リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。   作:シーボーギウム

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感想評価ありがとうございます。
そろそろ感想返さないといけませんねこれ。

今回あたりからガールズラブタグが火を吹き始めます。
自分、極度の百合厨でレズ大好きマンの変態なのでそういうのが苦手な方は退避を推奨します。


Prologue 3

「………」

「おはようございます」

「………心臓に悪い」

 

 目が覚めた途端、目の前に広がる死の世界と、こちらを覗き込むやたら艶かしい美女。昨夜、私を見事眠りに誘ったその唇に視線がいく。肉感的なそれが微笑むのを見て、ふと頬が熱くなるのを感じた。

 

「だ、大丈夫ですか………?」

「ただの比喩表現だよ」

 

 オロオロとする彼女の膝から逃れる。その様子にサディスティックな欲求が湧き上がるのを感じた。おかしい、私はノーマルだった筈なのだが。

 いけない。何か、寝起きなせいか思考が頭の悪い方向に突っ走っている。冷静にならなければ。

 

「………とりあえず、色々整理しよう。巻き込まれた以上、聖杯戦争には参加せざるを得ないから」

「そう、ですね」

 

 憂鬱さを隠しもしない。まぁ、それはお互い様だろう。私自身、聖杯戦争には、特にこの冬木の聖杯戦争には参加したくない。色々ある中でも屈指の厄ネタ塗れの聖杯戦争だ。fateという人気な作品だが、恐らくこの世界に転生したいと考える人間はいない。その原因の7~8割は聖杯戦争だろうというくらい、この儀式は死亡率が高い。

 

「とりあえず、私達の目的は生き残ることであって、勝つ事では無い。そこは良い?」

「えぇ………ですが生き残るためには、どの道勝つ必要があるのでは?」

「この街の聖杯じゃ勝ってもろくな事にならないよ」

「?」

 

 首を傾げるシェヘラザードに、あぁ、と気付いた。転生(恐らく)した私にとっては当たり前の認識だったが、まず根本的にこの聖杯戦争に参加するマスター、サーヴァントで聖杯が汚染されていることを知る者はいないのだ。

 第三次聖杯戦争にて召喚されたサーヴァント、アヴェンジャーアンリマユ。それによって汚染された聖杯は願いを曲解し、歪めた形で実現させる。もはやあれは聖杯という名すら相応しくない呪物に過ぎない。ということを彼女に伝えた。

 

「それ、は………」

「勝者が誰で、どんな願いだったとしても、その先にあるのは最良でこの街、最悪で世界を呑み込む大災害だよ」

「逃げましょう。今すぐ」

「判断が早い」

 

 彼女のおでこを指先で弾く。逃げたところで、他の陣営から逃げ続ける羽目になる。それでは生きた心地がしない。ならば、私達が目指すべきは聖杯の顕現そのものを防ぐか、聖杯から溢れ出る泥をどうにかする、というものになる。

 もちろん、両方とも簡単な話ではない。そも、この情報は真実だが、それは私の持つ前世の記憶を元としたものだ。他のマスターにとっては根拠の無い世迷言にすら劣る戯言だ。それどころか、この世界はFate/Zeroに似ているだけの全く別の世界線の可能性すらある。

 

「私としては、聖杯が汚染されていることの確たる証明がしたい」

「そう、ですね。聖杯の汚染が知れれば、それは多くの魔術師にとって望ましくないですから。ですがどうやって証明を………?」

「当てはあるよ。でも戦力が心許ない」

 

 私は、眼が特殊なだけの小娘だ。こうしてシェヘラザードが現界を保てていること、身体のうちから何かが持っていかれている感覚からして、私も一応魔力は持っているのだろうが、魔術は使えない。例え使えたとして、それがサーヴァントに通用するかと言えば難しいだろう。攻撃力はともかく、他の要素が圧倒的に足りないのだ。

 ではサーヴァントであるシェヘラザードは?これもダメだ。本人が戦いたがらないだろうし、戦ったとして、元が語り部である彼女は元より戦いに不向きだ。宝具があるため戦えはするだろうが、だとしても火力に欠ける。私自身無理強いもしたくない。

 

「何にしろ、今は待つしかないかな」

「………マスター」

「何?」

「貴女は、何故そこまでこの聖杯戦争に関する知識を持っているのでしょう………?」

 

 息が詰まる。そう、私の知識は彼女にとって不可解極まるものだろう。昨日までただの小娘だったというのに、何故か持ち得る魔術の知識。しかし使うことは出来ないというあまりにもチグハグな状況。

 どうするべきなのだろう。この記憶を話すリスクは計り知れない。ここは彼女の工房の中で、自分と彼女以外の誰かがこの話を聞く可能性は皆無に等しいことは理解している。だが、万が一、億が一でも聞かれてしまえば?それは、もはや死と同義の末路を歩むこととなるだろう。

 

「申し訳ありません」

「え?」

「出過ぎた質問でした。撤回、いたします」

「なんで………」

「その話をすることは、相応のリスクが伴うのでしょう?ならば、無理をする必要はありません。貴女が望むタイミングで教えて頂ければ、それで充分です」

 

 そう言って、シェヘラザードは微笑む。あぁダメだ。どうにも私は彼女に弱いらしい。紡がれる言葉全てに甘えたくなる。だが、それではダメだと理性が吼えた。

 今後、この話をするリスクが現状より低くなる事は無い。これは確実と言っていい。誰にも居場所も素性も何もかも知れていない現状で話すのが、最もリスクが低いということを、私は理解している。話したくないと思うのは、単に私が怯えているからだ。己の異常を、明確に認識することを恐れているからだ。

 口の中が乾く。怯えも恐れも未だ消えることは無い。だが、やはり今伝えるべきだ。

 

「話、すよ……」

「マスター……無理は………」

「ううん、大丈夫。無理をしてでも、今話すべきだと思うから」

 

 深呼吸。冷や汗が額から吹き出る。ふと、強ばった手を柔らかく包み込まれたことに気がついた。

 

「世迷言に、聞こえるかもしれない、けれど」

「焦らず、ゆっくり、無理のないよう」

 

 見た目も、性格も、声色も、何もかもが違う。だというのに、そう言って私の頬を撫でる彼女の姿に、亡き母の姿を幻視した。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 自分に前世の記憶があること、この世界を物語の一つとして認識していたということ、死の記憶を持っていること。私はそれら全てを、それら以外も含めた私の持ちうる全ての秘密を、シェヘラザードにぶちまけた。

 抱き寄せられ、頭を撫でられる。不思議だ。あんなにも不安定で、すぐにでも壊れてしまいそうな私の精神(こころ)が、ただそれだけで鎮まっていく。そうして与えられる、甘やかで穏やかな温もりに浸っていることが、今の私にとってはとても、とても幸せだった。

 

「話していただきありがとうございます、マスター」

「お礼、言うような事じゃないでしょ………」

「いいえ、貴女がそれを話すということは、貴女にとって最大の信用と信頼の証でしょうから」

 

 そう言いながら微笑む気配を感じる。ダメだ。溺れる。この慈愛は、本質は薬だが今の私には毒になりかねない。

 

「ともかく、私はこの聖杯戦争の結末を知ってる。どうせなら、出来る限りその結末を良い方向へ行かせたい」

 

 悲惨、凄惨という言葉の似合う冬木の聖杯戦争においても、第四次聖杯戦争は特に酷い。その大半が悲痛の下に潰えてしまった。わざわざ助けようとは、考えていない。でもいくつかの悲劇を変えることが、結果的により良い結末に繋がるだろうとは確信している。考えなければいけないのは、終わった後の話だ。生き残るのは確定にして必須事項。ならば、その後の安寧を手にする為に、私は運命の取捨選択をしなければならない。

 

「動くべき時間はまだ先だから、一先ずは当面の食料とかをどうにかしよう」

 

 そう言いつつ、どうにか彼女の胸から逃げ出した。

 

 




次回からようやく本筋に絡んで行きます。

感想評価よろしくお願いします。
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