「おおー。ルッス姐マジパネェっす」
その場でくるっと回るフィリミオが纏うのは、出来立てほやほやのヴァリアーの制服。
話は朝食時まで遡る。
最初にその話題を持ち出したのは彩加だった。
「ねぇフィリミオ。なんで黒曜の制服なんて着てるの?」
その言葉に、ピク、とフィリミオの動きが止まる。
「聞いてよ彩加!」
バンッとテーブルを強く叩くとそのままフィリミオは彩加に詰め寄った。
「凪も正一も骸も犬も千種もみんな黒曜なのに私だけ並盛なのっておかしくない!? こーゆーときくらい黒曜の制服着てもいいでしょ!? ね? ね!?」
「おっ落ち着いて! 気持ちはわかるから本当に落ち着いて!?」
突然愚痴を始めてしまったフィリミオの口にパンを突っ込んでなんとか黙らせた彩加だったが、その鬱憤の溜まり様にかなりドン引きしてしまっていた。
むしろ超学ランのこと気に入ってませんでしたっけ、の勢いで。
「とにかく私が言いたかったのは、ここにいる以上はヴァリアーの隊服を作ったらどうなのってこと!」
「むぐむぐ……ごくっ。隊服?」
「そっ。私たちとお揃いの」
お揃い。
その言葉に、フィリミオの顔がみるみるうちに笑顔に包まれた。
仲間という概念を大切にする彼女にとって、お揃いと言うものは何物にも変えがたい嬉しいものだ。
「作る!」
「そうこなくっちゃね!」
そこでやる気を出したのがルッスーリアだ。
自称ヴァリアーの女将、ルッスーリアは新人の隊服作成を一任されている……らしい。
「全くのデフォルトもいいけど、やっぱり何かアレンジ入れたいでしょう?」
「それ言っちゃう? いいの、私はリクエスト多いよぉ?」
「あらぁ、それは腕がなるわね」
そんなこんなで、スクールバッグの中からルーズリーフとシャープペンシルを取り出したフィリミオは、リクエストと称した服のデッサンを始めた。
今まで一度も語ったことがなかったが、彼女の絵心は想像に任せるとしよう。
少なくともルッスーリアに対して一つの誤差なく伝えることは可能であった。
そして出来上がったものを試着したのが冒頭に戻る。
「本当にあれを作り上げちゃうなんて、凄すぎる。ちょっと意地悪してかなり細かくミリ単位で指定したつもりだったのに」
「あはは、ルッスーリアを舐めちゃあダメだよ」
隣で笑っている彩加も、心なしか笑顔が乾いている。
いくら何でも、世界トップレベルの頭脳を持った少女の馬鹿みたいに細かすぎる指定を、全て何の誤差なく作り上げてしまうとは、さすがに思わなかったのだろう。
もう一度着心地を確認したフィリミオは、部屋に置かれた姿鏡に目を移した。
淡いブルーのTシャツと膝上5cmの真っ白いタイトスカート、ダークブラウンのニーハイソックスにこれまた真っ白い3cmヒールのロングブーツ。
ヴァリアーの象徴とも言えるジャケットの丈はスカートよりも長いロングコート状で、目深くかぶれるフードが付いている。
さらには、これはルッスーリアの心遣いなのだが、髪を結わう白のシュシュまで作ってもらった。
これがあの霜月要と同一人物だとは、いったい誰が思うだろうか。
どこか遠いところでその様子を目撃してしまった約1名がいつにも増して大爆笑をしているのはまた別の話である。
「では、隊服に浮かれているフィリミオに一つ朗報です」
「?」
突然にそう言いだした彩加に、なんのことやら、と小首を傾げる。
「これから初任務に行くのです! 私と2人で!」
「へぇー…………初任務!?」
あまりの驚きに一瞬声が裏返ったのである。
「しかもSランク任務だよ? はあーあ、初任務でこんなに重要なの任されるなんて、羨ましいなあ」
「頼むから……他人事みたいに言わないでよ……」
「もちろん他人事じゃないよ。だって私も行くもん。まあ私は非戦闘要員だから後方支援だけだけどね☆」
「星をつけるなっ!」
すでに戦う気ゼロの彩加に突っ込まざるを得ないフィリミオであった。