リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
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遅くなりました。すいません。
「おぉ!名案が浮かんだぞ!」
「余計な事はするなよお前………」
龍脈の流れからどうにか大聖杯の場所を逆算しようとしていたウェイバーは、突如声を上げたライダーに嫌な予感を感じた。そしてその予感は的中した。
「うわぁ!?」
ライダーがウェイバーの首根っこを掴んで戦車へ乗せた。いきなりのことに声を上げたウェイバーはすぐにライダーに向けて抗議の目線を向けた。
「何処に行くつもりなんだよ!調査終わってないんだぞ!!」
「だからこそだ、坊主」
「はぁ?」
まだ数日の付き合いでありながら戦車に乗せられる=何処かへ連れて行かれるという図式が頭の中で出来上がっているウェイバーは何をする、という抗議をすっ飛ばしてライダーの行動を咎めた。そうして返ってきた返答に首を傾げるウェイバーにライダーは続ける。
「聖杯が使い物にならんと知れてしまえば余の考えは意味を成さん」
「一体何を考えてるんだ…………」
「此度の戦いには余を含めて己こそが王であると語る者が三人もおるのだぞ?で、あればだ。誰が真に聖杯に相応しい"王"たる者か、語らぬ訳にはいくまいて!」
その言葉にウェイバーは彼を止めることを諦めた。
「まずは酒の調達だ。あの娘も連れてこねばならん」
「なんでだ?キャスターは王じゃないだろ?」
「目的はキャスターでは無いわ。お前さんでも気付いておるだろう。あの娘、やたらと生きる気力に乏しい」
「………」
口を噤むウェイバー。ライダーの言葉に納得する部分があったからだ。
例えばケイネスの拠点に突撃する時。あの時も別に識姫が先行する必要は無かった。結界を殺した後でライダーが突っ込む方が良かった筈だ。
「家族を喪ったからだろうな。あれは今惰性で生きておるつもりなのだろう」
「
「そうだ。実際は全く違う。あれが生きておるのは、生きようとしておるのはその内にある絶望に身を焦がされてなお叶えたい
「願い?なんだそれ………」
「たわけ」
「あがぁ!?」
額を弾かれたウェイバーが恨みがましくライダーを睨む。対してライダーは呆れ顔だ。
「坊主も聞いとっただろうが、あの娘自身が己の願いを謳ったのを」
「…………あ」
そこで、思い出した。涙を流し、喚きながら。唯一年相応の姿を見せた、小さな小さな少女の姿を。
「だと言うのにあの娘は己の願いに気づいておらん。ならば王ではなく英雄たる者の先達として、英雄足らんとする者に示してやらねばならん。
言うやいなや、彼は手綱を握り、雷鳴を轟かせる。数瞬のうちに、彼等はその場から消えた。
────────────
「………ここ、は…………」
「おはよう、ロード・エルメロイ」
目覚めた時、ケイネスに声をかけたのはランサーでもソラウでも無かった。動かない身体の違和感を押さえ込みつつ、彼は視線のみで声のした方を見た。
「あ、ああ………!」
絞り出すような声と共に、彼の頭は絶望に支配された。視界の先、そこにいるのは幼子を抱えたキャスターと銃器を持ったそのマスター、そして銃口を向けられ拘束された己の婚約者だった。
「な、ぜだ!?何故貴様が………!?」
「それ、今重要?」
言葉と同時に、識姫はソラウの頭へ銃口を押し付けた。その様に表情が強ばるケイネス。そんな彼に識姫は
「まずお前の状況から説明しようか」
識姫は淡々とケイネスの身体の状況を述べていく。それは魔術師としても、人としてもマトモに生きていくことが難しい程の深刻な負傷。あまりの状況にケイネスは更に絶望に打ちひしがれた。
「では何故、お前はランサーの現界を保てているのか」
「それ、は…………」
「理由は単純。手段は知らないけど、この女が魔力供給を肩代わりしているからだ」
実際、ケイネスは魔術による治療無しには意識を目覚めさせることすら無く死んでいた。なまじ生き長らえたとして、魔術回路は完全に使いものにならなかっただろう。そしてそれは現状でもそう変わりない。
「要するに、この女を殺した時点でお前は遠からず終わる」
「………要求はなんだ」
「話が早くて助かる」
銃口はソラウへ向けたまま、識姫はケイネスの下へ移動し、一枚の紙、
束縛術式:対象 蓮葉識姫
蓮葉の刻印が命ず
下記条件の成就を前提とし、誓約は戒律となりて例外なく対象を縛るもの也
:誓約:
蓮葉家一代目当主蓮葉識姫に対し、第四次聖杯戦争終結に至るまでのケイネス・エルメロイ・アーチボルト並びにソラウ・ヌァザレ・ソフィアリの両人の生命の安全を義務付ける。
:条件:
第四次聖杯戦争終結に至るまでの蓮葉識姫への完全服従
並びに、現時点でケイネス・エルメロイ・アーチボルトの所持する
(これ、は…………!)
それは、言ってしまえばケイネスへ向けられた命を除いた
「あぁっ……ソラウ…………!」
選択肢など、無いようなものだった。
「これで、お前には
「そうだ」
ケイネスの手の甲からは令呪が消失していた。対して、桜の手の甲には一枚の花弁が欠けた花の文様が刻まれている。彼女がランサーのマスターとなったことの証明だった。項垂れ、眠るソラウの姿に安堵するケイネス。現時点で彼は抜け殻とでも言うべき状況だった。
「桜、ランサーを呼んでくれる?」
「はい………」
桜の返事に間髪入れず、ランサーがその場に現れる。その視線は険しく、識姫のことを強く睨み付けていた。その視線に不快感を覚えつつも、識姫はそれを無視する。そんな彼女にランサーは抗議の意味合いを込めた言葉を放った。
「俺は認めんぞ」
「お前の意思は関係無い。騎士ごっこを続けたいなら好きにすればいい」
「貴様ッ!我が騎士道を愚弄するか!!」
その言葉に反応して、槍の鋒が識姫へ向けられる。だが彼女はそれを気にした様子も無く冷たい視線をランサーへ送った。そこに光る不気味な虹彩に、ランサーは
「何も成果を上げず、馬鹿みたいな理由で敵対サーヴァントに塩を送って、結果主が再起不能になってんのにまだ
強い侮蔑を含んだ言葉。嫌悪に殺意を滲ませたその視線に、ランサーは言葉を紡ぐ余裕すらなくたじろいだ。
そこでふと、識姫の目端から血が流れ落ちる。すなわち『絶死の偽眼』、それの発動を意味していた。しかしその血涙に識姫すらも驚いたような反応を示した。
「マスター、大丈夫ですか……?」
「……うん。無意識に発動したみたい」
制服で雑にそれを拭う識姫。彼女はそこからランサーに一瞥をくれることすらなくケイネス達へ指示を飛ばしていく。
そうして指示を終えた彼女の耳に雷鳴が響いた。その雷鳴の主が誰かは最早問うまでも無い。何事かと廃工場から外へ出れば、そこにはアドミラブル大戦略のTシャツに身を包み、酒樽を肩に担いだライダーと、既にうんざりとした表情のウェイバーがいた。
「おう娘、ちょいと出掛けるぞ」
「は?」
何処に、と問う間もなくライダーは識姫と桜を戦車に乗せる。そして一瞬の内に彼等は夜空へと消えていった。
次回、聖杯問答。
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