リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。   作:シーボーギウム

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感想評価ありがとうございます。

ディルムッド君非難轟々で草。
なお、元々碌でもないと思ってたら感想でより碌でもないことが判明した模様。



8.交渉(脅迫)

「お前、魔術使えたのか」

「火事場の馬鹿力みたいな感じ」

「そんなんで魔術が使えてたまるか!」

 

 翌日、私達はファミレスで食事を取っていた。あの後初めて魔術を使ったのもあってか疲れて気絶するように眠ってしまった。その間に柳洞寺はキャスターが工房化。昨日はそのまま柳洞寺で休んだ。

 

「あんたの使った魔術を参考に使った」

「一回見ただけで再現したって言うのかよ………」

「私の起源忘れた?」

 

 記録の起源は、既知の技術を模倣するという点においては凄まじい性能を発揮する。魔術だろうが体術だろうが、一度でも()()したならそれはもう私の物と言える。

 

「ただ投影魔術に関してはまだまだだからちゃんと教えて欲しい。元の記録で使い方が荒いせいで魔力消費が馬鹿にならない」

「そうだ、それもおかしいんだよ。何でただの投影なのにあんなに性能が高いんだよ!?」

「だから私の起源………」

 

 はぁ、とため息をつくウェイバー。仕方ないだろ、起源なんだから。

 

「まぁいい………で、()()()()()()()()ってのはどういうことなんだ?」

「あー、放棄って言い方は少し違った。ごめん」

 

 食事をしているのが桜だけとなったところでウェイバーが話を切り出した。今ここに居るのは腹ごしらえと、今後の作戦会議が目的だ。無いとは思うが、一応周囲に気を配りながら話を切り出した。

 

「今、私達が確保してる拠点は3つ。これは良いよね?」

「ああ」

 

 マッケンジー夫妻宅、下水道、柳洞寺。これらはそれぞれが別のデメリットとメリットを持っている。

 

「まず、マッケンジー夫妻宅。ここは他二つとは比べ物にならない隠匿性がメリット」

 

 魔術師にしろ魔術師殺しにしろ、私はともかくウェイバーが魔術師であると考えて行動するだろう。ならばしっかりと工房を作り出すと考える筈だ。そういった思考の虚をつけるのがここだ。

 

「ただいざバレた時の防衛能力が極端に低い」

「ならキャスターに工房作らせればいいんじゃないか?」

「いや、変にバレるリスクを抱えるのは得策じゃないと思う」

 

 一切魔術的な痕跡を残さないからこそ、アサシン以外ならバレようの無い拠点足りえるのがこの拠点だ。わざわざリスクを増やす必要は無い。

 

「次に下水道。ここは他に比べてかなり立ち回り易いと思う」

「立ち回り易い?」

「防衛能力は柳洞寺には劣るけど充分に高いし、現状はバレてもいない。バレても立地的に逃げ道が多い。柳洞寺はさ、防衛能力って点ではブッチギリだけど結界の影響でサーヴァントの逃げ道がほぼ無いに等しいでしょ?その上既に死ぬほど目立ってるし」

「なるほど………」

「だから、基本的にマッケンジー夫妻宅と下水道を拠点に、大聖杯の調査が終わり次第柳洞寺は形だけの拠点扱いで囮にする。そうすれば他の陣営は私達がそこにいると思って勝手に警戒して、他二つの拠点がより見つかりにくくなる」

 

 納得した様子のウェイバーと、食べ終わった桜を見て立ち上がる。

 

「とりあえず、ライダーと合流しよう。見つけときたいものもあるし」

「見つけときたいもの?」

 

 街に出たのはある事の確認も兼ねていた。

 街の人々の噂やら諸々から知ったことだが、一昨日()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。昨日の晩、私達の所にランサーが現れたのを鑑みると恐らく今晩、ケイネスがアインツベルン城を襲撃する。

 まぁ、要するに私の探したいものというのは、

 

「ケイネスの新しい拠点」

「………」

 

 最高に嫌そうなウェイバーの顔はとても印象的だった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 夜。ウェイバーの使い魔がケイネスとランサー達がアインツベルンの森に入っていくのを確認した私達は、昼間の間に見つけておいたケイネス達の新たな拠点の目の前に来ていた。現在、ここにいるのはケイネスの婚約者であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリだけだろう。

 

「ほ、本当に行くのか?」

「今更日和るなって」

「坊主、お前さんなぁ、年下の娘よりも怯えてどうする」

「うるさいなぁ!コイツはちょっと違うだろ!?」

「あの、あまりお騒ぎになると…………」

 

 横で漫才を繰り広げる二人とそれを諌めるキャスターを他所に、予め投影しておいたサバイバルナイフで目の前の結界を破壊する(殺す)。瞬間、今までモヤがかかったような認識がクリアなものになった。

 

「走ろう。逃げられたら面倒だ」

 

 因みに左手には昨晩投影したキャリコがある。弾薬だけ投影すれば良いので魔力消費を抑えられて都合が良いのだ。

 ウェイバー曰く、私の魔術回路は質に関しては一代目としては悪くないらしいが、かわりに数に関してはしっかり一代目相応の本数らしい。それ故、ナイフやら銃器やら魔術に関係ない代物でも衛宮士郎の様に作っては捨て作っては捨てみたいなことは出来ない。

 

 閑話休題。

 

 所々に存在するおかしな死の線の集合を避けつつ駆ける。幾つかの罠を殺しつつ数十秒程走ったところで、恐らくは魔術的な仕掛けの施された扉が目に入った。

 

「直死」

 

 線をなぞる。ただそれだけであらゆる物が無意味な、終わった(殺された)後の残骸と成り果てる。特筆するべきこともなく崩れた扉を無視してその先にいた女に目を向けた。驚いたような顔をしつつこちらに掌を向け何かしら魔術を使おうとした瞬間、私はキャリコの引き金を引いた。連続する銃声。いくつかの弾丸が女、ソラウの足を貫いた。

 

「あ、ぐぅ!?」

 

 痛みに怯んだのを見計らって肉薄。下げられた頭に回し蹴りを叩き込む。吹き飛び、倒れ込んだ彼女は尚こちらに抵抗の意思を見せた。が、何かする前に傷口を踏み付け無力化する。

 

「い゛、がぁあ゛ぁああ゛あ!!?」

 

 痛みにのたうつ間に両腕を拘束する。後頭部に銃口を突き付けた所で、痛みに耐え切れなかったのか彼女は気絶した。

 

「お前、躊躇とか無いのかよ…………」

「そんなことしてる余裕が無い」

 

 引き気味のウェイバーに雑な答えを返しつつ、私は止血に取り掛かった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 処置を終え、後はケイネスとランサーが戻るのを待つのみとなった私達は思い思いに休みを取っていた。ライダーがイーリアスを読み、キャスターが桜を寝かし付ける。そんな折、ケイネスに渡す自己強制証明(セルフギアス・スクロール)が完成した。そこで私を手伝っていたウェイバーが声を上げた。

 

「お前馬鹿なのか!?」

「いきなり失礼だなオイ」

()()()()()()()()なんて条件呑む訳ないだろ!!?」

 

 騒ぐ彼にうんざりする。私の立ち回りは原作という規格外の記録を持っているが故のものだ。それ故私の行動に納得が行かない部分があるのはわかる。だがそれにしても一々騒ぎ過ぎだ。ああもう桜が目を覚ましただろ。

 

「大体!ケイネスがこの条件呑んだとして誰が令呪を受け取るんだ!僕もお前も既にサーヴァントがいるんだぞ!?」

「いるじゃん、契約してるサーヴァントがいない子が」

「なっ!?」

 

 驚きの表情と共に桜に目を向けるウェイバー。そう、私は桜をランサーのマスターにするつもりなのだ。この後、想定通りならケイネスは起源弾を叩き込まれ、魔術師としては死ぬ。原作ではその後半ば無理矢理ソラウが契約を引き継いでいたが、そのソラウは私達が確保した。この女が死ねば、ケイネスにランサーの現界を維持する能力は無くなる。そうなれば碌に動く事すら出来ないケイネスは何処ぞで野垂れ死にする羽目になる。そこに付け入るのが狙いだ。

 桜は、曲がりなりにも遠坂の血を引いている。環境が悪かっただけで、魔術的な素養は遠坂凛のそれに勝るとも劣らない。まぁ万全の状態のケイネスには劣るだろうが、ランサーが全力を出すのに支障は無いだろう。

 

「お前、それでいいのか………?」

「………まぁ、心情的に言えばめちゃくちゃ嫌だよ」

 

 まだ数日しか付き合いの無いウェイバーにこうして聞かれる程度に、私は桜へ情が移っている。だが私の心情がどうとかそう言うのを考慮する暇は無い。

 

「心配する暇があるなら、ライダーと一緒に柳洞寺に行って調査を進めてよ。それが私達が生き残る為の最善だ」

「流石にリスクが高いだろ。白兵戦に秀でるランサーに対してお前のサーヴァントはキャスターなんだぞ?」

「その為のこの女だ。大丈夫、死ぬ事だけは無いよ」

 

 その言葉に渋々納得したウェイバーがライダーと共に去って行ったのを見届けてから、私は再びウトウトとし始めた桜を抱き寄せた。

 

「ごめんね」

 

 情が移っている、その言葉はきっと適切じゃない。これは多分依存とか、執着とか、もっと醜い感情だ。

 

「マスター………」

「おやすみ桜。もうしばらくは、何も知らないままで」

 

 私はいずれ桜を第五次聖杯戦争に参加させるつもりだ。だからこれは早いか遅いかの違いしかない。そう、私はこの子をこの戦いに巻き込む事を確定事項としている。そもそも情が移っているのなら、戦いに巻き込まないよう策を考える筈だ。

 

「そう、悲観的になるべきでは無いかと」

「いいや、単に事実を並べてるだけだよ。だって、今こうして生きているのだって私には精一杯なんだから」

 

 死にたくて死にたくて死にたくて、でも死にたくなくて仕方が無い。生きている事が辛くて仕方が無い。だから私は今この瞬間だけでも生きる理由を探し続けている。この子は、それに都合がいいというだけなのだ。

 

「………いいえ、マスター。貴女は────」

「来た」

 

 シェヘラザードの言葉を遮る。視界の先、現れたのはケイネスを担いだランサーだ。

 

「ソラウ殿!?」

 

 桜を預け、改めてキャリコの銃口をソラウの脳天へ押し付ける。苦虫を噛み潰したような顔になるランサーを無視して指示を飛ばす。

 

「とりあえず、そいつの治療から始めようか」

 

 あまりにも一方的な交渉(脅迫)を始めるとしよう。

 





交渉(大嘘)開始です。

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