーはここに来た目的を話し始めた。

 

 

 

佐竹「今日、三人に聞きたい事があって来たんだ」

 

チケット「聞きたい事?」

 

ハヤヒデ「私達でよければ何でも聞いてくれ」

 

佐竹「助かるよ。それで、ちょっとプレゼント選びに付き合って欲しいんだけど……放課後空いてる?」

 

タイシン「それ、誰にプレゼントするの?」

 

佐竹「あぁ、先輩にプレゼントを贈ろうと思って。そこで三人相談しようと思って」

 

ハヤヒデ「手伝うのは構わないが、それが男性であれば私達では参考にはならないぞ?」

 

佐竹「女の人だから、三人に相談したんだよ」

 

タイシン「……は?」

 

チケット「あ……まずい」

 

 

 

トレーナーが女性と標記した瞬間、タイシンの顔が歪んだ。そしてタイシンは、青筋を立て口調がキツくなる。

 

 

 

タイシン「で、トレーナーとどんな関係な訳?」

 

佐竹「仕事でいつもお世話になってる人だけど……。タイシンなんか怒ってる?」

 

タイシン「別にっ。じゃ、放課後」

 

 

 

先程のしをらしい対応とは裏腹に、怒りをぶつけるタイシンに戸惑いを隠せないトレーナー。そしてタイシンは自分の席に座り、仏頂面のまま外を眺め始めた。どうしていいか分からないトレーナーを、フォローするチケットとハヤヒデ。

 

 

 

チケット「気にする事ないよ、トレーナーさん。今回は偶々機嫌が悪かったのかも」

 

ハヤヒデ「だが、これはトレーナ君にも非がある。タイシンに誕生日プレゼントを贈ってから、他の女性に直ぐ贈るというのはタイミングが悪すぎる。別の機会でもよかったのではないか?」

 

佐竹「そうなんだけど……日頃の感謝の気持ちを込めての意味だから、他意はないんだ」

 

ハヤヒデ「はぁ……まぁ、トレーナー君が篤実な人物だという事は重々承知だ。その女性に関して、事細かに頼む」

 

佐竹「えっと……俺が入社した時からお世話になってて、年齢は50代で音楽が好きなくらいかな……」

 

チケット「え、同い年くらいの人じゃないんだ!?なんだ~……それじゃあ、タイシンに恋愛対象外だって教えてあげなきゃ……」

 

ハヤヒデ「まぁ、待てチケット。面白くなりそうだから、今回は事の展開に任せよう」

 

チケット「えぇ……そうかな?教えてあげた方が、丸く収まると思うんだけど……」

 

佐竹「二人で何コソコソしてんだ?」

 

ハヤヒデ「すまない。何処から回るか、チケットと相談していたんだ。では、放課後を楽しみにしているよトレーナー君」

 

チケット「またね、トレーナーさん!」

 

 

 

トレーナーは退室し、元自分のトレーナー室に向かった。そこには、机で資料と睨めっこしている桐生院の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「元気か、桐生院」

 

桐生院「あっ、先輩。来てたんですね」

 

佐竹「あぁ、少し用があってな。それにしても悪いな、俺の担当を引き継いでもらって」

 

桐生院「いえ、三人増えたくらいでどうってことないですよ。先輩には、そちらの仕事があるんですから」

 

佐竹「みんな元気にやってるようで、俺も安心だよ。ちょっと桐生院に聞きたい事があるんだが、いいか?」

 

桐生院「はい、いいですよ」

 

佐竹「50代くらいの女の人が喜ぶプレゼントって、わかる?」

 

桐生院「そうですね……。やっぱり、趣味とか仕事関係で使う物が好ましいと思いますが」

 

佐竹「趣味か仕事関係ね。参考にさせてもらうよ、それじゃまた来る」

 

桐生院「いつでも、いらしてくださいね!他の子も喜ぶと思いますので」

 

 

 

トレーナー室を後にし、トレーナーは放課後になるまで時間を潰す事にした。そして日が傾き、再びタイシン達の教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「三人共いる?」

 

チケット「いるよー!」

 

ハヤヒデ「それでは行こうか」

 

タイシン「…………」

 

 

 

四人は近くの駅周辺で、プレゼントを選ぶ事となった。まだ少し機嫌が悪いタイシンは、三人の後を追うように少し後ろで不貞腐れていた。

 

 

 

佐竹「なあ、まだ怒ってるんだが……」

 

ハヤヒデ「こればかりは、トレーナー君がどうにかするしかあるまい」

 

チケット「トレーナーさんの気持ちはちゃんと伝わると思うから、頑張ってね」

 

佐竹「今もめっちゃ睨んでんだけど……」

 

タイシン「…………」

 

 

 

駅周辺の商店街へと辿り着き、ハヤヒデは一つの提案として三人に提言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハヤヒデ「ここからは二手に分かれ、各自で探そう。その方が能率が上がる。私とチケットは、右側を重点的に散策しておく。トレーナー君とタイシンは、左側を頼む」

 

佐竹「えっ、四人で探すって話は!?」

 

ハヤヒデ「健闘を祈る」

 

 

 

二人は商店街の人混みに消え、見えなくなった。トレーナーとタイシンは取り残され、暫くの沈黙が続く。

 

 

 

佐竹「……」

 

タイシン「……」

 

タイシン「行かないの?」

 

佐竹「あ、あぁ、行こうか……」

 

 

 

少しぎこちない二人は、商店街へと向かった。そんな二人を後ろから監視する、チケットとハヤヒデ。

 

 

 

チケット「いいの、プレゼント探さなくて?」

 

ハヤヒデ「それも大事だが、今は二人の関係を修復するのが先決だ。それにチケットだって、タイシンがトレーナー君に甘える姿を見たくないのか!」

 

チケット「そりゃあ、見たいけど……。ハヤヒデの目的ってそっちなんじゃ……」

 

 

 

二人が会話を繰り広げている間に、トレーナーとタイシンはどの店に入るか決めかねていた。

 

 

 

佐竹「えっと……タイシンはどの店がいいと思う?」

 

タイシン「はぁ……何処でもいいんじゃない?」

 

佐竹「タイシン、これでもお世話になった人への恩返しなんだ。真剣に答えてくれ」

 

タイシン「トレーナーが選んだ物なら、何でもいいんじゃないの?」

 

佐竹「流石にそれは相手に失礼だろ」

 

タイシン「じゃあ、一人で選んでればっ?」

 

 

 

ドンドン二人の口論は大きくなり、通りすがりの人達が止まるレベル。瞬く間に人垣が出来ていく中、二人の喧嘩は激化していき止められる状況では無くなりチケットとハヤヒデも動揺していた。

 

 

 

チケット「どうしようハヤヒデ、凄い事になっちゃってるよ?!」

 

ハヤヒデ「目に余るようであれば止めねばな……」

 

 

 

模索する二人を余所に、トレーナーとタイシンの言い合いは止まず続いていた。

 

 

 

佐竹「何がそんなに気に入らないんだ、今のタイシンおかしいぞ?」

 

タイシン「単純な頭だから、そんな事も分からないんでしょ?!」

 

佐竹「相手にプレゼントする行為に、デメリットでもあるのか?」

 

タイシン「その相手が問題なんでしょっ!!」

 

佐竹「結婚している相手に対して、邪な事なんか考える訳ないだろ!?俺も普通の大人だから、それくらい弁えてるわ!」

 

タイシン「だからっ…………は?結婚?」

 

佐竹「先輩に対してのプレゼントとタイシンに対してのプレゼントは全くの別物だっ!好きでも無かったら、あんなペンダントあげる訳ないだろっ!!」

 

タイシン「えっ、ちょっ……待って」

 

佐竹「石言葉を知らずに受け取ったのか、だったら今この場で言ってやる。愛の祝福、正しい行い、幸せな日々って意味だっ!俺がどんな気持ちでお前に贈ったか分かるか?!」

 

タイシン「貰っただけで嬉しかったから……。だから石の言葉なんて見なかった訳で……///

 

 

 

トレーナーの直接的な言葉に、タイシンの語尾はどんどん小さくなり赤面していった。周りに居た観衆も、良いものが観れたとニヤニヤしながらその場から去って行った。そしてその後ろから、同じように微笑む二人。

 

 

 

チケット「トレーナーさん、あんな大胆な事を人前で言えるなんて……」

 

ハヤヒデ「常人では真似できない芸当だな……」

 

 

 

そして何だかんだあり、プレゼントはタイシンの音楽機器に決まりそのまま学園へと帰った。

 

 

 

チケット「いい買い物が出来たね。ね、タイシン!」

 

タイシン「う、うん……///」

 

 

 

常時タイシンはこの状態で、トレーナーから言われた言葉が放れなかった。そしてハヤヒデは皆に聞こえない声で、タイシンに問いかけた。

 

 

 

ハヤヒデ「それで、どうだった?トレーナー君からの告白は」

 

タイシン「聞いてたの!?……てか、まだ告白って訳じゃ……」

 

ハヤヒデ「傍から見ればそうだったと思うが。トレーナー君に直接聞いてみればいいだろ?」

 

タイシン「聞ける訳ないじゃん!?」

 

 

 

話している間に学園に着き夕方の時間、トレーナーは元の世界へ帰ろうとした。

 

 

 

佐竹「ありがとう。これで、先輩も喜んでくれると思うから。時間が合う時にでも、また御礼するよ。じゃ」

 

タイシン「あ、あのさっ、トレーナー」

 

 

 

タイシンがトレーナーを引き留め、今思っている事を話そうとした。察したチケットとハヤヒデは、その場を離れた。

 

 

 

タイシン「トレーナーは……どういう思いで、ペンダントくれたの?」

 

佐竹「石の言葉の意味だが?」

 

タイシン「そう……じゃあ、アタシの事……好きってこと?」

 

佐竹「う~ん……分からん」

 

タイシン「でも、アタシが他の男と歩いてるのは嫌なんでしょ?」

 

佐竹「嫌だ……」

 

タイシン「じゃあ、好きでしょ」

 

佐竹「好きだとは思うけど……う~ん」

 

タイシン「はぁ……まぁ、いいや。ただ……」

 

 

 

タイシンはトレーナーの側へ行き、服を引っ張り耳元で囁いた。

 

 

 

タイシン「その気持ちが分かるまで、しっかり手綱……握っときなよ♪」

 

佐竹「……っ///」

 

タイシン「えへへ……バーカ♪」

 

 

 

タイシンはトレーナーの腕に絡みつき、学園の中へと入ろうとした時、物陰に隠れていたチケットとハヤヒデはニヤニヤしながらタイシンの方を見ていた。タイシンは二人を追い掛け、トレーナーは呆れたように三人の後ろ姿を眺めていた。

 

 

 

 

 




タイシンはしっかり叱ってくれると思うから、いいお母さんになりそう。
次はライス編になります。

どのウマ娘とイチャイチャしたい?

  • タイキシャトル
  • ハルウララ
  • ダイワスカーレット
  • ミスターシービー
  • シンボリルドルフ
  • オグリキャップ
  • サイレンススズカ
  • ゴールドシップ
  • トウカイテイオー
  • ライスシャワー
  • ナリタタイシン
  • スペシャルウィーク
  • エイシンフラッシュ
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