今日はシービーのとある企画でトレーナーは、学園の地下にあるバーに連れてこられた。
佐竹「何で俺、女装しなきゃいけないの?」
シービー「いいから、いいから。雰囲気作りの為に、トレーナーも協力してよ」
ルドルフ「トレーナー君、これも生徒会の大事な資料となる。円滑に事が進めばすぐ終わる」
ブライアン「いいからサッサと着ろ」
佐竹「えぇ……訳も話してくれないのに、おいそれと引き受けられないんですけど」
シービー「まぁまぁ、トレーナーも悪い思いはしないと思うけどね。アタシに持て成される訳だから」
佐竹「女装して、こんな怪しい学園の地下にあるバーに呼び出される俺の身にもなってくれよ……」
ルドルフ「トレーナー君、先ずは受付に顔を出すといい。好きな子が決まったら、指示通りに動いてくれ」
佐竹「えっ、ちょっと俺の意見は…………はぁ、取り敢えず行くしかないか」
もう一つの扉を開き、トレーナーは奥へと進んで行った。照明は薄暗く、ムーディーな雰囲気が漂っていた。そしてトレーナーは受付へと辿り着き、メニュー表を渡された。
エア「決まったら、一番奥の扉を開け。お客様」
佐竹「エアグルーヴ……。何してんだ?」
エア「私はただ、会長に言われてやっているだけだ。お客様」
佐竹「なんか口調、可笑しくないか?」
エア「選ばないのであれば、こちらで選択するぞ。最初はブライアンが居る、左の扉から入れ。お客様」
佐竹「えっ、勝手に……」
エア「いいから行けっ、戯けが!……お客様」
佐竹「語尾に持ってくるのは苦しいと思うんだが……」
トレーナーは言われた通り、ブライアンが待つ左の扉に向かい開けた。
佐竹「ブライアン来たぞ~…………」
ブライアン「……んー……んー」
トレーナーの目の前に飛び込んできた光景は、猿轡を付け亀甲縛りをしているブライアンの姿だった。トレーナーは何が起こっているのかわからず、石のように固まってしまいエアグルーヴに問い詰める。
佐竹「エアグルーヴ、遂にブライアンが可笑しくなった!?」
エア「いや、元からだろ」
佐竹「持て成しって、SMプレイ?!」
エア「違う、戯けが!貴様は何を言っているんだ……」
佐竹「だったら見てこい……」
エア「全く、何を……。っ!?ブライアン、何をやっている!?今すぐ着替えてこい!!」
ブライアン「嫌に決まっているだろう。亀甲縛りにどれだけの時間を費やしたのか、お前に分かるのか!!」
色々あり、トレーナーは少しの間待たされ再びブライアンの所に出向いた。
佐竹「それで、猿轡を外して亀甲縛りのままで通すのか?」
ブライアン「この方が落ち着く」
佐竹「左様ですか……」
ブライアン「スーツの上から縛って、少しキツイが気持ちいいぞ……///」
佐竹「羨ましい体質だよ、ブライアンは。それで気持ちよくなれるんだから」
ブライアン「トレーナーが縛り上げて、叩いてくれたらもっと気持ちいいが?」
佐竹「えぇ……。叩く奴なら、誰でも構わないんじゃないか?」
ブライアン「何を言う。好きな男でなければ、気持ちいい訳ないだろ。決して誰でもいい訳じゃない」
佐竹「そうなんだ、誰でもいい訳じゃないんだ」
ブライアン「もしかして、マゾなら誰が叩いても喜ぶとでも思っているのか……?」
佐竹「思ってた」
ブライアン「好きでもない相手に叩かれても、腹が立つだけだ」
佐竹「それで俺は、喜んでいいのでしょうか?」
ブライアン「スパンキングがあるぞ、叩くか?」
佐竹「お前が叩かれたいだけだろ!?…………それで、何で俺は女装してるんだ?」
ブライアン「ホストクラブだ」
佐竹「は?」
ブライアン「ホストクラブを模して、アンタを労う為のホストだ」
佐竹「ホストだったら、キャバクラのシステムでもよかっただろ?」
ブライアン「シービーに、それでは面白くないと言われた。よって却下だ」
佐竹「この年齢で女装は、流石にヤバいだろ……」
ブライアン「そうか?似合っていると思うが。ドレスがピッタリでよかったが、少し筋肉が浮き出ているがな」
佐竹「似合ってないじゃん……。今から何するんだ?」
ブライアン「今から私が考えた、オプションメニューに従ってもらう」
佐竹「俺が選ぶんじゃないの?!」
ブライアン「勿論、トレーナーが選んでくれて構わない。好きなものを選べ」
佐竹「どれどれ……」
・目隠し手錠で擽る
・亀甲縛りで吊り上げスパンキング
・氷水に耐えればご褒美に踏みつけ
ブライアン「どれがいい?私的には、目隠しと氷水なんだが……」
佐竹「SMプレイじゃねぇか!?持て成す気ないだろ……」
ブライアン「何を言う、日頃のストレスを抱えているトレーナーが私にその抑えられない感情をぶつける事で、解放される気分になる。私はその痛みで喜ぶ、相互利益で問題ないだろ?ただ最後は、優しく囁いてくれれば……///」
佐竹「何を言ってんだ、このウマ娘は……」
ブライアン「っ……その蔑んだ目もいい///」
佐竹「無敵かよ……」
ブライアン「早速、選んでもらうんだがトレーナーはどれがいい?」
佐竹「選ばなきゃいけないのか?……あえて言うなら、目隠しかな」
ブライアン「トレーナーは支配したい欲求があるんだな」
佐竹「そういう訳で選んだつもりはないんだが……」
ブライアン「大丈夫だ、私も服従してもいいと思っているからな。共存共栄だな」
佐竹「違うからっ!…………取り敢えず、目隠しするか」
ブライアン「待て、ただやるだけでは面白くない。ここは私の好きなシチュエーションに従ってもらう」
佐竹「好きなシチュエーション?」
ブライアン「先ず、私が目隠しをされてベッドの上で手錠を掛けられている所から始まる。トレーナーは兄という設定で、私は妹になる。嫌がる妹に無理矢理、迫る兄に擽られその快感に堕ちていく設定だな」
佐竹「最低な兄貴だな……。こういうのが好きなのか?」
ブライアン「そうだな……襲われるのが好きだな。好きな奴、限定だが」
佐竹「嫌がる妹だったら、矛盾してないか?」
ブライアン「細かい所はいい。ほら、ベッドに繋いで準備するぞ」
佐竹「はいはい……」
トレーナーはブライアンをベッドに繋ぎ、分からないままブライアンに台本を渡されスタートした。
佐竹「何で俺がこんなセリフを……。ぐ、ぐへへ、お前も本当はして欲しかったんだろう?いやらしい野郎だ」
ブライアン「い、いや、近づくな!私に触れるなっ!」
佐竹「迫真の演技……。ど、何処から触ってやろうかなぁ〜……先ずは脇からだな〜」
ブライアン「んっ……///そ、そんな汚い手で触るなっ!……んっ!?///」
佐竹「体は正直だな。自分で求めてるのが分かるぞ〜、何処を触って欲しいのか言ってみろ」
ブライアン「くっ……もっと下の方を……///」
佐竹「だっはっは!貴様のような女は、快楽に溺れるのがお似合いだな」
ブライアン「屈辱だ……///だが、もう我慢できない。最後までしてくれ……///」
佐竹「ハヤヒデさん、来てくれますー?」
トレーナーは今の状況に耐えられなくなり、ハヤヒデに助けを求め暫くすると勢いよく扉が開かれた。
ハヤヒデ「どうしたトレーナー君!?」
佐竹「ハヤヒデ、ブライアンを連れて行ってくれ……」
ハヤヒデ「これは……。身内の醜態を見るのが、これ程までに心を痛めるのか……」
ブライアン「何故、姉貴が居る?!私はまだ、プレイの途中だぞ!」
佐竹「プレイって言っちゃってんじゃん……連行してくれ」
ハヤヒデ「ブライアン……お前はまた人様に迷惑を。さぁ、来るんだブライアン!」
ブライアン「嫌だ、まだ私は最後までしてもらっていない。ご褒美を、ご主人様のご褒美を!姉貴いいぃぃぃぃ!!」
ハヤヒデに引きずられながら、ブライアンは叫びと共に部屋を出た後も訴え続けていた。
佐竹「…………すげぇ断末魔。今のでだいぶ疲れた…………あれ以上続けていたら、何するか分からんかった」
トレーナーはやつれた顔で、エアグルーヴの下へと戻った。
エア「先程、ハヤヒデが部屋に入っていったが……貴様は随分疲れた顔をしているな」
佐竹「エアグルーヴは特殊な性癖とかあるのか?」
エア「はぁ?」
佐竹「いや、やっぱり何でもない。……正直、今考えると女装してる男が男装してるウマ娘を襲う絵面って変だよな」
エア「何を言ってるんだ、貴様は。ほら、次は会長が待っている右の部屋に進め、お客様」
佐竹「この服脱いでいい?」
エア「会長に聞いてから脱げばいいのではないか、私は即刻脱ぎ捨てて欲しいが」
佐竹「そう強く言われると傷つくな……」
落ち込みながらルドルフが待つ扉へと向かい、部屋に入った。
佐竹「失礼します。……おぉ、やっぱりルナさんはスーツも様になりますね」
ルドルフ「ありがとう。そういうトレーナー君も似合っているぞ」
佐竹「完全な社交辞令じゃないですか……」
ルドルフ「私は本気で思っているが?」
佐竹「言われても嬉しくないです……」
ルドルフ「それはそうと、ブライアンが先だったがどうだった?」
佐竹「マゾって何でもありなんだなぁと痛感しました……」
ルドルフ「あぁ、ブライアンのマゾ気質だな」
佐竹「ルナさんは知ってるんですか、ブライアンの性癖?」
ルドルフ「知っているというか、本人は隠しているつもりなのだろうが、日常生活でその片鱗が見え隠れしているというか……」
佐竹「例えば?」
ルドルフ「ブライアンの専属トレーナーに叱咤されている最中に、顔はいつものように無表情だったが膝がずっと笑っていてな。ブライアン周辺の芝が、湿っていた」
佐竹「色んな人には、バレてるわけですね……」
ルドルフ「私も人の事は言えないがな。早速だがトレーナー君、喉は乾いていないか?お酒もあるがトレーナー君は特徴柄、飲む事は出来ないが様々な飲み物が揃っているぞ」
佐竹「そうですね……パインジュース貰っていいですか?」
ルドルフ「あぁ、任せてくれ」
ルドルフはカクテルシェイカーを取り出し、パインにレモンを入れ振り始めた。トレーナーはその立ち振る舞いに見惚れ、ルドルフから目が離せないでいた。完成したミックスジュースをグラスに入れ、トレーナーの前に置かれた。
ルドルフ「すまない、断りもなくレモンを足してしまった」
佐竹「大丈夫ですよ。レモンの香りが足されて、飲みやすいと思いますし」
トレーナーはミックスジュースを軽く飲み、味わうと甘みと酸味が調和し飲みやすくなっていた。
佐竹「凄く美味しいですね」
ルドルフ「パインだけだと、甘さが諄いと思ってね。私のアレンジが利いてよかったよ」
佐竹「ルナさんは何でも出来ますね」
ルドルフ「過言だよ。私はそこまで出来たウマ娘じゃない、買い被り過ぎだよ」
佐竹「そうですか?でも、普段から格好いいですしライブで見せる笑顔とかギャップがあって
可愛いですし」
ルドルフ「……トレーナー君、もう少しライブの部分を詳しく聞いていいかな?」
佐竹「いいですよ。この間のライブとか、凄いアイドルみたいな振り付けで踊ってる時のルナさんの笑顔が可愛くて、ずっと目で追ってましたよ」
ルドルフ「そ、そうなのか……///」
佐竹「その時のライブもずっと目が合ってましたよね?」
ルドルフ「無意識だった……///」
佐竹「ルナさん?」
ルドルフ「み、観に来ていたんだな。恥ずかしいな……///」
佐竹「声も綺麗でしたし、普段やらないような髪型にしていたのでそれもまた可愛くて……」
ルドルフ「も、もういいぞトレーナー君?!恥ずかしいから、その辺にしてくれ……///。と、兎に角、今はトレーナー君を欣喜させねばならん。先ずは、このメニュー表の中に多種多様なゲームがある。所謂、合コンゲームでよく使われているものだな」
佐竹「色々ありますね。ルナさんはどれがやりたいんですか?」
ルドルフ「特にやりたい事も無いのだが、名前から連想して……バッファローゲームは面白いんじゃないか?」
佐竹「えっ!?ルナさん、このゲームのルール分ります……?」
ルドルフ「こういう知識には疎くてな、出来れば説明してもらえるだろうか」
佐竹「えぇと……相手の乳首を当てるゲーム、です……」
ルドルフ「えっ!?……軽はずみで言うものではないな」
佐竹「も、もっとやりやすいゲームに切り替えましょう。まだ沢山ありましたし……」
ルドルフ「い、いや、このゲームをしよう!何事も経験だ。やろう、今すぐやろう!!」
佐竹「何か急に元気になりましたけど……。まぁ、ルナさんが良ければ」
二人はゲーム説明のお浚いをし、バッファローゲームをする事となった。お互い順番にやる事となり、先に当てられた方が勝ちとなる。
佐竹「それじゃあ、頭に指をあてて……」
ルドルフ「まさかこんな形で、トレーナー君に触れてもらえるとは……。ゲームによる間接的な行為ではあるが、願ったり叶ったりだな」
佐竹「いきますよ!」
ルドルフ「破釜沈船っ!……来い!!」
掛け声とともにトレーナーは、ルドルフの胸目掛け突進する。
ルドルフ「あっ……///」
佐竹「ど、どうですか?」
ルドルフ「二、ニア・バッファローだ……///」
佐竹「外れかぁ……。次は俺ですね」
ルドルフ「はぁ……はぁ……///」
佐竹「大丈夫ですか、ルナさん。もうやめても……」
ルドルフ「い、いや、大丈夫だ。少し感情が昂っただけだ……心配ない。次は私の番だな」
佐竹「はい、どうぞ」
ルドルフの順番が回り、頭に指を乗せトレーナーに近付いていった。そして近付く度に、ルドルフの呼吸が荒くなることに気が付くトレーナーは心配になり声を掛けた。
ルドルフ「はぁ……はぁ……///」
佐竹「ルナさん大丈夫ですか?」
ルドルフ「はっ!?も、問題ない……。では、いくぞ!」
意を決したルドルフは、その勢いのままトレーナーの乳首に突進した。
ルドルフ「ふんっ!」
佐竹「がっはぁっ!?」
闘牛のように突進した為トレーナーの胸に指がめり込み、数cm凹んだ。ウマ娘のパワーで突かれたトレーナーはそのまま倒れ、泡を吹いた。
佐竹「あー……」
ルドルフ「トレーナー君、しっかりしてくれ!?と、兎に角、誰か呼ばなければ。エアグルーヴ!!」
エア「どうしたんですか、会長!…………本当にどうしたんですか?」
ルドルフ「私が指を突き刺したせいで、トレーナー君が……」
エア「一先ず保健室に運びましょう」
保健室へと運ばれたトレーナーは、数十分で意識を取り戻し何の後遺症もなく復帰した。トレーナーが意識を無くして保健室に運び込まれている間、女装をしている為ウマ娘達に痴態を晒した。そのお陰でトレーナーは、女装をする変態という認識に変わり暫く誰も近寄らなかった。何だかんだあり、トレーナーは次にシービーが待つ部屋に訪れていた。
シービー「だからあんなに外で騒いでたんだ~。災難だったね、トレーナー」
佐竹「死ぬかと思いましたよ……」
シービー「ウマ娘に突進なんかされたら、普通は怪我で済まないからね。トレーナーが被害者でよかったよ、あはは!」
佐竹「笑い事じゃないですよ……」
シービー「ゴメンって。じゃあ、気を取り直して早速始めようか」
佐竹「何からやるんですか?」
シービー「さっきまでバタバタしてたから、先ずは飲み物でも飲んで落ち着こう。飲み物は何でもいいよね?」
佐竹「シービーの好きなのでいいですよ」
シービー「はいはーい」
グラスにジュースを注ぐ姿を見ていたトレーナーは、シービーもルドルフ同様にその出で立ちに見惚れていた。トレーナー自身、スーツに対して特殊な性癖がある訳では無いが二人がその衣を身に纏うと高貴さが増すように思えた。これだけの美形であれば、レースを引退した後でも他の仕事依頼を依頼されたとしても困らないとトレーナーは思った。そしてテーブルに、先程注がれたグラスが運び込まれる。
シービー「お待たせ~、ブルーベリーになります」
佐竹「ありがとうございます。やっぱりルナさん同様、シービーもスーツ似合ってますね」
シービー「でしょ?トレーナーが女装してくれるんだったら、いつでもスーツ着て見せるけど」
佐竹「俺の女装は需要無いじゃないですか……」
シービー「そうかな~?トレーナーも似合ってると思うけど……」
佐竹「絶対ないです。だったら、シービーの美形を眺めてる方がよっぽど有意義だと思いますけどね、俺は」
シービー「そ、そう……///」
佐竹「写真集だってあったくらい綺麗でしたから、モデルの仕事をやっても絶対人気でますよ?」
シービー「も、もういいから。アタシの話は……///恥ずかしいし……」
佐竹「あっはは、シービーが照れてると可愛いですね」
シービー「むぅ……。うるさいなぁ……///」
トレーナーは内心、拗ねているシービーも可愛いと思い暫く眺めていた。その後はシービーを宥め、他愛のない話をしていると昔の事を思い返すようになっていった。
シービー「あのさ……トレーナーが病院から居なくなった日、あったでしょ?」
佐竹「俺が突然消えた日か……。ごめんな、何も言わずに」
シービー「ホントだよ。君が居なくなって、他の子達は泣き出すわ、暫く食べ物は喉を通らない。挙句の果てに、言葉を話さない子達まで居たぐらいだからね」
佐竹「俺が居なくなっただけで、そんな事ある?」
シービー「君はそれだけの存在なの。他のウマ娘が体調を崩すくらい……アタシも辛かった」
佐竹「シービーも?」
そう言いながらシービーは、天井を仰ぎながら当時の事を話し始めた。
トレーナーが消えた数日後
シービー「タキオンに装置を作ればいいとは言ったけど、出来上がったとしてもトレーナーの住んでる場所なんて分かる訳ないのに……。分かるとしても、職場の名前しか……」
中庭のベンチで曇天の空模様を見上げながら、独り言のように呟くアタシ。少しでも手掛かりを模索し、諦めたくなかった。ほんの少しでも弱音を吐けば、トレーナーに逢えないような気がしたから……。だからトレーナーが消えた当日、一番泣きたかったのはアタシだった。あの場で虚勢を張り、転送装置を作ればいいとカラ元気を出し、皆の不安を払拭させようとした。トレーナーの顔を思い浮かべるだけで、涙がこみ上げ止まらなくなる事が多々あった。そのタイミングでルドルフが様子を見に来てくれた。
ルドルフ「シービー……。大丈夫か?」
ルドルフがアタシの事を心配して、慰めようとしてきた事は分かっていた。それでもアタシは意地になり、元気な姿を演じようとした。
シービー「な、何が?全然大丈夫だけど……」
ルドルフ「だが、先程まで涙が……」
シービー「泣いてないっ!…………泣いてないから」
ルドルフ「シービー……」
シービー「ほら、タキオンの転送装置が出来上がったら、またトレーナーと逢えるし……。出来上がっても、その後が大変なんだけどさ。それは皆で頑張ればいいし……」
ルドルフ「シービー……。皆を元気付けているのは分かるのだが、自分が無理をしていては本末転倒では……」
シービー「無理なんてしてないっ!!」
ルドルフ「……っ。だがこの数日間、寝ていないのではないか?目の下のクマが……」
シービー「無理もしてないしっ、大丈夫だって言ってるじゃんっ!……ルドルフは心配じゃないの?!……一緒だと思ってたのに、最近まで普通に話してたのに……辛すぎるよ」
ルドルフ「私だって辛いさ。だから、休めと言っているんだ。トレーナー君だって、こんな事は望んではいないっ!」
シービー「うるさいなっ……。いつも済ましたような顔して、いつも何でも分かるような言い草で……。親面してんのが腹立つんだよっ!……いい加減どっか行ってよっ!!」
ルドルフ「……っ。シービー、言葉が過ぎるぞ。君の言動は睡眠不足による思考力低下、著しく免疫力も低下、不安定な状態が続いている。これでは他のウマ娘に迷惑がかかる、早く寝るんだっ!」
シービー「うるさいっ、早くどっかに消えてよ!」
ルドルフ「シービー、君はっ……!」
アタシはその時、頭に血が上り先程言い放った言葉は今思い返してみれば不謹慎だった。トレーナーが消えてしまった後に、発言するような言葉ではない。それに激昂したルドルフは、アタシの胸ぐらを掴んだ。そしてそれを目撃し、駆け付けたサンデーに止められた。
サンデー「はい、ストップ。喧嘩はよしなって!……二人とも何してんの?!」
シービー「ふんっ……」
ルドルフ「ふんっ……」
サンデー「はぁ……どうせトレーナーの事で喧嘩してたんでしょ?」
シービー「少しでも考えないと、トレーナーを見付けられるか分かんないでしょ!?」
ルドルフ「だから何度も言っているだろっ?!事を急いては仕損じる、君が体を壊してはお互い哀しむだけだと再三言っているだろっ?!」
サンデー「あぁもう喧嘩しないの。シービー、タキオンが急いで作ってるから今考えても仕様が無いからゆっくり休みなさい。ルドルフは、まともな考えが出来ない相手に捲し立てても仕方ないからやめなさい。今は休んで、大人に任せておけばいいから」
シービー「でもっ……!」
サンデー「シービー、アナタだけが不安じゃない。他のウマ娘も、トレーナーが居なくなって落ち着かないの。アナタみたいに、目を瞑ろとする度にトレーナーの顔が浮かぶ子だって沢山いる」
シービー「……っ」
サンデー「それでも他の子達は、ちゃんと寝て、ちゃんとご飯食べてトレーナーに心配かけないようにしてるの。アナタが元気付けなくても他の子は大丈夫だから、先ずはアナタがトレーナーに心配を掛けないように頑張りなさい」
シービー「はい……」
サンデー「うん、それじゃあ部屋に行って休んできなさい」
言われた通りアタシは、項垂れながら部屋に向かった。その最中にルドルフはサンデーに、頭を下げ礼を言った。
ルドルフ「すいません、代理。生徒会長である私が止められず……」
サンデー「大丈夫、大丈夫。私も昔、友達亡くした事あるし慣れっこだから。トレーナーが消えて不安なのは、みんな同じだし。それと、代理はやめて」
ルドルフ「……」
サンデー「ルドルフも根を詰め過ぎないように、しっかり寝なよ?」
ルドルフ「はい、失礼します……」
サンデー「…………大人びてる子程、手が焼けるね」
ルドルフもその場を去り、生徒会室へと戻って行った。
シービー「こんな感じかな」
佐竹「めっちゃ喧嘩してるじゃん……」
シービー「その後、数日はルドルフとは顔を合わせてないし、合わせたとしても一言も口は交わさなかったな~」
佐竹「珍しいな、二人が喧嘩するなんて」
シービー「単純に寝不足だったから。後は、アタシがルドルフにレースで負け続けてきた、腹いせかな……」
佐竹「シービー……」
シービー「今はそんな事ないよ。仲直りも済ませて、いつも通り仲良しで…………」
佐竹「どうした?」
シービー「……トレーナー、アタシって何でこんなに、負けず嫌いで嫉妬深いのかな……?」
佐竹「何でって、ウマ娘だから当然だろ?」
シービー「そうなんだけどさ……。アタシが三冠取った後に、ノコノコ出て来てあっさり三冠取っちゃってさ……。あの時から、ルドルフの事はあまり好きじゃなかった。喧嘩した時も、半分本気だったんだ……『どっかに消えて』って。勿論、頭の中じゃ言っちゃダメってわかってても、本音は出ちゃうんだなって」
佐竹「……」
シービー「初戦で戦ったジャパンカップ。ルドルフも負けたけど、アタシは10着の惨敗。次の有馬記念でも3着の苦敗。三戦目の春の天皇賞は、5着でルドルフとの着差は10バ身以上離されて大敗。皆の期待に応える事が出来ずに、アタシは引退。いつも頭に過ぎるのは、『ルドルフさえ、出走しなければ……』。これが当時のアタシの口癖、最低でしょ?」
佐竹「シービー、それ以上は……」
シービー「三冠ウマ娘が聞いて呆れるでしょ?そもそも、19年振りって区切り悪いよね。いっその事、三冠なんて取らずにルドルフで20年ぶりって方が……」
佐竹「シービーっ!!」
シービー「あっ……ご、ごめん……」
佐竹「自分を陥れるのは、やめてください。アナタが好きなファンが悲しみます」
シービー「久しぶりに取ったってだけで、そんなにファンなんて……」
佐竹「俺もその、ファンの一人です」
シービー「……っ」
佐竹「シービー。アナタは何故、ルドルフと戦う事を選んだんですか?」
シービー「何でって、ファンの人に応援されたから……っ!」
佐竹「そうです。アナタは、一人で走った訳では無い。応援してくれるファンの為に、応えたからです。それに、強い相手とぶつかれば出走を回避する事だって出来たはずです。あの時の秋のシーズンで、脚に負担が掛かっていたにも拘らずアナタはそれでも走り続けた」
シービー「そうだね。……はぁ……何でもお見通しだね、トレーナーって」
佐竹「ずっと、好きですから」
シービー「っ!?///…………あのさぁ、トレーナー。それ、告白?」
佐竹「え!?ファンとしての好きって意味で、深い意味は……」
シービー「トレーナー。あの時の言葉、覚えてる?」
佐竹「あの時?」
考え込むトレーナーに、至近距離まで近付くシービー。トレーナーの両頬に、両手を添え撫でながら……。
シービー「一生離さないでねって言葉。アタシ、嫉妬深いし結構重いから……トレーナーの事、一生離すつもりないから♪」
佐竹「シ、シービー……近い///」
シービー「でも、嫌じゃないでしょ?」
佐竹「そ、そうですけど……///」
シービー「じゃあ、いいじゃん。トレーナーの頬っぺた、柔らかい♪」
ひたすらトレーナーの頬を擦りながら見つめるシービーは、何処か嬉しそうな表情をしていた。それを尻目に、ルドルフとブライアンはその光景を眺め溜息を吐いていた。
ブライアン「これで一件落着だな。ルドルフ、いつまで壁を殴っている。たづなさんに叱られるぞ?」
ルドルフ「最後にあんな事が無ければ、私とトレーナー君は今頃……逢瀬を重ねていた頃だった筈なのに……」
ブライアン「ふん……。そう言うが、最後にトレーナーを気絶させたのはワザとだったのだろう?」
ルドルフ「ふっ……何の事か。私はただ、トレーナー君の色香に惑わされ興奮していただけだ」
ブライアン「そうか……。そう言う事にしておく」
ブライアンは少し微笑みながら視線を、ルドルフから二人に移しじゃれ合いを眺めていた。それが気に入らなかったルドルフは、次第にイライラが募った。
ルドルフ「おい、幾らなんでもやり過ぎだ。シービー、トレーナー君の唇は私の物だぞっ!!」
その場から走り出したルドルフを見ながらブライアンは、首を横に振り呆れた様子で見ていた。
ブライアン「やれやれ。似た者同士だな、あの二人」
これで一応終わりです。
何か要望があれば、感想に御書き下さい。
どのウマ娘とイチャイチャしたい?
-
タイキシャトル
-
ハルウララ
-
ダイワスカーレット
-
ミスターシービー
-
シンボリルドルフ
-
オグリキャップ
-
サイレンススズカ
-
ゴールドシップ
-
トウカイテイオー
-
ライスシャワー
-
ナリタタイシン
-
スペシャルウィーク
-
エイシンフラッシュ