リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。   作:シーボーギウム

18 / 34

感想評価ありがとうございます。




15.二騎目

「おい!?大丈夫か!?」

 

 動揺を隠しもしないウェイバーの言葉。だがこの時ばかりは彼を責めることはできない。何せ今まで敗北という言葉から縁遠い存在であった識姫が重傷を負って戻ってきたからだ。

 

「後は、お願い、します…………」

 

 絨毯を地に下ろし、駆け寄ってきたウェイバーの姿を見てキャスターは自身の肉体を霊体化させた。

 慌てて識姫の容態を確認したウェイバーは一先ず命に関わるものでは無いことを確認してからできる限りの治療を施していく。

 

「娘の様子はどうだ坊主?」

「死ぬことは無い、けど………」

 

 怪我の度合いとしてはかなり酷いものだった。治療してすぐ目覚めるということは無いだろうということは容易に分かる程度には重傷の識姫を見て、ウェイバーは不安と自己嫌悪に苛まれる。ケイネスの協力もあって、もうすぐ大聖杯の隠し場所が分かるというところでの、司令塔たる識姫の負傷。この後はどうするべきかという不安と、今の今まで、数日前まで一般人だった少女へ頼り切っていたという事実への嫌悪。ギリと歯を食いしばる。

 そんな彼の額が、征服王によって弾かれた。

 

「なっ、にすんだいきなりィ!!」

 

 仰け反り、どうにか地面に頭を打ち付けるのを回避したウェイバーは起き上がると同時に怒気を表した。そんな彼に向けて、ライダーは戯け、と言葉を飛ばした。

 

「迷っておる場合か」

「それはっ!!そう、だけど…………!」

「坊主、お前さんの役目は何だ?」

 

 その問いに、ウェイバーは数瞬黙し、大聖杯の汚染を証明することだとこぼす。その言葉に満足したのかライダーは大きく頷いた。

 

「ならば、迷っておる暇はなかろう。娘が目を覚ますまでに大聖杯の所在を確かめ、その汚染を確たるものとすることこそ坊主の役目!嫌悪に陥る暇なぞ一時もありはせんぞぉ?」

「ああもう分かってるよ!!」

 

 こうなればヤケクソだ、とウェイバーは識姫への治療を急ぐ。そして少しでも早く大聖杯を見つけ出してやると息巻くのだった

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「ハァッ!!」

 

ギィィィイイン!!

 

 金属音が響く。それはあくまでも武具と武具とがぶつかり合った音で、未だランサーの紅槍の鋒はバーサーカーの手にある鉄柱を破壊するに至っていなかった。

 

(これ程の武錬とは……!)

 

 生前はさぞ名の売れた武人だったのだろうと、初戦時からの評価を改めつつランサーは現状の打開策を探る。

 彼が攻めきれずにいる理由は、何よりもバーサーカーのその宝具だ。騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)。それは、手にした武具を全て己のものとする宝具。バーサーカーが手にした時点で、ありとあらゆるものがDランク相当の宝具となるというもの。その宝具の存在が、ランサーに思い切った攻勢に出ることを躊躇わせていた。

 

「くっ……!」

 

 苦虫を噛み潰したかのような表情でバーサーカーの猛攻に対処する。そう、()()だ。その武具の応酬は既に"攻防"の域を退いていた。放たれる一撃、その重さと速さ、そして宝具の存在に、ランサーは最早負傷覚悟の特攻以外に攻め入る手を失っていた。

 

「ぐ、おおおぉぉぉぉおお!!!!」

 

 一撃、その脇腹に鉄柱が直撃する。だがその一撃が、ランサーの内にあった迷いを消失させた。両の手それぞれに握られる紅と黄の槍による連撃を繰り出した。そこにあるのは武器を破壊するなどという小賢しい考えでは無く、ただバーサーカーの命を刈り取らんとする鋭利な殺意のみだった。雨の如き隙間ない槍舞。一撃ごとにを防ぎ、受け流すその過程で、バーサーカーの手にある鉄柱は少しずつ機能不全に陥っていく。少しずつ、少しずつ削られ、削がれ、やがて武器とするには余りにも短くなった折、遂にバーサーカーが隙を晒した。

 

「うおおぉぉぉあぁぁぁぁああああ!!!!」

 

 必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を超速で突き出す。その鋒がバーサーカーの喉元に迫り────

 

 

 

 

 

 

 

────しかしその刃は、その鎧に多少の傷痕を残すのみだった。

 

「あ、がっ!!?」

 

 後の先。黄槍を突き出したその意識の隙。バーサーカーの狙いは、ランサーのその紅き槍。その右手に握られていたはずの槍は既にランサーの手に無く、黒い葉脈の如き魔力に蝕まれ紅く黒い禍々しい様相を取り、ランサーの胸部、即ちその心臓を貫くに至っていた。

 バーサーカーはランサーから槍を引き抜き血を払い、踵を返すと共に霊体化した。ランサーは膝を付き、倒れ、アスファルトの上に血溜まりを作っていく。

 

(ああ、おれ……は…………)

 

 その表情に無念を滲ませ、ランサーは消滅した。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

 

 拠点を移し終え、ある程度の整備を終えた衛宮切嗣は深くため息をついた。

 

「お疲れですね」

「まさか、この程度で疲れていたら世話がない」

 

 一時の休息に煙草の煙を燻らせていた切嗣は、舞弥の言葉に火を消し、舞弥が持ってきた資料に目を通し始めた。そのメインテーマは、蓮葉識姫と行動を共にしていた幼い少女だった。

 

「名前は間桐桜。魔術属性は虚数。記録を調べる限り持ち合わせる魔術回路は質も量も相当に上質なものを持っています。蓮葉識姫が間桐臓硯を殺害した後から行動を共にし、タイミングは不明ですが…………」

「ランサーのマスターとなった、か…………」

 

 昨夜の間桐雁夜による蓮葉識姫への奇襲。その際に判明した、間桐桜という新たなるマスターの存在。幸いな事にランサーは昨夜バーサーカーによって消滅したが、それは蓮葉識姫への警戒を緩める理由にはなり得なかった。

 

「蓮葉識姫の所在は?」

「柳洞寺に向かったようです。今朝使い魔を使って上空から見たところ、ケイネスとソラウもそこに」

「ケイネス達の様子は?」

「総合的に見て、かなり協力的な態度です」

「総合的に?」

「ソラウに関しては、自ら積極的に協力することはほぼありませんでしたので」

 

 舞弥の言葉に切嗣は思考を回す。それは要するに、ケイネスに関して言えば自主的に蓮葉識姫、ないしはウェイバー・ベルベットに協力しているという意味だ。あのプライドの高い時計塔の君主(ロード)が、魔術を知って数日の小娘に、だ。初戦の様子を鑑みれば、ウェイバーとの関係もそうよろしいものでは無い。何かしら弱味を握られ、消極的な態度での協力ならば納得もいったが、今の状態は切嗣にとって見れば不可解極まりないものだった。

 

(見誤っていた、と言わざるを得ないな…………)

 

 煙を吐き出し、空を見上げる。既に彼の中での識姫への警戒度は、言峰綺礼に勝るとも劣らないものとなっていた。

 

(蓮葉識姫が負傷して眠っている内に柳洞寺を攻めるか………?)

 

 しかし切嗣はその考えを即座に否定する。仮に蓮葉識姫が眠っていても、柳洞寺にキャスターとライダーの二騎のサーヴァントがいる事実は変わらない。攻め入った所で返り討ちに合うか、逃げられるだけだろうと結論を出した。

 

「………僕はライダー陣営のもう一つの拠点の調査をしつつ、柳洞寺の監視を続ける。舞弥、一先ず君はこの家でアイリの護衛と備品の整理を進めてくれ」

「了解しました」

 

 切嗣の指示に従い備品の整理を終わらせ舞弥がアイリの様子を見に蔵へ赴いた時と、遠坂からの密使が来たのはほぼ同じだった。

 

 





割と酷い死に様だけど原作よりはマシだから良いよね!(白目)

感想評価よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。