REDクソ面白かったーーー!!!ってことと。
投稿死ぬほど空いたーーー!!!ってことです。
おにぃのにおいがした。
物理的にではなく、感覚的に『ここにいる気がした』のだ。
気配を感じたと言い換えてもいい。
昔からこの感覚だけは外れたことが一度もない。
土手っ腹には風穴が空いていて、ともすれば失血死しかねない傷だったが、そんなことはどうでもいい。
気合いで傷を塞げばなんとかなるでしょ。
むしろ些末事に気を取られておにぃを取り逃す方が大問題だ。
そうなったら死んでも死に切れない。
邪魔な家屋も樹木も何もかも切り落としてひたすらに、においのする方角に前進する。
走り続けて数分後、ようやく人だかりが見えてきた。
その奥から強烈な存在感が漂ってくる。
私が間違えるはずのない、触れ慣れた空気感。
全てを巻き込んで、破壊して、前に進む王様みたいなその覇気が。
「うおっ! マインちゃん!?」
「あ゛! あン時の女海兵!? おい、ちょっと止まれ! 今はまず……」
「邪魔ァ!!!」
「「どわァァァ!!?」」
すまん、ココヤシ村の人とうさんくさいグラサン男よ。
私は急には止まれないんだ。
タックルで吹っ飛ばしてしまって申し訳ない。
後で村人さんには平謝りしてグラサンには職質するから今はそこを退いてもらう。
破壊された門の残骸を走り幅跳びで乗り越えて、いざダイナミックエントリィィィ!!!
「おにぃーーー!! 会いたかっ——」
「ゴムゴムのォ……風車!!!」
「ごぶふァーー!!?」
飛び込んだ拍子に私の目に映ったものは、吹き飛ぶ数多の魚人たち、地面に足突っ込んで何かを振り回してるおにぃ、そして豪速で迫りくる白と黒のバカでかい海獣だった。
私は急には止まれないんだ。
思いっきり横合いから突っ込んでくる大質量に身体ごとぶっ叩かれた私は石壁に正面衝突。
アーロンの居城に大穴をブチ開けながら放り込まれたのであった。
ひどい交通事故だよ。
「あっ、わりィ」
「おいルフィなんかぶっ飛んでったぞお前の知り合いか?」
「てめェこのクソゴム! レディになんてことしてんだブチ殺すぞゴルァ!!」
「あれマインじゃねぇか!? おーい! 大丈夫か!? 生きてるかァー!!」
「えっ、あれマインなのかァ!? あいつなんでいるんだァー!!?」
「知ってんのかルフィ!?」
「おう! おれの妹だ!」
「「「妹ォーー!!?」」」
人が瀕死の時になにコントしてやがるんだこいつらは。
というかマジで痛いんだけど。
死にかけたんだけど!?
ふざけんな可愛い妹に何しやがるんだ文句言ってやるあのバカおにぃ!!
「おにぃーーー!! 会いたかったよーーー!!! さぁ今すぐフーシャ村帰って一生ずっと私と一緒に暮らそうねおにぃ!!!」
「やだ」
「やだ!?」
「んなことより血ィすげーぞお前。ちゃんと治療しろよ」
「お前のせいだよ!!」
「なにコントしてるんだお前ら?」
うるさい外野! こっちは真剣なんじゃい!!
「おいてめェら人間共ォ!! ごちゃごちゃうるせェぞ下等種族がァ!!!」
「「あ?」」
「キサマらいきなり押し掛けてきた挙げ句、おれの愛すべき同胞たちにこの蛮行……死ぬ覚悟はできてんだろうなァ!!?」
アーロンは激怒していた。
そりゃあもう瞳孔を肉食獣のように怒らせながら睨みつけて威嚇していた。
ちなみに私は事前に決闘に行くと言っておいたので、押し掛けてきたのはおにぃたち一行だけということになる。
私は無罪だ。
「ねぇ、おにぃは何でここにいるの?」
「こいつをブッ飛ばしに来た」
「そっか」
「お前は何でだ?」
「こいつをブッ飛ばしに来た」
「そっか」
私とおにぃは同時に唇の端を吊り上げて笑う。
「じゃあどっちが早くブッ飛ばすかで勝負だな」「じゃあどっちが早くブッ飛ばすかで勝負だね」
「やれるもんならやってみろ……下等種族ども! おい、ハチィ!!」
「にゅ〜〜〜! 任せろアーロンさん! 〝たこはちブラーック〟!!」
アーロンの号令により、側で控えていたタコの魚人が広範囲に真っ黒な墨を吐いてくる。
単調なものだ。
私とおにぃは軽やかにそれを回避し……回避……あれおにぃ何やってんの?
「うわーーー!」
「おにぃー!!?」
「前が見えねェー! 足も抜けねェー!」
「あっ! あいつ足地面に突っ込んでるから抜けねぇんだ!」
「ルフィー! 何やってんだお前ェー!!」
さすがにバカがすぎるだろ、二度見したよ!
タコ魚人はチャンスとばかりに瓦礫を持ち上げ、身動きの取れないおにぃを押し潰そうとする。
「喰らえ! 〝たこはちブラック オン・ザ・ロック〟!!」
「全くしょうがないんだから、あのバカおにぃ! 〝
振り下ろされた瓦礫に向かって
そのまま身体を捻り、回し蹴りを顔面に叩き込んで吹き飛ばした。
「にゅや〜〜!!?」
「おおー! 強くなったなァ、マイン!」
「うぇっ!? えへへ……そんなことないよ、ちょっと死線の一つ二つ潜っただけだし……というかさっさと足引っこ抜きなよ!?」
「そうだった! おーい、ウソップ〜! これ抜いてくれ〜!!」
「おれはとんでもないバカの船長について来ちまったのかもしれねェ……」
その言葉にハッとした。
そっか、おにぃにはもう私の他に普通に頼れる仲間がいるんだね。
……ふーん。
「大丈夫だよ、おにぃ」
「え゛」
「今すぐ自由にしてあげる……ふふ、考えてみればちょうど良い機会だった……」
「なァ、ルフィ。空気変わったんだが」
「私が今すぐその足切り落として助けてあげる! そうすればおにぃも海賊やめてくれるよね!!」
「ウソップー!! 早くしろォォ!!!」
「うおお!? 落ち着けマインー!? 急にどうしちまったんだお前ー!」
「どいてウソップさん! その足切り落とせない!!」
「落ち着け言うとろーが!!」
「乗るなウソップ! こいつ人の話聞かねーんだ!」
「ギャアギャアうるせェぞ人間どもォ!!」
「! おっと!」
剣を振り下ろそうとした刹那、横合いから迫り来る殺気を感じ取り、飛び退って攻撃を避ける。
おにぃとウソップさんも間一髪でその場に伏せて無事だった。
見ると巨大なノコギリを振り抜いたアーロンがいつの間にか迫って来ていた。
少し気を抜きすぎたか。
千載一遇のおにぃの手足ちょん切りタイミングに我を忘れていたようだ。
「なァ、海兵よ……。おれァ
「……それが何か?」
「おれたちはそこで数多の
アーロンは、3日前に見た時とは少し雰囲気が違って見えた。
彼の声から目から感じる強烈な感情……怒りの密度が以前とは段違いなのだ。
「お前に切られた傷痕が疼くのさ! その度に脳裏に浮かんで離れねェ……! あの日の悲劇が!
「……」
「感謝してるのさ、おれは! いつの間にか胸に刻んだこの怒りさえ、時は風化させちまうらしい……。それをまたお前はおれに抱かせた!」
このアーロンは何かが違うと、私の第六感が警鐘を鳴らしている。
この相手はもう、油断できる相手ではなくなったのだと。
気を抜けば、死ぬぞと。
「おれはあの日の大アニキの心に巣食う〝鬼〟そのもの! おれこそが、魚人族の〝怒り〟だァ!!!」
並々ならぬ怒気。
それはココヤシ村の人たちから聞いた話や、私が対峙した傍若無人な支配者というよりも。
まるで行き場のない怒りを、世界への怨嗟を咆哮するかのようで。
その叫びに誰もが知らず身を固くした——たった1人を除いては。
「知らねェーーー!!!」
「!」
「魚人がどうとか! 人間がどうとか! そんなことよく知らねェけどな……!」
……やっぱり、おにぃはこういうとこだよね。
ほんと、いざって時はカッコいいんだから。
「お前をブッ飛ばさねェと、うちの航海士が心の底から笑えねェ!!!」
「シャハハハ! 威勢が良くて結構だ……! だがな……」
「うおっ! 何だ何だ!?」
アーロンはそう言って
途端、石畳にヒビが入り、おにぃの足が埋まったままの地面がごっそりと持ち上げられた。
「悪魔の実の能力者は海に嫌われる! ゲームといこうか海兵、そして海賊どもよ! お前らのきょうだい、引いては船長を……引き揚げられるものならやってみやがれ! おれたちを前にして、それができるというのならなァ!!」
「うあー!!?」
海はまずい! 能力者は海中では無力だ。
これが罠なのは分かりきっている。
相手は魚人。おにぃは海に引き摺り込むためのエサなのだ。
だが、それがどうした? 兄のピンチだ、私が行かずに誰が行く?
「おい、待てルフィの妹! 思うツボだぞ!」
「上等ですよそんなもん! 泳ぎは死ぬほど練習してきましたから!!」
「いやいやいやそういう問題じゃねェって! 敵は魚人だぞ死んじまう!」
「シャハハハ、その通りだ。そして海兵の女……てめェはこれを見てもまだ平静でいられるか?」
「何……? ッ、それは……!」
後ろに控えていたエイの魚人が麻袋をアーロンに手渡す。
彼はそれをバサリと引き剥がすと、その中から出てきたのは1人の少年だった。
顔には見覚えがある……ウソップさんを助けた際、一緒にいたゴサの町の生き残りだという少年だ。
彼は縄で簀巻きにされている。
端的に言って、これ以上なく人質だった。
「……卑怯ですね。さすが海賊」
「シャハハ、そう言うな。お前たち海軍の十八番だろう? おれはいつかお前たちにやられたことをやり返しているだけのことさ」
「そういうの、不毛と言うんですよ。早くその子を離しなさい」
「シャハハハハ! それじゃあ人質の意味がねェだろうがよ! 言ったはずだぜ、ゲームをしようと!」
アーロンは凶悪に笑いながら、手に持つ少年を海へと放り投げた。
「! なんてことを!」
「こんな日に兄が来るとはついてなかったな海兵! さァ、選べよ! 愛すべき兄か! 罪なき一般市民か! 正義の名の下に犠牲を選べ! お前たちは何をやっても正しいもんなァ!? 世界政府の走狗ども!!!」
犠牲? そんなものは出さないどっちも助けてお前もブッ飛ばす。
おにぃならきっとそうするだろう。
だから、私は何も迷うことなどありはしない。
「おい何してる、挑発だ! 潜れば死ぬぞ!」
「早くしなければ間に合わないかもしれませんから。それに……」
ぐっ、と石畳の
そして心配してくれるおにぃの仲間の皆さんに、ニカっと笑い、自信満々に告げる。
「私は大丈夫です! もう2度と、こんな時に無力を感じず済むように、私はずっと泳ぎの練習をしてきたから!!」
思い出すのはあの日、おにぃが山賊に襲われて、海に落ちて、シャンクスが助けに行って、でもシャンクスは腕がなくなって、おにぃはひどく泣いていて、私はずっとうずくまって隠れることしかしなかった。
もうそんなことは嫌なんだ。
そのために努力してきた。
覚悟なんてとうの昔に決まってる。
「来るなら来いよ、ギザギザサメ男! そっちのホームグラウンドで無様に負ける覚悟があるのなら! 水中勝負と洒落込みましょう!!」