リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
感想評価ありがとうございます。
感想で「主人公強過ぎ……強過ぎない………?(意訳)」と言われましたが、御安心を。しっかり弱点あります。一番分かりやすいのはあまりにも貧弱な魔術回路ですね。そこら辺はその内描写します。
少なくとも第四次が終わるまで、識姫は対サーヴァントはもちろん、アヴァロン切嗣、外道神父には逆立ちしても敵いません。いけてもワンチャン相討ち。
キャスターの宝具解放。それを察知した私は急いで彼女達が居た場所に向かっていた。
(キャスター!状況は!?)
(ランサーが現れたので宝具を使用しました。現状は結界内で足止め中といったところです)
(………倒せそう?)
(………難しい、ですね………)
予想通りの返答。これで私が才能溢れる魔術師ならばこの返答は違ったものになっていただろう。投影魔術が使えたり、こうして彼女との契約が切れていない以上私にも魔術回路はあるのだろう。だが如何せん数が少ない。潤沢に供給出来るほどの魔力は持ち合わせていないのだ。
(………ウェイバーにライダーを呼ぶように伝えて)
(了解しました)
セイバーとランサーを仕留めるのは無理だろう。だが無傷で済むとも思えない。その隙を突く。必要なことを考える。私がやるべきなのはセイバーやランサーを殺すことでは無い。というか無理だ。だから必要なのはあくまで隙をより大きなものにすること。
魔術回路に魔力を通す。発動するのは当然投影魔術。創り出すのは先程見たばかりの物品だ。
「
左手に現れたのはキャリコ。先程衛宮切嗣との戦いで記録した物だ。弾丸も全弾装填されている。右手には手榴弾。こちらも同様だ。サーヴァント相手にこんなものは効かない。だが人間相手ならば致命的な一撃となる。
(私の言ったタイミングで宝具を解除して!アイリスフィールを狙って隙を作るから、その後ライダーの戦車で柳洞寺までぶっちぎる!!)
こうなるなら初めからライダーの戦車で柳洞寺に向かうべきだった。あくまで調査が目的。それ故私は柳洞寺を工房にするつもりはなかった。戦術的、魔術的に最高の立地と言える柳洞寺はそれ故に警戒される。生き残ることを目的にする以上目立つのは好ましい展開ではない。
(昼間に行ってたら………いやそれも無理か………)
柳洞寺に続く道は昼間でも人通りは皆無に等しい。夜と同じようにとは言わないが、サーヴァント同士の戦いが成立し得る場所ではある。
しばらくして、血痕の残った道路が目に入った。柳洞寺の方からはライダーの戦車が駆ける音が響いている。
(キャスター!!)
念話の直後、目の前にキャスター達が現れた。即座にアイリスフィールに向けて手榴弾を数個投擲。空になった右手にもう一丁キャリコを投影し、魔術で腕力を強化しつつ乱射する。
「ライダー!!」
「まったく人使いの荒い娘よな!!」
ライダーが桜とウェイバーを片手で抱え、私を走りざまに回収する。キャスターは霊体化させた。目的地が柳洞寺である事を伝えると同時に戦車が加速した。
「逃がすかァ!!」
聖剣を構えたセイバー。魔力放出による狙撃を狙っているのだろう。聖剣の輝きが増す。そして────
「Arrrrrthurrrrrrrrr!!!!!!!!」
その一撃は狂戦士によって阻まれた。
「は?」
高速で駆けるライダーの戦車の上で、私の視線はバーサーカーに釘付けになった。おかしい。おかしいのだ。間桐雁夜は死にかけていた。あの状況でライダーと戦うバーサーカーに魔力を持って行かれれば即死してもおかしくない。そうなれば魔力消費の激しいバーサーカーはとっくに消滅しているはず。
(………まさか)
視線を巡らせる。だがただの人間の目では、森の暗闇を見通せるわけが無い。それでも、私には半ば確信じみた予想があった。
(言峰綺礼………)
恐らくこの聖杯戦争で最も厄介な人物の名を思い浮かべながら、私は戦略を練り直すのだった。
────────────
深い森の奥。アインツベルンの城。その一室にて、戦いを終えた切嗣とアイリスフィールは会していた。
「評価規格外の宝具に、セイバーに対する正体不明の特攻………か」
「とんでもない難敵が現れたわね………」
話の内容は、言わずもがなキャスター陣営の話。今はアイリスフィールが見たキャスターの能力についての情報共有をしていた。
「真名は分かったのかい?」
「えぇ、宝具の名は千夜一夜物語だった。それが宝具になると言うのなら………」
「その語り手、シェヘラザードが真名というわけか………」
その真名に、彼はどこか納得したような素振りを見せる。
「シェヘラザードはただの語り部だ。何か明確な弱点の逸話がある英霊じゃない。加えて戦闘の方法は無数の物語を操るというもの。真名が晒されるリスクは無いに等しい」
「そうね………秀でた物は無いにしろその対応能力は凄まじいの一言だったわ」
「厄介極まりないな………」
「………」
天井を仰ぎ見る切嗣。昨夜セイバーが生き残ったのは、マスターのもつ魔力量が少ないのが原因だろうと、彼は考えていた。改めて、相対した少女の姿を思い浮かべる。あらゆる面が素人と言っていい筈だと言うのに、その身から発せられる鋭過ぎると言って過言ではない殺気。
「ねぇ切嗣。あのマスターって何者なの?」
「一応、名前や素性は簡単に調べがついた。だからこそ、その正体がより分からなくなってしまったけどね………」
アイリスフィールの問いに答えるように彼は机の上の資料に目を向ける。そこにあるのはある学校の生徒の個人情報と、ある事件の記録だった。
「名前は蓮葉識姫。穂群原学園中等部3年生。経歴にも偽装は無い。成績は優秀で生活態度も模範的。武術の経験は無し。当然、殺人等の犯罪歴も無い。典型的な優等生というやつだ」
「とても昨夜会った子と同一人物とは思えないわ…………」
銃器に手榴弾。それらを駆使し、明確に命を刈り取ろうとしてきた少女の姿を思い浮かべる。だがその姿は切嗣から聞かされたものとは微塵も合致しない。
「何かあったとするなら、これが原因だろう………」
「これは………?」
「この街では、数日前まで連続儀式殺人事件が起きていた。彼女の家族はその事件の最後の犠牲者だ」
「それは………」
痛ましい事件。それに目を伏せたアイリスフィールは合点がいった。家族の惨殺、そんなものを経験すれば、人が変わってしまうのも当然だろう。
「でも待って切嗣。それならどうして彼女は生きているというの?」
「言っただろう?最後の犠牲者ってね」
「どういうこと………?」
「現場には、彼女の家族の死体とは別に、もう一つ死体があった」
「まさかっ……!」
「一応、警察は返り討ちにされた犯人と見ている」
アイリスフィールはその死因について記述された部分を視線でなぞる。それと同時に彼女は眉を顰めた。
「頭を上下に切断…………?」
「左の頬骨あたりから、右眼を通してこめかみのあたりに向けてキレイに切断されていたらしい。しかし凶器と思われる物はその場になく、あったのは15cm定規のみ。凶器があったとして、包丁やノコギリなどでは到底再現不可能な程鮮やかな切り口。それこそ達人が日本刀を使って斬ったとしか言えないレベルのね」
「あのキャスターによるものかしら………?」
「いや、恐らくあの少女自身によるものだ。その方法はまだ分からないけどね」
昨夜見せた、不可解な切断能力。彼はそれであれば可能だと結論付ける。
「………」
「ねぇ切嗣、少し休みましょう?あなた、ここ数日まともに眠れていないわ」
「そういう訳には行かないさ。柳洞寺に陣取られた以上手をこまねいてれば加速度的にキャスターを仕留めるのが難しくなっていく。アイリ、君は休んでおいてくれ。君に倒れられるのが一番困るからね」
「………えぇ、わかったわ」
その言葉を最後に、二人は会話を終えた。
────────────
「貴様は一体何を考えているのだ!!?」
「…………」
怒りの声を上げるのは、高貴な雰囲気を醸し出す金髪の男だ。名を、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。時計塔にて
彼の怒りの矛先、それはフィオナ騎士団が一番槍。名を、ディルムッド・オディナ。此度の聖杯戦争にてランサーとして召喚されたサーヴァントだ。
「何故セイバーのマスターを助けた!?あのまま放っておけばセイバーは脱落していたのだぞ!?」
「………どうかお聞き下さい我が主、私は」
「戯言はもう良い!!」
最早聞く価値も無いと断じて、ケイネスはランサーの言葉を遮る。こめかみに青筋を立てた彼は更なる叱責を飛ばそうとしたところで、背後からの声にそれを遮られた。
「ケイネス!彼を責めるのは筋違いよ!」
「ソラウ!何を言う!?」
己の婚約者、ソラウの言葉にケイネスは強く動揺した。再びのソラウからの提言。内の動揺を隠す間もなくソラウは続ける。
「以前も言ったでしょう?セイバーは既に手傷を負っている。何れは討ち取れる敵よ!」
「だがあそこで助ける理由にはならないだろう!?」
「アーチャーに、マスターを考慮しなければライダーという脅威がいるわ。ランサーは短期的に効果の見込めるサーヴァントじゃない。だからこそ、瞬間火力に秀でているセイバーをそれらの脅威に対してぶつけるのが得策でしょう?」
尚も続くケイネスへの叱責。それに対して彼が表すのは困惑、そして怒りだ。実際問題、ソラウの言い分にも理解出来る点は存在する。だがそれはランサーへの擁護、彼に気に入られたいという願望から捻じ曲げられた穴だらけのものだ。現状、冷静さに事欠くケイネスはその穴に気付いてはいないがソラウの内の願望には薄々勘づいている。結果、その怒りはランサーへ向けられた。
「明日だ。明日の夜、アインツベルンへ襲撃をかける。そこで必ずセイバーを討ち倒せ!」
「御意」
綻びは、少しずつ大きくなっていた。
────────────
「………」
「帰ったか、綺礼」
険しい表情のまま、言峰綺礼はアーチャーの目の前に立つ。目的は問い。アーチャーが彼に命じた
「何故、間桐雁夜を助けろと言った?」
「何、言わば
眉を顰める綺礼。彼は愉悦というものを良く思っていない。それは彼が持つ、彼自身も未だ気付いていない歪んだ感性によるが故に。後、一つの世界線にて幸福を苦しみと、絶望こそを喜びだと断じるのが彼だ。未だ咲かぬ悪逆の蕾。それが彼だ。
「そんなものの為に己のマスターを裏切るとはな」
「戯け。そもそもの前提が狂っておるわ」
自身こそが王であり、マスターたる遠坂時臣は臣下に過ぎないと言い切るアーチャー。傲慢の極み、慢心すら王たる者の特権。事実、それでも尚今回の聖杯戦争にて最強と言って差し支えないアーチャー、ギルガメッシュにとってみれば、マスターなどただ現世に身を置くための楔でしかないのだろう。
「ところで綺礼。
「何だ?」
「何故、あの
「………お前が助けろと言ったのだろう」
「フハハハハ!!惚けるでないわ!我の質問の意図は分かっておるだろう?」
ニヤニヤと表情を歪める彼に、綺礼は沈黙を貫いた。そんな彼にギルガメッシュは言葉を続ける。
「そも、我とお前の関係は同盟相手以上でも以下でも無い。我の指示を聞く必要なぞ無い筈だ。だが綺礼、お前は従った。それは何故だ?
「それ、は…………」
「…………まぁ良い。この地には急いては事を仕損じるという諺もある。そうも早くお前の懊悩が片付いては我も詰まらん」
言い終わるや否や酒を呷るギルガメッシュ。
「だが忘れるなよ綺礼。今日、お前がアレを助けたのはお前自身の意思によるものだということをな」
その言葉を最後にその場を去るギルガメッシュ。酒の匂いが漂う部屋の中、綺礼はやはり、沈黙していた。
AUOがおじさんのこと認識してるのは多分千里眼。
感想評価よろしくお願いします。