オレが辿り着いたのは、1つの部屋。
それは、下・中級の神はもちろん、上級の神でさえ入ることを許されない場所。
それが惣右介様の部屋だ。
机の前には、惣右介様が座っていた。
「銀、君に見てもらいたいものがある」
「オレに……ですか?」
「そうだ。見てくれ」
そう言うと、惣右介様は卓上のパネルを操作した。
オレの目の前に、映像が映し出される。
それは戦場だった。
肉片が裂ける音が響き、断末魔が轟く。
地面はたっぷりと血を吸いとり、赤く紅く染まっていた。
「惣右介様……これは、一体……?」
込み上げる吐き気を抑えつけ、絞り出すように問う。
こんな世界、今までで見たことがない。
彼の答えは、信じがたいものだった。
「これは、未来だ」
「未来……?」
「そう遠くない、霜月要、彼女のいる世界の未来」
「なっ!?」
そんな馬鹿な。
どうして、どうしてこんな……。
こんなの、白蘭が巻き起こした
「これは、あってはならないことが起きたために起きてしまった産物だ。解るね」
わかっている。
同じ世界に異世界からの能力者が複数いてはならない。
何故なら、その世界に膨大な負担がかかり、歪んでしまうから。
だから、本当なら“あの時”に然るべき対処をしなければいけなかったんだ。
けれどオレは、それをすること無くただの応急処置しかしなかった。
そう遠くない、未来。
つまりそれはオレと漣志で行っている対処が効かなくなったとき、期間にして2、3年。
そのとき、世界はこの映像と化する。
「私は君を責めている訳じゃない。確かに、ことの原因は君の部下であるし、君は然るべき処置をしなかった。けれど、過ぎたことじゃないか」
充分に責めてますよ、あなたは。
だとしても、オレたちが悪かったにしても、過ぎたことだなんて言ってあいつ等を見殺しにしたくなんてない。
2、3年の間で、絶対に阻止する方法を見つけ出してみせる。
「ただし、これを阻止する方法がたった1つだけある」
「!?」
「それは、どちらかが力を失う、もしくは、この世界から消滅すること」
「しょ……!? しかし惣右介様、やちるは召喚の掟によって願いを叶えられたもの、要は神の掟によって伝統に則ったもの! そんな……オレたちが
前にも言ったが、オレたち神の中にも“掟”が存在する。
漣志のように召喚で呼び出される神は、召喚者の願いを3つ必ず聞き届けなくてはいけない。
例外はない。
そして要のように、神のミスによって天寿を全うできなかった者には、オレが新たな人生を提供する伝統がある。
こちらも例外はない。
これは全て、惣右介様が創ったもの。
覆してはならないが、覆さなくてはならない。
しかしそれが起こればこの世界は破滅……いや、抹消される。
「確かに、私が定めたことを神が覆すような真似をしてはいけない。もちろん、私もだ。だが……
それが人間ならばどうなる?」
「!! 別の理由をつけ、どちらかが……と言うことですか?」
「君は理解が早くて助かるよ」
やちるが要の力を消すか殺す、または、要がやちるの力を消すか殺す。
つまりはそういうことだ。
「いつ、どちらを消すのか。それは君に任せるよ。尤も、どちらにせよ早くしないと意味がない。
期限は1年。わかったね」
疑問系じゃない辺り、嫌になるぜ。
「はい、わかりました。1年以内には必ず……」
思わず苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。
そんなオレに、彼はただ微笑みかけるだけだった。
要のもとに戻ろうと、部屋を出ようとしたときだった。
ふと、惣右介様に呼び止められる。
「なんでしょうか」
「君が独断と偏見で転生させた彼女は、元気にしてるのかな?」
「やっぱりバレてましたか……。ええ、お陰さまで」
皮肉たっぷりに返して、今度こそオレは部屋を出ていった。
†‡†‡†‡†‡†‡
家に帰ると、要はまだ寝ていた。
いつ目を覚ましてくれるか分からない。
けど、いつかこの話をしなくちゃいけない……。
心のどこかに、いっそこのまま目を覚まさずにいれば、永遠に眠り続けてしまえばいいと思っているオレがいる。
要に会ったときから、オレは胸の中によくわからない
それはお前と会うたび、お前の笑顔を見るたびに大きくなっていく。
「要……お前は、オレの何なんだよ」