その日、ヴァリアーの幹部たちはまたXANXUSに招集された。
なんでも、少し前に日本に向かっていたスクアーロがハーフボンゴレリングのもう片方を持ち帰ってきたのだという。
それが意味することはもちろん、ボンゴレリングの完成。
けれどこれが本物ではないことを私と彩加は知っている。
スクアーロが沢田綱吉の父親の策略によって偽物をつかまされることが
すぐに解散になった会議室を後にしながら私はじっとボンゴレリングを見つめていた。
偽物といっても完成したリング。
完成した雪の結晶。
綺麗だ。
ぽつりとそんなことを思った。
「ねえ彩加、XANXUSに言った方がいいんじゃないの?」
「うーん……本当なら5日後の予定なんだけど、どうしようかな」
私が問いかけると、彩加は小さく首をひねった。
彩加や銀に聞いた話によると、偽のボンゴレリングを手に入れてからXANXUSにばれるまでの5日間を使って沢田たちは強くなるために修行をしているという。
それによってそれぞれがヴァリアーと対峙できるほどに強くなり、沢田は現状から争奪戦の期間をフルで使ってXANXUSを倒すための力を習得するそうだ。
個人的には長谷川が修行なんてしていたらかなり厄介だと思う。
いや、普通に倒す自信はあるんだけど、なんていうか、斬魄刀と斬魄刀の対決って、リボーンの世界において誰得だよっていうね。
本当に誰得だよ。
それに、早めに知ることになれば、その分早く日本に行くことができる。
早く、クロームやユニたちに会いに行ける。
「ま、結果がどうあれ私たちは相手の守護者さえ目的通りに倒せればいいんだけどね。言っちゃう?」
「意外と軽いね」
私と違って原作の知識というものがあるはずの彩加。
行動の結果で中身が変わってしまうかもしれないという恐怖はないのだろうか。
ああ、そういえば長谷川はそれを危惧していたような気がする。
忘れたけど。
「いいの。私はそんなに本来の流れがどうとか気にしたことないし。パラレルワールドの一環だって割り切っちゃえばさ」
「ふうん。ところで、私たちが言いに行ってXANXUSは信じるの?」
「私、これでも諜報部隊長だから、私が伝える情報は絶対なんだよねえ」
うわ、これ一番敵に回しちゃいけない人だ。
珍しく一瞬で悟ってしまった。
しかもその顔面に張り付いているのはかなり腹黒い笑み。
一体全体どんだけこのイベントを楽しみに待っていたんだろうかこの子は。
「ふふふ、スクアーロのボコられる姿が早めに見れる~♪」
前言撤回。
楽しみにしているのはスクアーロがXANXUSにフルボッコにされるシーンのようだ。
やっぱり腹黒い。
わが親友ながら、怖い。
「よし、行こう」
「ちょっ、歩くの速い」
ぱっぱと来た道を戻り始めた彩加の後を慌てて追いかける。
迷わず向かうのはXANXUSの部屋。
何で会議室じゃないのかというと、彩加曰く、彼は終わるとさっさと自室に引っ込むからだとか。
扉を軽くノックするとしばらくしてから返事が聞こえてきた。
「誰だ」
「高城彩加とフィリミオ。ちょっと話いいかな」
彩加が軽く声をかけると、すぐに入れ、という声が返ってきた。
開けて中に入ると、何でかわからないけどマーモンも一緒にいた。
何か話をしていたのか、マーモンはまたあとでね、と残して部屋を出て行ってしまった。
「それで、用は何だ」
「うん、ちょっとした訃報かな」
XANXUSの表情が険しくなった。
「スクアーロが持ってきたリングなんだけどね、どうも
「んだと? 嘘じゃねえだろうな」
「もちろん。私が張り巡らせておいた情報網に引っかかってね、何でも沢田家光がバジルにも内緒で偽物を掴ませてきたみたい。本物は今頃ディーノの手によって向こうの手の中だよ」
バリンッ!
ものすごい音がしたけど、それはXANXUSが持っていたグラスを粉々に割った音だ。
うん、相変わらず怖い。
「高城……カス鮫を呼んで来い」
「はーい」
「全員に自室待機だと言っておけ」
「了解っす」
そうして部屋を出たときには、彩加は声を殺して大爆笑していた。
大方、スクアーロがお仕置きされている姿でも想像しているんだろうけど。
そう考えると、何でか私まで笑いが込み上げてきた。
やばい、彩加のがうつった。
数時間後……ヴァリアーが日本へ向かうことが決まった。