まぁ、ジャンプ漫画なんでね。いつまでもしんみりしてちゃあ居れませんよって事で、今回は少年漫画チックにしてみました。
あと今回とある原作エピソードをかなり前倒ししてるんですが、そこは大目に見ていただけると嬉しいです。
「助かりました……! 本当にありがとうございます! 一時は一体どうなることかと……!」
「いえいえ、そんな大層なことはしてませんから」
「それこそとんでもない! あの数の海賊を一人で壊滅させてしまうとは……若い、しかも女性なのにその強さ! 感服しましたぞ!」
「いやぁ、そこまで言われるとちょっと照れますね……」
海軍基地のある島、シェルズタウンに向かう定期便にて、私はちょっとしたサプライズに見舞われていた。
船が海賊に襲撃されたのだ。
民間船は狙われやすい。大した警備は無いし、食糧や医療品も積んでいる。物資に乏しい海上では、略奪が収入源の海賊にとってこのような船は格好の獲物。オアシスのようなものだろう。
しかしここは最弱の海イーストブルー。海賊の賞金アベレージは他の海より随分と低い。何の力も無い民間人にとっては脅威だが、戦闘に慣れた者なら一山いくらのザコ海賊に遅れをとるようなことはない。
それにこれでも海兵志望だ。
「取り敢えず私はこいつらをふんじばって海軍基地に引き渡しますから、電伝虫で連絡を入れていただけると助かります」
「わかった! ありがとう! 君はこの船の恩人だ!」
急いで船室へ駆け込む乗務員の男性を見送り、私はうっすらと見えてきたシェルズタウンの海軍基地『海軍第153支部』に目を向ける。
これが私の、海兵としての出発点。
ちょうどいい手土産もできたし、幸先としては至って良好だ。なんだかんだ言ってこのイーストブルーで海賊一味を一人で全滅させる人間は中々いない。
即戦力になるという良い証拠だ。こっちはもたもたしていられないんだから、さっさと出世するのに越したことはない。
こうして私は気持ちの良い潮風に揺られ、ご機嫌に最後の客としての船旅を満喫するのだった。
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「この海賊達を……君一人で討伐したのか?」
「はい、その通りです。中佐殿」
無事シェルズタウンに到着した私を出迎えたのは、支部を預かっている責任者だというリッパー中佐とその部下の方々が数十名。
歓迎していただけたのだが、海賊を壊滅させたのがまだ若い私だったこともあり、少々困惑しているようだった。
「
「私は人として当たり前のことをしたまでです。力を持っている以上、その力を守るために使うのは当然ですから」
「はは、確かにそうだ。だがこの世界にはそんな当たり前に気付きすらしない輩も多い。
君のそれは立派な『正義』だ。もっと誇りたまえ」
「はい!」
『正義』か。背中にその文字を背負って戦っている人が言うと、やはり重みが違うというものだ。かっこいいなぁ!
最近は汚職を働く海兵も多いと聞くが、ここの人達はちゃんと正義を全うしていると感じられた。これなら私も安心して従軍できる。
「それで……私は海軍に入るためにこの島に来ました。私は見ての通り、海賊を捕らえる戦力になります! どうかここに! 身を置かせてはいだだけませんでしょうか!!」
「こちらとしても、その申し出は願ってもないことだ。是非、歓迎させてもらうよ。君の実力なら、今のこの支部を立て直す中核になるかもしれないからな、みすみす逃す手はない。多少ドタバタしているが、優秀な人材はいくらいても足りないのが現状だ。
君の名前を教えてくれ。改めて、歓迎しよう。この153支部に!」
「……! はい! ありがとうございます!
私、モンキー・D・マインと申します! これからどうぞよろしくお願いします!!」
これで、ようやく一歩前進だ。私の目標はおにぃをこのイーストブルー内で捕まえること。できれば出世して自由に船を進められるような立場になるのがベストだ。取り敢えず佐官クラスの地位は欲しい。
そのためにも、今日から頑張って働いてやる! 首洗って待ってろよ、おにぃ!!
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海軍にはそれぞれの実力や実績に応じた階級というものが存在する。
上から順に元帥、大将、中将、少将、准将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉、准尉、曹長、軍曹、伍長、一等兵、二等兵、三等兵だ。新兵は基本三等兵にあたり、それにすら満たない実力の者は雑用や見習いとして働くことになる。
というわけで本日正式に海軍所属の海兵となった私は、一等兵になりました。
ハイ、飛び級でございます。正確には三等兵として所属した後、海賊団を丸々一つ潰した功績によって、少なくとも実力は一人前であるとしてその場で一等兵に昇格することになったのである。
そんなわけで無事海兵になったのでさっそくおにぃの居場所を探そうと思ったのだが、実は初っ端から大当たりを引いた。
「えっ!? おにぃ、つい昨日までここに居たの!?」
「ハイ、そうですよ。ルフィさんにはすごくお世話になったんです! でもまさか妹さんがいるとは思ってなかったですけど……」
「けっ、おいコビー! おれの前であの麦わらヤロウの話をするんじゃねェよ! 虫唾が走るだろうが!」
「ひぇっ!」
私が話を聞いたのは支部雑用係のコビー君とヘルメッポ君。
聞いた話では随分と複雑な経緯で海軍にいるらしい。ちなみに二人とも私より一日早く海兵になったらしいので先輩ということになるだろうか。階級は私の方が上だけど。
「おにぃどうだった? ちゃんと航海できてた?」
「えーっと……正直、全くできてませんでした。航海と言うより漂流と言った方がいい感じでしたね……」
「はぁーっ、やっぱりかぁー。せめて沈没はしないでいて欲しいなぁ……」
どうやら懸念は的中していたようで、おにぃは最初見事に大渦に巻き込まれて沈没。その後海賊船に引き上げられてそこで雑用をさせられていたコビー君を助けた後、彼の航海術でこの島に上陸したらしい。相変わらず運の良いおにぃである。
まぁつまり目の前の冴えない少年のコビー君は我がバカおにぃの命の恩人ということになる。感謝感謝だ。
私はおにぃに死んでほしいのではなく、死ぬほど痛い目に遭ったとしても生きていてほしいという考えなので、私にとっても彼は恩人と言えるんだよね。
「で、この支部の長官で圧政を敷いていたモーガン大佐をぶっ飛ばして、捕縛されていた〝海賊狩り〟のロロノア・ゾロと先日出港したと」
「その通りです。行き先はすみません、聞いていないので今どこにいるのかはわかりません」
「あぁ、いいよいいよ。そんなに遠くには行ってないってわかったし。それだけでも十分な収穫だよ。教えてくれてありがとう、助かったよ」
「いえいえ、ぼくはただルフィさんの武勇伝を語っただけですから……。そんな大したもんじゃないですよ」
「武勇伝ねぇ……」
すっかりおにぃのファンになっているらしいコビー君には悪いけど、私にとってはあまり歓迎できるようなことではない。名が売れた海賊ほど目をつけられやすい。探しやすくはなるけど、同時に罪も重くなる。
なんとしても近日中に接近しなければ。
「そうだ、明日はそのモーガン元大佐の引き渡しがあるんですよ。もしかしたらマインさんも招集されるかもしれませんし、早めに準備をしておくと良いんじゃないでしょうか」
「へぇ、護送、随分と早いんだね。わかった、準備しておくよ」
「……!」
「ん? どうしたのヘルメッポ君」
今まで私たちの話を無視してそっぽを向いていたヘルメッポ君が、モーガン大佐の話になった途端に動揺が露わになった。
「いや……親父、もしかしたら死刑になっちまうんじゃねェかって」
「……それは」
「確かにおれァあの人に見限られてた……バカ息子だってよ。でもよぉ、それでもおれは今でも親父を尊敬してんだ……。死刑なんて、納得できるわけねェよぉ……」
「ヘルメッポさん……」
……気持ちは痛いほどわかる。私ももしおにぃが死刑になるとしたら飲み込めないと思うから。
それでも、罪を犯した人は裁かれなければならないと思う。私はもう今日から海兵なのだ。『正義』を背中に背負って戦う市民の味方なのだ。ならば、覚悟をもって職務に当たらなければならない。
私が海軍に入ったのはおにぃを捕まえるためというのが一番強い理由だけど、それでも軍隊に入ったのだから、自らが掲げる正義を全うしたいとも思っている。
だからこそ、落ち込んですすり泣くヘルメッポ君の背をさすることぐらいしか私にはできない。その人をもし逃がしてしまえば、また苦しむ人が出てしまうかもしれないから。
そうしてこの日は、ややしんみりとした終わりを告げた。
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翌日、早朝。
昨日コビー君に言われた通り、私は護送船に加わることになった。支部の中では高い実力と今後の将来性を見込んでのことらしい。
しかし、まだ雑用係であったコビー君やヘルメッポ君まで選ばれたのには少し驚いた。もしかしたら件のモーガン大佐逮捕事件に深く関わっているからかもしれない。
何にせよ、ヘルメッポ君がせめて見送りに立ち会えるならなによりである。……自分の知らないところで見送りすらできずにお別れなんて、悲しすぎると思うしね。
海へ出た私達は引き渡しのために来る本部の軍艦を出迎えるための準備を進めておく。こんなに早く
そうして時間が過ぎ、昼頃になってようやく遠目に軍艦が見えてきた。しかも驚いたことに、それは私が何度も見たことがある艦だった。
「おい……あれ、もしかして海軍本部中将、英雄ガープの軍艦じゃねェか!? とんだ大物だぞ!?」
「ほ、本当だ! まさか実物が見られるなんて……!」
「えぇ……まさか私に会うためにわざわざやってきたんじゃ……」
別におじいちゃんが嫌いという訳ではないし、何なら一番尊敬してるまであるんだけど職場で会いたくないんだよね。おにぃを引き止められなかった手前、ちょっと顔も合わせづらいし。
そんな風に微妙な気持ちでお迎えした我が祖父モンキー・D・ガープは、表面上は真面目を保っていたが、明らかにこちらをチラッチラと見ていて全く集中していない。
本当、恥ずかしいんでやめて頂きたい!
「長旅お疲れ様です、ガープ中将! こちらが囚人、元海軍支部大佐モーガンであります」
「おー……あぁー、うむ。ご苦労じゃ……」
おいマジで集中しろ。目の前にいるの囚人だぞ。
と、私が心の中でツッコんだ瞬間のことだった。今まで大人しく項垂れていたモーガン元大佐が突然おじいちゃんを切りつけた。
『英雄』とも言われるおじいちゃんのいきなりの負傷に、私も本部海兵さん達も動揺で一瞬動きが止まった。
そしてその隙を、モーガンは逃さなかった。
「なっ……!?」
「おい、動くんじゃねぇ! コイツがどうなってもいいのか!? あァ!?」
「おっ、親父ィ!? い、一体何を……!」
「ヘルメッポさん!!」
「くそっ! これでは手出しができんぞ……!」
彼は涙ながらに別れを惜しんでいた息子さんであるヘルメッポ君を人質にとり、すぐさま脱出用ボートを使って軍艦から離脱してしまった。
「大砲を用意しろ! すぐさま撃ち沈める!」
「なっ!? まだヘルメッポさんが乗ってます! やめてください!」
「馬鹿を言うな! 取り逃したのは我々の失態……! たとえ犠牲が出たとしても即座に捕縛すべきだった! もう同じ轍は踏まん! 今すぐにモーガンを仕留める!!」
「そんな……! 彼はぼくの大切な友達です! 絶対に」
コビー君は顔を青ざめさせながらも大砲を撃とうとする本部の海兵の前に立ち、銃を構える。
昨日短い間しか見てなかったが、彼はヘルメッポ君をとても気遣っているようだった。納得できないだろう。
元はと言えばそこでぶっ倒れている油断しまくっていたウチのバカおじいちゃんに全ての責任があるのだ。
祖父の失態の責任は、孫娘の私が取らなければ。このままでは不甲斐なさすぎてこの場にいる全員に顔向けができない。
それにモーガンのさっきの行動には私も頭にきている。絶対に逃がさない。ヘルメッポ君を救出し、モーガンを捕らえる!
「コビー君、時間稼ぎ任せました!」
「はいっ!!」
「な!? 君までか!!」
私はモーガンに接近を気付かれないよう、死角から海に飛び込んだ。
これでも泳ぎには相当の自信がある。ずっとおにぃが海に落ちた時、助けられるよう練習していたのだから!
荒波を掻き分けながら進む。塩辛い海の水が口に入るのも構わず、ボートを追い越すほどに全力で、しかし勘づかれないように慎重に泳ぐ。
「大人しくおれに従え……バカ息子。てめェみてェな弱卒は、おれみてェに強く、偉い人間に従うのが賢い生き方ってもんだ。今更ザコのお前に何ができる……!」
「っ……! ウゥ……!」
声が聞こえる距離まで近づくことができた。ここからは気づかれないよう、慎重に……。
「おれは! あんたを越えられる!」
荒波を越え、声が響く。
「あァ!?」
「あんたの言いなりになんかなるもんか! おれは、おれの生き方は自分で決める!!」
覚悟を決めた、男の声だ。
「おれは海軍で出世して、いつかあんたを越えてやる! 七光りとはもう言わせねぇ! おれは海兵、ヘルメッポだ!!」
「……!」
その意思は、強い。だからこそ、護り通すに足る価値がある!
「シッ!」
「!? なんだ!?
言われた通り、
慌てて縄を切ろうとするモーガン。だが想定内だ。
私は懐に忍ばせた数本のナイフを回転させて投げつける。と、同時に縄を思いっきり引っ張り、ボートを引き寄せながら加速する。
「クソっ!」
縄が切断されるがもう遅い。
私の投げたナイフは寸分の狂いもなく帆を括り付けているロープに命中。見事帆は風に靡いて海に落下し、ボートの機動力を奪う。
そして私もボートに手を掛け、乗り込むことに成功した。
これで詰みだ。
「よく頑張ったね、ヘルメッポ君。後のことは、私に任せて」
「あ、あんたは……」
「さて、ここまでです、モーガン元大佐。今大人しく戻れば、痛い目には遭わずに済みますよ」
「……お前のようなか細い女に……このおれが負けるとでも!?」
「ええ、勝てませんよ。だって、あなたより私の方が強いですから」
「舐めた口を……!」
怒りのあまり、
だがしかし、これでも私はかなり怒っている。
「私の前で、曲がりなりにも家族を人質にするなど……実に許し難い。堕ちたといえど海兵であるならば、命を賭して守るべき存在だ!」
「下っ端ごときが講釈を垂れるな!
いいか、この世は力と地位が全て! つまり偉い人間がやることは全て正しい! 軟弱者の女が、おれに逆らっていいはずがねェだろうが!!」
モーガンの言葉に私はついに堪忍袋の緒が切れた。それならばお望み通り……立場というものを知らしめよう。
「戦うならばそれでも結構。
私の背負う正義にかけて、ここであなたを討ち倒す!!」
「やれるものならやってみやがれ! おれに逆らう奴ァ全員死刑!
おれは海軍大佐、〝斧手のモーガン〟だァ!!!」
モーガンが私に突撃し、右手に装着した大斧を振り下ろす。素早く、そして力強い、元海軍大佐に恥じぬ渾身の一撃。
まともに喰らえば真っ二つだろう。男より力で劣る私では、剣で弾き返そうとしてもそのまま叩き斬られてお陀仏だ。
なので私は、
一切弾き返す気を込めず、羽毛のように、力を極限まで抜いて斬撃を受け止める。
呼吸を緩め、肩の力を抜き、腕を伸屈し、手首をしならせ、身体に衝撃を回転するように循環させる。
そしてそのエネルギーを利用し、自身では生み出し得ない速さと威力をもって、腕を振り下ろしてガラ空きのモーガンに叩きつける。
「なにっ!?」
「終わりです。正義無き海兵に、海兵を名乗る資格は無い! いざ尋常に受けるが良い!!!」
これこそが、力で劣る私の剣術。受け流しを極めた柔の剣!
「〝
「グッ、ぉぁああぁあッ!!!」
高速の回転斬りがモーガンの胴体を捉え、傷口から鮮血が迸る。ガクリと白眼を剥き、斧手のモーガンは完全に沈黙した。
これが、私の海軍での記念すべき初陣である。
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「で、何か釈明はあるか?」
「「すいまっせんでしたァァァ!!!」」
「……」
無事モーガンを捕縛した私とコビー君とヘルメッポ君の三人は、現在本部の海兵さんによって絶賛お説教中であった。
片や人質、片や職務妨害、片や独断専行とやりたい放題したのだから当然ではある。
まぁ私は謝る気はないけど。間違ったことはしていないつもりだし。
「どうなんだね、マイン一等兵」
「言い訳はありません。私は海兵として自分の誇りに従い、やるべきだと思ったことをやっただけです」
「……あえて厳しいことを言うが、君は海兵になってまだ一日だと聞いた。そんな君が誇りを語るのかね」
「日数がそれほど大事ですか? 正義を背負って立つ以上、誰しもが海兵になった瞬間から誇りをもって任務にあたるべきだと思います。
コビー君もヘルメッポ君も己の正義に殉じて戦いました。責められる謂れは一切ありません」
私は睨みつけるように強く相手の目を見る。本気だと言うことが伝わるように。
そして根負けしたのか海兵さんはハァと溜め息を吐き、今度は諭すように言う。
「確かに君の言う通りだ。だがね、それは精神論でのことだ。実戦では常に危険が付き纏う。そんな時独断で行動する人間がいるとチームが乱れる」
「では、仲間を見殺しにしろと?」
「或いはそういった場面も今後有り得るだろう。我々は弱い。時には非情な判断も必要になる。君も
確かに、私と彼では場数が違う。私の考えは世間知らずの甘えなのかもしれない。けれど。
「わかりました。以後は気をつけます。命令にも極力従いたいとは思っています。しかし、私がもう一度同じ場面に遭遇したならば、全く同じ行動を取ると思います」
「話を聞いていたのかね。君は……」
「これは私が背負う正義の問題です。他人のあなたにとやかく言われる筋合いはない」
海兵さんの眉間に皺が寄る。明らかに不機嫌だ。だがこれだけは私も譲れないのだ。
一触即発の空気に、横で見ているコビー君達もオロオロしている。
睨み合いは続き……ふと割って入ってきた声によって終わりを告げた。
「ぶわっはっは! 白熱しとるのぉ! マイン、気が強くなったようで何よりじゃわい!」
「ガープ中将!」
「……おじいちゃん」
『おじいちゃん!?』
私の爆弾発言に知らなかったであろう人達が驚きの声を上げる。が、今は取り敢えず無視だ。おじいちゃんの話を聞こう。
「それでマインよ、おぬしが言う正義とはなんじゃ? おじいちゃんとしてはまずそれが聞きたいのぅ」
「私の正義は『家族のための正義』。
家族を愛する人々を守り、家族を軽んじる輩を誅する。それが私の正義だよ。これを邪魔するなら、たとえおじいちゃんでも容赦しないよ」
これこそが私の誇り。私の正義だ。
私はもう家族を失いたくない。それと同じくらい、他人が家族を失ったりするのが見たくないし、本来尊重し合うべき家族を
だからこそ海軍に入ったのだ。これが貫き通せない組織なら海軍なんて辞めてもいいぐらいだ。
「おう! 肝に銘じておくわい!
聞いたじゃろ? マインはわしの自慢の孫娘なのでな、一度決めたら何を言っても聞かんのじゃ。悪いが諦めてくれ! ぶわっはっは!」
「また勝手な……。
わかったよ、今回はこれで終わりにしよう。ただし君のその正義、貫くならば強くなりなさい。弱い正義など、踏み
「ご忠告痛み入ります。……あなたが私を心配してくださっていることはわかりました。気遣っていただき、ありがとうございます」
厳しい言葉は、普段からウチのおじいちゃんを見ているからこそなのだろう。彼に認めてもらえるような海兵にいつかなれれば良いなと思う。
「んじゃ囚人も捕らえたことだし、これで帰るとするかの! いや〜、久々に孫の顔を見れてわし大満足じゃ……」
「あ、その前におじいちゃん」
「ん? なんじゃ? そんな鬼みたいな形相しおって……怖いんじゃが」
「いやね? そもそもおじいちゃんがちゃーんと任務に集中してればこんなことにはならなかったんじゃないかなーって」
「……」
「……」
攻守交代である。
「そこに直れェ!!」
「はい……」
私のおじいちゃんへのお説教は小一時間続いた。さっきの海兵さんは心配する必要なかったかな……って顔をしていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「さて……このくらいで勘弁してあげる」
「ありがたきしあわせ」
ふむ、語彙力失うぐらい反省してるみたいだし、こんなところだろう。久しぶりに会ったから、お説教にもつい熱が入ってしまった。
「これからは余裕だからって油断せず、真面目にやってよね。じゃないとそのふさふさの白髪を切り落とす」
「怖……」
「わわわ、あのガープ中将に本当に説教しちゃってるよ……」
「怖いもの無しだな……」
「孫娘に言われるのが一番辛い」
なんか色々言われているが気にしない。あんな弱っちぃ奴に遅れをとるヘマをしたおじいちゃんが悪いのだ。
「じゃ、もう帰るんでしょ? 気をつけてねー」
「おう……、あ、そうじゃ言い忘れとった」
「え、何?」
「ルフィはおらんのか」
少し、息が詰まる。
おじいちゃんはうって変わって真剣な表情で見つめている。
私は数瞬間を開けてから口を開いた。
「おにぃは海賊になったよ」
「……そうか。やはりな」
「うん、だから私がおにぃを捕まえる。まだ無名のうちなら、情状酌量の余地ありでしょ」
「……すまん、苦労をかけるのぅ」
「いいよ。私が決めたことだから」
おじいちゃんは一瞬悲しそうな目をしたが、すぐにいつもの快活な笑みを浮かべて私の頭を撫でてくれた。
「よし! そういうことなら仕方ないの! あわよくば本部に連れて行ってやろうと思っとったが、やることがあるなら無理は言えん!
精進するんじゃぞ、マイン」
「うん! ありがとう、おじいちゃん。久しぶりに会えて嬉しかったよ」
「そうかそうか! そりゃあよかった!」
ぶわっはっは! と豪快に笑うおじいちゃん。それを見ているだけでなんだか仕方がないな、と思わせてしまうところは本当におにぃに似ていて血筋を感じる。
私の場合はおじいちゃんに言わせると、どうやらまだ見ぬお父さんに似ているらしいけど。
「そんじゃあ……おい! そこの若者二人! ちょっとこっちに来い!」
「えっ!? ぼ、ぼくたちですか!?」
「ひィ!? な、なんか責任取らされんのか!? 嫌だァ!」
「何を言うとる! わしはお前さんらを本部に連れて行こうと思ってな! 一緒に来る気はあるか?」
と、おじいちゃんは私との会話が終わってからもまだ波乱を起こしていくらしい。
「え……ええぇ!? ぼくらが本部にぃ!?」
「何でなんだァ!?」
「ぶわははは! なぁに、お前さんらの度胸と心意気が見事だったもんでなぁ。これは
で、どうじゃ!? 来るのか来んのか、今ここで決めてしまえ!」
勝手に支部から本部へ人員を移動させるなど、本来は不可能な無茶だ。
だがこの人なら造作もない。なんせ世界を救った『英雄』なのだから。
「……行きます! ぼくを、海軍本部に連れて行ってください!」
「あっ!? コビーお前抜け駆けすんな! お、おれも付いて行く! そんで、親父を超える海兵になるんだ!」
「よう言った! それでこそ男じゃ! さァ、
『はっ!!』
一糸乱れぬ敬礼で出発の合図が揃い、驚異的な速度で準備が整っていく。手際良くテキパキと進められていくソレからは、本部海兵の練度の差というものを如実に感じさせられた。
「では、そろそろ行くかの、マイン!」
「なに? おじいちゃん」
「……達者でな。体に気をつけるんじゃぞ」
「うん。おじいちゃんこそ、おかき食べすぎないでね。あと、今日みたいなヘマはもうしないでねっ」
「ぶわはは! おう! 気をつけよう!
それじゃあな、元気にしとれよ!」
「うん! バイバイ、おじいちゃん! 今度はおにぃと一緒に会いに行くから!」
滞りなく進むはずだった私の初任務は、こうして予想外の波乱を抱えながらも、無事に完了することができたのでした。