リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。   作:シーボーギウム

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幕間の物語
想いは嗣がれ、記される。


 私が魔術を使う上での何よりの問題は魔術回路の少なさだ。色々と調べる内に肉体のスペックがおかしな事になっていることは分かったが、魔術回路は普通の一般人クラスの貧弱な代物。余裕でウェイバーのそれに劣る雑魚っぷりだ。

 

「どーしたもんか………」

 

 一応、コレに関しては解決すべき問題ではあるが、実は聖杯戦争が終結した時点で解決の目処は立っていた。初動が死ぬほど時間がかかる上に、その後も継続的に管理しなければいけないが、成功すれば理論的には使える魔力は際限なく増える方法。

 はたしてその試みはつい一週間前に成功した。したのだが…………

 

「まーさか即効で封印指定食らうとは…………」

 

 聖杯戦争が終わってから、早3年。これまでのらりくらりと何とか避けていたそれ(封印指定)が、問答無用で襲いかかって来た。

 

 

 

 

 

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「とりあえず、お姉ちゃんは無事なんですね?」

「ああ、何とか執行者が来る前に逃げ出したよ」 

 

 ウェイバーのその言葉に、桜は安堵の息を零した。第四次聖杯戦争終結直後、識姫と桜は

ケイネスの伝手でエルメロイ一派に抱えられた。魔術回路がほぼ全損したとはいえかつてのロードであり、何より現行の天才である彼は二人を直弟子として預かったのだ。もちろんそこにはいくらかの打算が含まれてはいたが、それは彼なりの恩返しだった。彼曰く、「その眼帯は私の分、君達を弟子に取るのはソラウの分というだけだ」とのことである。

 以来3年、二人は各々魔術の研鑽を積み、喜ばしいことでは無いが識姫は封印指定を食らう程の成果を上げ、桜は元々の才能もあってか齢十にも届かぬうちに()()を獲得した。また、ウェイバーも旅を終え、ケイネスよりエルメロイ教室を譲り受け、その授業の評判の良さが生徒に知らしめられ始めたところだった。

 

「でも良く逃げられましたね、封印指定からたった1時間後に執行者が投入されたって聞きましたけど………」

「まぁ、アイツに恩がある奴は多いからな………」

 

 ウェイバー自身に、桜、ケイネス、ソラウは当然として、この3年で識姫が作り上げたコネクションは凄まじいことになっている。現状とある理由からエルメロイ一派は基本識姫に頭が上がらず、鉱石科の魔術師達からは神の如き扱いを受けるのが識姫だ。もちろん、ほぼ全員打算塗れなのだが。

 

「…………しばらく会えないですね」

「…………いや、アイツの事だからむしろ数日後には会えるよう画策してるんじゃないか?」

 

 

 

 

 

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「普通に電話使えばいいじゃん!」

 

 つい先程までどうやって連絡を取るか考えていたのが馬鹿らしくなる。何故わざわざ魔術を使って通信しようとしていたのか。コレガワカラナイ…………

 

「ちょっとした連絡にわざわざ魔道具使う馬鹿共が携帯の通信傍受出来るわけねぇわ…………」

 

 時計塔の魔術師は「魔術 is JUSTICE!!!」を地で行く集団だ。桜とウェイバーは私の影響でそういうのは無いが、色々柔軟になったケイネスですら未だに機械類を使う事には難色を示している。本人同士が盗聴されないように気を付ければそれで問題無いのである。

 という訳で桜に連絡し、私が現在潜伏している場所を伝えておいた。

 

「さてと………」

 

 これで桜の方の心配は消えた。とすれば今私が考えるべきはこの場に、()()()()()()()()()()()()()()()。私が潜伏している魔術工房は全く別の場所にある。ここに来たのは、ある人物に会うためだ。

 魔術関係で私がやるべき事は未だ山積み、そんな中で襲い来る執行者を薙ぎ倒すのに時間を食っている訳にはいかない。とはいえ執行者は全員が全員戦闘特化のプロフェッショナル。下手をすれば例の伝承保菌者(ゴッズホルダー)とやり合う羽目になる可能性もある。

 

「それなら、こっちもプロに頼ればいい」

 

 餅は餅屋。()()()()()()()()()()

 目の前の屋敷に目を向ける。その表札には"衛宮"の文字がある。門を通り、その先の玄関チャイムを押せば、数秒後に「はーい!」という少年の声と共に扉が開かれた。

 

「久しぶり」

「蓮ねえ!?」

 

 出てきた少年、衛宮士郎に片手を上げて軽く挨拶をすれば、彼は「蓮ねえ」という愛称と共に驚きの表情を浮かべた。

 この3年間の生活は、基本は時計塔周辺で魔術を研鑽しつつ生活し、数ヶ月ごとに、あるいは記念日に冬木に帰ってきてはのんびり過ごすというものだった。本格的に冬木で生活を始めるのは桜が中学に上がってから、それまではあの娘に自衛の手段を手に入れさせることも目的として魔術中心の生活をするつもりだ。

 で、初めて時計塔から冬木に帰ってきていた時、桜が士郎と出会ってしまったのだ。そうなってしまえば関わりを持たない訳にもいかず、結局現在は衛宮切嗣とも顔見知りになっている。

 

「帰ってくる時期だったっけ?桜は?」

「いや、ちょっと急用でさ。私一人で来たんだ。ところで切嗣さんいる?」

「爺さんは今出掛けてる」

「じゃあ帰ってくるまでお邪魔してもいい?」

「もちろん!」

 

 私はだいぶ士郎に懐かれている。おそらくは格闘技を教えたのが原因だ。しかも超実戦的でガチなヤツ。記録の起源で忘れないのをいいことに色々な格闘技を習得し、良いとこ取りの末に完成した、言うなれば『蓮葉流格闘術』。我がことながらやっちまった感が凄まじい。

 ただ切嗣さん曰く魔術への拘りは多少なりとも薄れたらしい。めっちゃ複雑な表情で感謝された。

 

「蓮ねえはお昼はもう食べたのか?」

「いや、まだ」

「そっか、なら丁度今から作るところだからご馳走するよ」

「マジ?ありがとう」

 

 居間に通され、士郎が料理をする様子を見守る。ちなみに私もそれなりに料理は出来るが、どこまでいってもレシピ(記録)通りなため既に士郎はもちろん桜にも料理の腕は負けている。アレンジしようとすると必ず失敗するのだ。

 

「今回は用事が終わったらすぐ帰っちゃうのか?」

「いや、しばらくは日本にいるよ。冬木では無いけど」

「なら時間がある時でいいからさ………」

「いいよ、切嗣さんとの話が終わったら組手しようか」

「よっしゃ!」

 

 まだ10歳、年齢相応な態度にほっこりとした気分になりつつ、私は切嗣さんの帰宅を待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜!」

「おかえり爺さん、お客さんだぞ」

「僕に?」

 

 そんな会話が聞こえ、目を覚ました。どうやら寝てしまっていたらしい。ここ数日慌ただしかったこともあってろくに眠れていなかったからだろうか。

 いつの間にかかけられていた毛布をどけて立ち上がり、伸びをする。疲れは取れた、がこれから更に疲れる話をしなければならない。

 

「ああ、識姫ちゃんか」

「どうも、お久しぶりです切嗣さん」

 

 聖杯戦争の最中は敵同士、何なら殺し合ったような仲だが、それはもう過去の話。既にそこら辺の確執は取り除いている。今は共に士郎と桜の情操教育の為もあって、普通に良好な関係を築けている。

 

「ちょっと急用で、相談したいことがありまして」

「急用?何かあったのかい?」

「ええ、まあ。ただそれより先に…………」

 

 いい匂いが漂ってくる厨房を指差す。

 

「冷めたら士郎に悪いですし、先にお昼食べちゃいましょう」

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「それで、相談って?」

「…………」

 

 自分から持ちかけた話でありながら、口篭る。彼は既に戦いから身を引き、穏やかな日常の中にいる。今から私がしようとしているのは、それをほんの少しでも戦場へ引き戻そうとする行いだ。

 意を決して、口を開いた。

 

()()()()()()()()()()

「っ………!」

 

 彼は驚いた表情で私を見返す。目を逸らす事無く、私は続ける。

 

「つい一週間前、私は封印指定を受けました。ただ生憎と執行者を相手取っている暇はない」

「………隠れる為の工房は作ったのかい?」

「ええ、冬木ではありませんが日本に」

「なら、問題ないと思うけどね。執行者(アレら)は余程の事がなければわざわざ追ってくるなんて事はしない」

 

 その言葉に、私は無言で首を横に振った。ダメなのだ。

 

「私の起源がそれを邪魔する」

 

 ()()。この3年でわかったことだ。この起源は、隠蔽や隠匿という種別に類する魔術、行動にゴミのような相性を発揮する。私の行動の全ては私が認識していない領域含めて無意識的に()()される。またその記録を見る者も、本来なら認識不可能な記録を無意識に受け取り、それを直感という形で出力し始めるのだ。それ故に、どれだけ上手く隠れても私はその()()によって見つけ出されてしまうのだ。

 キャスターの英霊が作り上げるレベルの工房ならともかく、現在の魔術師が作る工房ではろくに隠蔽効果は望めない。どれだけ高性能な結界でも一年以上はもたないだろう。

 

「…………」

 

 沈黙し、目を閉じ思考する彼からの返答を待つ。カチカチという無機質な秒針の音だけが響く。やがて目を開いた切嗣さんは無言のまま首肯した。

 

「ありがと「その前に、だ」……?」

「一つ、聞かせて欲しい」

 

 真面目な表情のまま、彼は私を真っ直ぐと見据えた。

 

「君は、何の為に戦っているんだい?」

「………」

「僕は、桜ちゃんと穏やかに、なるたけ魔術に関わらないよう過ごす方が君達は幸せになれると思う。魔術は関わるだけで何かを奪っていくものだ。僕は、君がわざわざ茨の道を突き進もうとする理由が、分からない」

 

 今度は、私が黙考する番だった。一度何もかもを失った男と、一度何もかもを奪われた私。きっと彼は今の私を見て、過去の自分と重ね合わせているのだろう。私が、破滅の道を突き進もうとしているように見えてしまっているのだろう。

 

「約束を、守りたいんです」

「約束?」

 

 再び彼女と出会うために。今の私も幸せだ。だけどそこで妥協してしまえば、私は一生消えない後悔に苛まれることになる。

 

「私は貴方とは違う。私は、どこまでも自分勝手で、身勝手で、我儘な願いのために戦おうとしているだけだから」

「────そうか」

 

 フッと微笑んだ後、少し待っていてくれ、と彼は部屋を出た。数分の後戻って来た彼の手には小さな箱が握られていた。手渡されたそれを開ければ、そこには弾丸が一つだけ収まっていた。

 

「もう使わないと思っていたから、それ以外は処分してしまってね」

「いえ、充分です。ありがとうございます」

「構わないさ。それと、これは提案なんだが────」

 

 その提案は、私にとって渡りに船とでも言うべきものだった。

 

 

 

 

 

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 四年後。

 

「…………不っ味」

 

 衛宮切嗣は数日前。眠る様に息を引き取った。士郎から渡された、ここ数年倉庫の肥やしとなっていたという彼のタバコ「煙龍」の不味さに驚愕しながら、私は目の前の箱、その中に収められた一枚の手紙に目を向けた。

 

「想いは嗣ぐとも」

 

 地獄を歩み続けた男の、その終わりが穏やかなものであったことに安堵し、私は煙を燻らせた。

 





明るめの話にしようと思って書き出したら終わりがしんみりしやがった。
もしかして私はシリアスを書かないと死ぬのか…………?

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