よっておにぃの手足を切り落とす   作:抹茶れもん

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 アーロン編の原作完成度高すぎでしょ。手加えても減らしても無駄にしかならないとかどうすりゃええんじゃ……。全く手出しできなかったんだけど、とりあえず一応形になったから投稿いたします。
 あとfilm.REDめちゃ楽しみ。



そのヒゲ全部引っこ抜いてやる

「すみません、ドクター……私の心臓がご迷惑を……」

 

「なに、気にするな。こちらは命を助けられた側じゃからの、お安い御用というヤツよ。というかむしろなんであの重症であそこまで動けたのかが(はなは)だ疑問じゃ」

 

「そこは気合いで……」

 

「気合いとは、また何とも……」

 

「根性すごいわねェあんた」

 

「まぁそれだけが私の取り柄ですから」

 

 アーロン一味が立ち去った後ぽっくり気絶した私は、とりあえずこのココヤシ村のまとめ役であるゲンゾウさんと青い髪をした姉御肌の女性、ノジコさんによって町医者のDr.(ドクター)ナコーの下に運び込まれ治療を受けたそうだ。

 私はさっき目覚めたばかりなので全て伝聞だが、ありがたいことだ。この礼はアーロン一味をぶった斬ることで返すとしよう。

 ともかくこれから修行をして、3日後までにあの技術を剣技として昇華させ……。

 

「ともかく、こりゃ少なくとも3ヶ月は絶対安静にしとかんとダメじゃな」

 

「えっ!? そんなにかかるんですか!?」

 

「いやこれでも大分回復早い方じゃぞ!? 普通なら死んどると何回言わすんじゃい!」

 

「がんばれば治りますよ! 大丈夫です!」

 

「全身打撲、裂傷、火傷、切り傷、複雑骨折! おまけに心肺停止もついてくる! もはや死因のアンハッピーセットじゃわい!!

 医者としてこれ以上動き回らせるのは看過できん! 大人しくしとれい!!」

 

「むむむぅ……」

 

 しかしアーロンとはもう3日後に決闘の約束を取り付けてしまったし、それを反故にすればこの町もただでは済まないだろう。最悪の場合、報復として住民の皆殺しもあり得る。

 けれどドクターが私の身を心底案じてくれているのは伝わってくるし、それをガン無視するのも申し訳ないな……。

 

「……まぁ、アーロンたちには私からなんとか期限の延長を申し立てておこう。元はと言えば私が武器を所持していることがヤツらに知られてしまったことに原因がある。ここは責任を取らせてほしい」

 

「あたしもやるよ、ゲンさん。せっかく希望が見えたんだ……そのためなら、あたしはなんだってやってやるわよ」

 

「ノジコ……お前……」

 

 ダメだ。アーロンは大人しく話を聞くような輩じゃない、根っからの海賊のにおいがする男だった。それに結局ここまで事態を複雑化させてしまったのは私である。だったらここはやはり私がなんとかするべきだ。

 

「いえ、みなさんのお気遣いはありがたいですが、それには及びません。私に全てお任せください!」

 

「いやあんたは絶対安静だって言うたじゃろ、わし」

 

「ふふふ、問題ありませんよこんな傷……」

 

 カッと目を開き、喝を入れるように私は宣言する!

 

「こんなもん、1日でなんとかしてやりますよォ!」

 

「いや無理じゃろ」

 

「無理だな」

 

「さすがに無理でしょ〜」

 

 ……くっそー、見ていやがりください! 絶対治してみせますからー!

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

「うわ……マジで治しおったわこやつ……」

 

「すごいというか、もう一周まわって怖いくらいね……」

 

「人体の神秘を感じるな……」

 

 なんでこんな言われるの!? 私めっちゃ頑張ったんですけど!?

 

「うぐぐ、不服です……」

 

「いやすまん、つい。しかし本当にもう大丈夫なのか?」

 

「あ、はい。それはもうピンピンしてます」

 

 むしろ漂流前より強くなった気がする。と言うより実際強くなったのだろう。新しい技術を習得できたのが大きかった。

 今ならなんでもできる気がする!

 

「というわけで修行してきます! みなさんありがとうございました!」

 

 と、病院を飛び出していったのが2日前。

 刻限の3日まで私は森に入ってひたすら剣を振り回したり、魚人がいなさそうなところの海に潜ってひたすら剣を振ったり、振り回し疲れてぶっ倒れたらその場でできる修行をしたり、とにかく魚人対策を積み上げた。

 おかげで今日、決闘の本番の日にはベストなコンディションに持っていけた。

 

 そして修行場からココヤシ村に一旦顔を出そうと戻っている途中、ゴサの町に差し掛かったあたりのこと。

 何やら前方から土煙を上げてグラサンをかけた男が走ってきた。よく見ればそれなりに鍛えている様子だし、背には刀剣の類も背負っている。明らかにアーロンの支配圏の住民ではない。外部の人間だ。

 

「はいそこの君ちょっと止まってくださいね〜」

 

「うおっ!? なんだァ!?」

 

「いやちょっと聞きたいことがありまして、こんなとこで何してらっしゃるんです?」

 

「どうでもいいだろそんなこと! おれァ今生きるか死ぬかのせとぎわに立たされてんだ! お前みたいなガキに足止めされてる時間はねェ!」

 

「海軍なんですけど」

 

「まことにもうしわけありませんでした」

 

 ものすごく早い手のひら返し……私でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「って、海軍!? ならなんとかできねェか、魚人に追われてんだ! それにウソップのアニキも置いてきちまった!」

 

「むっ! それは確かに一大事ですね! お任せください、そのウソップさん? とやらもまとめて助けてきますので、どうかそこから動かないようにお願いします!」

 

「わかりましたァ!」

 

 私は地を蹴って彼が来た道を逆走する。魚人に追われているなら海の方に行けば見つかるはず……いた! 魚人に追われてる人! あれ、人でいいよね? めっちゃ鼻長いけど、かろうじて人だよね?

 あっ、長っ鼻の人が路地裏から出てきた少年に転ばされてしかも殺されそう!? いやどういうこと!?

 

「魚人に手を出すなァ!!!」

 

「いっ!!?」

 

 あぁーっとここでまさかのノジコさん乱入!? もうわけわっかんないや!

 

「とにかく私は魚人ぶった斬れば良い感じですかね!? それで良いですよね! ヨシ! というわけでそのでっぷりビール腹を斬り落とす!」

 

「てめ、アーロンさんのっ! ウギャアッ!!?」

 

「ナイスタイミング、マイン! さ、そこの長っ鼻のあんたも増援来る前に逃げちまうよ!」

 

「もうどういうことだよォー!!」

 

 大声を上げながらノジコさんに続いて走り出す長鼻さんに激しく同意しながら私もココヤシ村に向かって走る。なんだか少し面倒なことになってきたのかもしれないな……。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 ノジコさんの家に着き、少年への説教が終わって彼を帰した後、私たちは長鼻さんの話を聞いていた。キャプテンと名乗っているので船乗りなのかも。見るからにビビリで、話を聞いている限りとてもいい人そうなので海賊ではなさそうだ。彼はナミという女性を探しにこの村にやって来たらしい。

 ちなみにグラサン男は私が戻った時にはすでに逃げていた。今度会ったら職質では済まさないでおこう。

 

 ともかく、ウソップさんはそのナミという女性の姉妹であるノジコさんの話を聞いて派手なリアクションで一喜一憂していた。ナミさんとやらはアーロン一味に所属しているそうだが、彼女らの話を隣でオレンジジュース飲みながら聞いているとわりかしその人もいい人そうなので、うっかり斬り殺さないように気をつけておこう。

 

「仲間が1人運悪く、魚人に捕まってたのを忘れてた……! あんにゃろすでに死にかかってるからなー、魚人挑発して殺されてなきゃいいが……」

 

「ふむ、それは大変ですね。わかりました。そのお仲間も連れ戻してきましょうか」

 

「……そいや、さっきから気になってたんだがお前誰だ?」

 

「これは申し遅れました、私マインといいます。海兵やってます」

 

「かっかかか海兵ッ!?」

 

「? どうかしましたか?」

 

「い、いや!? なんでもねェけど!?」

 

 なんか挙動不審になってしまった。あ、もしかしたらこんな酷い状態になっているのに海軍はどうしてやがるんだ的なアレだろうか。だとしたら顔向けできないなぁ……。

 

「でもお前1人で行くのかよ? いくら海兵ったって相手は魚人だぞ! ……し、仕方ねェ。お、お、おれもついて行ってやろうじゃねェか!」

 

「いえ大丈夫です」

 

「なんでだよ! 頼れよ!」

 

「だって足手まといになりそうだし……」

 

「へっ! なめんじゃねェぜ、おれはキャプテーン・ウソップ! おれには8000人の部下がいる!」

 

 それはきっと嘘だろうけど、でも彼が私の身を案じて同行を申し出てくれたのは本当のことだろう。やっぱりとてもいい人だ。

 

「では行きましょうか!」

 

「え、今から? 準備とかは……」

 

「今です! 今行きましょう! レッツゴー!」

 

「ちょっと待てェ! いやホント待ってくれ、おれにはまだ心の準備があるんだがー!?」

 

 ぐいぐいと引っ張る私とギリギリと踏ん張るウソップさん。そしてそんな茶番をニヤニヤしながら見つめるノジコさん。うんうん、いい感じに盛り上がってきたし、さっそくアーロンパークに殴り込んで行きますか!

 

 ———などと、私は楽観的に考えていた。

 

 

「ノジコちゃん、マインさん! 聞いてくれ、朗報だ! 沖に海軍の船がきて、こっちに向かって来てる! おれたち助かるんだ!」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 ココヤシ村の住人から海軍が来ているとの知らせを受け、私たちは港に向かって急いで走っている。

 普通に考えれば確かに朗報。しかし私には妙に引っかかっていることがあった。

 

「海軍が来たって本当ですか!? アーロンが支配してから海軍はこの辺りを巡回してないんですよね!?」

 

「あぁ、正確には最初は来ることもあったが、全艦沈められてからぱったりパトロールも無くなっちまったんだ! だが、こりゃあついてるよな! あんたと海軍、それだけの戦力があればアーロンだって……!」

 

 そうそれだ。

 アーロンがこのココヤシ村、ひいてはコノミ諸島を占拠して以来ほとんどやって来なかった海軍船。こんなにタイミングよく現れるか? 可能性はゼロじゃないけど……。とにかく行って確かめなければ。

 

「あっ、多分あの船だ! もう港の近くまで来てるな!」

 

「ノジコさんと長鼻さんはそこで待機していてください。みなさんもです。あとゲンゾウさんも呼んでください。代表して話を通しますから」

 

「わ、わかった!」

 

「ゲンさんはもう呼んでる! すぐに来るはずだ!」

 

 そうこうしているうちに軍艦から海兵たちが降りてくる。帆には第16支部の文字……東の海(イーストブルー)においては古株な方の支部だ。

 

「チチチチ……私は海軍第16支部大佐ネズミだ。ココヤシ村の駐在ゲンゾウを呼べ!」

 

「失礼致します! 海軍第153支部一等兵モンキー・D・マインと申します! 諸事情あってこのココヤシ村に滞在しております! 駐在のゲンゾウさんはもうすぐいらっしゃるとのこと!」

 

「ほう、君が……」

 

 まるで値踏みするかのように目を細めるネズミ大佐。それほど強そうには見えないが随分と余裕がある……古株ならアーロンの凶暴さはよく知っているはずなのに。

 あとなんかウソップさんが口あんぐり開けてびっくりしてるけど、どうかしたのだろうか。

 

「……私がゲンゾウですが、大佐殿」

 

「ふむ、君か。ではナミという女の家に案内したまえ」

 

「……は?」

 

 ネズミ大佐の予想外の台詞に困惑の声が漏れてしまった。

 

「あの、お言葉ですが大佐、それは必要なことなのでしょうか? 知っての通りここはアーロンのナワバリです。この村の人たちは8年もの間救助を望んでいました。まずは軍艦に乗せれるだけ人を乗せて見つかる前に避難させるのが最善だと具申します!」

 

「フン、たかが一等兵ごときが大佐である私に楯突こうと言うのかね。大人しく指示に従え、君のクビなど私はいつでも飛ばせる……その権限があるのだからな」

 

「……」

 

 無言で私たちの視線が交錯する。信用ができない。まず間違いないのは、この人に村の人たちを助ける気が無いということ。

 腰に差したカトラスに手を添える。クビなど知ったことか、そのヒゲ全部引っこ抜いてやる。

 

「よせ、マイン君! ……ナミの家に案内すればよろしいのですかな、大佐殿」

 

「ゲンゾウさん、しかし」

 

「心配してくれるな。我々は耐え忍ぶ戦いを続けてきた……それを無駄にしたくないんだ」

 

「っ……!」

 

「チチチ、物分かりがよくて助かるよ……。さぁ、早く案内したまえ。そこの一等兵もだ。不穏分子には目を光らせていなければならないからな」

 

「……そうですか。奇遇ですね、大佐殿」

 

 舐め腐るのも大概にしろ。まだ何もしてないからこっちも剣抜いてないだけでいざとなったらお前が私のクビを切る前に私がお前の首を斬り落とす。

 私は殺気をビンビンに突きつけながら大佐とゲンゾウさんの後をついて行く。

 そして村の離れにあるノジコさんの家が見えてくると、その玄関先にオレンジ色の髪をした女性が立っているのに気づいた。彼女もこちらに気づいたようで、警戒するようにこちらを睨みつける。

 

「チチチチ……私は海軍第16支部大佐ネズミだ。君かねナミという()()()は」

 

「……犯罪者、そうね。海賊だから大犯罪者よ。ただ私はアーロン一味の幹部。大佐ほどともなればよくわかると思うけど、私に手を出せばアーロンが黙っちゃいないわよ。それでも何か用?」

 

 ナミと呼ばれた女性……ノジコさんの妹さんは不敵に笑ってそう返すが、やはりネズミ大佐は薄ら笑いを浮かべたままで動じなかった。

 

「チチチチ……何を言っているかよくわからんな。……海賊? そんな情報は私の耳に届いていない。ただ君が……〝泥棒〟であるという知らせを受けてね」

 

「……!?」

 

「聞けば君は海賊から宝を盗むらしいな。まァ、たとえ相手が海賊であろうとも……泥棒は泥棒。罪は罪だ。

 わかるかね? 罪人から盗んだ物ならば当然その盗品は全て我々政府が預かり受ける」

 

「なんですって……!!?」

 

「!」

 

「今までに貴様が盗み貯えた金を全て我々に提出しろと言ったんだ!! 盗品を探せ、畑を重点的に捜索しろ!!!」

 

 まさかこいつ、これが狙いか!?

 

「お待ちください大佐! それはあまりに横暴というもの! 確かに理屈上ではそうなりますが、それは一方的な徴収を行ってよいということではないはずです!

 そもそもこんなことをしている場合ではない! 仮に徴収するとしてもそれはやるべきことをやった後だっていくらでもできる!」

 

「……! そうよ! これが今海軍のするべき仕事なの……!!? もっとやんなきゃいけないことが他にあるんじゃないの!? アーロン一味は人を殺して町だって潰してる!! 知ってるでしょう!!?

 あいつらの支配でこの島の全員が『奴隷』にされているのよ!? その目前の問題を無視して〝泥棒〟1人から盗品を巻き上げることが政府の意向なの!!?」

 

 ナミさんは強引に彼女の家に踏み込もうとした海兵を棍棒で殴りつけて抗議をする。悲痛で、あまりにも必死な叫び。彼女の目には理不尽に対する怒りが込められている。

 私も彼女の意見に賛成だ。これはどう考えても異常な判断としか思えない。正義を背負う海軍としてあるまじき行為だ!

 

「チチチ……! 罪人が偉そうな口を叩くな小娘……! 構わん、捜索を続けろ!!」

 

「島中の人たちはずっとあんたたちの助けを待ってるのに!! よくもそんな人たちを素通りしてここへ来れたわね!!!」

 

 彼女は不躾にみかん畑に入り込もうとした海兵を殴りつけながら必死に抵抗しながら訴えるが、それすら無視して捜索を続ける大佐たち。大佐だけじゃない……こいつら支部ごと全員腐ってるのか!!

 

「私のお金はお前たちになんか渡さない!! あのお金は……」

 

「この娘の金は、このココヤシ村を救うための金だ!! それでも貴様らに金を奪う権利があるのか海軍!!!」

 

 ゲンゾウさんが大声でそう言った。村を救うためのお金……じゃあ、やっぱり彼女は何も悪くないじゃないか。

 

「……!? ゲンさん……? なんで、そのことを……」

 

「知っていたよナミ……()()()お前の行動がどうしても信じられず、我々はノジコを問い詰めたのだ……。村中のみんなが全てを知っている。

 だがお前がそれを知ってしまってはおまえがここを逃げ出したいと思った時、私たちの期待が足枷になってしまうと……知らぬフリをしていた」

 

「そんな……!」

 

 村人全員が1人で戦う彼女をずっと気遣ってきた……ということだろうか。本当に良い人たちだ。そしてその気持ちを踏み(にじ)ろうとするこのクソ野郎どもに(はらわた)が煮え繰り返る。

 

 そして今度は後ろから続々とノジコさんを筆頭にして進み出てきた村人のみなさんが声を上げた。

 

「あんたら政府の人間が頼りになんないから、あたしたちは一人一人が生きるため戦ってるって言ってんだよ!!

 村を救ってくれる気が無いんならさっさとここから消えな!! ぐずぐずしてるとあんたの船もアーロンに狙われるよ!?」

 

 しかしその言葉を聞いても大佐の口端は怪しく吊り上がるばかりか、次の瞬間彼は信じられないことを口にした。

 

「……ほォ、アーロン氏に? それはどうかなァ……チチチチ……。

 おい、まだ見つからんのか!? 米粒を探してるわけじゃねェんだぜ!? 一億ベリーだ!! 見つからねェはずがあるまい!!!」

 

「!? おい貴様なぜ金額を知ってる!!!」

 

「ん? ああ……一億。……まァ、それくらいありそうな気がしたんだチチチチ……」

 

「まさか……!! アーロンがあんたたちをここへ!!?」

 

 繋がってるのかこいつら!!? どうりでのらりくらりと(かわ)すわけだ、クソったれ!!

 

「さァねェ……私たちはただ政府の人間として泥棒に対する当然の処置をとっているだけだ」

 

「ッ!!? なんという腐った奴らだ!!!」

 

「海軍が海賊の手下に成り下がるなんて……!!!」

 

「我々海軍に逆らうのかね、……そういえば先程から君たちはその泥棒を必死に庇っていたな。

 チチチチ!! そうか、まさか村ぐるみで泥棒を働いているとは思わなかった! これは想像以上の事態だなァ……この村が総出で一億ベリーを匿う犯罪者の巣窟だとは! ならばこちらも相応の対応をしなければならんな!!」

 

「は……!? みなさん下がって!!!」

 

 村人全員がネズミ大佐を責め立てる中、彼は突如意味不明な口上を述べ始め……周りの部下たちが村人めがけて銃を向けた。しかもちゃんと狙ってる。何を血迷ったのかは知らないが、間違いなく当てる気だ!!

 

「撃て! 村人を全て撃ち殺せ!!」

 

「なっ!!?」

 

 捜索をしていた海兵すら銃を構え、硝煙とけたたましい銃声を響かせて弾丸を撃ち放つ。

 

 銃弾がココヤシ村のみんなに殺到する———私はその直前に立ちはだかり、迫りくる鉄の暴風を生身で全て受け止めた。

 

 先日アーロンの巨大ノコギリを無傷で受けた技だ。

 私の全身を構成している小さな組織を一点に凝縮し、硬化させて本来受け流しができないような体勢でもそれが可能となるような仕組み。

 前回はノリでなんかできそうだから使ったため100%の受け流しはできなかったが今回は技として仕上げてきているため、私は余裕をもって全弾に集中して受け流しを行った。

 銃弾は私の体表を滑り、その全てが村人たちを避けてあらぬ方向に飛んでいく。誰も怪我はしておらず、傷ひとつなく無事だ。

 

 それが油断だった。

 

「〝水狙撃銃(みずライフル)〟……チュッ♡」

 

「っ……!?」

 

 背後の茂から飛び出した高速のなにかが、私の左肩甲骨から右脇腹にかけてを貫いた。千切れた血管から溢れ出す血液と支えを失った臓物が貫通痕を埋めるようにしなだれかかり、激痛に思わず身体がよろめく。

 

「チチチ! 今だ、奴を集中して狙え! そうすれば我々の取り分が3割増える! 6000万だぞ、なんとしても撃ち殺せ!」

 

「こふっ、なるほど……そういうこと、ですか」

 

 ようやく合点がいった。こいつらの狙いは最初から私だったというわけか。

 つまりアーロンが私との決闘を万全に勝利するために、裏で繋がっている海軍を使って村人を攻撃させたんだ。以前の接触で私が必ず村人を守ると見越した上でけしかけ、その隙をついて背後から自分が擁する狙撃兵によって私に重傷を負わせるというアーロンの卑劣な策。

 加えて私が使っていた技の弱点も悪い方に作用してしまった。肉体を一点に集中させる都合上それ以外の部分が脆くなる。用は不意打ちに弱い技だ。

 様々な要素や悪運が重なったとはいえ、私の落ち度に変わりはない。

 

「みなさん、速やかにここから退避してください。早く!」

 

「わ、わかった! ナミ! お前も来るんだ!」

 

「待ってゲンさん、ベルメールさんの畑が……!」

 

「私たちがここにいてはただの足手まといだ!! 今は堪えろナミ!!」

 

 ゲンゾウさんがみんなを迅速に退避させてくれている。これで少しは戦いやすくなるか。

 

「何をしてる! 早くあの女を撃ち殺せ!」

 

「うるさい黙れ喋るな下衆ども!」

 

 掃射された銃弾を切り落としながら叫ぶ。村人を狙っていたさっきは狙いがバラバラだったから身体で受けざるを得なかったが、私を狙うならその必要もない。

 躊躇なく敵陣に突っ込み容赦の欠けらなくカトラスを振るい、斬り伏せる。

 

「くそ、おい魚人! 私を助けろ、私はお前たちの得意先だぞ早くしろ!」

 

「喋るなと言ったはずですが、舌を切り落としましょうか?」

 

「ひっ!? い、いつの間に!?」

 

 大佐……いや、ネズミの言葉を無視してカトラスを振り下ろす。

 

「ぎゃああ! クソ、私は大佐だぞ!! その私に逆らうとは反逆罪!! 貴様は犯罪者として指名手配されることになるぞいいのか!?」

 

「はぁ、別に構いませんけど。私は自分の正義に従ったまでです」

 

「!? ぎィいいい!?」

 

 袈裟に斬られてなお逃げようとする大佐の足を切り落として動けなくする。

 

「この村の人たちは、みな心から思い合っていた。無償の愛をお互いに与えていた。ならばそれは大きな家族と言ってもいい。

 私の正義は〝家族のための正義〟。ゆえに私は家族の絆を引き裂こうとする者を絶対に許しません」

 

「う、うァあああ!!」

 

 がむしゃらになって這いずる腕を切り落とす。

 

「だいいち、あなたが上に報告すること自体無理ですよ。だってほら、手足を持たないダルマの貴方がどうやって船で帰って電々虫を手に取るんです?」

 

「か、ぱ……」

 

 ネズミは情けない声を上げてついに気絶した。不甲斐ない。こんな根性なしに少しでも穏便にことを進めさせようとした私が愚かだった。それにまんまと乗せられて敵の攻撃を受けるなど、それこそ頭が焼き切れるほどの失態だ。

 私はぐりんと首を海兵まがいどもに向ける。

 

「あなたたちも、誰一人逃しませんよ。これだけのことをしてくれたんです。手足の3、4本くらい……失う覚悟はできてますよね?」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

「ふゥ……これでお終い、かな」

 

 あちこちに血が飛び散ってしまったみかん畑。これは彼女たちにとっては形見のようなものなんだろう。詳しい話は聞いてないけれど、おにぃがあの麦わら帽子を大切にしているのと同じような空気を感じたから。こんな性根の腐った奴らの血で汚してしまったことに少し罪悪感を覚える。

 

「とりあえず、一旦村に戻ろ———」

 

 

 

 あ、おにぃのにおいがする。

 

 

 




 においフェチかお前は

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