リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。   作:シーボーギウム

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お待たせ致しました()

週一(大嘘)とか言っておいてこれだよ。
これからも投稿頻度はランダムになります。すいません。ただ完結まで持っていくつもりではあるのでそこはご安心下さい。

感想評価ありがとうございます。



12.師と弟子

 翌朝、私はケイネス達を連れて柳洞寺まで来ていた。ここでは既にウェイバーが調査を行って、というより地下の大空洞へ行くのを阻むプロテクトを破ろうと奮闘している。ケイネスを連れて来たのは、単純に彼に調査を協力させる為だ。

 

「………何だね?その顔は」

「…………」

 

 どうやら昨夜のうちに聖堂教会伝で某人形師に義手を作らせていたらしいケイネスは、動くようになった手で頬杖をつきながら、自虐的な雰囲気を漂わせていた。そんな彼に、ウェイバーは複雑そうな表情を浮かべる。

 

「大方、清々したとでも思っているのだろう?」

「違っ!僕は!」

「隠す必要は無い。事実、私は無様に敗退した」

 

 その言葉にウェイバーはしばし呆然とし、直ぐにその表情を引き締めた。

 

「………確かに、そういう考えが一切ないと言えば嘘になります」

 

 そう始まった言葉に、これは私が聞いていいものでは無いと悟る。桜の手を取り、キャスターに念話を飛ばし、私達は山門まで戻った。

 

「………何か食べるものを買いに行こうか」

 

 短く告げてから、私達は柳洞寺を後にした。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 そうだ。僕は未だに、この状況にあってなおも「いい気味だ」と思う部分がある。それは否定のしようがない事実だ。だがそれ以上に、僕はケイネス()()の惨状にショックを受けていた。何よりも、「清々したか?」と聞かれて僕はそれを咄嗟に否定した。それはつまり、僕が曲がりなりにも彼を尊敬しているということ。

 

「今この時も、僕はまだ何も出来ていないんです。これまでの行動の殆どは蓮葉か、ライダーが主体のものです。息巻いてここまで来た割に、僕自身が自ら成したことも、成そうとしたこともまだ何も無い…………」

 

 ここにいるのも、元を辿れば蓮葉からの指揮によるものだ。アイツはつい数日前まで魔術のことを何も知らなかったのに、僕よりも遥かに上手く立ち回って、僕の思惑が霞んで見えるような願いを、自らの力で叶えようとしている。

 

「でも先生は、何も出来ない、何も出来ていない僕とは違って、自分自身の手で何かを成そうとした!!」

「だが、失敗し「たかが一回の失敗が何なんだよ!!」っ!」

「アンタは!僕が及びもつかない様な天才なんだろ!?アンタの功績はそのぶっ壊れた魔術回路だけで成り立つもんじゃない!!アンタしか思い付かなかった!アンタだけの発想があったからこそ積み上げられたもんだろうが!!」

 

 叫ぶ。きっと、今ここで言いたいこと全て言い切らなきゃ、僕はこの先ずっと後悔することになる。

 

「僕はアンタがどれだけ凄いかを知ってる!!大っ嫌いだけど!!それでも認めざるを得ないほどアンタは凄いんだよ!!だから……!だからたった一回の失敗で諦めてんじゃねぇよ!!」

 

 ゼェゼェと息をする。目じりに浮かぼうとした涙を拭い、一刻も早く息を整えようと深く息を吸った。だけどそんな僕の意志に反して、心臓の動きは恐ろしく速い。ガシガシと僕の頭を撫でるライダーの手を振り払う余裕も無い。全くもって情けない限りだ。

 

「………私の魔術回路はほぼ全損だ……君どころか、多少魔術を齧った程度の一般人にも劣るような有様だ。それでも君は、私が再起できると言うのか………?」

 

 真っ直ぐと、決して視線を逸らさないように頷く。数秒、呆然としてから、先生は天を仰ぎみた。

 

「………やはり、私は愚かだな」

 

 先程までとは雰囲気の違う自嘲。次の瞬間、あろうことか彼は僕に向かって頭を下げた。あのケイネス・エルメロイ・アーチボルトが、たった三世代の歴史しか無いウェイバー・ベルベットに。

 

「ウェイバー・ベルベット君。君に、私が持ちうる限り最大の謝意を述べたい」

「い、いや僕はそんな………!」

「たわけ」

「げばっ!?」

 

 ライダーのデコピンが額に直撃し、軽く吹き飛ばされる。相変わらず威力おかしいだろ!!

 

「何すんだよ!?」

「その魔術師はお前さんを見下しておったのだろう?そんな男が、プライドを捨て、考えを改め貴様に感謝しておるのだ。狼狽えておらんでドッシリと受け止めんでどうする」

「………」

 

 反論できないまま、痛む額を押さえつつ僕はケイネス先生へ向き直った。数日前までの僕なら、有頂天になって調子付いていたであろう状況。でも、今の僕はそんな気は少しも起こらなかった。

 

「感謝したいというなら、貴方の知識を貸してほしい。僕はキャスターのマスター、識姫の言っていることを証明しないといけない」

「勿論だ。私の知識などいくらでも使いたまえ」

 

 この時から、僕と先生の関係性は大きく変化していく。それは、またいずれ話すことになるだろう。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 柳洞寺を後にし、私と桜は新都のショッピングモールに来ていた。色々と食べたり、服を買ったりとしていたのだが、あるハプニングの為に私はショッピングモールを全力で脱出、その後桜をおんぶしながら雑踏を掻き分けつつ全速力でとある人物から逃走していた。

 

「クソッ!調子に乗って服買いすぎた………!!」

 

 尚、捨てるという選択肢は無い。今日買ったものは全て桜のもので、初めて桜が自分の意思で「欲しい」と言ったものだからだ。

 

(とはいえ()()()相手にこの状況で逃げ切るのはほぼ無理………!)

 

 ショッピングモールでの買い物の途中、普通から見放される前の世界にいた私の知り合いと鉢合わせた。別にそれは問題無い、大半の知り合いからは逃げ切れる。それをするだけの身体能力がこの身体には備わっているし、魔力消費が痛くはあるが場所によっては強化魔術を使えばいい。

 だが、何事にも例外は存在する。前世の魂を身に納めるという、時代が時代なら歴史に名を残す英雄になることも出来たであろう規格外の肉体(蓮葉 識姫)。それに身体的には容易く追いつき、こと運命的な点では容易に抜き去ってくる幸運:EX(バランスブレイカー)

 

「待っちなさーい!!!」

 

 冬木の虎、藤村大河。見放され、見放した筈の日常が、急加速して私の方へ迫っていた。

 





この世界線の藤ねぇは現15歳、満16歳の高校一年生ということでご了承ください。

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