大きく息を吸い込む。久しぶりの日本の空気に胸が一杯になった。目の前に広がるのは、懐かしい並盛町。
「ねえ、スクアーロ。行動を起こすのは何時ごろ?」
「人目につかねえように、夜になるだろうなあ」
「ふぅん。じゃあそれまで自由行動でいい?」
「……。連絡は取れるようにしろ」
「はーい」
元気よく返事をして、大きく跳躍をしてその場を去る。遠目の路地裏にたどり着くと、『ヴァリアーの守護者・フィリミオ』から、『並中風委員・霜月要』に戻った。ああ、この姿も久しぶりだな。
「クロームたち、元気にしてるかな」
少しワクワクしながら家に向かって走り出す。はは、髪が短いってこんなにも軽かったんだっけ。なんて考えながらも足は止めない。
「要ぇ! 一緒に行こうや!」
「!!」
不意に懐かしい関西弁が聞こえて振り返る。そこには、こっちに向かって走り寄ってくる“千鶴”がいた。
「家に帰るんやろ? うちも一緒に連れてってぇな」
「ああ、そうだな」
こんなやりとりも久しぶりだ。自然と笑みが溢れる。俺も、千鶴も。
早く帰ろう、みんなが待ってる。そんな思いでいっぱいだった。
……家に着くまでは。
「なん、だよ……これ……」
そこには、なにもなかった。いや、確かにあったはずなんだ。だけど、消失していた。焼失していた。ただの焼け跡。黒ずんだ地面が元々そこにあったはずのものの存在を証明している。
「なんで、なんでなんや。なんで、
「クローム、骸……犬……千種……ユニッ!! ……嘘だと言ってくれ……!!」
あいつらがいないなんて、嘘だろ……!? 誰が、こんなことを。
《……要》
「っ、骸!?」
《要、聞こえていますか。聞こえているならすぐに黒曜ヘルシーランドに来てください。すぐに》
「骸、いるのか? どこにいる!?」
《黒曜に来てください》
何度呼びかけようと録音テープのように同じ言葉だけが繰り返される。何度も何度も、黒曜ヘルシーランドに来いと言い続ける。もしかしてそこにいるのか? いや、いるはずだ。
突如として走り出した俺に困惑しながらも、千鶴も後ろから走ってついてきた。千鶴には骸の声は聞こえていなかったみたいだが、道なりからどこに向かっているのかわかったらしい。
「骸!!」
黒曜ヘルシーランドについた俺たちは息を飲んだ。余裕で30〜40はいるであろう黒服の集団。ヴァリアーとは全く違う、黒服たち。そしてその中で、たった1人で戦い続ける骸の姿があった。身体中傷だらけで、もう何時間も戦っているのがわかる状況だった。
助けなきゃ。
スクールバックから短刀を取り出す。そして、
「……あ……!?」
見つけてしまった。草むらの中。藍がかった黒髪、緑黒の髪。そこに咲き乱れる、真紅の大輪の花。
「クローム……? ユニ……?」
────ガシャアァアァンッ!!
心の奥底で、何かが壊れた音がはっきりと聞こえた。なにも考えられない。なにも考えたくない。
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるナふざけルナふざケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナ!!!!!
「卍解」
壊れた何かから黒いものが溢れ出した。