リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
カリおじをこき下ろし始めた途端に筆が乗るの草なんだ
(え…………?)
ドスンッという衝撃と、頭に走る痛みと共に桜は意識を覚醒させた。そんな彼女が目覚めて一番初めに目にしたのは、
少しづつ、しかし着実に普通の少女としての心を取り戻しつつあった桜にとって、未だ数少ない好意的な、信頼できる存在であるシェヘラザードのその姿は、まだ絶望から立ち直り切れていない桜をパニックに陥らせるには十分過ぎた。
「は、ぁ………!」
息がつまり、恐怖が幼い少女の身体を支配する。そんな彼女が咄嗟に取った行動は最も信頼している識姫の姿を探すというものだった。家族の如く、姉の如く彼女に接する識姫。その存在は、幼い彼女にとって、非常に大きな拠り所だった。
たった数秒、それだけで彼女は見つかった。その事に安堵した桜だったが、しかしその安堵は即座に打ち破られることとなる。血に塗れ、地に伏す識姫と、彼女に向けて標識を振り上げる黒い
「だ、め……!」
少女は再び迫り来る絶望を前に手を伸ばす。愛していた家族の元から引き離され、待ち受けていたのは地獄の日々。そこから救い上げられ、彼女は希望を知ってしまった。許容など、できるわけも無い。奪われるという絶望を前に、一度目、少女は心を殺すことで対処した。だが最早それは不可能だ。
「だれ、か………誰か……!!!」
頭を撫でてくれた手の優しさを、強ばる身体を抱き締めてくれた温もりを、柔らかな微笑みを向けられる安心感を、彼女は知ってしまった。もう二度と、普通の幸福を手に入れることはできないと諦めた彼女に、
奪われてなるものかと、彼女は手を伸ばす。その手の甲には、令呪が刻まれていた。
「誰かお姉ちゃんを助けてぇぇぇええ!!!!」
それは、無意識下での令呪の行使。
「識姫を助けろ」という曖昧さの残る内容の令呪。だが桜の内に眠る魔術師としての資質が、その令呪を十全に働かせた。瞬時に、令呪に込められた膨大な魔力がランサーをその場に転移させ、その上でランサーに識姫を助けるように強制力が働く。
ギィィイン!!
標識と黄槍の柄が衝突し、やかましい金属音が鳴り響く。ランサーはすぐさま標識に向けて紅槍を放った。魔術的効果を打ち消す宝具がバーサーカーの宝具を無効化し、標識が切り裂かれる。だが、狂気に身を犯されていようと、バーサーカー、ランスロットは円卓最強の騎士。僅かに短くなった鉄柱を手に、彼は丁寧に紅槍の刃を避け、嵐の如き連撃を繰り返していた。
一先ずは識姫の命が助かったことに桜は安堵した。それと同時に、張り詰めていた精神が限界を迎えたのか、頭を打っていた事もあってか彼女は再び意識を失った。
そんな桜の容態に関係なく、戦いは続く。
数度の打ち合いの合間に、バーサーカーは切り離された方の標識も拾い上げ、二刀によって更にその攻めの激しさを増していた。そんなバーサーカー相手にランサーは紅槍はその手の鉄柱を、黄槍はバーサーカー自体を狙って鋭い一撃をはなち続ける。だがそれらは避けられるか、きれいに刃を避けて弾かれ、未だ決定打に欠けていた。
武器の間合いに、性能、相性、その全てにおいて圧倒的にランサーが勝っている。だが、それでもなおその実力は互角。バーサーカーはそれ程までに卓越した技量をその身に備えていた。
「くっ………!」
堪らずランサーは後退する。対してバーサーカーは引かない。槍兵相手に間合いを開けるなどという愚は犯さない。右の手の鉄柱での、上段からの一撃目。ランサーはそれを黄槍にて防ぐ。左の鉄柱による、横薙ぎの二撃目。ランサーはそれを紅槍によって迎え撃つ。三撃、四撃と放たれるその全てが、凄まじい速度と重さを内包する。先程までは曲がりなりに反撃を放っていたランサーだったが、今はもう完全に防戦一方の状況に追い込まれていた。一度の後退が、取り返しようの無い不利を生み出していた。
その傍ら、激しさを増し続ける金属音に、キャスターは激痛に苛まれながらも目を覚ましていた。震える身体に鞭を打ち、彼女は宝具によって空飛ぶ絨毯を喚び出し、それを駆使して気絶したままの識姫を包み、自身の側まで呼び寄せる。彼女は自身の持ちうる最低限の医療の知識と照らし合わせて識姫の容態を確認すると、安堵の息をこぼした。
(あと、は………桜、さんを…………)
最早ランサーを囮に逃げることしか手はないと判断したキャスターは周囲を見回し、桜の姿を探す。だが、
(い、ない………?)
そこに残されていたのは、踏まれてぐちゃぐちゃになった服だけだった。
数秒の逡巡の後、彼女はその場を去ることを決意した。
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時は、数刻遡る。
「はぁ………はぁ…………」
全身を蟲に喰い破られながら、間桐雁夜は教会を訪れていた。身体を引き摺るその様は正に死に体。生きている事が不思議になるほどの状態だった。
「ぐ、うぅ………!」
本来ならば彼の身体は、現時点でももう少しマシな状態にあった。だが間桐臓硯の死によって彼の肉体を調整する者がいなくなったこと、先刻、識姫に盾として扱われ瀕死の重体にまで追い込まれたことが、彼の命の灯火を今すぐにでも吹き消そうとしていた。
だが彼は止まらない。己の内にある欲望に、願いと思い込んだその歪みに気付かぬまま、その致命的な破綻に目を背けたまま、彼は尚も止まらない。否、止まれない。
扉を開く。元来神聖な筈のその空間は、暗く、淀み、まるで間桐雁夜の行く末を暗示するかのようだった。
「唐突ですな、間桐雁夜殿」
教会の、その中心。そこに居たのは、今宵の聖杯戦争の監督役、言峰璃正。老齢ながらその立ち姿は老いを感じさせない。彼は連絡無しにこの場に現れた雁夜に対しても礼節を欠くことは無かった。
「ぐ、はぁ………遠坂、時臣と、話がしたい………火急の、案件だ…………」
激痛に耐えながら、そう告げる。彼が身を削ってまでここに来たのは、桜が正体不明の魔術師に連れ去られたことを伝えるためだった。
「どのような案件がお聞きしても?」
「お前には、関係、ないだろ………!」
「そうは行きません。教会を利用した罠である可能性は否定しきれない」
毅然とした璃正の態度に、雁夜は苛立つ。だが自体は一刻を争う(と思い込んでいる)雁夜は、できる限り言葉を削り、桜が危機に陥っているということを伝えるためだと言い放つ。だが、
「であれば、火急、とは言えませんな」
「は?」
呆けた声を上げた雁夜に、璃正は淡々と言葉を紡いでいく。
「彼は優秀な魔術師だ。その程度の事はとうに把握しているでしょう。それで今放置しているということは、急いで対処すべきことではないと判断を下したということ。根本的に貴方とは考えが異なっている以上、対談を呼びかけたところで彼が応じることはないでしょうな」
「ふ、ざけるな!!自分の……!娘のことが心配じゃないのか………!?」
「そもそも彼女は間桐に養子に出されたのでは?ならばその監督責任を彼に求めるのはお門違いなのでは?」
その言葉を最後に、話しは終わりだと言わんばかりに言峰璃正は踵を返した。その様に、間桐雁夜もまた諦めた様に出口へ向かう。ここで喚いても無意味だと気付いたからだ。だが、この男は、何もせず引き下がるような人間ではない。
「やれ」
教会の扉を開き、外へ出る直前の言葉。その言葉の意味を理解する前に、言峰璃正は背中からドスン、という衝撃が与えられた事に気が付いた。
「あ、が…………」
胸から生えた鉄柱。ゴボリと血を吐きながら、言峰璃正は倒れゆく。
「お、れが………俺が……助けなくちゃ……………!」
彼が最期に聞いたのは、そんなうわ言のような言葉だった。
そうして、現在。間桐雁夜は桜を抱え、鈍い足取りで間桐邸へと向かっていた。
「大、丈夫………俺が、必ず………君を助ける、から………」
男は進む。その願いは最早意味を成さず、己を突き動かしているのは幼い少女を救う為などという綺麗な願望などではなく、
この世界線でカリおじが迎える末路は原作よりも酷いです()
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