馬の感情が読める厩務員が転生した件   作:泰然

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長く書くつもりないんですが、長くなっちゃった。


ライス編 離れたくない気持ち

トレーナーがタキオンの開発した転送装置で行き来できるようになり、より交流を深める事が出来た。そしていつものように、トレーナーが元の世界に戻ろうとした時……。

 

 

 

ライス「ヤダ、行っちゃヤダッ……離れたくないっ」

 

佐竹「なぁ、ライス。お願いだから聞き分けてくれ……別に一生逢えない訳じゃないんだから」

 

ライス「そんなの信じられないっ。絶対ないって保証があればいいけど、確率が1%でもあって……それでお兄さまと逢えなくなるなんて耐えられないっ。お兄さまと一緒にいたい……」

 

佐竹「気持ちは分かるけど……はぁ……これで何回目だ。ブルボン、どうにかしてくれ」

 

ブルボン「思考中…………今トレーナーさんからライスさんを引き剝がすと、腕が千切れると予測します。強行するのであれば、止めはしませんが」

 

佐竹「こわ……しかし、これで何回目だ?」

 

ブルボン「来訪される回数は多くありませんが、30回は視聴しました」

 

佐竹「よく覚えてるな……」

 

ライス「ずっとここにいよ、お兄さま?住所とかこっちに移して。ね?」

 

佐竹「う~ん……俺にも生活があるし。でも、これだけ引き留めてもらうと気持ちが揺らぐんだよなぁ」

 

ブルボン「二人一緒に転送すればいいと思うのですが……」

 

佐竹「それだっ!」

ライス「それだよっ!」

 

 

 

その発言を聞いた二人はブルボンの提案を飲み、そのまま転送装置に乗りライスは数日過ごす事となった。

 

 

 

ライス「お兄さまの所に来るの、久しぶり」

 

佐竹「何かと忙しかったしな。ライスとまた逢えた時、一日中泣いてたもんな」

 

ライス「うぅ……恥ずかしいから、忘れてよぉ……///」

 

佐竹「でも、あんなに泣いてもらったら嬉しいけどな」

 

ライス「お兄さま、呑気に言ってるけど本当にライス心配したんだよ?」

 

佐竹「ごめん、ごめん。取り敢えず、急に用意できないから俺の部屋で泊ってくれ」

 

ライス「出来てても、お兄さまの部屋に泊るつもりだったから大丈夫だよ?」

 

佐竹「そ、そうか。じゃあ、行こう」

 

ライス「うん!」

 

 

 

トレーナーは自分が使う宿舎へと案内し、寝る時間帯になってきたので自分用の布団を敷いてベッドにライスを寝かせようとしたが、ライスに止められてしまった。

 

 

 

ライス「ライス、体小さいからベッド一つで大丈夫だよ、お兄さま?」

 

佐竹「また寝るのか?!」

 

 

 

転送装置が開発され、トレーナーを失いそうになった感情と今まで抑え込んできた気持ちが重なり、ライスはトレーナーから離れなくなってしまい困らせていた。逢う度に一緒に寝る事を強要するライスに、どう対応すればいいか分からないトレーナー。

 

 

 

ライス「お兄さまは、ライスと寝たくないの?」

 

佐竹「うっ……。寝たくない訳じゃないが、心臓が持たんのよなぁ……」

 

ライス「じゃあ、ライスがお兄さまのお胸、トントンしてあげる。そしたら、一緒に寝れるよね?」

 

佐竹「はぁ……そうだな。何言っても、ダメな気がしてきた……

 

ライス「ふふっ♪」

 

 

 

ライスはウキウキで準備を進めパジャマに着替えようとした時、ジャージしか持ってきてない事に気付いた。

 

 

 

ライス「どうしよう……。パジャマ持ってくるの忘れちゃった……」

 

佐竹「俺の寝巻き貸してあげようか?」

 

ライス「いいの?やった!忘れてきて良かった……♪

 

佐竹「ほら、寝るぞ~」

 

ライス「失礼します。…………お兄さま、温かい」

 

佐竹「いちいち言わんでいい」

 

ライス「お兄さまって意外と筋肉あるよね。鍛えてるの?」

 

佐竹「恥ずかしい身体じゃない程度には……」

 

ライス「何か、安心する……」

 

佐竹(触りながら抱き着くのはやめてくれ……!)

 

 

 

そんなトレーナーの気持ちも知らずにライスは、トレーナーの胸に頭を預け寝息を立てていった。そして次の日を迎え、一睡も出来なかったトレーナーは朝の仕事を済ませようとした時、ライスに腕を掴まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「ライスおはよう」

 

ライス「お兄さま……もうお仕事?」

 

佐竹「うん。ライスはゆっくり寝てていいよ」

 

ライス「ううん、ライスも行く……」

 

佐竹「無理しなくていいぞ?」

 

ライス「お兄さまと一緒に行く……」

 

 

 

眠い目を擦るライスは頑なに付いて行こうとする為、トレーナーも断り切れず連れて行く事にした。ライスは朝練もしている為、目も覚めトレーナーの仕事をずっと眺め馬と戯れる姿を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライス「お兄さま、楽しそう……。あのお馬さん、あんなに撫でてもらって……。いいなぁ……あっ、そうだ!」

 

 

 

ライスは何かを思いついたように、トレーナーの下へ駆け出して行った。

 

 

 

ライス「ねぇ、お兄さま。ライスに手伝える事ない?」

 

佐竹「ないことはないけど……やりたいの?」

 

ライス「うん!」

 

佐竹「それじゃあ、飼葉を柵の中に放り投げてきて。全部で10個」

 

ライス「うん、わかった!」

 

佐竹「滑らないように気を付けろよ~!…………姪っ子が手伝ってくれてるみたいで、微笑ましいなぁ」

 

 

 

そうしてライスはトレーナーの仕事を手伝い、嬉しそうに熟していった。時間は過ぎていき、昼食となりお昼休憩をライスと取る事にした。そして頻りにライスはトレーナーの方を向き、笑顔を見せていた。

 

 

 

佐竹「どうしたライス?そんなに笑って……」

 

ライス「ライス、食べる前にお兄さまにお願いしたい事があるの」

 

佐竹「どうした急に……。まぁ、出来る範囲なら大丈夫だぞ」

 

ライス「ライスにも、あのお馬さんと同じように撫でて欲しいの」

 

佐竹「今はちょっと恥ずかしいかなぁ……他の人も居るし……」

 

ライス「ライス、お兄さまの為にいっぱいお手伝いしたんだよ……ダメ?」

 

佐竹「それが狙いか……。仕方ないな」

 

ライス「やった!」

 

 

 

喜んだ顔を見せるライスに対して、他の従業員がいる中でするのは気が引けたがライスに泣きつかれても困ると思ったトレーナーは、感情を押し殺して髪を撫でた。撫でる度にライス尻尾が左右に揺れ、喜んでいるのが分かった。

 

 

 

ライス「ふふん♪」

 

佐竹(かわいい……)

 

ライス「ライスもお返しで、お兄さまの頭も撫でてあげるね」

 

佐竹「え、俺はいいよ!?」

 

ライス「遠慮しなくていいから。ほら、よしよ~し……」

 

佐竹「……///」

 

ライス「お兄さま、かわいい♪」

 

「尊い……」

「尊い……」

 

 

 

二人の光景を見ていたトレーナーの仲間は、動物を見ているような感覚に襲われ癒されていた。昼食を食べ終わり、また仕事へと戻り夜が近づいて来た事で放牧していた馬を馬房へと移し今日の仕事は粗方、終わった。片付けをしている最中、ライスが明日の予定を聞いてきた。

 

 

 

ライス「お兄さま、明日もお仕事?」

 

佐竹「そうだな。明日も同じようにあるな」

 

ライス「そうなんだ……。う~ん……どうしてもダメ、お兄さま?」

 

佐竹「急には……」

 

 

 

頭を悩ますトレーナーに、社長がその話を聞いて……。

 

 

 

「一日くらい、休んだって構わないさ。有給にしておくから、行ってきな」

 

佐竹「ありがとうございます、社長」

 

ライス「やった!何処に行きたい?お兄さまの行きたい所でいいよ」

 

佐竹「行きたい所か……そうだなぁ……あっ」

 

 

 

何かを思いついたトレーナーは、次の日に備え就寝する事にした。そして次の朝を迎え、ウマ娘の世界へ二人は転送した。そして辿り着いたのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライス「喫茶店?」

 

佐竹「俺がこの世界で頻繁に来るようになった店。いつもコーヒーを頼んでゆっくりするのが、自分の安らぎだった場所だ」

 

ライス「お兄さまにとって大切な場所なんだね」

 

佐竹「それもそうだし、マスターが淹れるてくれるコーヒーが上手いんだ。自分なりに見て再現してるんだけど、これが中々……」

 

 

 

店内に入ろうと扉を押すと、喫茶店特有の上に付いているベルが鳴り雰囲気が変わる。ライスは先ず店の匂いを嗅ぎ、店内をキョロキョロ見渡した。トレーナーは慣れたように、店長に話しかけカウンター席に座った。

 

 

 

佐竹「マスター、お久しぶりです」

 

マスター「やぁ、トレーナー君。久しぶりだね、体調はどうだい?」

 

佐竹「えぇ、いつも通り元気ですよ」

 

マスター「そうかい。うん?……その子は、ライスシャワーかい?」

 

ライス「は、初めまして、ライスシャワーです……。今日はお兄さまと遊びに来ました」

 

マスター「そうですか。私はここの喫茶店の店長で、気軽にマスターと呼んでください。君の活躍は、よくテレビで拝見させてもらっています」

 

ライス「あ、ありがとうございます……///」

 

マスター「それで二人共、何を飲むのかな?」

 

 

 

マスターはそう言いながら、大きいコーヒーミルに豆を入れながら聞いた。

 

 

 

佐竹「俺はいつもので」

 

マスター「だと思った。ライスさんは何を飲まれます?」

 

ライス「お兄さまと同じもので」

 

マスター「畏まりました。…………なるほどね」

 

 

 

二人はブレンドコーヒーを注文し、ライスは物珍しさにコーヒー豆を挽く姿と音を楽しんでいた。トレーナーは、いつものように店内に置いてある本を読みながら、お店から流れる静かなピアノの音楽に耳を傾け待った。そして出来上がったコーヒーを、店長は二人の前に差し出した。

 

 

 

マスター「はい、どうぞ」

 

佐竹「ありがとございます。この間、マスターの入れ方で真似をしてるんですが、中々再現できなくて困ってますよ」

 

マスター「時間と労力が必要だから、トレーナー君には難しいかもしれないね」

 

ライス「わぁ……いい匂い」

 

佐竹「ライスは普段、コーヒーは飲む?」

 

ライス「時々かな。頻繁には飲んだりはしないかも」

 

ライス「いただきます……っ!」

 

 

 

ライスはそう言いながらコーヒーを口にし、驚いた。普段飲んでいるようなコーヒーと違い、飲みやすかった。

 

 

 

ライス「マスターさん、何でこんなに飲みやすいんですか?」

 

マスター「口に合ってよかったよ。飲みやすい理由は、お客さんの舌にもよるけど私が使ってる豆は『モカ』と『コロンビア』……後は色々入れてるけど、主にこれかな。フルーティーな味と香り、それに加えてコクも生まれる。苦味や渋みは、そのコクで補ってるような感覚かな。付け加えると、トレーナー君が渋いコーヒーが苦手という事もあるけど」

 

佐竹「余計なこと言わないで下さいよ……」

 

ライス「ふふっ♪」

 

マスター「取り敢えず、君達の舌に合ってよかったよ。個人の味覚は、人それぞれだからね。料理でも同じだね」

 

 

 

マスターの蘊蓄を聞きながら、二人は頷きコーヒーを啜った。そしてトレーナーが本を返しに行っている間、マスターはライスに耳打ちをした。

 

 

 

マスター「君達の舌は凄く似ていますね」

 

ライス「えっ、どうしてですか?」

 

マスター「コーヒーは特に好みが分かれやすくて、作るのが大変なんですが私のコーヒーは特に好き嫌いが分かれるんです」

 

ライス「美味しかったと思いますけど……」

 

マスター「苦みが渋みが足りないと仰るお客さんもいます。それにライスさんの場合、トレーナー君と同じものを注文しましたよね?」

 

ライス「はい……」

 

マスター「トレーナー君が頼んだブレンドコーヒーを、透かさず注文して分かりました。ライスさんはトレーナー君の事が好きですよね?」

 

ライス「っ!?」

 

マスター「好きでもなかったら、即答で同じ注文はしませんからね」

 

ライス「マスターさん。お兄さまには内緒で……///」

 

マスター「どうでしょうね~?」

 

ライス「マスターさん!」

 

佐竹「二人で何話してるんだ?」

 

ライス「え、えっと……」

 

マスター「内緒ですよ」

 

佐竹「え~……何でですか?」

 

ライス「ほ、ほら、お兄さま。スイーツ一緒に食べよう?」

 

佐竹「はぐらかされたような感じだなぁ……」

 

 

 

ライスに言われるままトレーナーはスイーツを食べ、二人はその後も楽しんだ。少し時間が経ち落ち着いた頃、二人は帰る準備をした。

 

 

 

佐竹「それじゃあマスター、また来ます」

 

マスター「あぁ、またいつでも来なさい。勿論、ライスさんも一緒に」

 

ライス「はい、また来ます。コーヒー美味しかったです」

 

 

 

ライスは手を振りながら、店長と別れた。別れ際に手を振る店長は、まるで親のような笑顔で二人を見送った。そして二人は、学園へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「ライス、どうだった?紹介した喫茶店は」

 

ライス「また行きたい!今度は違うデザートも食べてみたい」

 

佐竹「気に入ってくれて嬉しいよ。それじゃあ、また今度……あれ、財布が無い?!」

 

ライス「落としたの、お兄さま?」

 

佐竹「そんなはずは……」

 

 

 

ポケットやバッグを弄るトレーナー。その時、自身の携帯が鳴りトレーナーは取り出し相手は店長からだった。

 

 

 

佐竹「もしもし、マスターどうしたんですか?…………置いたままでしたか、すいません直ぐ取りに行きます」

 

ライス「お店に有ったの?」

 

佐竹「そうらしい」

 

ライス「じゃあ、取りに戻らなきゃ」

 

佐竹「ライスはここで待っててくれ。ライスも戻って、手間取らせる訳にいかないしな」

 

ライス「ライスはそんな事……」

 

佐竹「直ぐ戻るから、そこのベンチにでも座っててくれ」

 

ライス「あっ…………行っちゃった」

 

 

 

仕方なくライスは、トレーナーが戻るまでベンチに腰掛け待つ事にした。だが、思った以上に長引いているのかトレーナーが戻ってこなかった。

 

 

 

ライス「お兄さま、遅いなぁ……」

 

 

 

心配になってきたライスは喫茶店に向かうと思ったが、行き違いになってトレーナーを困らせてしまうと考え再度、座り直した。また数分待っていると……。

 

 

 

「何してるの、ウマ娘のお嬢ちゃん?」

 

ライス「人を待っているんです」

 

 

 

いかにもチャラい男がナンパしてきた。

 

 

 

「そんなこと言って、置いて行かれたんじゃないの~?」

 

ライス「お兄さまはそんな事しないっ……です」

 

「でも、遠くで見てたけど全然来ないじゃん。今頃、他の女でも引っかけてんじゃないの?」

 

ライス「ライスの……お兄さまを悪く言わないで」

 

「に、睨んだところで全然怖くねぇよ」

 

ライス「悪口言った代わりに、お兄さまのいい所を最低20個答えて?」

 

「あ、会った事もねぇ奴の長所なんて、20個も言える訳ねぇだろ?!」

 

ライス「言えるよね…………?」

 

「ひっ……何だコイツ。今回は、外れくじ引いちまったぜ……」

 

 

 

男はライスの迫力に押され、捨て台詞を吐き捨てながら去って行った。そこからまた数分経ち、ようやくトレーナーが戻ってきた。

 

 

 

佐竹「ごめん、ライス。道に迷ってた外国人、案内してたら遅くなった……。何でライス、そんなに笑ってるの?」

 

ライス「やっぱりお兄さまは、ちゃんと戻って来たなぁと思って♪」

 

佐竹「……当たり前だろ?」

 

 

 

喜ぶライスに少し戸惑うトレーナーだが、そのまま学園へと再び歩き出し帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「楽しかったな、ライス」

 

ライス「うん、今度はライスのおすすめの場所にも連れて行ってあげるね」

 

佐竹「おっ、そうだな。また休みが出来たら一緒に行こうな」

 

 

 

次のデートコースを決める二人。そんな二人の会話に割り込み、常に無表情でお馴染みのブルボンが顔を顰めていた。

 

 

 

ブルボン「終わったのに、もう次のデートを考えているのですか……」

 

ライス「ひゃあっ、ブルボンさん!?」

 

佐竹「驚かすなよ……」

 

ブルボン「それで、今日は楽しめたのでしょうか?」

 

ライス「うん、とっても楽しかったよ!」

 

ブルボン「それは良かったです。では、トレーナーさんは今からお帰りになるのですか?」

 

佐竹「そうだな……ライスが引き止めなければ」

 

ライス「今日は我慢できるよ。お兄さまと一緒に、沢山思い出作りが出来たもん」

 

佐竹「なら良かった。それじゃあ、また来るから。次はライスの行きたい場所に、連れてってくれよ」

 

ライス「うん、またねお兄さま!」

 

 

 

意外と引き下がらないライスを見てトレーナーは安心し、そのまま転送装置に戻ろうとした時タキオンに呼び止められた。

 

 

 

佐竹「さて、帰るか」

 

タキオン「トレーナー君、久しいねぇ」

 

佐竹「タキオン、どうした?」

 

タキオン「実は近々、転送装置のメンテナンスをしようと思ってね。報告を兼ねて、1週間は行き来が出来ないと思うから、暫くは辛抱してくれたまえ」

 

佐竹「タキオンのお陰で、今の現状が出来上がってるんだ。それくらい待つさ」

 

タキオン「すまないね。まぁ、危惧しているのはトレーナー君の方じゃなくて、君を慕っているウマ娘の方だがねぇ……。そうそう、直る頃にはランプが緑色に光る筈だから、それを目安に訪れてくれ。長引くかもしれないが、大目に見てくれ」

 

佐竹「あぁ、ゆっくりで構わないさ。またな、タキオン」

 

 

 

そう言い残し、トレーナーは元の世界に戻った。トレーナーは喫茶店での思い出を振り返り、頬を緩ませた。そしてあっと言う間に1週間が過ぎ、転送装置へとトレーナーは向かった。だが、まだランプは緑に光っておらず無点灯のままだった。

 

 

 

佐竹「あれ、もしかして長引いてる?まぁ、その内直るだろう」

 

 

 

楽観視していたトレーナーは、数日経てば直ると勘繰っていたが結局修理が終わったのは、その1週間後だった。労いも兼ねてトレーナーはタキオンに、リンゴジュースを持っていく事にした。そしてトレーナーは学園を訪れ、装置から出た瞬間お腹に衝撃が走った。

 

 

 

佐竹「ぐぇっ!?……な、何だ?」

 

ライス「お、お兄さま……お兄さまぁぁぁぁ!」

 

佐竹「えっ、ラ、ライス!?どうした?」

 

タキオン「いやはや、すまないねぇ……トレーナー君。思ったより時間が掛かってしまったよ。やはりこうなるのは予想していたが……」

 

佐竹「どうなってんの?」

 

タキオン「掻い摘んで話すとだね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間前

 

タキオン「すまないねぇ、ライス君。暫くはトレーナー君とは逢えないが、辛抱してくれ」

 

ライス「うん、ライス我慢できるよ。お兄さまも同じように辛いと思うから、1週間なら大丈夫」

 

タキオン「遅れても怒らないでくれよ?」

 

 

 

1週間前

 

ライス「タキオンさん、まだ終わらないの?1週間経っちゃったよ?」

 

タキオン「中々上手くいかなくてねぇ。色々見てると、不備が見つかって1週間じゃ終わらないかもしれない……」

 

ライス「そんな……。このままお兄さまと、逢えなくなったりしない、ですよね……?」

 

タキオン「そうはならないが、少し時間が……」

 

 

 

前日

 

ライス「タキオンさんっ……もう、2週間が経とうとしてます。本当に直るんですか?!」

 

タキオン「ライス君、落ち着きたまえ……。もうチェックの段階だから、そこまで焦る必要は……」

 

ライス「ライス……もう、2週間もお兄さまの声……聞いてないんだよ?!何の前触れもなく、お別れなんて……ライスには、耐えられないよ……」

 

タキオン「明日で出来るから、そんなに心配しなくても……」

 

ライス「タキオンさんは何でそんなに、達観していられるんですか!?今まで逢えてたのに、明日から一生逢えないのと同じ……。タキオンさんの家族だったら、そんなに冷静でいられるんですか?!」

 

タキオン「私も家族だったら悲しいさ。でも、トレーナー君は家族でもなんでも……あっ……」

 

ライス「タキオンさんは、好きな人が目の前から消えて居なくなる想像をした事があるんですか?……宝塚記念の時も、お兄さまが病院に運ばれた時……どれくらい目の前が真っ暗になったか。何度も病院に運ばれる度に、ライスはいつも祈り続けた。早く治りますようにって……。そしてお兄さまが居なくなった日、ライスの拠り所がなくなった日」

 

タキオン「ライス君、それ以上は……」

 

ライス「ライスはお兄さまが居たから頑張れた……。それが一夜にして、全部なくなったライスの気持ちが……。好きな人をなくした時の気持ちが、タキオンさんにわかるんですか!?

 

タキオン「…………」

 

ライス「でも、タキオンさんには感謝しています。あの装置が無ければライスはどうすればいいか、どうしていたかはわかりません。でもまた……今回の件で、お兄さまとまた逢えない可能性が出てきました。途方もない時空を彷徨い、お兄さまがいるであろう次元に飛んで、あの苦しい時間の中に身を投じるのは……もう、やりたくないんです」

 

タキオン「……。明日、必ず装置を直して見せるから待っててくれ。私も、あの時空に飛び込むのはごめんだからね」

 

ライス「………」

 

 

 

ライスは口には出さず、ただ頷き次の日を待った。そして遂に、お昼頃に装置が直りライスは早足で乗り込もうとするが起動しなかった。次の瞬間、装置からトレーナーが現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「っていう具合だね」

 

佐竹「思ったよりヘビーな話だった……」

 

タキオン「あの時のライス君は怖くてねぇ。殺されそうになったよ……」

 

佐竹「聞いてるだけでも怖いわ……」

 

ライス「ねぇ、お兄さま。ライスが行く前に来てくれたって事は、ライスに逢いたかったんだよね?」

 

佐竹「そ、そりゃあ2週間も空いたら寂しいからな」

 

ライス「……っ///お兄さま大好き!」

 

佐竹「ぎゃぁぁぁ!?ライス、抱き着くのはいいが絞め過ぎて内臓が……」

 

タキオン「トレーナー君が死んでしまうぞ、ライス君!?」

 

 

 

締め上げられる前に解放され、事無きを得たトレーナーは少し呼吸困難に陥ったが何とかなった。常軌を逸したライスの言動にトレーナーは、危険だと判断し学園近くの公園に連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐竹「落ち着いたか、ライス?」

 

ライス「うん……でも、怖かった」

 

佐竹「何が?」

 

ライス「またお兄さまが……ライスの下から居なくなったらって考えたら、可笑しくなっちゃって……」

 

佐竹「確かにな。2週間はちょっと長かったな……」

 

ライス「ねぇ、お兄さま。宝塚記念の時、覚えてる?」

 

佐竹「あぁ、覚えてる」

 

ライス「ライスね、何でお兄さまがライスの出走を拒んだのか分からなかった。でも今は分かるの……ライス、あの時死んじゃうんでしょ?」

 

佐竹「……宝塚記念を最期に、ライスは予後不良で……」

 

ライス「でも、お兄さまのお陰でライスは今も元気に走れてる。ただ、その代わりにお兄さまに全部悪い物がいっちゃって…………お兄さまが元気に振る舞うとする度、ライスのお胸……ズキズキ痛かった。あんな想い……二度としたくない、お兄さまの居ない世界なんて色の無い世界と同じ……」

 

佐竹「ライス……」

 

ライス「ライス、お兄さまに迷惑……かけてばっかり。お兄さまが居なかったら、何にも出来ない……ダメダメなウマ娘。今だって、離れたくないって心の中で叫んでるんだもん……。こんなライス、嫌いだよね……?」

 

佐竹「ライスはダメでも、迷惑なんかじゃない。ただただ、優しいウマ娘なだけだ。嫌われたらどうしようとか、相手に迷惑かけないかとか、心配できるのは相手を思いやる心があるから出る言葉で、決して悪い事じゃない」

 

ライス「でもっ、そうしたらお兄さまにもっと迷惑かけちゃうよ……。それでもいいの?」

 

佐竹「それが俺の仕事だからな。何かにぶつかったら、先ずは俺に相談して解決すればいい、な?」

 

ライス「……お兄さまはやっぱり凄いね」

 

佐竹「凄くないさ、みんな心配だから何かしてあげたくなるんだ。ライスと一緒」

 

ライス「……ライス、今からお兄さまに迷惑かけちゃうけど、いい?」

 

佐竹「何でも言っていいぞ!」

 

ライス「ライス、お兄さまと一緒に暮らしたい。どんな時も離れたくない、幸せにしてあげたい貴方に誓います……。ライスの一生を捧げて」

 

佐竹「えっ、それって……プロポーズ?」

 

ライス「うん……///。いや、かな?」

 

佐竹「いや、じゃないけど……。少し恥ずかしいな……///」

 

ライス「言った本人より恥ずかしがるなんて、お兄さまはやっぱり可愛いね♪」

 

佐竹「う、うるさいなぁ……。でも、ライスの幸せが俺の幸せでもあるから。こちらこそ、お願いします」

 

ライス「……っ。ありがとう、お兄さま」

 

 

 

二人はベンチから立ち上がり、お互い手を握りながら誓い合った。ライスは涙を流しながら、大声で泣いた。そして時間が過ぎ空が茜色に染まっていく頃、二人は学園へと歩きライスがトレーナーの手を強く握り話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

ライス「あの時よりライス、成長出来てる?……そうだったら、嬉しいな」

 

佐竹「あの時?」

 

ライス「最初の頃とか」

 

佐竹「変わったところもあるけど、変わらないところもあるな」

 

ライス「ふふっ……お兄さまは、ライスよりライスの事が分かってるよね」

 

佐竹「そんな事は無いと思うが……」

 

ライス「でもライスね、神様より凄い事が出来ちゃうの」

 

佐竹「へぇ、それは凄いな。どんなこと?」

 

ライス「誰よりも、神様よりもお兄さまの事を愛してるって事♪

 

佐竹「……ライスは凄いな」

 

ライス「ふふっ♪」

 

 

 

そして二人は夕陽に照らされながら、固く手を結び足並みを揃えて歩いて行った。そんな二人を見ながら、安堵するタキオンとブルボン。

 

 

 

ブルボン「やっと落ち着きましたね」

 

タキオン「全く……甘い言葉をベラベラと。私が紅茶に入れる砂糖より甘いよ」

 

ブルボン「ですが、ライスさんが幸せそうで何よりです」

 

タキオン「今後どうなっていくか、二人の動向が楽しみだね」

 

 

 

二人の行く末を、想像しながら楽しむブルボンとタキオン。そんな事は言うまでもなく、二人は苦しみも悲しみも喜びも分け合いながら歩み、夕陽へと進んで行った。

 

 




この間、よみうりランド行ってきました。ウマ娘の楽曲がずっと流れてるのが、神過ぎました。
コラボアトラクションとか乗ったり、物販が買えたので大満足です。
次はシービー編になります。

どのウマ娘とイチャイチャしたい?

  • タイキシャトル
  • ハルウララ
  • ダイワスカーレット
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