リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
感想評価ありがとうございます。
そして何より、日間一位ありがとうございまぁす!!!
色々書いてきましたが初めて一位になりました。
嬉しすぎて小躍りしてます。
「うわぁあぁぁぁあああ!!?!?」
「………っ!………っ!」
夜、話し合いを終えた私達キャスター陣営は、今何故かイスカンダルの戦車に乗せられ、私達の拠点へと向かっていた。あまりの速度に胃が持ち上がる気持ち悪さを感じながら、私は桜をシェヘラザードと共に抱き締めながら、二人して青い顔で手すりに掴まっていた。現状では基本無表情で感情を顕にしない桜ですら表情や身体が強ばっている。
「コチラで良いのだな!!?」
征服王の問いにブンブンと頷く。生憎言葉にして返す余裕は無い。感覚としてはストッパー無しでジェットコースターに乗っているようなものだ。横のウェイバーが大層やかましいが、多分空中に振り落とされることは無いだろう。そんなミスをするようなら彼がライダーで召喚されるわけが無い。
とはいえ怖いものは怖い。一応シェヘラザードの絨毯で空を飛んだことはあるがあれとは速度が段違いなのだ。
(早く着いてくれ!)
内心叫びながら、私達は身の安全を祈るのだった。
────────────
「まず、私達の具体的な目的から話させてもらうね」
拠点まで二人を案内し、どうにか調子が戻ってきたところで私はそう切り出した。生き残る、というのは言ってしまえば極論だ。その為の具体的な目的は、言うなればこの聖杯戦争を破綻させることだ。
「いや意味が分からない」
「まずさ、聖杯戦争ってなんのために行われると思う?」
「そりゃあ、聖杯を手に入れるためだろう?」
「半分正解」
首を傾げるライダー。しかし、ウェイバーは口元に手を当て思案顔だ。やがて何やら思い至ったのか、ボソリと呟いた。
「もしかして、何かの儀式なのか………?」
「大正解」
「でもこんな大規模な儀式なんのために………………まさかっ!」
魔術に関することならば、やはり彼は今の時点で相当優秀らしい。こちらがまともに情報を与える前にこの答えにたどり着くのはそう簡単なことでは無いだろう。流石は未来のロードエルメロイ二世と言ったところか。
「この聖杯戦争は、七騎の英霊を利用して
山積みの資料から三冊をウェイバーに投げ渡す。それぞれ第一次から第三次までの記録だ。私は既にこの資料の内容全てを
「一冊目に書いてあることなんだけどさ、聖杯戦争って、そもそも反英霊は召喚されない筈なんだ。それを踏まえて、三冊目の9ページ、3行目を読んでみて」
「………
「人類最古の善悪二元論、ゾロアスター教における悪神の名前だよ」
「なっ!?」
仮にこれがただ悪属性なだけのサーヴァントだったなら問題無かっただろう。だがアンリマユは致命的なまでに聖杯との相性が良かったのだ。
「第三次のアインツベルンは神霊を喚んだってのか!?」
「本当の意味の神ってわけではなかったんだと思う。一番初めに敗退してるし。でも、なんにせよアンリマユはこの世全ての悪という概念を孕んでる。そんなものが一番初めに聖杯の中に取り込まれた」
よりにもよって、
正直言って、現状からあの地獄を防げるとは思っていない。圧倒的に時間も準備も足りていない。精々が被害を原作よりも軽くする程度だろう。だからこそ、私が今見据えているのは第五次時点で聖杯の完全解体だ。原作では第五次で聖杯は機能不全に陥るが、完全な解体はその10年後になる。その際にも戦いが起きるらしいが、そもそもそれを防ぐという方針だ。
「とりあえず大聖杯の状態を調査して、それで本当におかしな事になってたなら、今回の聖杯戦争を破綻させて、
その言葉を最後に、場が沈黙に染まる。しばらくしてその沈黙を破ったのは、やはり
「なぁ娘。お前さん、生き残ることが目的と言っておったよな?」
「うん」
「ならば、何故そうも聖杯をどうにかしようとするのだ?どこか別の街にでも逃げればそれで済む話ではないか」
「…………」
そうだ、その通りだ。ただ生き残るだけなら、何もかも放り出して逃げるのが一番手っ取り早いし安全だ。そんなことは自分が一番分かっている。それに、私は転生者。前世の記憶は間違いなく存在する。前世で生きた時間は、今の私よりも長い。
だが、それでも────
「私の家族はさ、ここ最近の連続儀式殺人の被害者なんだよ。その犯人が描いてた魔法陣から、キャスターが召喚されて、私はこの戦いに巻き込まれた。私にはもう家族がいない」
ここで生まれ育ってきた15年間、私は間違いなく
「だから私にとっちゃ守りたい物なんてこの街には微塵も残ってない」
そんな風に思えるのならどれだけ楽だろう。
「んな訳ねぇだろうが!!!」
「お母さんが!お父さんが!勇樹が!!生きた痕跡がこの街にはある!!もう私には何も残ってないけどさぁ!どれだけ思い出すのが辛くてもっ!!この街は私の家族が生きた場所で!!それをそんな易々と捨てられる程私は大人じゃない!!そんな簡単に大人になんかなれない!!なれないんだよぉ…………!!!」
ボロボロと涙が流れていく。今もまだ死にたくて、死にたくて。それでも生き残ると決めたのは、家族の痕跡が無くなってしまうのが耐えられないから。
私というイレギュラーがいる時点で、原作通りなんてものは既に存在しない。冬木の大火災が冬木だけで済む確証も無い。もう、どうするのが正解なのかなんて分からない。
「俯くでないわァ!!!」
突如放たれた大声に、思わず跳ねるように目を向けた。そこに居たのは、紛れもなく
「大望に臨む
「………私は英雄なんかじゃない、ただの小娘だ」
「何を言う。娘、そなたは数日前まで間違いなくただの小娘だったのだろう?そんな小娘が家族の為、街を守らんとする。それを英雄と呼ばずして何と呼ぶと言うのだ」
イスカンダルがニカリと笑い、続ける。
「そも初めから英雄などという者はそうはいない。このイスカンダルたる余とてそうだ。よいか娘、英雄とは!何かを成そうと歩み始めた者!!逆境に立ち!それでも尚、歩みを止めぬ者のことだ!!」
ビリビリと空気が揺れる。圧倒的なカリスマ故か、その言葉はすんなりと私の中へ入ってきた。
「故にこそ、前を向け
「…………ありがとう、道を見失うところだった」
「ぬはははは!!なぁに、礼には及ばん!!」
その大きな手でワシャワシャと頭を撫でられる。その力強さに、私はお父さんのことを思い出したのだった。
感想の返しとかでも所々語ったことではあるのですが、識姫は持ち合わせる能力や、それによって歪んだ価値観を持っていても、その根底は蓮葉識姫という中学三年生の普通の女の子です。
どれだけ無慈悲になろうとしてもどこか甘さが残ったり、死という極限の恐怖を知っていても怖いものにはちゃんと怯える等身大の女の子なわけです。
それでも自分の目的の為、自分自身の為に心を奮い立たせて逆境に立ち向かえる強い精神の持ち主なわけです。
感想評価よろしくお願いします。