リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
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「誰だッ!!」
アーチャー、ランサー両名の戦い、それに、邪魔者が入ったのはしばらくしてからだった。己の宝具たる槍を構えたランサーとそれを迎え撃つ体勢に入ったアーチャー、そこに生まれた僅かな"間"、そこに立てられた足音。ランサーはそれを聞き逃すことなく足音の主の追跡を開始した。
対して、足音の主、衛宮士郎は恐怖にその心を支配されていた。帰り際、士郎は
「はぁ……はぁ……は、がッ……!?」
逃げ切った、追っ手の気配を感じず、校舎の中でそう思い違いした士郎の心臓を、真紅の刃が穿つ。そして目の前、誰も居なかったはずの空間からランサーが現れる。槍が引き抜かれ、士郎は倒れた。
「運が無かったな坊主。ま、見られたからには死んでくれや」
灼熱の中、淡々としたそんな言葉を最後に衛宮士郎は意識を失った。
少し遅れて、そこに現れたるは一騎のサーヴァントとそのマスター。アーチャーへランサーの追跡を命じたマスターの少女、遠坂凛は被害者である少年へ近付いていく。そしてその正体を知り、彼女は酷く狼狽した。
「明日から……どんな顔であの娘に会えば良いのよ………っ!」
少女は顔を覆い、天を仰ぐ。そこで、はたと気付いた。
「まだ、手はある………」
その手には、赤い宝石のペンダントが握られていた。
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凛がその場を去ってから、まだ一分も経たない頃。意識の無い士郎のすぐ側の教室、その扉が開いた。そこから現れたのは、小学生高学年程の体躯に和風のメイド服に鼻と口元を覆うガスマスクというアンバランスな装いの少女だった。彼女はボブカットの髪を揺らしながら士郎へ近付いていく。そして懐から携帯電話を取り出した。
『もしもし』
「衛宮は無事だ。存分に桜に怒られろ、姉貴」
『ふぅーーーーーーー…………』
電話越しに聞こえる声には安堵の様子が見て取れた。自ら目の前の惨状を作り出したくせに、と柘榴が呆れていると、「お姉ちゃん……?」という声が電話の向こうから響いた。多方面で現蓮葉家最強の存在の登場に慌てて弁明を始める識姫に内心いい気味だ、と毒づきながらも、彼女はそれを制止した。
「先に報告だ。説教はその後存分にしてくれ」
『はい…………隠れるのに使った擬似令呪の数は?』
「4画。あのクーフーリン相手にルーン魔術を使って、でこれだ。結果としては上等だろう」
『そうだね想定内。よし、今日はもう帰ってきて休んで良いよ』
「いいのか?衛宮がセイバーを召喚する前に死ぬかもしれんだろ?」
『逃げ腰と覚悟を決めた後じゃ話が違う。それに衛宮邸の方には瑠璃を向かわせてるから。あと何より────』
────もうすぐ術式が完成するから。
「………そうか、真っ直ぐ帰ることにする」
『士郎起こさないようにね〜』
「了解。桜、説教再開していいぞ」
『ちょおm』
識姫が何かを言う前に通話を切断し、柘榴は士郎を一瞥した。
「姉貴に目をつけられて不憫にな………」
割と本気の哀れみを込めた視線を向けた後、彼女は踵を返した。
「あの
────────────
「なんだこれ」
帰宅した柘榴に呆れ切った視線を向けられる。そんな私の首には反省中の文字が刻まれた木版がぶら下がっている。ついでに正座で地べたに座っている。
「反省中です」
「ふーん」
「もうちょい私に興味持とう?」
辛辣な反応におよよと泣き真似をするが尚もガン無視される。仕方ないと立ち上がろうとしたところで、長時間の正座の結果足が痺れに襲われた。
「うぐおおぉぉぉお………!」
「一体何を遊んでいるのですか………?」
足の感覚に悶えつつ視線を声のした方へ向けると、呆れ顔のキャスターがそこにいた。ごめんごめんと軽く謝罪しつつ、頼んでいた
「完成したわ。後は貴女の準備だけよ」
「OK、何すればいい?」
「術式用の礼装があるから、それに着替えてちょうだい」
「へーい」
そう言って案内された部屋の中へ入ると、その中心にはトルソーに着せられた真っ白なドレスと、そのドレスに合わせた真っ白な布地にバラの装飾が施された眼帯があった。明らかにデザインにキャスターの趣味が多分に含まれている。
「全部終わったら桜の分作ってもらうか」
そんな戯言を呟きながらドレスに袖を通す。サイズはピッタリだ。眼帯を付け替える。どうやら性能は橙子さんの眼帯と変わらないらしい。サラッとそんな物を作り上げたキャスターの手腕に戦慄しつつ、部屋の鏡でおかしな点がないかを確認する。
「………よし」
部屋を出て、工房へ向かう。私達が居を構えている場所は第四次聖杯戦争後、切嗣さんが爆薬で作り上げた魔力の吹き溜まりのある位置の真上にある。今回の聖杯戦争が40~50年後に起こる、という見積もりの元に作られ、その前にこの吹き溜まりが崩壊し、連鎖的に大聖杯ごと大空洞を崩壊させる算段だったらしい。これも放置しているととんでもない災害になりかねないので利用することとしたのだ。
(ようやく始まる)
10年。長い、とても長い準備期間だった。
擬似令呪、ハスバドールによる魔力量の問題の解決。起源弾及び各種礼装による戦闘能力の向上。バゼットの持つ現存する宝具と使い魔越しに見た
そして、最果ての槍。
(もうすぐ終わる)
工房の扉を開ける。役者は既に揃っていた。
「覚悟はいいかしら?識姫」
英霊としての装束を身にまとったキャスターが問い掛けてくる。
「そんなもの、10年前には終わってる」
僅かな光を放つ
深呼吸を一つ。
「始めよう」
その言葉を合図に術式が機動する。
────これは、約束の為の物語だ。
術式が終わった後。
「ところで、初めは私以外を召喚しようとしていたのよね?」
「えぇ、触媒の入手も姉さまなら用意ですし」
「あの術式、私以外で完成させられる魔術師はそうはいないと思うのだけれど」
問われた瑪瑙は懇切丁寧に説明するのは面倒だな、とものぐさな本性を顕にした後、キャスターに着いてくるように伝えた。そうして辿り着いたのは何の変哲もない倉庫だった。瑪瑙が扉を開きキャスターを招き入れる。
中には様々な物が雑に転がっていた。しかし掃除は行き届いており、そして何より、唯一明確に扱いの違う絵画が一枚飾られていた。
「これは………」
それは、神代の魔術師たる彼女を持ってして舌を巻く出来栄えだった。一切の魔術は施されていない。だが仮に魔術に利用すれば、その効果は凄まじいものになることが見て取れた。
「なるほど、
「納得していただけましたか?」
「えぇこんな絵を描けるのなら、識姫があの術式を完成させられると考えのも自然でしょう」
ところでこれ、貰ってもいいかしら、と言うキャスターに瑪瑙はどうぞと返す。
「感謝するわ、
「それ、外では言わないでくださいね。万が一にも」
「承知しているわ。私を誰だと思っているのかしら」
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