全身をメタリックブルーの鎧で固め、目元をバイザーで覆っている姿からはその表情を伺うことはできない。
彼女は辺りを軽く回し僕の姿を見つけるとアロンダイトの鞘を突きつけた。
「真の王を語る偽りの王、
そう言って、彼女は真っ直ぐに僕に突撃してきた。薄いだが極限まで濃縮されたエネルギーの刃を連続で切りつけてくる。
その刃の名は、
アルビオンの竜にして、核も真っ青な炉心を持つ彼女だから出来る荒業である。だが弱点として一瞬しか生成出来ないこと、そして間合いがそこまで広くないことが挙げられる。
それも、妖精騎士ランスロットには何のハンデにもならない。ただ高速で間合いを詰め切りつける、ただそれだけのことだった。
幻術を展開し、攻撃を避ける。だが、避けきれなかった斬撃は僕のローブを容易く切り裂いた。全くお気に入りのローブで直すのも大変なのにと場違いな事を考えつつ、戦況を見る。
ここにいる全員で妖精騎士ランスロットを抑えることは出来るのか?
結論は今のままでは不可能である。むしろ、こちらが全滅する可能性の方が高い。
今ここで、戦力を失う訳にはいかない。
それに、いつまでも僕だけが集中攻撃されるのは辛いものがある。避けるバリエーションもなくなってきた。杖で防ごうにも切られておしまいだろう。
仕方ない。あまりこの手は使いたくはないのだが、この状況になってしまったら使うしか突破口はない。
「何とか時間稼ぎをしてほしい。その間に切り札の準備をする」
簡潔に物事を伝えると、その場にいた人達が僕を守るようにフォーメーションを組んだ。こういう時に迷わず、信じて行動してくれるのは、本当にありがたい。
異星の神の使徒と妖精騎士ガヴェインが前に立ちはだかる。だが、彼女は軽く剣を交わらせると同時に膨大な魔力の奔流で後方に彼等を吹き飛ばした。賢人グリムと予言の子の魔術は対魔力によって無効化された。女王マヴの娘はまだ、戦闘できる程の体力が戻っていない。ギルガメッシュ王も先程の戦闘との連戦を想定していない為、魔力が尽きて消え掛かっている。まともに対抗できているのは妖精騎士ギャラハッドと人類最後のマスターのペアくらいであった。
あまりの出鱈目ぶりに目眩がするが、稼いでくれた数秒で準備は整った。
「させるかっっ!?これは鎖?だがこの程度の拘束」
そこまで言って彼女は目を見開く。その視線の先にあったのはこの世界には本来欠けているもの。このブリテン異聞帯が出来た原因であり、原初の罪。
輝けるかの剣こそは ―――
過去現在未来を終わらせ、戦場に散っていく全ての兵達の夢を叶えた星の結晶。
「束ねるは全ての結末。振るうのは託された星の聖剣――」
是は勇者と共に戦う戦闘である。
是は善きもののために振るう輝きである。
是は誉れ高き戦いである。
是は人が生きるための戦いである。
是は天地を滅ぼす強大な敵との戦いである。
是は真実を告げる戦いである。
是は世界が祝福する戦いである。
是は無垢を討つための戦いである。
そして何より――世界を救うための戦いである。
彼女は一瞬固まったがすぐにギルガメッシュ王が最後の力を振り絞って出した鎖を壊し接近してくる。
だが、彼女の接近を聖剣が許さなかった。
放たれる魔力の全てが、聖剣を構える僕の盾となる。
多くの祈りから、その一振りは生まれた。
多くの想いから、かの剣は変化した。
多くの憧れを導く羅針盤となって、
多くの希望の先でいつか来たる終末を待つ。
世界を滅ぼす者。その全てに終わりを告げた聖剣が今、絶望を照らし、闇を払いのける。
世界は変わる変えられる。であれば、変えるのが僕たちのなすべきことだ。
絶望的な状況の世界を変えるそんなことすら出来そうに感じる希望の光は、絶望となり得る黒い終末を塗り潰す。
そんな終末を誇りと掲げ、その先を貫けと叫び
今、終末の王は高らかに、
その真名を歌いあげた。
其は――
その輝きは彼女を貫いて、城を切り裂き、ブリテンの彼方まで希望の光を走らせた。
※
気絶した妖精騎士ランスロットを捕縛することに成功した。目を覚ました後も、逃げようと思えば逃げられるだろうに大人しく拘束されていた。しかし、こちらからの質問には一切答えようとしなかった。こうなれば、直接彼女に入れ知恵した人に聞くしかない。
そして、それぞれやるべきことをやる為にこの場は一旦解散した。
女王マヴの娘はエディンバラに戦力を集めに、妖精騎士ガヴェインは自身の領地で移住者を募る為に、カルデアはストームボーダーと連絡を取るために、そして僕は、妖精騎士ランスロットを連れてソールズベリーに向かう準備をしていた。
女王マヴの娘とは和解できた、妖精騎士ガヴェインとは協力できた、女王の後継者のことをカルデアに丸投げし、予言の子と二人きりで話すことも出来た。
やりたいことは全てやれた。そう考えていた時に彼がやってきた。
「おや、もう君はこの世界から去っていったと思っていたんだけど」
「板上に出てきた第三者が君でなければ去っていたさ」
ボロいローブを被った彼は、当たり前のようにそこにいた。
「それで、カルデアの者何しにきたの?僕の邪魔をしにきたわけじゃないんでしょ」
「何、君の作品の感想を伝えに来た。ただそれだけだ」
「ああそれで、どうだった僕の作り上げた物語、死を克服し、平等で平和な世界は」
「素晴らしい作品だったとも、あれは人類がいつかたどり着く理想の終着点の一つだ。」
「だが、あそこにいる人間は
「そう、それは良かった僕と同じ意見だ」
「ならばなぜあの作品を残しているんだ。あのような作品残しておくだけ無駄だろう」
「それは僕が人間を信じているからさ」
「まさか、あそこから発展があるとでもいうつもりか」
「世界も君も決断を下すのが早すぎるよ。僕は、いつかあの理想を打ち砕く者があの理想郷から生まれると確信しているのに」
「・・・それは、人間に幻想を抱きすぎだ。そんなことあり得るはずがない」
「そうだね、だけどそういうのを覆すのが人間の役目だし、君はそれを実感しただろう」
「・・・貴様がそこまでして望む未来は何だ。理想郷ではなかったのだろう?」
「僕が望むのは、僕の理想の世界。だけど、どうやってそこにたどり着けばいいのかわからないけどね」
「でもここに来てよかった。僕にもまだ出来ることがあるって実感させられる」
長い沈黙の後、彼は口を開いた。
「私の用件は終わりだ。いや1つ忠告をしておこう。傍観者に気をつけろ」
それだけ告げると彼は去っていった。
躍動トリオと千里眼トリオどちらも好き。
ランク:A++ 種別:対外敵宝具
星に鍛えられた最後の幻想にしてすべての聖剣の中で頂点に立つ神造兵装。
マーリンによって引き抜かれたときにあり方を変え、終末を告げる剣となった。
ちなみにこの聖剣を妖精の代わりに納品するとブリテン異聞帯はそもそもなく、カルデアは詰みます。ブリテン異聞帯攻略RTAはたぶんこれが一番速いと思います。
※より先の話は原作次第では削除します。
カルデアの者、いったい何者なんだ…