The Problem Hunter   作:男と女座

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お待たせしました、男と女座です。新環境で更新が遅れていてスミマセン。

弥生「一応書き溜めはしてるのにね。この様よ。」

こちらのサイトに来て約7ヶ月。総合評価が2000ptを超えて、読んで下さる皆様にこの場で感謝いたします。ありがとうございます!

弥生「『小説家になろう』にいた時はどうなることと思ったわ。」

更新は遅いですが、最後まで書き続けますので、今後ともよろしくお願いします!


あ、気付いたら本編の30話ですね、キリがいいです。なので思いつきで「第〇話」って付けました。特に大きな意味はありませんがw




第30話 SILENT  KILL

(弥生とモンタナは無事だろうか?)

 

 

ふと、慣れないトレジャーに励む2人を想った。大切な事や知識を記した手帳を弥生に渡してあるので食料や水分、休息については心配無いとは思う。むしろ簡単に貴重なアイテムを見つけるのは難しいし、少々飽き性がある弥生では『特になし。』で終らせるかもしれない。

 

 

もうかれこれ1ヶ月くらいか。俺の方はもう復帰したくて堪らない。これもリリー、クオン、そしてルーナの献身的な世話のお陰だ。それにユクモ村の温泉ほど有名とは言えないが、ポッケ村の温泉による効能で怪我の回復も早い。

 

久々な故郷での生活も良いが、流石に長く居るとハンター活動が恋しくなる。唯一の救いはルーナの訓練としての外出だろう。訓練とは言ってもガンランス使いの俺にアドバイス出来る事は回避や立回り、回復アイテムを使う時のタイミング等と少ないかもしれないが、それでも彼女は熱心に俺の話を参考に動いてくれている。初めは無茶と思った雪山滞在狩猟も見事にこなしたからか、心身に成長が見られる。特に精神に置いては、土壇場で冷静さをある程度は失わなくなった。…ある程度は。(散弾で撃たれて多少背中がチリチリ痛むが我慢しておこう。)

 

 

 

 

あぁ、それにしても退屈だ。

 

 

長い間、火薬の匂いを嗅いでない。ボウガンから発する独特の火薬の香りをまとったルーナに、心が凄まじく揺れ動く。彼女が近づく、横切る、風上に立つだけで…もう…。

 

 

「ハァ…。

 (自重しないとな。)」

 

 

抑えきれない欲望に自己嫌悪すら覚える。ましてや俺を慕ってくれているルーナに向けるのは良くない。いや確かにルーナはハンターにしては小柄で可愛いとは思うが…、この療養期間中はじっと堪えた生活を強いられている。大抵の場合、ドン引きされる火薬好きと言うことは秘密にし、ただただ表面上は無欲な生活を強いられているんだ!

 

 

しかしながら人間、抑圧された生活には、そう簡単に慣れるわけもないな。早く復帰してハンター稼業を再開したいものだ。

 

 

それにしても…家に置いてあった火薬までも回収されてしまったのは本当にツラい。弥生め、相変わらず勘が良い。屋根裏、床下、ベッドの下の予備などが全て回収されてしまった。しかも慣れない片手では火薬の調合もままならない。趣味嗜好と仕事、志をセットで出来るハンター稼業が天職だったんだが、こう何もかも差し止められては敵わない。

 

 

思い出せば懐かしきジンオウガ戦の時、左腕の防具に爆薬を詰め込むだけで作った急拵えの爆弾だったが、巻き上がる炎や爆破範囲を思い出すと良い爆弾だったな…。

 

 

「フフフ…。」

 

 

やはり俺は火薬を使って燃やしたい、砕いきたい、破壊したい…!

思い返せば、凍土の万年氷の壁を破壊した時は最高だった。崩れる音、氷によって閉ざされた空気と交わった火薬の香りとのハーモニーに胸が高鳴った。

 

 

「あぁ…。

 (火薬…、火薬、火薬火薬、火薬火薬火薬火薬火薬火薬…!)」

 

 

 

「あの、ビルさん!村長さんがお呼びです。」

 

「あ、ルーナ。」

 

「「あ、ルーナ。」じゃありませんよ、もう。何度も呼んだんですよ?」

 

「え?…ゴメンゴメン。」

 

 

目の前のルーナの呼び掛けに気づかなかったとは…。自重しないとだ。

砂漠に慣れたルーナにはポッケ村の寒さは厳しいのか、村にいる時はマフモフ装備を着用している。俺より身長が頭1つ分は小さい彼女は、ハンターでは小柄だ。だからか前を歩く時は、小動物の様な可愛いさを覚える。

 

 

「あの…、まだ腕が痛いんですか?」

 

「いや大丈夫だよ。」

 

「でも」

 

「本当に大丈夫だよ。仕事を任した親友の事を考えていただけさ。」

 

 

真っ直ぐに見つめるルーナの視線を隠すように頭に手を置いて「…大丈夫だからな?」と頭を撫で回した。頭1つ分は身長差があるために、とても撫でやすい。やっと納得してくれたのか、ここに来た用件を話し始めた。

 

 

「村長さんとネコートさんから、ビルさんへ仕事の依頼をしたいそうです。」

 

「俺を?ルーナにではないのか?」

 

「はい…。ネコートさんがどうしてもビルさんを、と。私もそれなりに上達したのに…」

 

 

最後は少し頬を膨らませながらブツブツと話すルーナ。ここ最近行動を共にしていて分かったが、彼女は納得していなかったりするとこう話す癖があるようだ。

 

 

「ハハハ、また退屈な運搬依頼かな?」

 

「多分…。休養中だからって、ビルさんにあんな依頼…。もっと別にあると思います。」

 

「まぁ頼られての依頼なら良いじゃないか。これも誰かの幸せの為に、ってな。」

 

「うー…、分かりました。」

 

 

 

家から外へ出ると冷たい風が襲って来た。俺もハンター用の防具ではなく、普段着としてマフモフ装備を着てはいるが寒いモノは寒い。空気を吸うと肺の中で氷が張ったみたいになる。もうそろそろ温暖季になるというのに、ここは相変わらずの雪景色だ。

 

ポポや皆で雪を退けて作った道を歩き始めた。俺の家は村の下、農場の近くにあるので村長に会いに行くには坂道を上らなければならない。村に帰った頃はリハビリとして、村の中心にまでルーナやリリー達と一緒に散歩をした。最初の頃は「彼女かい?」と村人にからかわれたな。否定しまくったので流石にもう言われなくなったが、しばらくの間ルーナは訓練以外、機嫌が悪かったのは謎だ。

 

坂道を上がりながらポッケ村の入口に建っている家を見た。村人が屋根に積もった雪をスコップで取り除いている。その家の主は居なくても、手の空いた村人の誰かが行っている。いつでも帰って来て良いように、と。俺もまた会いたい。その人は以前、俺が砂漠でルーナに語った、俺が憧れているハンターだ。行方不明になって数年だが、きっと生きている。その人を探すのが、ある意味では俺の最終トレジャークエストなのかもしれないな。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

「おぉ、よく来てくれたの。」

 

 

焚き火に当たりながら暖を取る村長とネコートさんに一礼し、「依頼だそうで?」と尋ねた。

 

 

「ココからフヒラヤ山脈へ行く途中にある、湖を渡った先の村を知っておるかい?」

 

「えーっと、確かポーチ村ですかね?」

 

「左様じゃ。」

 

「ビルさん。ポーチ村って何ですか?」

 

「この辺りに幾つかある集落の1つ。雪山エリア1の湖を越えて、森の近くにある小さな村で、木炭の生産が主だ。だいぶ昔は鉱山で賑わっていた村の1つだ。確か今はまだ寒冷期だから、村に残っているのは数人かな。」

 

「左様。その村に行って来てほしいのじゃ。」

 

「お使いですか?」

 

「いや違う。」

隣で聞いていたネコートさんも話に加わり説明を続けた。

「ポッケ村はこの周辺のハンターズギルド管轄の拠点。だからこそ辺りに点在する村とも定期的に連絡を取っている。」

 

「村一つ一つにギルドを置けないから、ですね。」

 

「うむ。そこで地元に明るい者が村を回って異常が無いか調べるのだ。」

 

「えーっと、それを俺に、ですか?」

 

「うむ。危険かもしれんからニャ。」

 

 

ネコートさんの語尾にアイルー達と同じ「ニャ。」が思わず付き、気まずそうに咳払いをしてから、気を取り直して話を続けた。仕事をする立場上、自らアイルーらしさを禁じていると以前に聞いたのを俺は思い出した。

 

 

「オ…、コホン。

 昨日の昼には訪れる筈の者が来ないのだ。以前ティガレックスが現れた時も似た様な事があった。ここは念には念を、と十二分に実力あるハンターに頼みたい。防具と盾は返すので、あとはお主さえ良ければ、だが?」

 

「俺は今、片腕が使えませんよ…?」

 

 

治っていると言うのに、医者がなかなか外してくれない。そこで内緒で無理矢理取ろうとしたのだがルーナにバレてしまい、数日前に更に強固で重いギプスになってしまって難儀している。

 

 

「だが左腕は使えるな。」

 

「…一応、業務停止期間中なんですが?」

 

「特例だ。場合によっては早く復帰を頼んでやらんこともない。」

 

「オヌシ次第、じゃのぉ?」

 

「えーーーっとぉ…」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「この小舟ですね?」

 

「ああ。対岸に大きい木があるだろ?あの方向を目指してくれ。」

 

「分かりました!」

 

 

結局依頼を受けてしまった…。何だかネコートさんと村長に担がされた気がするが、ここは気にしないでおこう。実際、あすこまで言われると気にしないのも無理な話だった。どうも考えすぎかもしれないが、連絡を行う役割の者が怪我をしているかもしれない。モンスターに襲われそうになっているかもしれない等と考え始めると、居ても立ってもいられなくなる。

 

 

(しかし…、用意して行けって事は十中八九危ない目に遭う、よな?)

 

 

俺の心配を他所に、ルーナは意外にも慣れたオール捌きで船を漕ぎ始めた。今は狩猟として、アロイシリーズの防具にライトボウガンのヴァルキリーフレイムを装備。俺はマフモフ装備のまま、武器は猛風銃槍【裏残月】の盾だけを返してもらった。ジンオウガの一件から整備も出来ずに回収されてしまったが、流石は村長。武具屋に頼んでくれていたのか状態は申し分ない。本当はグラビモス装備を装備したかったが、小舟が重みで沈みかけたので今回は止めた。

 

 

(村長にネコートさんめ…。返すなら銃槍も返してくれても良いじゃないか…。)

 

 

しかし、雪山にガンナーと一緒、しかも盾しか持っておらず、加えてマフモフ装備と、ここまで状況が揃うと以前の苦い思い出が蘇る(1話)。あの時も地味に危なかった。今度は俺が助けられる立場かもしれないが…。

それにしても何故イビルジョーが旧大陸に現れたのか、未だにハッキリしていない。復帰したら調査を再開しよう。手掛かりは“緑色の衣服”しか無いが、トレジャーよろしくコツコツいこう。

 

 

「ビルさんはモンスターが現れても自重して下さいね。私が倒しますから!」

 

「うーーむ…」

 

「そう言えばリリーとクオンは留守ですか?」

 

「いや、もしもの時の為に待機中だよ。必要な物が要る時に、すぐ連絡ができるようにな。」

 

 

ルーナは頭に「?」を浮かべているが、ここは詳しくは説明しない。まぁ…、仮にモンスターが現れたとして、今回ばかりはルーナに攻撃を任せて俺は囮に徹するとしよう。彼女もドスギアノスやドドブランゴとの狩猟で腕を上げた(と言うか、上げさせた。)。あとは俺が散弾に射たれない事を祈るばかりだが。

 

 

「ビルさんは何だか機嫌が良いですね?」

 

「え?」

 

「家に行った時は顔が怒っている様な、困っている様な顔でしたから。」

 

「そうだった?」

 

「はい。」

 

「ハハハ。俺は根っからのハンターみたいだ。」

 

「数日でギプスを外せますから、取らないで下さいね?」

 

「ああ。

 (取ったらフリューゲルに頼んで復帰を早めてもらおう。)」

 

「でも…治ったら一緒の訓練も終わりなんですよね。」

 

「ルーナのボウガンの命中率も良くなったさ。あとは倒されても諦めず経験を積むことだ。」

 

「そうかもしれませんけど…。」

 

「あ、ルーナ。そこの木橋だ。舵を頼む。」

 

「………。はーい。」

 

 

数本の丸太と杭で作られた簡単な船着き場に到着した。船をロープで固定すると、小高い丘に続く道を頼りに丘の上へ登ると、眼下にポーチ村が見えた。歩けば10分程度の距離なので、村の様子は見えるが、なぜか村には誰もいない。ある家には洗濯物が干したまま。それどころか大抵の場合、村に数党は確実にいるポポの姿が無い。…頭の中で警報機が鳴り始めた。俺はルーナに警戒するように伝えようとすると、「ビルさん、気を付けてください。」と先に言われてしまった。

 

 

「…わかるか?」

 

「はい。気づかれています。」

 

 

そこまで気づかなかった。勘が鈍っているようで、物凄くへこんだ。ルーナは俺に背中を合わせてライトボウガンを構えて周囲を警戒していた。ま、ここは致し方ない。素直に現役に聞くとしよう。

 

 

「どこにいる?」

 

「それがわかんないんです。」

 

「むぅ……。」

 

 

その時、全身に悪寒が走った。俺はすぐさまルーナを突き飛ばし、俺も反対側へ跳んだ。直後、地中から赤い何かが突き出た。突然の強襲に頭が真っ白になった。この蛇のように長い赤い生物は、地中を行くモンスター、ブヨブヨの皮の正体は?頭を無理矢理に回転させて正体を捻り出した。

 

 

「…フルフル亜種、か?」

 

「ギィェエェエエェエ!」

 

 

地中から飛び出した不気味な赤い塔が、「正解だ」とでも言う様に独特の咆哮を上げた。そして再び地中へ潜ると、辺りは再び不気味な静けさに包まれた。

 

 

「ビ、ビルさん。どうしましょう…!?あれはフルフルですよね!?地中を行くんですか!?知らないの私だけですか!?」

 

 

背中を預けたルーナの声は震え、見なくとも焦っているのが分かった。俺は彼女の緊張をほぐせればと思い、右腕をルーナに見える様にヒラヒラさせながら話した。

 

 

「いいか、ルーナ。ハンターやってると色々な体験をするもんだ。未発見のモンスターに襲われるとか、生態を変異したモンスターに襲われるとかな。だからまずは、落ち着け。」

 

 

けれども彼女は「ぜ、絶対にビルさんは守りますからね!」と、より一層と緊張させてしまったらしい。焦りやすい、周りが見えなくなるところは彼女の悪い癖だ。

俺は辺りを警戒しながら、どうしようかと思って遠くを眺めると、村から出て数十m離れた場所に生えている大木の上で手を振っている男の姿が見えた。

 

 

「ルーナ。移動できるか?」

 

「え?」

 

 

振り返るルーナに俺は木の上の男を指さした。そして今はあの男に状況を説明してもらう事が先決だと提案すると、彼女も同意してくれた。そして俺達はもう一度辺りを注意深く警戒し、お互いに顔を見合わせて頷くと大木に向かって走り始めた。すると後方100m辺りで地面が隆起すると、俺達に向かって真っすぐに地面を盛り上がらせながら向かってきた。

 

 

「お、追って来ましたよ!」

 

「だろうな。そもそもフルフルは臭いを頼りにしている説が有効らしい。けれど新鮮なケルビの死肉より、音を立てずにじっとしていたネズミを襲った例もあるらしいから、電撃を利用した特殊な察知能力でもあるんじゃないか?って説もある。熱とか探知するような、な。

まぁ、結局のところ、まだまだ未知のモンスターである事は確実だな。」

 

「れ、冷静に解説している場合じゃないですよ!」

 

 

確かにルーナの言うとおりだった。モンスターが醸し出すプレッシャーに、相変わらず走るだけでスタミナの消費が激しい。それに後ろから大地を盛り上げながら進んで来るスピードを考えると、ゆっくり木を登っている余裕も無さそうだった。

 

 

「よーし…!ちょっと先に行くぜ。」

 

 

俺はルーナより先に木へ行くと、木を背にして体勢を低くし、盾を斜めに構えた。俺が何をしたいのか理解したのか、ルーナは迷うことなく真っ直ぐ向かって来た。

 

 

「い…行きます!」

 

「おう!」

 

 

盾へ飛び掛かると、俺はジャンプ台のバネの様にタイミングを合わせて立ち上がり、盾と言う土台でルーナを放り上げた。要領よく彼女は高い位置の枝に掴まり、俺に手を伸ばしながら叫んだ。

 

 

「ビルさん!早く!」

 

「大丈夫だ…!」

 

 

実際単独のジャンプで届くような高さではない。それに仮に届いたとしても、登ろうとモタついている間に襲われると思った。下手したら下半身が喰い千切られる嫌なイメージも一緒に。

 

 

「ほら…!来やがれ!」

 

 

地面に盾を置くと、俺は取っ手に左足を掛け、音が伝わる様に右足で地面を踏んで跳び上がった。

 

 

「ギィィェェエエエッ!」

 

 

直後真下からフルフル亜種が飛び出すと、足に敷いた盾にフルフル亜種の顔面が当たり、狙い通りに真上へ吹っ飛ばされた。そして吹っ飛ばされた俺をルーナと、手を振っていた男が捕まえてくれて、何とか俺も木の上に登ることに成功した。落ちてこない獲物を諦めたのか、フルフル亜種は素直に地中へと戻っていくのを確認すると、男の話を聞くことにした。

 

 

「よかった。ポッケ村のハンターさんだろ?来てくれると思ったよ。」

 

 

男は見た目40代後半で、腕が太く、肌は雪焼けで色黒に焼けている、いかにも雪山の山男とでも言った風貌だった。いつからここで避難していたのかは不明だが、顔に出ている疲労感は緊張と不安、恐怖の連続によるものなのかもしれない。

 

 

「ハンターの俺が言うのもなんだけどさ、何で地下からフルフル亜種が現れるんだ?」

 

「わからない。ただ一昨日の話だ。昔の坑道の地図を見つけて興味が湧いたのか、村にいた若いのが数人、廃棄された坑道を開けたんだ。その夜…ポポが地中に引きずり込まれるのを見て…!」

 

「坑道は村の地下にもあるのか?」

 

「そ、それは分からない。なにせ俺が子供の頃に閉鎖されたからな。」

 

 

まぁ雪山の地下から坑道を辿って村の地下に来た、ってのがヤツの動きなのだろう。しかしこの村はある意味、運が良かったといえる。もしあと数日遅かったら、この村は全滅していたかもしれない。俺もハンター経験上、運悪く滅んだ村も何回か目にした事もあった。

 

 

「よーし、とにかく狩りに向かおうか。」

 

「良いのか?報酬は――」

 

「気にしないでくれ。ここで時間を掛けては被害が増える。俺達はハンター。人々の盾と剣にならねば。」

 

「そ、そうですよね!ここで私達が頑張らないと!」

 

「ありがとう…!」

 

「村にはまだ人はいるのか?」

 

「あ、ああ。足の不自由な老夫婦や、家族連れもいる。」

 

「分かりました。では行きましょう。」

 

 

情けないと思いつつも、ここはルーナが先に下へ降りた。襲われた時に備え、俺は盾を投げつけられるように構えていたが、フルフル亜種による襲撃はなかった。それが逆に俺達を不安にさせる。俺は木の上の男に「そこで待っててくれ」と手で合図をすると、ポーチ村へ進んだ。

 

 

俺達が歩き回っている事は、既に地中のヤツに知られていると考えた方が良い。だが来たら来たで迎え討てば良いと、俺はルーナと軽く打合せをしてから大声で叫びはじめた。

 

 

「誰かいないかー!俺はポッケ村のハンターだ!」

 

 

反応はない。俺の声だけが虚しく村の中を反響しただけだった。この村には俺とルーナしかいない様だった。それでも俺は何度も誰かに向けて叫ぶ。

 

 

「合図だけでも良い!誰かいないかーッ!」

 

 

背後を守るルーナが、叫ぶ度に緊張で息を潜める。村人が全員犠牲になったとは思いたくない。まだ誰か残っている筈だ。

 

 

――――――カランカラン

 

 

遠くから聞こえた金属音。俺はすぐさま音の方向へ向かって走り、おそらく音がした一軒の家の木の扉を蹴り破った。中で俺達を待っていたのは、木の床を突き破り村人の前で臭いを嗅いでいるフルフル亜種。そして恐怖で硬直している少女の前で、フルフル亜種の間近で娘を庇う母親の姿だった。傍らには頭から血を流して気絶している、ピッケルを手にした父親の姿もある。

入ってきた俺達に気づいた母親は真っ青な顔色で涙を浮かべながらも、必死になって俺達に向かって叫んだ。

 

 

「娘を…娘だけでも!」

 

「そんな事が 出来るかよォ!」

 

 

俺は盾を持ち、後先考えずに飛び込んだ。今にも喰らいつこうとするフルフル亜種の伸びた首へ、ナルガクルガ亜種の鋭いブレードの盾を叩き込む。殴ると言うよりは突き刺さり、不意を突かれたフルフル亜種は「ガァウ…!」と地中へ首を引っ込めて地下の闇の中へと消えて行った。

 

 

「――――――ん、行った、か。」

 

 

俺の言葉で安心したのか少女は大声で泣き始め、母親は床にへたりと腰を落とすと、振り返って泣きながら娘を抱きしめた。父親の容態を診ると、出血があるものの気絶しているだけのようで命に別状はないようだ。

 

 

(良かった。本当に間に合って良かった。)

 

 

思わず涙が溢れそうになったのをルーナに悟られまいと顔を振ってから、「ざ、さぁ村の外まで送りまず。」と、俺は父親を背負うと親子の護衛を始めた。途中、息を潜めていた老夫婦も見つけ、木の上にいた男も一緒に桟橋へと向かった。大人数で船が足りず、そこで俺とルーナが乗ってきた船を彼らへ与えた。俺達は「ハンターだから歩くなり、泳ぐなりして帰る。」と、心配する彼らをなんとかして説得すると、何度も深々とお礼をしながら船でポッケ村へ漕いで行った。

 

 

「ビルさん。良かったですね。」

 

「ああ。」

 

「…泣いていたの、もろバレでしたよ?」

 

「え゛!?」

 

「ビルさんは勇敢で涙脆くて、歴史に強い人だって皆さんから聞きましたから、余計に分かりました。」

 

「だ、誰から聞いたんだよ。」

 

「村人さん全員です!」

 

 

…オイこら、余計な事を喋りやがって。

まぁ生まれ育った故郷だ。本人の居ない所で昔話をするのには多少の憤りを覚えるが、ルーナが皆に迎え入れてもらえている証拠として、抑えておこう。

 

 

「誰だって嬉しい時は笑うだろ。…俺の場合は笑うのを通り過ごして泣けるんだよ、感極まってな。」

 

「素敵なことだと思います。ダメなんですか?」

 

「…泣いている所は見られたくないんだよ。恥ずかしい。」

 

 

 

 

俺達は再び親子が襲われた家屋へ訪れた。フルフル亜種が現れた、底の見えない穴を覗き込むと微かに流れる風を感じた。穴に石を投げ落としてもフルフル亜種が来る様子もなく、俺達は中に降りて調べることにした。

 

 

「よっと。

ほう。洞穴…ではないな。支柱がある。」

 

 

一応持ってきた松明に火を灯して辺りを照らしてみると、所々に朽ちかけてはいるが木の支柱がある。恐らく採掘事業が盛んだった頃の、忘れられた坑道の一部だろう。どうもトレジャーハンターの血が騒ぐが、今は討伐を優先しよう。

 

 

「ここを通って来たのでしょうか?」

 

「うーん。でもフルフルが通るには狭いよな。」

 

 

実際通って来ているのだが、翼や体躯が邪魔をして移動が困難だと思う。だが、どうやってかは生で見ないと分からない。この世界はモンスターとハンターが、お互い予想を上回って戦い続けた歴史。明日、突然変異でもした凶悪なモンスターにハンターが根絶されても可笑しくはないのかもしれない。

 

 

「ビルさん。この坑道はどこへ行けると思いますか?」

 

「さぁな。まぁ多分雪山へ続いているだろうな。」

 

「方角が分かるんですか!?」

 

「トレジャーハンターの基本な、コレ。」

 

 

 

 




弥生「1つ疑問に思ったんだけど」

む?

弥生「ヘビ系に恨みでもあるの?」

…子供の頃の話だ。外の鳥籠で飼っていた小鳥が、次の日とぐろを巻いたヘビになってた。

弥生「どういうことよ?」

鳥籠の入口がスライド式でさ…。こじ開けたらしいんだよね、ヘビが。

弥生「ああ、それで当時7歳だった作者は、可愛らしい小鳥がヘビへ不思議チェンジしたショッキング思い出によってヘビが嫌いなわけね。」

知ってんじゃないかよ!うぅうぅ……っ…

弥生「ま、田舎故の悲劇かしらね。」

アオダイショウめ!
お・のーーーーーれーーーーーーーーェ!!!!!!


弥生「次回もお楽しみに!だそうで。」


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