リュウノスケェ!!に殺されたショタの姉に転生しました。 作:シーボーギウム
感想評価ありがとうございます。
お気に入り数が5000を突破しました。マジでありがとうございます。
あと今回過去最長です。
前回までは大体2500〜3500くらいなんですが今回まさかの約5000という。
どれくらいの長さが一番読みやすいんでしょうかね?
(驚いたな………)
衛宮切嗣は、銃弾の雨を避け、身体に多少の傷を作りながらも、動きに支障のあるような傷は一切受けることなく己の目の前まで到達した少女を前に思案する。右手にナイフを握り、緩りとした体勢でコチラを睨み付ける彼女の姿には、しかし熟達した技能のようなものは感じなかった。
(並外れたセンス、と言ったところか………)
約1時間前、舞弥の使い魔が発見したライダーのマスターと正体不明の二人の少女。向かう先が柳洞寺と知り、彼はその少女のどちらかが間違いなくキャスターのマスターだと確信した。準備を整え、アイリスフィールを通じてセイバーにも柳洞寺に向かうよう伝えたあと、現場で見つけた少女は既にバーサーカーのマスターと思わしき男と交戦状態にあった。
(警戒すべきは蟲を一掃した魔眼と思わしき攻撃と、蟲を一撃で殺す謎の手腕)
好機と放った弾丸は、しかして回避された。即座にバーサーカーのマスターへ弾丸を放ち、その耳を吹き飛ばした瞬間、少女は迷わず令呪でキャスターを呼び出し、バーサーカーのマスターを盾にコチラへ突貫。銃声を頼りに近付かれ、果てはキャリコによる掃射すら避けきった。その手にはナイフ一本だけ。魔術を使用した形跡も無かった。
(状況を判断する能力も高い。あの場で即座に令呪を切られたせいで舞弥が狙撃することも出来なくなった。その上、僕の方へ突貫してくるものだから僕自身コイツに集中せざるを得なかった)
運に助けられた部分はあるだろうが、切嗣はこうして目の前にいるのは間違いなく少女の実力によるものだと分析する。
(魔術を使っていない以上、起源弾との相性も悪い。初撃を避けられたことからして………)
彼と久宇舞弥以外分からない合図を送る。それに合わせて、舞弥は少女、識姫に銃口を向けるが、途端に彼女は瞳を舞弥のいる方向へ滑らせた。
(不意打ちは不可能と見ていいか………)
厄介だ、と舌打ちするのを堪える。距離や状況、各々の装備を鑑みれば圧倒的に切嗣が有利。だがそれを覆しうる未知を無数に持ち合わせているのが識姫だった。
識姫が身を低く構える。それに呼応して切嗣はキャリコを構えた。弾かれるように駆け出した識姫に向けて弾丸の雨が迫る。だが身を大きく動かし、木々を盾代わりに進む彼女には一発たりとも当たることは無かった。
距離にして2m。
もはや距離とも言えぬ位置まで辿り着いた識姫はナイフを振りかぶった。しかし切嗣はそれをバックステップで回避。続く二撃目。逆袈裟に放たれたナイフは、その軌道からして明確に切嗣の肉体を捉えた。
しかし────
(
衛宮切嗣の魔術が真価を発揮する。二倍速になったことによりナイフを回避した切嗣は即座に手榴弾を投擲した。そしてその速度でもって爆破の範囲外に退避する。
爆破まで残り数秒。良くて致命傷、悪くて即死の一手。内心、切嗣は勝ちを確信する。仮に、相手が普通の少女だったのならば、これで終わっていただろう。
死が迫る刹那、彼女の脳裏を無数の情報が駆け巡る。それは俗に走馬燈と呼ばれるもの。だが識姫の場合、そこに生まれる意味は絶大となる。それは、今までの記録全てを一瞬のうちに網羅するということ。走馬燈を見るのは、打開策を探すためだという説がある。識姫の場合、説でもなんでもなく今までの記録から打開策を編み出すのだ。
一つの図書館にも勝る莫大な記録から選ばれたのは、今世の記録から間桐の魔術書、ウェイバーの施した強化魔術、前世の記録から、
「
左手に現れたサバイバルナイフが手榴弾を
投影魔術。10の魔力で3や4の性能の物品を作り出すという魔術だ。その性質上、まともに利用されることの無い魔術だが、記録という起源を持つ識姫にそれは当てはまらない。
投影魔術は己の中のイメージを利用する。普通であれば穴だらけのイメージ故にまともな物は作れない。だが、彼女の
(無闇に投げると拾われて利用されかねないな………)
識姫は再び記録を辿る。そうして、右手に真っ黒なマチェットが握られるやいなや駆け出した。放たれる斬舞。横薙ぎ、袈裟、逆袈裟、突き。無数に組み合わさった刃の連なりが、切嗣の命を殺さんと迫る。
辛うじて、ギリギリのところで回避を続ける切嗣。しかしそんなものはそう長く続かない。遂に避け切れず刃が切嗣の首を捉えんとした時。
バァン!!
銃声と共にマチェットの刀身が砕け宙を舞う。識姫が距離を取り、今度はククリナイフを投影したのを確認しつつ、切嗣の思考は急速に回転していた。
(なるほど、コイツ自身を狙わなければ察知はされないのか)
消えない投影、不発弾と化した手榴弾など疑問は尽きない。だがそんなことは今考えた所で意味は無い。混乱しかけていた頭を今一度冷静な状態に保ち、切嗣は思考を続ける。
識姫の投影、そこに使われる魔力は少ない。魔力切れは期待するだけ無駄だろう。そして、魔術をあまり使わない以上起源弾も効果は見込めない。狙撃は避けられ、爆発物は無力化され、切り札すら有効打とは言えない。切嗣にとっての相性は最悪と言って良かった。現状が続けば負けるのは切嗣だろう。
だが、時の運は切嗣に味方をした。
突如発生した莫大な魔力の反応。それが意味するのは────
(宝具か……!)
セイバーが聖剣の真名を解放する場面ではない。それ故、必然的に宝具の発動主はキャスターになる。そしてそのキャスターのマスターはその事を理解した瞬間、切嗣に目もくれずにキャスター達のいる方向へ弾かれるように走り出した。
『撃ちますか?』
「………いや、弾薬が無駄になるだけだろう」
近くの木に寄りかかり、タバコに火を付ける。煙を肺に取り込み、吐き出す。立ち上る煙を見上げながら、切嗣はボソリと呟いた。
「厄介なことになったな………」
その数十秒後、切嗣は行動を再開した。
────────────
(ふぅ………どう、致しましょうか……………)
眼前にいるのは、二人の女。一人はひたすらに白という印象を受ける美女、もう一人は甲冑に身を包んだ美少女。その手には不可視の聖剣。その二人を前に、キャスターは思考する。
(対話は………難しそうですね………)
ふぅ、と再びため息をつく。どうにも
しかし、シェヘラザードはただの語り部。魔術の知識は生前の書物からあれど使う事は出来ず、とても魔術師と言えたものでは無い。
「杖を構えるがいい」
「………見逃して頂くことはできませんか?」
「戯言を」
そう言い剣を構えるセイバー。こうなればもはやどうしようも無い。シェヘラザードは杖でコンコンと地面を叩く。瞬間、周囲に無数の光の玉が現れた。淡く光るそれらは軽快な音と共に弾け、様々な形へと変化する。
「それではしばし、御付き合い頂きましょう…………」
千と一の夜に語られた物語達を操る彼女だが、しかし物語に含まれるというアラジンの物語は後付けだ。その一要素が、彼女の宝具の拡張性を跳ね上げた。重要なのは、あくまでその物語が
物語がセイバーに襲いかかる。古今東西、過去、未来、現在、その全てにおいて物語は全て彼女のもの。差し詰め
「これは………!?」
盗賊が刃を振るう。魔神が火を吹く。ただ舞うだけで時間感覚を狂わせる魚類が空を踊る。規格外の肺活量をもつ狼が咆哮する。小人が盗賊の刃を巨大化させる。亡霊が夢と現の感覚を曖昧にする。獣達が鬼をも殺す一撃を放つ。魔女が永遠の眠りへ誘う。
「くっ、小癪な!!」
堪らず聖剣を解放したセイバー。いくつかの物語達が切り捨てられ、溶けるように消える。だが足りない。それだけで蹴散らせる程、彼女の物語は
「騎士王様へ語るのであれば、やはり馴染み深いものの方が良いでしょう」
そうして
「なっ!?」
「ご存知の筈………」
東洋、西洋、中東。あまりにも一致しない物語の並びにセイバー達は困惑していた。そして何よりセイバー自身が感じる奇妙な戦い辛さ。
程なくして、遂にセイバーの肌に傷が付けられた。即座に治療魔術を使うアイリスフィールだが、そこに違和感を覚える。
(治りが遅い………!?)
初戦にてランサーに付けられた傷の様に治らない訳ではない。だが明らかに遅い。魔力が滞っている訳ではなく、毒や呪いがある訳でもない。そうして理由に行き着いたアイリスフィールは焦ったようにセイバーに向けて叫んだ。
「気を付けてセイバー!そのキャスター、貴女に対して何かしらの特攻を持っているわ!!」
「っ!なるほど………」
王特攻。シェヘラザードの持つそれは、王が相手である限りあらゆる面で有利にことを運ぶことが可能となるものだ。そしてそれは彼女自身の気質と組み合わさった結果、防衛、足止めの際には類稀なる効果を発揮する。
「だが大半の攻撃は魔術的なものです。私には効かない」
「えぇ、
いつの間にか居なくなった盗賊。そしてその言葉の意味を、セイバーは迅速に理解した。
「アイリスフィール!!」
「え?」
アイリスフィールの背後、そこに出現した盗賊が刃を振るう。それに駆けつけようとセイバーは踵を返そうとするが、無数の物語が邪魔をする。間に合わない。そのあまりにも無慈悲な直感。アイリスフィールの首が飛ぶ光景を幻視する。
しかし
ギィィィィイイン!!!
凶刃は、
「ランサー!?」
「勘違いするなよセイバー。マスターを殺されて敗退などされては俺の気が済まん」
そんなやり取りをする二人を他所に、シェヘラザードは深く、深くため息をついた。それと同時に、物語を消していく。その様子に、改めて警戒するセイバーとランサー。
「なんのつもりだ…………?」
「この状況では勝ち目がありませんので………」
そう告げた後、彼女は杖を消し、代わりにその手に一つの巻き物を取り出した。それを開いた瞬間、そこに込められた莫大な魔力。それが意味するのは────
「────
それは、彼女が語った物語。千と一の夜、その始まりの物語が記された書物。
「これは私の言の葉が紡いだ、終わりなき願いの物語」
世界すらも信じさせる規格外の現実感でもって、世界を物語に置き換える宝具。
「『
大怪鳥の頭上にて、彼女は物語る。
「もうしばらく、御付き合い頂きましょう…………」
物語は、まだ始まったばかりだ。
識姫の投影()魔術は宝具は投影できません。
代わりに神秘の低い物品なら破壊されても残るとかいうトンデモ精度で投影可能です。
言ってしまえば宝具並のものでなければもう一つ真作を作り出せるってことです。
なので仮に宝石作って売って、なんやかんやあってそれが識姫の手元に戻ってきてもそれが投影品なことは識姫すら気付けません。
感想評価よろしくお願いします。