The Problem Hunter   作:男と女座

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だいぶお待たせしました。
本当なら、こちらのサイトに移ってから一ヶ月の記念に上げようかと思っていたんですけどね…。

早一ヶ月。皆様のおかげでアクセス、評価、感想など本当にありがとうございます。もう少しで小説家になろう様でアップしていた話数に追いつきます。今までは追記修正していたものが、今度から本格的に始まります。
頑張りますので、よろしくお願いします!


さてタイトルの通り、海です。この話のために妹にMH3G借りて練習しましたねw

では本編をどうぞ!



第21話 ハンターと海

寒冷期。

気温が大きく下がり、食糧の確保が厳しい季節となる。それは人とモンスター共に同じ問題だ。常に飢えて、さらに凶暴と化したモンスターの討伐クエストは増えるが、それはハンターの負傷率を上げる事を意味する。繁殖期が危険と思われがちだが、貪欲なモンスターは油断できない。

 

“寒冷期を乗り越えれば一人前。”

 

いつの間にかこんな言葉もあり、実際乗り越えられずにリタイア、帰らぬ者となった新米ハンターは意外にも多い。まぁ結局の所、ハンター活動するのに安全な季節なんて無いって事になってしまう。

 

 

 

 

 

なんだかんだと、アベナンカの護衛クエストには準備が掛かっている。理由は、俺が使おうと思っていた飛行船が修理を終えてなく、しかもユクモの材木が必要なので新大陸にまで運ぶ話になっていた。アベナンカの身分を考えると…、どうかと思うんだが、俺達も飛行船のパーツと共に船で渡る事になった。彼女も楽しんでいる様なので気にしないでおこう。

 

モンタナは移動の書類を提出し、砂漠の一件の報酬で狩龍、ツクヨミの整備を終え、余った金で新たな防具の依頼をした。素材はドスゴドラノスの物を使用した物らしい。あの状況で、剥ぎ取る物は剥ぎ取っているとは知らなかった、さすがに。デザインはモンタナ自身が直々にしたと言っていたが、まぁ多分趣味全開の装備になるんだろうな。

 

 

 

そんなこんなで4日後、ついに出発の日を迎えた。

今日は長旅となる船の移動のため、早朝、相変わらずのユクモノドウギ装備で武具屋の筋骨隆々なオヤジさんと熱心に会話をしている。俺としてもドスゴドラノスとの戦いによってボロボロになったアグナ亜種の防具、完全に壊れたジェネシスの装備変更をする必要となった。幸いにも、ココの武具屋には預けてある装備がある。少々難がある装備だが、今は致し方ない…。

 

 

(モンタナ…長いよ。アベナンカとの待ち合わせ時間、大丈夫か?)

 

 

今日はアグナ亜種の防具ではなく、普段着用にアプトノスの素材で作ったローブをインナーの上に着ている。簡単な素材ほど着心地が良いのは悲しいものだ。時々モンタナは「ユクモシリーズが最高の防具の1つならなー。」とまでボヤいている。そんな思考をめぐらせるほどに暇な待ち時間、置いてある雑誌を読みつつ、今はモンタナの注文が終わるまで待っている。

 

 

『紅葉、温泉と魅力あるユクモ村。寒冷期には渓流の滝の水までも凍り、雪と氷に包まれた白い景色を見せてくれます。ユクモ村の地酒で雪見風呂。今年の寒冷期はユクモ村で決まり!?』

 

 

「良いなァ。」

 

 

雪景色の渓流とユクモ村の本物と見間違える程の絵や宣伝に、俺は思わず言葉を漏らした。いつの間にか、モンタナは背後から雑誌を覗き見て、しばらく読んだあと「地酒!良いなァ。」と俺と同じ感想を述べた。

 

 

「俺は雪景色と温泉についてだが?」

 

「小生も雪景色と温泉だ。加えて地酒もあれば、尚良し。お前さんは酒飲むなよ?」

 

「フリューゲルに俺が拾われた理由を聞いたんだろ?」

 

「面白かったさ。お前もやっぱ似た者ってわけだ。

 それでビル。小生の準備は終わったぞ。向こうで武具屋のオヤジが待っている。」

 

「おぉ、すまないな。」

 

 

雑誌『いい狩り 夢気分』をモンタナに渡し、「次はお前さんか。何の用だ?」と二の腕組んでいるオヤジさんに挨拶し、カウンターに立った。

 

 

「預けてある防具と武器を頼みます。ギルドカードはコレだ。」

 

「ああ、お前さんなら覚えているよ。」

 

「んじゃ話は早いや。防具はグラビモス、武器は猛風銃槍【裏残月】を。」

 

「はいよ。」

 

 

オヤジさんは奥へと進み、しばらくしてから猛風銃槍【裏残月】と屈強な男が大きな木箱を持って来た。ガンランスを背負い、保管と整備の代金を渡し、重い木箱を持ってモンタナと共に武具屋を後にした。

 

 

 

 

「なぁ。折角用意したんなら装備すれば良いだろう?」

 

 

雑貨屋でロープ、荷物を引く用のカートを買い、防具入りの木箱をガラガラ運ぶ俺はモンタナから見れば可笑しいとしか言えない様だ。

 

 

「言いたい事は何となくは解るよ?ただ凄まじく重いんだよ。」

 

「じゃあ他の装備でも考えれば良いだろう?」

 

「完璧な装備よりは、何かしら弱点があった方が魅力あるだろ?アグナ亜種装備なら属性値が低いとかさ。」

 

「小生には分からんよ。」

 

「ハハッ、だろうな。」

 

「モンタナさーん!ビルさーん!」

 

 

遠くからアベナンカが笑いながら手を振っている。相変わらず元気そうだ。

長距離のにつき、護衛対象である彼女にも防具を与えようか検討した。だが今、彼女が見につけている蒼いマントはイーオスの毒液すら流す程、とモンタナから説明を受けた。沼地や火山を行くには良い物なので、十分に俺達が護ろうという事で検討は終了した。

 

今回の移動手段の手配は彼女が行う事に決まり、今日の出発を前から楽しみにしていたらしい。それは自分で計画して行く事なのか、モンタナが居るからについては、深く考えておかないことにしよう。

彼女が新大陸から旧大陸のここへ来た時は、護衛のハンター(ギルドナイト)がガチガチに予定を決めていて、非常に息苦しかったと彼女は不満を口にしていた。俺はその予定の詳しくは聞いていないが、モンタナが聞いたところによると、逃げ出したくもなるくらいだったらしい。

 

 

「おはようございます!今日のためにアプトノスの荷車を用意しましたよ。」

 

「おお!良いな。歩きとなると流石に夕方になる。」

 

「はい!ばっちり下調べしましたから!さ、コチラです。」

 

 

アベナンカに案内されてドンドルマの外門の近くまでやって来た。ここは商人が行き交う専用の広場で多くの人々で賑わっている。その広場の外れに俺達の荷車が用意されてあった。飛行船のパーツを乗せてあることもあって、荷車は捕獲モンスターを運ぶ専用のサイズが用意されてある。

 

 

「良かった。ちゃんと準備されていましたね。」

 

「よし、御者は俺がやろう。子供の頃はポッケ村でポポの世話やっていたからなー。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

ドンドルマを出発して小一時間。アベナンカはすっかり楽しんでいる。彼女を見ていると、自分がハンターデビューした頃を思い出す。あの頃はどこへ行くのも、どんなクエストでもワクワクしていた。そんな昔の自分を思い出すなんて、老けた…と言うか、最近(1話から)死線をさ迷うことが多かったからかもしれない。

 

 

「モンタナさん、ビルさん。この街道はモンスターが少ないんですね?」

 

「ああ。どっかのハンターが、黒煙が上がるたびに来ては無駄にイャンクック、リオレウス、レイアを討伐したからな。なぁ?どっかのハンターさんよ?」

 

 

俺は後ろで座っているユクモドウギのハンターを見上げた。

 

 

「もしかしてモンタナさんが討伐したのですか?」

 

「…ああ。それでよくフリューゲルに文句言われたな。」

 

「ハハハ。あの頃と比べたら、幾分かは冷静になったけどな!」

 

「ヘッ。うるへーうるへー。」

 

 

思い出話や雑談に華を咲かせながらも、順調にナイアスの港町へと進んだ。

ナイアスの港町は、新大陸への交易によって寂れた漁村から一気に大きな港町に発展した。子供の頃に訪れた時は年寄りが多かったが、今は老若男女、様々な人が行きかって賑やかだ。港へ荷車を進めると、大陸間移動用の大きな船、昔からある漁船、近くの岩場を行く観光用の船など多種多様に存在してある。

 

 

「なぁビル。今日はやけにハンターが多いな。」

 

「ああ。確か、近海で海竜種の姿の目撃例が増え始めているらしい。だから警備のハンターを雇ったんだろうな。」

 

「海竜種…。ラギアクルスか…。

それにしても詳しいな。」

 

「お前も情報誌ぐらい読めよ。」

 

「か――」

「金が無いんだったな、そうだったな。毎回な。」

 

「そういうこった。」

 

 

港の漁師に、アバナンカが手配した船の場所を尋ねて向かった。「あ!あれです。」とアベナンカは身を乗り出して、俺に分かる様に指した。

 

 

「なあビル。あの船って…」

 

「ああ、砂上船だな。」

 

 

港に荷車を停めると、ラギアの襲来に備えていた船員達は早速積み込み作業を始めた。人数はおそらく5人。いかにも海の男らしく、日焼けした筋骨隆々の若い男達があっという間に飛行船の部品を難なく運んでいる。

船はジエン・モーランとの戦いで使う撃龍船を、倍近く増築したと元ハンターの船長のジイさんは紹介がてらに豪語した。確かに甲板はドスランポス程度となら十分に戦える程に広くなっていて、強度も増しているそうだ。だが増築の関係で船の先にある撃龍槍もバリスタ台に変更され、大砲は撤去。結局残っているのはバリスタだけになったというのは、本末転倒じゃないのだろうか。まぁ普通の船よりハンターが使う船という事に眼を輝かせているアベナンカの前で、それを言うのは無粋なので止めておいた。

モンスターに襲われても十分に対処出来るのが自慢らしいが、これは航海がいかに危険か伺える。早速先行きが不安になり始めた。

 

 

「荷物の積み込み、終わりましたぜ。出発するか?」

 

 

アベナンカは俺達を見て、眼で可否を伺った。俺とモンタナは良いと合図で頷くと、彼女は「ではお願いします。」と船長に答えた。

 

 

「よーーし!出港だァ!!!!!!」

 

 

 

船はゆっくりと進み始めた。今日は風も穏やかで海も荒れていない。優しげな波音が響いてくる。順調なのは良いことだ。船長のジイさんや船員、アベナンカは鼻歌交じりに航海を楽しんでいる。海の人間は鼻歌を歌う義務か仕来りでもあるのかと言いたくなる。このまま順調に進めば、明日の昼過ぎにはタンジアの港に着くそうだ。

出発の時は慌しかったが、出てしまえば特にやることも無い。俺も甲板で寝そべって穏やかで平和なひと時を満喫している。

 

 

「ビル…。」

 

 

そう言えば1人いた。凄まじく退屈が嫌いな友人、暇に耐えかねたモンタナが眉間にシワを寄せて、いかにも不機嫌そうに暇潰しを提案してきた。

 

 

「その防具着てみて良いか?」

 

 

そんなんで暇潰しになるのか疑問には思うが、まぁ断る理由も無い。「良いよ。」と木箱からグラビの防具を取り出して身につけ始めた。

 

 

「重いなァ。よくこんなの着て動けるよ。」

 

「そもそも狩りのスタイルが違うんだよ。お前は機動系、俺は待機系。まぁそれでも俺は果敢に攻めるけどな。」

 

「コレの発動スキルは?」

 

「ガードの性能や強化を重点的にして、砲術王、鈍足などが発動している。」

 

「槍、銃槍向けの装備だな、やっぱ。」

 

 

そう言いながらモンタナは手を握ったり開いたり、膝を曲げたり伸ばしたりと簡単な準備運動をして着心地を確かめている。

 

 

「どうだ?退屈しのぎになったか?」

 

「…………………いんや、まったく。」

 

「それ着たままツクヨミとかでも振っていれば?身体に良い負荷かけられるぞ?」

 

「そうするよ…。」

 

 

本当に退屈なようだ。珍しく素直にモンタナは「1,2、3…」と狩龍で素振りを始めた。

 

 

「ハンターさん、ここからは一応規則でな。1人2つ酸素玉を持つ事になっている。」

 

「ああ、分かった。」

 

 

船長から3人分の酸素玉を受け取り、モンタナへ渡し、次にアベナンカの元へと向かった。彼女は鼻歌を止め、今度は景色を楽しんでいる。俺が近づくと彼女は振り返り、「いいですか?」と海を見た。その方角を俺も見ると、大きな帆が3つもある帆船がナイアドの港へと入港しようとしていた。

 

 

「あの船は?私が乗って来た客船よりも大きいですね。」

 

「えーっと」

俺は目をよく凝らして船を眺めた。中央の帆の上にある旗にはハンターズギルドの紋章が記されてあった。

「ああ、あれはギルドの……おそらく生態調査の輸送船だな。」

 

「輸送船ですか?」

 

「だいぶ前にフリューゲルに聞いた事があるが、新大陸で調査が不足しているモンスターを旧大陸で再調査するらしい。で、その輸送を専門とするハンターのチームがあるとさ。」

 

「と言うことは、フリューゲルさんとビルさん達との関係みたいなものですね。」

 

「…あっちはスゴイ船だけどな。」

 

 

輸送船は無事に入港したようだ。

一方俺達も順調に進み、辺りは孤島や突出した岩が見え始める。あの孤島にも何か過去のロマンがあるかもしれないと思うと、船を停めてくれと頼みたくもなる。だが不機嫌なモンタナの刀の錆にはなりたくないし、今回のところは諦めておこう。

 

 

「ハンターさんも色々とあるんですね。」

 

「そりゃね。コレも一応組織云々のしがらみが在るモンです。

 ハハハ、まぁその中じゃ、俺達は自由奔放な方でしょうかね。(悪い意味で。)」

 

「自由ですか。…羨ましいです。」

 

「そう、でしょうね。」

 

「エヘヘ。私は大丈夫です。

 ビルさん。何かお話してくれませんか?」

 

「うーむ、じゃトレジャーでの体験談でも。」

 

 

――――――――そして小一時間後――――――――

 

 

「ビルさん!あの光は何ですか?」

 

「ぅえ!?光?」

 

 

体験談を話し疲れて、うたた寝していた俺に嫌な予感が走った。頬を強く叩いてアグナ亜種の頭防具を被り、アベナンカの隣で光を探した。彼女の発言に船員達にも緊張が走る。モンタナは「598、599、600! どうした!?」とキリの良い所で素振りを止めて駆け寄った。

 

 

「今は見えませんが、確かに光りました。」

 

「どんな色だった!?」

 

「ええーっと、」

 

ピカン!

 

「ほら!」

 

ピカン! ピカン! ピカン!

 

 

青白い光が段々とコチラに近づき始めた。そして水底から黒く、長い影がゆっくりと浮かび上がり、「ラギアクルスだーーーー!」と船員が叫んだ。

 

 

「体当たりされるな!急速旋回!」

 

 

船長の怒号の指示通りに船が軋むような音を立て、ラギアクルスから離れつつも正面に捉えた。船員達は両側のバリスタ台の脇にあるクランクを回し始めると、次第に台が上がり、1m程の高さになった。この高さで前方へも攻撃が出来るように改造したようだ。

俺とモンタナはバリスタの弾を拾い集めた。脇には単発式のバリスタ用拘束弾も用意してあった。

 

 

「モンタナ、出番だな。」

 

「退屈しのぎには丁度良い!」

 

「モンタナさん!出てきます!」

 

「ボオオォォォオオオォォン!」

 

 

海面から勢い良くラギアクルスが現れた。既に背中には電気を帯電し、蒼白く輝いている。俺は右側、モンタナは左側のバリスタ台から弾を装填して狙いをつけた。

 

 

ドシュンッ!

 

 

モンタナがバリスタを頭へ向けて撃つ。相変わらず良い狙いだ。弧を描いて弾は見事に命中した。

 

 

「撃ち続けろ、ビル!」

 

「分かってる!オラァ!」

 

 

俺はモンタナの発射後、にタイミングをずらしてバリスタを撃つ。

 

 

ドシュンッ! ドシュンッ!

 

「ボオオォオオオオオ!」

 

「やったか!?」

 

 

大きくラギアは仰け反り、水中へと一旦潜った。さすがに通常の狩りとは違い、高威力のバリスタを使えるのは嬉しい状況だ。だがラギアをまだ仕留めてはいない。水上に上がって来た時が勝負だ。

予想外にも船から目線を変えて船の横を泳ぎ抜けた。

 

 

「マズい!あのままでは行かせたら漁船が危ない!」

 

「小生に任せろ!」

 

 

モンタナはバリスタ台から跳び下りると、バリスタ用拘束弾(単発式)を拾って船の先のバリスタ台に立った。「船をラギアの後ろを追ってくれ!」とモンタナの指示に合わせて船が進む。ラギアとは船一隻分は離れていて、軌道を読まないと外す可能性が現れる距離だ。

 

 

「狙い撃たせてもらう!」

 

ドシュンッ!

 

「ボオオオォオ!?」

 

 

勢いよく放たれたバリスタとロープは、ラギアクルスの背中に見事命中した。

 

 

「ボォウ…!」

 

「よしッ!」

 

 

モンタナが「やった。」とガッツポーズを取る。正直、喜びたいのだが、アイツが喜んだり調子に乗ると後々必ず悪い事が起きるのだがな…。

 

 

ガタガタガタガタン!

 

「ダメだ!流石に力が強い!!つかまれーーーーー!」

 

「…ほらな。」

 

「帆を開けー!疲れさせるんだ!」

 

ザバァアン!ザバァアン!

 

「うおぉおおぉ!!」

 

 

ラギアが暴れ泳いだ後に残る荒波で何度も船は襲われた。行き交う船員も船に入る波にバランスを奪われて転倒、俺達も跳んでは落ちて跳んでは落ちてと不快に揺さぶられるのを手すりにしがみついて耐えた。

 

 

「も、モンタナさん。私…目眩が」

 

「曲がるぞ!掴まれ!」

 

 

俺の怒声にモンタナはアベナンカを抱えて手すりにしがみついた。やるなぁ、とか思いつつ、俺は急いでバリスタの弾を拾い集めた。幸いにも防水がしっかりしてバリスタは無事だ。

 

 

「また曲がるぞ!掴まれェ!」

 

ズズン!

 

 

急に曲がり、バランスを崩して頭をぶつけてしまった。それにしてもヤケに大きい音が底から響いた。どうやら岩に当てられた様だ。中から船員が出て「損傷20%!水が入って来たぞ!」と予想以上のダメージを報告し、ジエン戦で慣れていた船長も顔が青くなった。

 

 

「モンタナ!このままじゃ危険だ!また撃つぞ!」

 

「ああ!防具は後で渡す!」

 

「そうしてくれ!」

 

 

俺はモンタナにバリスタの弾を渡し、右のバリスタ台に上って正面へ銃口向けた。同じく反対側のモンタナもバリスタを装填してラギアを捉えた。

 

 

ドシュンッ!

 

 

火を吹いて放たれたバリスタ。だが野生の勘か、当たる直前に潜ってやり過ごされてしまった。

 

「チィッ!」

 

俺とモンタナは焦りを感じながら次弾を装填して狙う。

 

 

「頭を狙うな!水中の背中を狙え!」

 

「承知した!」

 

ドシュンッ! ドシュンッ!

 

「――――――――ボゥォウン…!」

 

「当たった!?もっと撃て!ビル!」

 

「言われなくても!」

 

「ボオォオォオオ! ボオォオ!」

 

「出てくるぞ!」

 

 

驚いたことにラギアクルスは水中から海上へ跳びだした。ギリギリに船が緊急回避、ラギアは船の左脇へと落ちた。一瞬の危険な出来事に冷や汗が溢れ出た。バキッ!とどこから、何かが折れた様な音が聞こえた気がしたが、船にダメージを受けたのかもしれない。

 

 

「あ、危なかったな!ビル。だが背中の電殻は壊れていたぞ!」

 

「でもお前の方が一番危なかっただろうが。」

 

「ハッハッハ!小生がそうそういつも簡単に――――」

 

 

モンタナの言葉を遮る様にバリスタ台がモンタナごとさらって行った。恐らく先程の折れた音は、先端に取り付けてあったバリスタ台が、ラギアの攻撃で床ごと取れてしまった物だったようだ。

 

 

「なァ!?」

 

ドボーン!!

 

 

モンタナはロープに絡め取られ、バリスタ台と共に海へ落ちてしまった。ここまで来ると、アイツの不運っぷりに恐れ入る。

 

 

「モンタナさーーん!」

 

「誰か回収を頼めるか!」

 

 

俺は急いでモンタナが落ちた方へ向かった。長い付き合いだが水中で共闘した事は無い。

 

 

「ハンター!後だ!防げ!」

 

 

誰かの叫び声に、とっさに振り返りながら盾を構えた。その叫び声が船長のものだったと気づいたのは、盾に炎が当たった時だった。

 

 

「熱い…ッ?なんだ!?」

 

突然の炎の攻撃に一瞬訳が分からなくなった。しかし、そんな俺を嘲笑うかの様に風圧を巻き上げて黒い影が上を横切った。

 

 

「今度はリオレウス亜種だ!」「船長!舵を!!」

「帆を畳め!燃えそうな物は船室に詰め込め!」

「水を汲み上げろ!」「落ちたハンターさんを見失うなよ!」

「バケツをたんまり用意だ!」

 

 

船員達の叫びが行き交う。俺もリオレウス亜種のまさかの乱入に驚いてはいた。最初らラギアが興奮していたのは、おそらく近くの無人島で縄張り争いでもしていたのだろう。

 

 

「ほーら見ろ、モンタナ。調子乗るから。」

 

「ビルさん!モンタナさんが!」

 

「助けには行きたいが、レウス亜種を放ってもいけないんだ。ご容赦を。」

 

 

俺はアベナンカを肩で抱え上げて船室へ走る。モンタナが心配で彼女は暴れていたが、心配なのは俺も同じだ。

 

 

「グシャァアァオウ!」

 

 

旋回しながら飛ぶレウス亜種が、上空から3つの火球を放つ。俺は落下地点を見極めて走り、盾を構えた。

 

 

ボチャン! ドカン! ガキン!

 

 

海へ、甲板、盾へ火球が落ちた。

「損傷軽微!」と船員が叫んだ。脇に当たれば危なかったかもしれないが、流石に甲板は丈夫に作ってあるようだ。「火を消せ!消せー!」と船員が駆けて火を直ぐに消した。波しぶきが掛かった甲板は、レウス亜種の火球であっても直ぐに消えてくれた。

 

 

(火球の温度から考えても下位~上位の前半程度のランクだな。)

 

 

バタン!

 

 

船室の前まで避難すると、俺達の上空を猛スピードで通り過ぎるリオレウス亜種。それを、船員達が様々な声を出して迎撃しようとする。バリスタで狙うも、空中戦に強いレウス亜種は容易く避けた。

 

 

「あんまりバリスタの弾を無駄にしてほしくないなァ。」

 

「ビルさん!どうやって助けましょう!?」

 

「俺が持つ酸素玉などのアイテムを渡します。一通りをこの箱に入れたら落としてやって下さい。」

 

「え!?そ、それだけですか?」

 

「ええ。俺はレウスから船を守らないとなので。」

 

「そんな…っ。な、なら私が助けに」

 

「無茶はいけませんよ?貴女の御身に何かあるわけにはいきません。」

 

 

アベナンカはハッとして俺を見つめた。そして「知っていましたの?」と俺に問い掛けた。

 

 

「こう見えて、色々な地域国々を見て回っているので。」

 

「…………。」

 

「助けに行きたい気持ちも分かります。が、今は俺の言った事を守って下さい。」

 

「…はい。」

 

 

アベナンカは素直に箱へ酸素玉や回復薬を入れ始めた。それを見て俺は武器を手に取り、レウス戦へと準備をする。

 

 

「あぁ、そうだ。最後に1つ大事な事を頼みます。」

 

「は、はい!何でしょう!?」

 

「モンタナが無事に戻って来るって祈っててやって下さい。勿論、船室へ避難してから。」

 

「分かりました!」

 

「ヨロシク!」

 

 

俺は甲板に立ち、上空をただ飛び続けるヘタレウ…いやリオレウス亜種を見上げながら思った。

 

 

(まったく…、レウス狩りはお前の専売特許だろう。

 …直ぐ迎えに行くからな。)

 

「グシャァアァオウ!」

 

 

俺を視認したレウスはコチラへ向けて咆哮する。そして急降下し、自慢の爪を振り下ろした。

 

 

 

―――――――モンタナ―――――――――

 

 

ドボォォ………ン!

 

 

水中の狩りは未経験という訳では無い。だが刀を振るうのが難しい事を考えると、進んで潜りには行かない。

 

 

(クソ!足にまでロープが絡まってる!)

 

 

もがく間に身体にぐるぐるとロープは曲がれた小生はバリスタ台の重しのせいで、どんどん深く沈んで行った。

 

 

「ボォォォウ!」

 

(待ってはくれんよな…ッ!)

 

 

ラギアクルスの挨拶がてらの猛突進を、なんとか動ける左腕と足先で辛うじて避ける。通り過ぎた水流にふわりと浮かび上がり、再び沈んだ。

 

 

「ボォォォウ!」

 

海中で綺麗なターンをし、今度は確実に当てる様に小生に向かって猛突進。

 

(んなろッ!)

 

 

先程浮かんだ隙に左手でロープを持ち、バリスタ台をラギアの頭へと叩き付けた。

ゴンッ!と、鈍い一撃の音が響くと痛みでラギアが暴れて、辺りには激しい水流が発生して翻弄された。

 

 

「ボォォォン!」

 

 

現在出来るたった1つの戦法、バリスタ台叩きつけ。しかしそう何度も上手くはいかないだろうとは思ってはいた。今度は蛇行して突進するラギアへの攻撃は、あっさりと外れてしまった。

 

「ッ!」

身を守る様に丸まり、間一髪。大きなダメージは受けずに済んだ。

 

 

(しめた!ロープが緩んだ!)

 

 

自由が利く内に右手で剥ぎ取り用ナイフを抜いてロープを切る。切り外されて沈むバリスタに別れを告げ、一旦呼吸をしようと急いで必死に水面へ向かう。

 

 

ゴポゴポ…

 

(おかしい…!上手く上昇出来ない!)

 

 

そこまで泳ぎは苦手ではない。むしろ得意だと自負していた。だが今日、今に限って思うように動けない。

 

 

「ボォォォゥン!」

 

ドゴン!

 

(ぐっ…!?)

 

 

不意打ちにタックルを受けた。ダメージは少ないが、泳ぎを止めると、まるでバリスタ台の様に沈み始めた。焦る。どう足掻いても水面へは少しずつにしか近づけない。

水を掻き分ける手がヤケに重さに気づく頃、小生はやっと冷静になってきた。

 

 

(グラビ装備が重すぎるんか…!?)

 

「ボォォォウン!」

 

(だが負けん!)

 

 

猛突進のコースをギリギリで見極め、当たる瞬間に足をバタつかせて避ける。通り過ぎた後に発生した水流に翻弄されつつも、背中の狩龍を抜いて脇腹へ振る。

 

 

ザシュ!

 

 

いまいちな手応え。いいとこ皮を切った程度のダメージでは怯むことなく、ラギアは距離を開けてしまった。

 

 

「ボォオォオオオオン!」

 

(―――まずい!)

 

ビシャァン!

 

 

電撃ブレスの直撃を受けた。流石は『海王』の名を与えられるだけあってダメージは大きい。ユクモノシリーズと比べて防御力に関しては心配してはいなかったが、やはり水中ではグラビモス装備との相性は最悪だ。

 

 

ズズ…ン

 

 

少し身体が電撃によって麻痺している内に海底へと到着した。ラギアクルスは上から小生を睨み、次にどうしてやろうか考えている様にも見えた。

海底でしっかりと立てるか踏む。

 

 

ドズン!ドズン!

 

 

硬い岩の感触が伝わると、ビルから渡された酸素玉をで身体を満たす。

 

 

「ボォォォウン!」

 

 

沈みながらも、頭の中の隅で戦い方を練っていた。(大丈夫だ、初めてだがヤれる!)と、少々不安がる小生に、励ましの激を小生にかける。そして酸素玉を使い、水中での戦いを始める。

 

 

「来ォォオォい!!」

 

 

水中でも気合いで叫んだ。ゴポゴポとしか聞こえなかったが、ラギアは理解したのか牙を剥き出して向かって来た。小生は噛み付き攻撃を横へ転がり回避、腰のツクヨミを抜いて顔へ2回斬りつけられた。やはり浮いた水中と比べて、足で踏みしめてやれる今の状態が良い。攻撃での手応えが違う。

斬撃で辺りが鮮血に染まる。視界を妨げられるのを防ぐために後ろへ跳ぶ。血の汚れの奥でラギアは悶え苦しんでいた。今が攻め時!水の反発で身体は重いが、腹部へと駆け寄り更に斬る。ラギアは反撃で尻尾を小生に叩きつけ、衝撃で離された。

 

 

(流石においそれと斬られはしないか!)

 

 

だが顔を上げるとラギアは身体をくねらせながら苦んでいる様子。どうやらツクヨミの毒が効き始めたようだ。まだ小生に攻撃のツキはある。

 

 

「ボオオォオオオオン!」

 

「ッ!!」

 

 

怒りの咆哮にやられて耳を塞いだ。ラギアは大きく後ろへ下がり、そして勢いをつけての猛突進。

 

 

(ぐああッ!)

 

 

怒りの一撃に岩壁へ叩きつけられる。意識が一瞬揺らいだ。霞む目に喰らいつこうとするラギアを見て、意識が覚めた。

 

 

「ボオォオン!」

 

(喰らうかよ!)

 

 

前転して避ける小生のすぐ上をラギアの牙が過ぎ去った。この距離は狩龍だと、小生は胸を、右脚左脚を斬りつける。そして足に力を込めてラギアへ向かって跳び、ノドに狩龍を突き刺した。

 

 

「ボオォオオオン! ボオオォォォオ…!」

 

 

ラギアクルスは仰け反るようにして倒れた。「悪いな。小生は負けるわけにはいかんのでな。」と、右手で狩龍を押さえながら左手でツクヨミを抜き、更に突き刺した。

 

 

「ボオオォオォオオォォォ………」

 

 

最期の咆哮と痙攣をし、ラギアクルスは動かなくなった。

 

 

 

 

ボシャン!

 

「ハンターさんが上がって来たぞー!」

「大丈夫そうだ!」

 

「ふぅ…。地上の空気が美味い。」

 

 

ラギアを倒し終わってから数分。上から碇が落され、『コレにつかまれ。1分したら引き上げる。』とビルが書いたと思われる木版が取り付けられてあった。流石は持ち主、これで上昇するのは難しいと判断してくれたんだろう。碇に乗り、時間が経過すると間も無く上へと引き上げられた。

 

 

船の上にはバリスタの弾が大量に撃ち込まれた、リオレウス亜種の遺体があって驚いた。小生が水中にいた頃、上も大変だったようだ。ビルは「まぁバリスタ使えたから楽勝だったぞ?レウス担当。」と言われてしまった。

 

 

 




え?水中なのに地上戦じゃないか?
…水中の狩りは難しかったんです。まぁラギアの動きはアマツと同じだと、誰かから聞いたので、いいか!とw


閲覧ありがとうございました。次回もお楽しみに。
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