一色いろはに悪戯をしてみる。   作:molte

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♯急展開

2話です。

八幡と沙希の関係を弄りました。

──────────────────────────

 

 

「はい。あーん」

 

 口の中に広がる旨味。ジューシーな歯応え。まさに今咀嚼している唐揚げは至高といえよう。

 

 更には、後輩の女の子に食べさせてもらっているシチュエーションである。一生に一度、いや何度転生しようとも訪れないイベントだろう。

 

「なぁ。ここまでやる必要はなくないか?」

 

 お弁当を作ってくれる約束をした昨日。

 

 あの後、一色の仕事を見ていたが、居た堪れなくなったらしく一色に帰してもらった。

 

 時間もあったので奉仕部へ行くといつも通り2人が百合百合してた。それを見て雪ノ下に通報されそうになったのは言うまでもなく、由比ヶ浜に詰め寄られた時は、その…胸が当たり過ぎて気が動転しそ…。

 

「先輩?私といるのに他の人の事考えちゃダメですよ」

 

 うっ、目が笑ってない。というかなんで分かるんだ。

 

「さっき私の胸触ったんですからその感触を思い出しながら咀嚼してください」

 

「いやあれは不可こう──」

 

 ピトッと一色の人差し指が俺の唇に押し当てられる。すると同時に俺の鼓動が高鳴る。

 

「後ろから揉むなんてあり得ませんよ」

 

「はい…。すみませんでした…」

 

 ここは陳謝するしか無い。

 

「なんでもない所で躓くのもどうかと思いますが、たまたま直線上にいた私の胸を掴んで支えるなんて最低です」

 

 ぐうの音もでない。ただ支える事が出来るなんて一色の胸はなんて大きいんだろう。

 

「たぶん…Eカップくらいです…」

 

「えっ?」

 

 もしかして俺…口に出てたか?もしそうだとしたら完全にセクハラじゃねーか。

 

「ちゃんと見たら分かるかもしれません」

 

 なんだなんだ?なんだかまずい方向へシフトしていってる気がするぞ…。

 

 一色の顔赤いし、というか服脱ごうとしてるし!?

 

「ちょっ、待て待て!なんで服脱ごうとしてるんだ!?」

 

「へ?…だって先輩が私がEカップな事信じてないから…その測ってもらおうと」

 

「いやいやそんなこと言ってないし、完全にセクハラじゃん俺」

 

「というか好きでもない男にそういう事は…良くないと思うぞ」

 

 そうだ!よく言った俺。国会ならヤジが飛んでくるレベルで良いこと言ったぞ!

 

「わ、私は…先輩のこと…す、すき…ですけど………」

 

「ん?なんて言った?」

 

 まじで聞こえなかったぞ。難聴系主人公とかそういうの関係なく。

 

 するとプシューと一色の頭が沸騰して……ボンッ!と暴発してしまった…。

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

「このタイミングで…」

 

 とりあえずお弁当をかき込んで片付けて一色を保健室に連れて行くと、見事5限に遅刻し、平塚先生に大目玉を喰らうのであった。

 

 

☆☆☆

 

 

 放課後

 

「今日はうちで食べてく?それとも八幡の家?」

 

「いつも通り沙希の家でお願いできるか?」

 

 今日は珍しく奉仕部が休みと告げられたので、昔から何かと縁のある(幼馴染の)川崎沙希と一緒に下校している。

 

 2人で帰るときは大体沙希の家にお邪魔して1泊泊まるという流れがある(もちろん衣服などが必要な為、一度家に戻ってまた沙希の家にお邪魔するという形になるが、その場合だと100%妹の小町もついてくる)。

 

 この関係は周知の事実なのでクラスメイトや奉仕部2人にとやかく言われることは今までなかった。

 

 そう。今までは───。

 

「せ、先輩…。沙希の家でお願いできるって…」

 

 なんと下校中に亜麻色セミロング美少女、一色いろはに会話を聞かれていたらしい。

 

「もしかしてお2人はそういうご関係で…」

 

 ぶつぶつと呟いているが全部聞こえてるぞ。というか泣きそうじゃねえか。畜生かわいいな。

 

「一色。何か勘違いしてないか?」

 

 アワアワアワとよく分からない効果音を発し、完全に泣きそうな一色。沙希はやれやれと呆れた様子だが…。

 

「八幡。あの子も呼んでいいよね?」

 

 沙希が少しばかりニヤけた顔で聞いてくる。…たぶん大勢の方が好きなんだろうで。

 

 数秒ほど沈黙を貫いていた俺を見て沙希は…。

 

「えっとー。生徒会長さんだよね?あなたも私の家に来「行きます!!」あ、そう」

 

 結局は俺に選択権などなく…一色が急遽お泊まり会に参加することになった。

 

 まぁ小町と仲良いし、気まずくなることはないか。沙希もなんだかんだいい奴だし。

 

 むっ。そうだ明日は土曜で学校が休み。ということは…徹底的に一色を悪戯できるということであって…。

 

 いやしかし小町が居るな。うーん。難易度は高いがまたそれも一興というやつなのか。

 

「ふふふっ」

 

 思わず笑ってしまうのも無理もない。予想外な出来事だが、完全に棚ボタだ。

 

「先輩きもいです」

 

「それはいつも通りだから安心しな」

 

「えっ」

 

 沙希からのフォローは虚しく突き離されるものだった。

 

 

 一度家に帰って小町に今までの経緯を話すとなにやらニヤニヤしながら「良かったねぇ〜お兄ぃちゃん」なんて言われた。

 

 我が妹が世界一可愛いのは、皆さんもご存知の通りだがこの言い方は少しどころかかなり引いてしまう。

 

「あ、お待たせしました」

 

「ん。そんなに待ってないぞ」

 

 一色も一旦家に戻った為、沙希の家までの道案内ということで小町に「いろはちゃん連れてきて」と言われ、やむを得ずいまに至る。

 

 学校→いろは家→八幡家→沙希家の位置関係である。

 

「先輩ベタですが許してあげます」

 

 「そんなに待ってない」がベタなセリフという事か。確かに洒落た男や経験豊富な男は女子を待つ際の常套句として使用するだろうな。

 

 まぁ洒落てもなければ経験豊富な男でもない俺でも使用許可が降りたのだ(知らないが)。乱用しない程度で使っていいはず…。

 

「先輩は沙希さんと幼馴染なんですよね?…でもよくお泊まりしてるってそういう感情は無いんですか?」

 

 うーん。考えたこと無かったな。俺と沙希が釣り合うかどうかは火を見るより明らかだが…。まぁそれは置いといて。

 

「そういう感情が全くないってわけではないが、もし結婚するとしたら沙希みたいな家庭的な人が好ましいな」

 

 別に隠す必要もないので本心をそのままにして一色に伝えた。

 

「そ、そうですか…。わ、わたしはどうですか!?!?」

 

「うおっ!?どうした?急に」

 

 丁度歩いていた直線に一色が出てきたもんだからのけぞってしまった。

 

「あ、いや…なんでもない…です」

 

 …………いや可愛すぎんか。

 

 沙希みたいな家庭的な人は確かにタイプだが、一色の様な可愛くて守ってあげたい、一緒にいてドキドキする人なんかも楽しくて飽きないから良いと思うけど…なんて面と向かって言えるわけない。

 

 悪戯関係なしに一色のあざとさなしはすごく可愛い。毎回ドキドキしちゃうぜ。

 

「ん?」

 

 隣からやかんが沸騰する音が聞こえる。

 

『デジャヴ』そんな言葉がよぎった。

 

「きゅうぅぅぅぅ……」

 

 可愛い音を立てて一色は気絶してしまった…。

 

 幸い、沙希の家近くでよかったが、もっと距離があったら通報されてもおかしくないな。これ。

 

 

 川崎家

 

「小町ちゃんお風呂入ろ」

 

「うん!沙希さんもはやくー」

 

「ちょ、ちょっとまってて」

 

 まさに眼福と言えるものだろう。いや最近では巷で尊いという言葉が流行っているらしいが、そうとも捉えられるのだろうか。

 

 それはそうと今日一日2食も女子の手料理を頂けるなんて最高だった。沙希の料理は言わずもがなで美味しいのだが、一色のお洒落な料理は弁当の時も含めセンスがある。なんて言うか一人前○堂の様な感じ。

 

 作る際に手際も見せてもらったが、素人目に見てもなかなかの腕前だったと思う。

 だが、俺が見に行ったら一色に「先輩は座ってて下さい!」と強く言われたので何食わぬ顔をして遠目に見ていたにすぎないが…。

 

 2人とも良い奥さんになると予想して、俺は沙希の弟の大志とテレビを見ていた。

 

「お兄さんは一色さんのこと好きなんすか?」

 

 無視だ。こいつの今の質問を答える必要を感じられない。それに歴史的アニメであるサザエさんだぞ?お前の会話で遮っていいものではないのだ。

 

「……やっぱ好きなんですね。じゃあこれを比企谷さんに…」

 

「好きじゃないぞ?」

 

 なんとも姑息な手を使うヤローになったな。沙希の弟だからといって侮れない。全員が善人とは限らないということだ。

 それにちょっとイラッとしたな。なんかコイツに圧をかけられている自分に。

 

「じゃあ俺が一色さん狙ってもいいですか?」

 

「……少しトイレに」

 

 なるほどそういうことか。

 

 リビングを出てすぐトイレ側の廊下へ視線を向けると。

 

「一色。なにしてるんだ?」

 

「へっ!?お、驚かさないでくださいよ」

 

 大志と協力して俺の本心を暴こうっていう魂胆か。反撃に出たみたいだが、そうはいかないぞ。

 

「俺はふつうにトイレに行きたいんだが」

 

 一色は俺たちが居たリビング近くのトイレに向かう廊下にうずくまって隠れてた。俺らの会話が聞こえるようにして。

 

「あ、いや、その…幻滅、しちゃいました?」

 

 幻滅?あぁ、急に反撃しだした事についてか?もしくは本当に本心が気になったとか?…もし後者なら賭けてみる価値はある。

 

「幻滅なんてするか。お前が他の人に狙われるなんて許せないに決まってるだろ。宣言されたらなおさらだ」

 

「え、それって…」

 

 俯いてた一色が俺の言葉を聞き、こっちへ眼差しを向ける。…これは色々とやばい。早く逃げよう。

 

「じゃあトイレ行くからどいてくれ」

 

「あ、ちょっ────」

 

 よし。完璧だ。あとはトイレの鍵を閉めるだけ───。

 

「せ、先輩。私、先輩のこっ!?」

 

 よくない。その先の言葉はトイレなんかで発することではない。それに一色は勘違いしている……。

 

 いや待てよ…勘違いさせていたの俺の方か。人の気持ちで弄ぶのはやっぱりよくないな。ここはちゃんと謝ろう。

 

「もがもがもがもがーー!!ぷはっ!なんで急に口押さえるんですか!ひどいです!」

 

 やっぱし激昂させてしまった。そりゃ怒るか…。多分いまのは"告白"だろう。が、その前に伝えねばならない。

 

「一色。実は…お前を悪戯して反応を見て楽しんでたんだ。それも昨日から」

 

 一色は先ほどから続けている犬が威嚇するような体勢になり、怒ってるんだと推測できる。

 

「なら、それならの罰が必要ですよね。それもとびっきりの」

 

 スッと冷めたようにして淡々と告げる。

 

「できる範囲のもので頼む。パシリやらなんやらしてやる覚悟はある」

 

 話が急展開すぎるが…。

 

「じゃあ今晩、私と添い寝してくれますか?」

 

 罰なんかじゃない────。なんて思ってしまった俺はたぶん一色のことが…。

 

 

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