よっておにぃの手足を切り落とす   作:抹茶れもん

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 イーストブルー物理攻撃効かない奴多すぎ問題。

 今回は血みどろガチバトル回なんでちょいグロ描写注意報です。
 あと、ある能力について独自解釈入ってるかもなんでそこは許してつかぁさい。


悪魔だろうがブチゴロす

 モーガンの護送任務から一夜が明けた。

 

 あれから一旦シェルズタウンに帰還し、私は座学のテストをした後、知識面も問題は無さそうだという判断がされたため、翌日の海域パトロールに同行させてもらえる事となった。

 

 今日がその当日だ。気合は十分。さぁ、張り切っていこう!

 

「今回の海域警備任務ではオルガン諸島からゲッコー諸島の間の海域を中心に巡回する!

 この海域は未だ人跡未踏の無人島が数多く存在している! 無人島は海賊のアジトや停留所として利用されることも多い!

 よってそれらの場所を我々海軍がパトロールすることは、この海の平和を維持するために極めて重要なことだ!

 それでは、総員! 絶対に気を抜かずに任務に当たられたし!!」

 

『はっ!!』

 

 すごいなぁ……めちゃくちゃ海軍してる感じがする! テンション上がってきた!

 護送任務では沖合までしか船を出さなかったし、海軍になってからの本格的な航海任務はこれが初めてということになる。

 先日は少し迷惑をかけてしまったことだし、今回はちゃんとした役割を全うしたい。

 

 私の目的のためにも、立場はあればあるほど良い。今の地位は一等兵。これの上に位置する伍長以上の階級は、集団を率いることができるかどうかで評価が変わってくる。

 今はその初期段階。取り敢えず指揮系統にちゃんと従えるということを示すことが手っ取り早い。

 

 よーし、そうと決まれば自分の役割はきちんと果たそう。

 おにぃもおじいちゃんもこういう時は気合いが大事だと言ってたし、テンションガン上げで問題なかろう。勿論、常に冷静さは維持しているけども。

 私はあの人達みたいに出鱈目な力というか突破力は持ってないし、あくまで慎重に、されど迅速に進んでいく方針だ。

 

 それじゃあ、いざ行こう。大海原へ!

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 そんなこんなで意気揚々と出陣した私であったのだが。

 

「何もありませんね……」

 

「おいおい、ここは東の海(イーストブルー)だぞ。少し漕ぎ出した程度でそう簡単に海賊とは鉢合わせないさ」

 

「それもそうですね……」

 

 現在、こうして艦船を指揮するロッカク中尉と雑談を交わすことぐらいしかやることが無かった。

 いや、正確にはやることはあったのだが私がちゃっちゃと終わらせてしまったし今は見張りの番でもないから、有り体に言ってすごく暇を持て余しているのである。

 

 ちなみに私はロッカク中尉の直属の指揮下に入っている。理由としては何をしでかすかわからないし、そうなってからでは色々と遅いから、取り敢えずこの中で一番偉い人に付けておこうというリッパー中佐殿の名采配によるものだからだ。

 仕方ないとはいえ、その点に関してはまだ信用されてないらしい。実に心外だ。私は自分の意思こそ曲げる気はないが、基本的には真面目一辺倒な人間だというのに。

 

「まぁ、海賊がいないこと自体は良いことじゃないか。この海が平和であることの何よりの証拠だぞ?」

 

「はい、それは私もわかっています。私もほとんどの海賊は嫌いですし、いないに越したことはありません。

 ですが、妙に気勢を削がれてしまいまして……複雑な気分です」

 

「ははは! 確かに張り切っていたもんな!

 それに昨日もあのガープ中将や本部海兵の目の前で啖呵切ったそうじゃないか。せっかく手柄を上げるチャンスなのに、空振りに終わっちゃ肩透かしも良いところだもんな!」

 

「ふふ、そうですね。ちょっと面映(おもはゆ)いです」

 

 だが、こうして上官と打ち解けられたのは行幸だ。私とてあまり固っ苦しいのは好きではない。フランクに接することができるなら何よりだ。命を預け合うのだから、しっかり信頼を築いていきたいと最初から思っていたのだし。

 

 空は晴れ渡り、波も穏やか。雲一つ無い青空から降り注ぐ日差しが、同じく青い海をキラキラと照らしていた。

 見本のように平和な海の日常的雰囲気を醸し出している。

 

 そして波乱が巻き起こる日というのは、こういった何でもない穏やかな日のことが多い。

 

「中尉! 前方の無人島に停泊している船を発見しました! 海賊旗を掲げています! しかも二隻です!!」

 

「……!」

 

「そうか……噂をすれば何とやらだな。

 よし! 総員、武装準備! いつでも戦えるように、しっかり整えておくんだ!!」

 

『了解!!』

 

 ついさっきまで東の海(イーストブルー)の平和について話していたというのに、本当に気勢が削がれる。

 

 私は中尉の指示に従って武器のチェックに取り掛かる。

 私が装備しているのは愛用の舶刀(カトラス)が一振り、同じく拳銃(ピストル)が一丁。そして懐に忍ばせたナイフが十本、逃走・撹乱用の煙玉が予備含めて二つ、それから非常用の炸薬が少しだ。

 それぞれ素早く動作確認を済ませて中尉に目で完了の合図を送る。

 

「よし、準備は良いようだな。

 ウッカリー三等兵! 敵の海賊団が何かわかるか!?」

 

「海賊旗を確認してみます!

 えーっと……一つは横を向いたドクロにハートが刻まれたもの!

 それでもう一つは……あッ、あぁっ!!」

 

「どうした! 何かあったのか!?」

 

「もう一つは、赤い鼻の道化を模したドクロ! あの千五百万の賞金首が率いる、『バギー海賊団』のものですッ!!」

 

「何ィ!?」

 

 千五百万……! 東の海(イーストブルー)の賞金首としてはかなり高い額だ。

 一気に艦内の雰囲気がピリつき、全体指揮を担う中尉もゴクリと生唾を飲み込んでいる。

 

「……よし、まずは近海の支部に電伝虫で応援要請を送れ!

 我々は……ここで可能な限り奴らをこの島に食い止めるッ!!」

 

 中尉の決定に船員がザワつく。

 当然だ。相手は東の海(イーストブルー)でも名の知れた大海賊。それを相手にするということは、死を覚悟しなければならないということ。いきなり言われて、ハイそうですかといくようなものではない。

 

 だが、それが何だと言うのだろうか。

 

「わかりました。元より逃げる理由はありません。ここで逮捕してしまいましょう」

 

「……強気だな、死ぬかも知れないぞ?」

 

「この程度の試練で死ぬのなら、所詮そこまでだったというだけのことです。

 しかし死ぬ気はありません。必ず勝ちます」

 

 私の最終目標は今度こそおにぃを負かして連れ帰ること。なら、たかだかその程度の賞金首に恐れを成して良い筈がない。

 きっとおにぃなら、笑って立ち向かう筈だから。妹の私が尻尾を巻いて逃げるなんてできっこない。

 

「……よし、わかった。皆んな聴いたな! 新人がここまで言っているんだ、先達の我々が怖気付いて一体どうする! それでは海賊なんぞ一向に捕まえられはせん! 我々はここに、絶対正義の名の下に立っている!

 総員、覚悟を決めろ! 153支部の力……海賊どもに、今こそ目に物見せてやる時だ!!!」

 

『うおおおぉおおお!!!』

 

 こうして我ら海軍153支部外征部隊による、無人島上陸作戦が開始された。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 道中、隠れながら進軍している途中に遭遇したバギー海賊団の一員を拷問した結果、ある程度の事情がわかった。

 

 バギー海賊団は、つい先日まであわや完全崩壊の危機にあったそうだ。船長がとある海賊にやられ、後釜の新船長が決まった瞬間に先住民族に捕らえられ、全滅の瀬戸際に立たされたそうだ。

 

 しかし、そんな彼らのその運命を変えた者がいた。

 それは死んだと思われていた船長の『道化』のバギーと『金棒』のアルビダと名乗る謎の美女だという。

 

 そしてその船員曰く、現在はバギー海賊団の復活と海賊同盟を祝した盛大な宴が開かれた後だそうだ。

 

「ウィ〜、ひっく! いやぁ、昨日の宴会は楽しかったよなぁ兄弟!」

 

「おうともさ! まさか死んだと思ったバギー船長が現れて、絶体絶命のおれ達を救ってくれるとは……。

 くぅ〜! さっすがは我らがバギー船長! 惚れ惚れしちまうぜェ!」

 

「それによ! 一緒に現れた同盟組んだっていうあの女海賊! ありゃあ、たいそうな美人だぜ! そのくせ振り回すのが棍棒ってんだからそそるねぇ! ぜひお近づきになりたいもんだ!」

 

「だはは! お前みたいなブサイクじゃあ無理だ! 諦めな!」

 

「んだとぉ!? じゃあ今からでも言ってきてやっから……あ? あの人らどこ行った?」

 

「知らねぇのかぁ? 船長とその美人……アルビダ姐さんなら調べることがあるって森に入ってったよ」

 

「へェ〜、じゃああの二人今頃……」

 

 つまり……奇襲をかける絶好のタイミング!!

 

「総員、かかれェーーー!!!」

 

『おおぉおおお!!!』

 

「なっ、なんだァ!?」

 

「敵襲か!? ぐあっ!!」

 

「なんで海軍がここに……ぎっ、ギャア〜!!」

 

 宴会場の平原ギリギリに生い茂っている(やぶ)から、まずはライフルを持つ海兵が射撃。近接部隊が突っ込む隙を作る。

 だが、それだけでは十分な隙を作れない。

 

 そこで私だ。私が遊撃として最初に突撃し……近接部隊が接近するまでの囮になる!

 

「そこを……どけぇ!!」

 

 受け流しの修練で身に付けた、自身の力を余さず地面を蹴る力として伝える歩法。

 それでもって一気に懐に入り込み、そして抜刀、斬り伏せる!!

 

「〝裂霆(サクイカヅチ)〟!!!」

 

「!? うぎゃあぁぁあ!!!」

 

「て、てめぇ……一体何もんだぁ!!」

 

「見ての通り、通りすがりの海兵です!!」

 

 そう言って、目の前で疑問の声を上げる海賊を斬り伏せる。

 が、その刃は敵に届く前に、死角から現れたもう一人の海賊の曲刀(サーベル)によって弾き返される。

 そして横合いからはズシンと響く重低音。見上げる程に大きな獅子が猛スピードで突っ込んでくる。

 

「あまりオイタをしてもらっては困るぞ……海軍! このバギー一味参謀長〝曲芸のカバジ〟の名にかけてな!!」

 

「チッ……!」

 

「逃がさん! やれ、モージ!」

 

「お前に指図される筋合いはねェんだが! 今は従ってやるさ! 

 そォら、噛み砕けェ! リッチー!!」

 

「ガルルルゥアア!!!」

 

 大獅子は背に(またが)った珍妙な格好をした男の指示に従い、こちらを噛み潰さんと大口を開けて飛びかかる。

 しかし、その程度で殺せると思ってもらっては困るのだ。

 

「ふんっ!」

 

「グゴ、ッ!?」

 

「リッチー!?」

 

 私は足元に転がっていた石ころを全力でその大口に向けて蹴り飛ばす。

 口内という無防備な箇所に叩き込まれた石の弾丸に思わず空中で口を閉じて悶える獅子。

 その隙を逃す私ではない。

 

「〝四連・裂霆(サクイカヅチ)〟!!」

 

「キャウゥウン!」

 

「リッチィィー!? ぎゃふん!」

 

 首を切り落とすのは骨が折れそうなので、四連続の高速突進斬りで四肢の腱を切り落とす。

 そして巨獣はバランスが取れなくなり着地に失敗し大転倒。ついでに背中の男も下敷きになってくれたので万々歳だ。

 

「モージ!? チィ、相変わらず使えない奴だ……!

 こうなればおれ一人でもお前を殺すぞ、海軍!!」

 

「やれるものなら」

 

「ほざけ! 食らうがいい、曲技っ! "湯けむり殺人事件"!」

 

「!」

 

 カバジと名乗ったその男は、剣を地面に突き刺すと同時に回転。砂埃を巻き上げてその姿を隠した。

 そして……私の背後から斬りかかる!

 

「見え見えです」

 

「何!?」

 

 驚くカバジ。だがこれはごく自然なこと。

 私の扱う受け流しの術理。その本質は、自分に触れる、または自分が発する力の完全なる制御にある。戦場に流れる力を的確に感じ取ってこそ、この力を真に発揮できるのだ。

 つまりは、砂埃を巻き上げた時点でそれから伝わる振動という力によって居場所が割れるというわけで。

 

「これでおしまい」

 

「く、そ……!」

 

 私はまんまと私を無防備な獲物だと思い込んで突っ込んで来た、無防備な獲物を斬り伏せた。

 

「さて、これで粗方片付いて……」

 

「マイン一等兵! 後ろだ!」

 

「!」

 

 咄嗟に聞こえたロッカク中尉の声と自分の直感に従い、頭身を地面に擦り付けるぐらいまで伏せる。

 そして一瞬遅れて私の頭上を、豪風と共に巨大な鉄の塊が薙ぎ払った。

 

「おや……完全に不意を突いたと思ったんだけどねェ。随分と仲間を信頼する海兵だこった」

 

「お前は……」

 

「〝金棒のアルビダ〟さ。しっかし、あんたも中々可愛らしい顔をしてるじゃないかい。なんだかムカつくねェ。

 だから、アタシの顔をよォく覚えて死に晒しなァ!!」

 

 そうして無茶苦茶な理論と共に、左手に構えた金棒が振り回される。

 しかし、パワーに目を見張るものはあっても技術面ではからきしだ。私にとってはこの程度、幼児のテレフォンパンチに等しい一撃。

 当然ひらりと躱し、まずは伸び切った左腕から切り落とすために剣を振るった。

 

 そして私の剣はその柔肌にかすり傷一つつけることなく、()()()と滑った。

 

「……は」

 

 当然、私の一瞬の思考停止を見逃すほど敵は甘くはない。

 咄嗟に剣を引き戻すが、ギリギリ間に合わない。

 

 胴体に、直撃する。

 

「そォら、臓物ブチ撒けなァ!!」

 

「くっ……、ご、ぼ!?」

 

 ズガン、と重く鈍い音が響き、鉄塊から伝わる衝撃が私の中身を掻き回す。

 出鱈目にふっ飛び、背中から木に叩きつけられる。

 骨がひしゃげ、胃から酸っぱいナニカが溢れ、臓器から血がどくどくと流れ出す感覚が身の毛をよだたせる。

 

 けれど、まだ意識は残ってる。

 

「マイン一等兵!!!」

 

「ヘェ、まだ息があんのかい。なるほど、少しは骨があるようだねェ。と言っても、その傷じゃあもう限界だろうけどねェ」

 

「……」

 

 限界……?

 確かにそうだ。腹は裂け、骨は折れ、肝は潰れ、感覚も閉じかけている。これでは全神経を集中させる必要がある受け流しはもう使えないだろう。

 

 それで、私はどうするっていうんだ。

 

「それじゃあ、冥土の土産に教えてやるさ。

 私は悪魔の実シリーズの一つ、スベスベの実を食べた能力者。私のすべすべの美肌は私に働くあらゆる摩擦をゼロにする……つまり、何人たりとも私を傷つけることはできない!!」

 

「……!」

 

「だから剣士のお前には私を殺すことはできない……よくわかったかい? あんたは何をやっても無駄。全て諦めて、楽におなりよ。

 そしたら、目障りだからァ、とっとと! 死んじまいなァ!!」

 

 だから……。

 

「だからそれが、どうしたってことだ……!」

 

「何……!? 避ける力は残ってない筈……」

 

 私は間一髪で頭上に振り下ろされた金棒を脇に転がり回避する。

 そして震える膝に鞭打って、気付かれないよう仕込みをしながら、鬼の形相を浮かべるアルビダを見据えて立ち上がる。

 

「私の……」

 

「あァ!?」

 

「私の終わりはァ"! ここじゃないッッ!!」

 

 こぼれ落ちそうになるカトラスを右手に持ち、懐からピストルを取り出す。

 両腕はダラリと下がり、生まれたての子鹿のように、今にも(くずお)れてしまいそうだ。

 

 だがそれは、私が諦める理由にはならない。

 

 私は自分が死ぬ恐怖の感情より……ずっと、おにぃに幸せに、穏やかに暮らして欲しい想いの方が、ずっとずっと強いんだ。

 

 だから、そのためなら……。

 

「そのためならッ! 悪魔だろうがブチゴロす!!!」

 

 倒れ込むように前傾姿勢。そのまま地面と並行になるほどスレスレまで持っていき……滑るように、マムシのようにするりと近づく。

 

 一瞬で。

 

「!? はっ!?」

 

 自分でもどうなったのかわからない。

 

 ただ、目の前のコイツを仕留めるための最善の力の出し方を、技術を染み込ませた身体が勝手に出力しただけ。

 私がやることに変わりはない。

 

 私は振り上げられたアルビダの左腕にピストルの照準を合わせる。ゼロ距離だ。アルビダはこの攻撃を必ず食らう。

 

 銃口に油と小石を捻じ込んだことで、()()()()()()()()()()()()()()

 

「くぁああッ!」

 

 あぁ、さっき聞いた通りだ。

 言葉通りに全ての摩擦を失くすなら、確かに爆風も飛び散る金属片も滑るだろう。

 

 だが、純粋な熱は防げない。

 

 予想通り、拳銃から溢れた炎がアルビダの皮膚を溶かす。

 

 そして今なら。火傷で皮膚が爛れている今なら。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 攻撃は通る。

 

「今度こそ———()()()()()()()()()()

 

 ザクン、と肉と骨と皮を断つ音が響き、アルビダの真白(ましろ)の腕が地に落ちる。

 

「あ……あァあアアァアア"ァ"ア"ッ!! アタシの腕えェ!!!」

 

 捕縛はもはや考えない。

 このまま傷口から切り開き、そのそっ首を切り落とす!

 

 返す刃で切り口を縦に両断すべく舶刀を翻しそして。

 

 私の脇腹を、ナイフを持った()が切り裂いた。

 

「こ……ふ、ゥ」

 

「ア"ア"ア"ァア"ア"ッッ!!!」

 

「ぶ、ぐ」

 

 アルビダが苦し紛れに振り回した金棒が、ぐしゃりと私の側頭部を叩き潰しながら吹き飛ばす。今度は地面にべしゃりと落下した。

 同時にアルビダも失血のショックで気を失い、頭から崩れ落ちる。

 

「……モージ、アルビダを運んで手当てしてやれェ。おれの恩人だ。絶対生かせ。

 おれはこのガキに……ハデに落とし前つけさせてもらうからよォ」

 

「わかりました! バギー船長!」

 

 真っ赤に染まった視界でその光景を見つめる私。私の顔が血だらけだからか。それもそうだが、きっと違う。

 

「……その傷で睨みつけられるだけ上出来だァ。

 だがなァ海軍。お前らはおれにハデに喧嘩を売りすぎた……ウチのクルーと同盟相手を、さんざっぱら斬って撃って燃やしやがって。

 当然ハデに覚悟してんだろなァ?

 タダじゃ済まねェ……そんな覚悟をしてきてんだろうなァ!!!」

 

「……当、然だァ"……」

 

 真っ赤に染まっていたのは、支部の皆んなで。

 憤怒に染まった〝道化のバギー〟同様、私も(はらわた)が煮え繰り返っているところだ。

 

 だからこそ、私は今の私にできる全力で、その場を離脱した。

 

「逃がさねェっつってんダロォがクソガキがァあ!!

 食らえ……必殺! "バラバラフェスティバル"!!!!」

 

 海岸に向かって走る私に、豪速で分解されたバギーの身体が迫る。

 ギリギリで避けていくが、偶に避けきれずに被弾する。

 

 その度に骨が折れ、傷口から臓腑が飛び出そうになるのを必死に堪え、一心不乱に()へと走る。

 

 そう、私が向かっているのは、きっとアレが積んであるだろう……バギーの海賊船だ。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

「よォく逃げたなァ。海兵……鬼ごっこはどうだった?

 おれァ楽しかったぜぃ、てめェが無様に血を撒き散らしながらおれから逃げ回ってることがよォ!」

 

「……」

 

 私は無事、バギーの船に乗り込むことができた。

 いや、無事というのは語弊がある。

 あの後何度か追いつかれ、その際は剣を抜いて応戦したのだが奴の体もまた特別性なようで、刃物……つまり私が持ってきていた武器の類は全て効かなかったのだ。

 効くのはおそらく銃や打撃。だが銃はさっき本体ごと使い捨て、肉体も限界が近く元気に素手喧嘩(ステゴロ)をやれる体力はもう残っていない。

 

 あるとすれば、私の渾身を振り絞った最後の一撃のための体力のみ。

 

 これで決められなければ、私は死ぬ。

 

 甲板の上で船室の壁に背中を預けて座り込む私の額に、ピストルを突き付けながらバギーは言う。

 

「最期に言い残すことはあるか、海兵!

 おれ様の一味を壊滅一歩手前まで追いやりやがったてめェに対する慈悲だ……。さっさと言いやがれ!」

 

 その目は下劣に歪んでおり、遺言を言い切る前に殺そうとしていることは明白だ。

 ここに及ぶ道のりでも散々手足や傷口を執拗に狙って、必要以上に痛めつけようとしていたほどだ。

 こんな嗜虐的な男なら、この状況で海軍が一番やられて嫌なことをするだろう。

 

 自らの正義を言いきる前に殺す(否定する)ことだ。

 

 それでも私は口を開く。最後に度肝を抜かせてやりたいから。

 

「遺言……じゃあ、これだけでも言っておく」

 

 バギーが引き鉄に手をかける。

 

 そして私は言い放つと同時、残った力を総動員して()を握る。

 

「諸共ふっ飛べ、クソヤロウ」

 

「!? てめッ……」

 

 私は全力で連撃を叩き込む。

 目の前のバギーに……ではなく、足下の床に向かってだ。

 私の斬撃は甲板と壁を切り裂き、そこに身体を潜り込ませながら目的の船室に走る。

 

 カトラスを鞘に仕舞い、懐からマッチと炸薬を取り出す。

 

「待ァちやがれェッ! クソ海兵がァァ!!」

 

「はは……そう言われて、ハイ待ちますなんて言うわけないじゃん」

 

 両手と首から上だけを飛ばしながら私を猛追するバギー。

 

 だが遅い。私はもう()()()にたどり着いた。

 

 海賊〝道化のバギー〟。その男は、大砲好きで有名な海賊だ。ある町では子どもに自分の鼻をバカにされたからと言う理由で、大砲一発によって町ごと消し飛ばしたとも聞いている。

 

 即ち、火薬庫にはそのレベルの威力の砲弾が山積みされているということだ。

 

「じゃあね、〝道化のバギー〟。地獄に落ちて死んでくれ」

 

「きッさまァァァ!!!」

 

 手に持つ火薬に火を付け、放り投げる。

 

 ここから先が本当の勝負。私が、この爆風を無傷で受け流せるかに全てが掛かっている。

 そんなことできた試しは無いけれど、今の私なら、不思議とやれる気がしている。

 できなければ死。できても最悪海で漂流だ。

 だが、やる価値はある。それに負けっぱなしは性に合わない。

 

 イチかバチかの大勝負……なんだか、いつものおにぃみたいなことをしている自分に、ニヤリと笑みが浮かんでくる。

 

 そして炎と光が船室を飲み込み———

 

 

 大爆発と共に、海賊船は木端微塵に吹き飛んだ。

 

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