終末王マーリンとブリテン異聞帯   作:ラビシアの人

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ハッハァッ!辿り着いたぜェ!信念と夢の果て、妖精だらけのブリテンによォ!


真の王

 ―――玉座につくのは真の王。

    血染めの冠おひとつどうぞ

 

 

 

 美しい羽根を持つ一人の妖精から真実が告げられた。

 女王は悪者であった。女王は全ての元凶だった。女王の目的はブリテンの支配だった。

 女王は、いや魔女は私利私欲のために私たちを支配していた。

 その真実を知った妖精は

 

 「……ひどくない?」

 

 玉座に集まった妖精たちはひどいひどいと口々に言った。

 そして魔女に物を投げつけた。魔女の行ったことを否定した。魔女を剣で突き刺し殺した。

 魔女はただの醜い肉塊となり果てた。

 こうして悪い魔女は倒された。

 妖精國の玉座にて、一つの物語が完結した。

 残ったものは醜い魔女の後継者。

 

「同罪だ。同罪だ。娘なのだから、同罪だ。」

 

 そんな声が玉座に響いているのをただ私は見ていた。

 私は足手まといだった。私はお母様に対して何もしてあげられなかった。

 私はただ笑うことしかできなかった。

 私をどうするか口々に言う中、私は笑っていた。

 

 「あはは・・・あははははは!止められなかった、止められなかった。お母さまがぐちゃぐちゃにされているのに私怖くて止められなかった」

 

 何もできなかった私を笑う。笑って、笑って。その笑い声は叫び声に代わり。

 

 「……もう、いいや。もう、疲れちゃった。こんな場所にいたくない」

 

 腐った体を引きずり私は歩き出す玉座の奥にある大穴に向けて。

 

 「そうだ……逃げよう……消えよう……ちょうど……くらいの穴が、あるんだし」

 

 私が身を投げようとしたその時に、私はいつの間にかそこにいた誰かにそっと手足が腐り落ちないように優しく抱きしめられていた。そのぬくもりは、私とは違い暖かかった。

 

 「君は死ぬ必要もない。君が悪いわけでもない。悪いのは動かなかった僕だ。僕が、動かなかったから君のお母さんは救えなかった。君には、僕を恨む権利がある」

 

 その言葉の意味は、私には分からなかった。けど、名前も知らない誰かに抱きしめられている。ただそれだけで、少しだけ心が軽くなったように感じた。

 

 「だけど、僕は君に恨まれようとこのブリテンを最悪の終わりから救う。君は少しだけ休んでいるといい、君は十分頑張ったのだから」

 

 何もしていない、何もできなかった私に誰かは春のような温かい声でそう告げた。私は、その言葉に戸惑うことしかできなくて、それでも私は、聞きかえさなければならないことがあった。

 だから惨めでも、無様でも、絞り出すような声で聞いた。

 

 「ブリテンを……救うことができ……るの?」

 

 「…ああ、もちろんだとも。僕には君のお母さんが愛したブリテンを救うことができる。むしろそのためだけに終わった世界から歩いてきたのだから」

 

 私はその言葉を聞いて安心した。私は何もできなかったけれど、この人ならブリテンを、妖精たちを導いてくれる。根拠は何もなかったけれど、私はただその言葉を信じ、もう見えなくなった目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は目を閉じ眠る少女を抱き上げると妖精のいないところに転移させた。

 そして玉座にたどりつくことのなかった彼女に向けて歩き出した。妖精たちは、突然現れた僕に困惑し警戒しているようで、避けるように彼女までの道を作った。

 

 彼女の姿は、見るも無残な姿であり、おびただしいほどの血が流れていた。

 その姿を僕は悲しんだ。あれほど、どんなことがあっても立ち上がり、進み続けた彼女はもうこの世にはいない。救われない終わりを迎えた彼女の姿を目に焼き付ける。そして、もう何も言わなくなった屍に手を伸ばし抱き上げた。

 まだ少しだけ温かい体温は、彼女が生きていたことを教えてくれる。

 

「まさか、こんな形で会うことになるとはね」

 

 僕たちは出会うことはないと思っていた。彼女と僕の関係は、僕が一方的に彼女を見ているだけだった。彼女は僕のことを知らないし、僕のことを嫌っていた。

 

「今から僕がしようとすることは君にとって迷惑なことかもしれないね。でも、善意とは基本的に押し売るものだから、無理やりにでもやらせてもらうよ」

 

 僕は浄化の魔術をかける。彼女はもう塵になりかけていてあまり意味をなさない魔術だった。でもせめて、その最後に救いがあったと語られるように、ただの一人の少女であったモルガンがつかみ取った物語は無駄ではなかったと伝わるように願いながら僕は魔術を使った。

 

 やがて、完全に消えてしまった彼女を見て、僕は、やっと彼女の物語が終わったことを受け入れることができた。そして、彼女が残した物語を救うために、彼女がいなくなった物語と向き合い始めた。

 

 妖精國は今とても不安定な状態だった。当然のことだ。長い時間、国を治めていた女王がいなくなった時期と厄災が迫ってくる時期が重なったのだから。

 

 女王がいなければ、誰かが玉座を管理しなければ、ブリテンの妖精はいなくなり、厄災に対抗できず最悪の結末を迎える。

 だが、まだ女王候補は2人いる。

 1人は女王の後継者だが、今の彼女では務められないだろう。

 ならば、もう一人の妖精。王の氏族で女王マヴの最高傑作である彼女なら女王を務められるはずだ。

 しかし、妖精たちはその価値を理解していない。ただ気に入らないからという動機だけで女王候補を殺そうとするだろう。

 絶対的な女王であった彼女すら殺すことができた妖精だ。女王候補も殺そうと思えば、殺すことができる。彼女が死んでしまえば妖精國は混乱に陥り、その隙に厄災が襲いブリテンは滅びる。

 厄災自体も厄介だ。僕の目によると、妖精の数よりもすでにモースの数の方が多い。モースの毒に対抗できる牙の種族はもういない。これでは、とてもじゃないが耐えられない。

 幸い、大穴から来る大厄災はまだ目覚めていない。だが、その間にあかとくろの厄災が襲ってくる。

 この状況はあまりにも出来すぎている。僕がそう考えるくらいブリテンは最悪の滅びの運命にあった。

 

 少女には、ブリテンを救うと言ったが、僕にできることは、最悪の滅びから少しだけ幸福な終わりにするくらいだった。だが、それでもやるしかない。

 

 そのために、まずは前提を崩すとしよう。

 僕はゆっくりとそこに落ちていたものを拾い上げる。それは、血に染められた黒い王冠だった。

 僕はそれを被ると気負いなく玉座を見据えて歩き出す。多くの妖精たちが僕の姿を追うように見た。

 

「血に染められた冠……」

「本当の王様なの……?」

「あの方は……まさか……そんなはずは」

 

 妖精たちは戸惑いの声を上げる。

 そして僕に対して、あるものは懐疑的な視線を、あるものは崇拝のまなざしを、あるものは嫉妬の感情を向けた。

 やがて僕は、彼女がたどりつくことのなかった玉座に腰を掛ける。

 妖精たちは僕が玉座に座ると歓声を上げた。

 

 「新しい暦が始まるぞ!」

 「新しい女王が居座るぞ!」

 「誰が女王でもうまくやるなら同じこと」

 「無慈悲な魔女にさようなら」

 

 僕はそんな妖精たちを視界の端で見ながら、妖精國で起きている争いに目を向けた。決着はついた。ならば、これ以上戦う必要はない。

 僕は、声を風に乗って届ける魔術で妖精國全域に語り掛けた。

 




 モルガンを倒した後、妖精王が血染めの冠を取って、楽しかったぜぇぇ!お前たちとの友情ごっこォォしてくると思ってました。

・モルガンの後継者
 モルガンの一人娘であり、妖精騎士トリスタンの名を与えられた存在。
 真名はバーヴァン・シー。
 その性格は、残虐非道であり、気に入らないものは身内の妖精でさえ、ズタズタに切り裂いて殺している。
 しかし、その本性はどこまでも善良であり純粋。
 そのため、多くの妖精に好かれ裏切られてきた。
 本作において、彼女はマーリンによって妖精のいないところつまり、どっかに浮かんでいる船に転移させられている。
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