リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
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冬木教会。
夜の帳が落ちた刻。男が一人、そこを訪れていた。
「が、はぁ………あ…………」
その身を引き摺り、それでも尚彼は歩みを止めない。片耳が失われ、左腕は最早反応を示さず、右足は義足となり幻肢痛が絶え間無く襲いかかっている。だがその前進は続く。見当違いの復讐心を薪に焚べ、憎悪の業火を燃え上がらせ、間桐雁夜は教会の扉を押し開けた。
そこに鎮座する人影に、彼は暗い歓喜を滾らせた。
「遠坂……時臣ィ………!!」
蟲に蝕まれたその顔を歪め、間桐雁夜は遠坂時臣へ詰め寄っていく。一歩近付く毎に語気を荒げ、身勝手な思い込みを更に強くしていく。そしてそのすぐ側にまでたどり着き、ようやく彼は異変に気がついた。
「時臣………?」
その肩に手を置いた瞬間、遠坂時臣
「雁夜くん………?」
その声に、彼は驚愕と共に振り返った。そしてその拍子に、辛うじて彼の身体に支えられていた遠坂時臣の遺体が床に転がった。瞬間来訪者の、遠坂葵の顔から表情が消え失せた。
「あ……あぁ………」
言葉を紡げず、ただ呻く彼を無視して、遠坂葵は時臣の身体を抱き寄せた。涙を流し、そこに、 目の前の男へ憎悪と憤りを灯した瞳を向ける。
「これで、聖杯は間桐に渡ったも同然ね…………」
「え………?」
涙を流し、女は男へ問い掛ける。
「これで満足?」
「私から桜を奪って」
「時臣さんを殺して」
「遠坂への復讐は済んだ?」
その問いに、間桐雁夜は譫言のように違う、違うと繰り返す。
「その男が、悪いんだ。そいつがいなけ「ふざけないでよ!!」っ!」
「あんたなんか誰かを好きになったことさえないくせに!!!」
「あ、あぁ………」
動かなくなった女を前に、男は幾重にも重なった絶望に襲われていた。
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
慟哭し、頭を掻きむしり、何処へ向かうでもなく男はそこから逃げ出した。
そんな彼を見物する影、二つあった。
「下らぬ三文劇だが、初めて手掛けたにしては悪くない。どうだ綺礼、感想は?」
「これはまだ
「はっ!その割に随分とよい
「あぁ、事実、この酒がこれ程まで味わい深いものだったと気付き驚いているところだ」
今まで感じたことも無い愉悦を堪能しつつ、言峰綺礼はこの先を思案する。その口には、歪んだ笑みが張り付いていた。
────────────
翌日早朝、柳洞寺を放棄し、ケイネスとソラウを地下水道の拠点に置いてから、私達はまだまだ暗い空の下、かつての私が住んでいた場所へ向かっていた。
「なんて言うか、普通だったんだよ」
ゆるりと歩みを進めながら、私は何かを刻むように話を始めた。
「お母さんは優しくて、よく笑う人だった。お父さんは厳しいけど、誰よりも私達のことを大切にしてくれた。勇樹は、私に甘えるのが恥ずかしい年頃だったのかちょっと距離があったな」
「普通に仲が良くて、でも喧嘩もして、そんな何処にでもいる、ありふれた家族だったんだ」
たどり着いた、蓮葉の表札の家の目の前で、そうしめくくる。かつての蓮葉家の姿は見る影もなく、そこにあるのはただ殺人事件が起こってしまった事故物件だ。玄関には立ち入り禁止のテープが貼られている。
テープを剥がし、中へ入る。血痕は残っているし、血の匂いが鼻につく。その光景が、私に弟の死を思い出させた。靴を脱ぎ、リビングに向かう。死体は無いが、やはり血痕は残っていて、召喚陣もそのままだった。
(マスター)
「…………大丈夫」
何故こんなことになってしまったのだろう、という思いがふつふつと湧き上がってくるが、不思議と涙は流れてこない。悲しみも苦しみもある筈だが、私は現状を受け入れられていた。
二階へ上がり、私達姉弟の部屋へ入る。入口から見るその光景は、今までの
(そういえば勇樹は部屋を分けたがってたっけ)
自分の勉強机に座り、置いてある教科書や小説をパラパラとめくる。そうして本棚にあるものを見ていくうちに、一冊のアルバムに行きついた。
それは、
思えば、この趣味もこの起源由来のものなのだろう。私は写真が好きだった。家族のアルバムとは別に、私の嗜好で彩られた写真の数々。ふとした一瞬や、何でもない光景の数々。そこに登場する人々も様々で、誰もいない風景の写真もある。
先程の何でもない教科書や小説などとは違い、1ページごとに、一枚ごとにじっくりと眺めていく。そうして、最後のページ。
「────」
私が初めに撮った写真。今よりも幼い私と勇樹、お母さんとお父さんが揃った家族四人の写真。その写真を見たと同時に、この写真のような日常はもう二度と戻ってこないということを理解した。写真に、雫がおちていく。堰を切ったように、涙が流れ落ちていく。
「………」
声を上げることすらなく、私は泣き続けた。
「………ごめん、時間をかけすぎた」
(いえ、お気になさらず)
たっぷり時間をかけて泣いて、そうしてから、玄関へ向かった。靴を履いて、爪先でトントンと床を叩く。ここに来て、かつての私の家族はもうこの世にいないのだとまざまざと見せつけられた。その辛さは消えず、その悲しみは未だに私の心を蝕んでいる。だけど、進もうと思えた。決別はしない。全部背負って、その上で私はあの娘を家族としてめいいっぱい抱き締めるのだ。
ドアノブに手をかけ、扉を開こうと力を込める。その瞬間────
「行ってらっしゃい」
────誰かの声が聞こえた気がした。
その声に、私は振り返らない。ただ一言、言葉を返した。
「行ってきます」
「桜ちゃんを………返せっ…………!」か「時臣……時臣ィ………!!」と言わせておけばとりあえず役割を果たす男、間桐雁夜。
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