リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。   作:シーボーギウム

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感想、評価ありがとうございます。

一応本編は第五次聖杯戦争の後で完結になるんですが、その後のことを考えてたら楽しくなって設定作りすぎました。



17.最後へ

 目を覚まして、その部屋が()()()を理解した瞬間、幼い少女は短く悲鳴を零した。1年という期間、自身の尊厳の全てを粉々に破壊された悪夢の巣窟。そこに連れ戻されたという事実は、未だ立ち直り切れている訳では無い少女の精神を追い詰めるには十分過ぎるものだった。

 だが、以前と大きく違うのは、少女の心が折れなかったということ。たった数日、たったそれだけの時間であれど、偽りと本心が入り交じった複雑なものであったとしても、蓮葉識姫という少女が桜へ与えた愛情という名の希望は、彼女に「諦めない」という選択肢を取らせた。

 

 そんな折、その部屋の扉がガチャリと開かれた。

 

「ひっ……」

「ああ………起きてたんだね…………」

 

 そこから現れた、顔半分が引き攣った様に歪んだ男。その男が身に纏う空気から、少女は瞬間的にキャスターが、識姫が傷だらけで血に伏せていた光景を思い出した。そして、姿こそ見えないが、それを引き起こした黒い()()が男の背後にいることを彼女は察知していた。

 桜は最早悲鳴を出す余裕すら失い身体を強ばらせる。そんな彼女に何を思ったのか、間桐雁夜は醜く歪んだ己の顔をフードで隠しつつ、彼女に向けて手を差し伸べた。

 

「怖がらせてごめんね。少し、俺と一緒に来てくれるかな………?」

 

 彼にとってみれば、それは救いの手だとでも思っているのだろうが、少女にとってそれは破滅に導く悪魔の手に他ならなかった。だがそれを拒む事が現状得策では無いと理解し、桜は自身が寝かせられていたベッドから降りて男の方へ近づいた。その表情に宿る怯えが、男には見えない。その態度に表出する警戒が、男には察せない。ズタボロの彼には、最早その程度のことすら分からなかった。

 

「離れない、ようにね………」

 

 間桐、いや、()()()()()()()()。己を愛し、慈しみ、抱きしめてくれた識姫の元へ帰るため、幼い少女は静かな戦いへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「………」

「何か、文句でも、あるのか………?」

「……いいや、何も問題などないとも」

 

 間桐雁夜の言葉に、言峰綺礼はニッコリと笑みを浮かべてそう言葉を返した。そしてその内心で、湧き上がる愉悦の濁流を押し留めるのに必死だった。間桐雁夜の傍ら、そこにいる、明らかな警戒を示す幼子の姿に彼は気が付いていない。これまでの負傷、そして戦いの末、蟲に蝕まれた肉体では、その程度のことすら分からないのだ。

 その事実は、言峰綺礼が更なる愉悦に至るための道標となっていた。

 

「………」

「そう睨むな。信頼しろとは言わない、せめて遠坂時臣を屠るまで、その一時の間の信用があればそれで充分だ」

「……俺が、お前の父親を殺した張本人でもか」

「そも、この禍根も遠坂時臣がいなければ生まれなかったものだ。何も無いと言えば嘘になるが、我が憎悪は全て奴へ向けられている」

 

 いけしゃあしゃあと、心にも無い大嘘を吐き出す。この男には実の父親を殺されたことなど何でも無く、遠坂時臣への憎悪など微塵も存在しない。その内に存在するのは愉悦への好奇心と渇望。

 

(そういえば、この少女も遠坂時臣の娘だったな)

 

 桜という、新たなるスパイスを手に入れた言峰綺礼は間桐雁夜(メインディッシュ)の調理工程に如何にして手を加えるかを思案する。雑な調理でも、このスパイスは極上に近しい味わいを生み出すだろう。だが、少しの、ほんの少しの工夫一つで、その味わいは何倍にも何十倍にも膨れ上がるだろう。

 

「それ、で、何の用なんだ…………」

「深山町に、セイバー陣営の新たな拠点がある。そこにいる、この女を連れ去ってほしい」

「これは……セイバーのマスターか…………?」

「いいや、()()()()。真なる願望機、大聖杯を顕現させるための装置だ」

 

 その行く末を想起しながら、言峰綺礼は次の手を打った。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

 

 ため息を一つ零し、その場に座り込む。心配そうな表情を向けてくるキャスターに視線だけで大丈夫だと伝えながら、私は迫り来る罪悪感を無視した。

 既に原作から大きく乖離した現状、桜を取り戻す為には出来る限り私が把握し得ない展開は望ましくない。早い話、これから先の展開を出来る限り()()()()のものになるよう操作する必要がある。そしてその一手目として、私はライダーにアインツベルン城に向かうよう頼んだ。名目上は同盟の提案のため。答えが否だった場合は即座に全力での討伐をお願いした。だが、転生者である私がセイバー陣営の現在地を把握していない訳が無い。

 そして昨日のうちに、私はキャスターの宝具によって、言峰綺礼による遠坂時臣の殺害、そして言峰綺礼が間桐雁夜へ名ばかりの同盟を持ちかけたことを確認した。となれば今晩にでもアイリスフィールが誘拐される可能性が高い。

 つまりこの指示はセイバー対ライダーの戦いを引き起こすためのものだ。

 

「これで、後戻りは出来ない………」

 

 仮に想定通りに事が進めば、明日、言峰綺礼は市民会館で大聖杯を顕現させるだろう。そしてそこには間桐雁夜も現れる。間桐邸に桜を置いて来るならそれでよし、もし連れて来たのなら、その場で殺して桜を救い出す。

 

「………ライダーとセイバーが接敵しました」

「それじゃあ、行こうか」

 

 立ち上がり、歩みを進める。最後の戦い、その前に────

 

「私の家に」

 

 ────決別を。

 





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