よっておにぃの手足を切り落とす   作:抹茶れもん

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全員でもっかい魚人島編読み直そうぜ! 超おもしれェわ!!
かなり複雑なテーマなのに少年マンガとしてアクションとストーリーをちゃんと成立させながらあれだけの完成度でスマートかつ面白くカッコよくマンガにできるの尾田っち天才すぎるだろ!!?



そのために、私の愛はここにある

 

「アーロンパークが落ちたァーーー!!!!」

 

 おにぃの勝利が決まったその瞬間、皆の歓声によって地面が揺れた。

 ココヤシ村にとっては8年に及ぶ支配からの脱却。

 求め続けた自由がついに手に入った……その歓喜は、フーシャ村でのうのうと生きてきた私には真の意味で理解することはできないのだろう。

 あるいはサボが生きていたなら……いや、考えても仕方ないな。

 とにかく、彼らがまた心から笑える生活を送ることができるなら、これ以上のことはない。

 

 とりあえず、私は喜ぶココヤシ村の皆さんを尻目に、片っ端からアーロン一味を縛りあげていく。

 手錠でもあればよかったのだが、生憎そういったものは持っていないし……あっ、そういえば今は港に軍艦が停泊してるんだっけか。

 ぶちのめして放置してある海軍の恥晒しどもを回収してから、アーロン一味と一緒に艦の牢屋にぶち込んでおこう。

 

 市民の皆さまには喜びを分かち合う権利がある。

 今回の事件、戦犯は海賊を見逃し続けた海軍にある。

 なら、後始末はこちらで全部きっちり済ませてしまうべきだろう。

 

「……ふふ、よかった」

 

 涙を流して抱き合うココヤシ村の住人たち。

 随分と遅くなってしまって、とても守れたなんていえないけれど。

 自分にできることはちゃんとやれたかな、と。

 誇らしい気分で、私もまた、これ以上なく嬉しく思えた。

 

☆★☆★☆

 

 打倒アーロン海賊団を祝し、その日は村で盛大な宴が執り行われた。

 こういう雰囲気は懐かしいなぁ。

 昔、シャンクス達が航海の帰りはこうして騒いでいたことを思い出す。

 

 もっとも、今回の宴はその比じゃなさそうだけどね。

 なんせ村どころか島中を巻き込んだ大宴会だ。

 いつまで続くかわかりゃしない大騒ぎだよ。

 

 私はまぁ、最初は戦犯の海軍でもあるので最初はちょっと遠慮したんだけど、「恩人であることには変わりない。是非お礼をさせてほしい」と言われれば、その気遣いを無碍にするのは野暮というものだろう。

 そう、なのでちょいと遠慮気味に私も宴に参加させてもらっているのだ。

 

「えー、今回アーロンをブチのめさせていただいたマインでェ〜〜す!! 歌いまァす!!!」

「うおおォォォ〜〜〜!!! いいぞいいぞ〜!!!」

「歌えーー!!!」

「サインくれーーー!!!」

「それじゃあいっきまァーす!! ビンクス〜の酒を〜とーどけーにゆくよ〜〜♪ 海風気〜まかっせ♪ なーみまっかせ〜〜〜〜〜♬」

「わあああああああああああ〜〜〜!!!!」

 

 まぁ私も? たまにはちょびっとハメ外してもいいかな〜最近割と頑張ってたしな〜と思ってつい出来心でお酒飲んじゃったんですよそうこれはちょっとした酔いなんですほんとの私はお淑やかな女の子なんですくそォ黒歴史だァ〜〜〜でも楽しかったからいっかァ!!

 

「潮のっ向こうで♪ ゆ〜う日〜も騒ぐっ♪ 空にゃ♪ 輪をかくと〜りの唄〜〜〜♬」

 

 ココヤシ村の人たちにとって、あまりにも多くの犠牲の上に成り立つ勝利だった。

 だからこそ精一杯、バカみたいに食って歌って騒いで笑おう。

 彼らは今この時のために生きたのだから。

 

☆★☆★☆

 

「お、おろろろろ……」

「もう……食べすぎ飲み過ぎ騒ぎすぎよ、あんた。やっぱりルフィの妹なのね」

「うっぷ、めんぼくない……」

 

 宴会で自分の許容範囲間違えてはしゃぎすぎるのは……やめようね!

 あと、介抱してくれてありがとナミさん。

 

「でも、さっきの歌よかったわよ。みんな盛り上がってたし」

「あー、昔、とても歌が上手な幼馴染に教わりまして……」

「へェ〜」

 

 今もまだお祭り騒ぎはあちこちで続いているが、私とナミさんは喧騒から少し外れた場所で休憩として夜風に当たっていた。

 

「アーロン一味やネズミのことは私にお任せください。責任持って然るべき処罰を与えますので」

「うん、何から何までありがとね。あなたがいてくれて助かったわ」

「つきましては、明朝にこの島を出ようと思っています」

「あら、そうなの? 明日も多分宴会は続いてるだろうし、もうちょっとゆっくりしていってくれてもいいのに」

「そうしたいのは山々なんですけど、やることもありますし」

「やること?」

「はい」

 

 ぶっちゃけると、この宴の騒ぎを利用しておにぃの手足をどさくさ紛れに切り落とそうかとも思ったのだが、それはやめておいた。

 この諸島の人たちにとって、私たちは仮にもアーロンの支配から解放してくれた恩人なのだ。

 そんな恩人同士が自分たちの目の前で猟奇的な行為に及ぼうものなら空気が凍りつくどころの話じゃない。

 私にだってそのくらいのことは理解できるのだ。

 だから泣く泣くこの案は却下とさせてもらった。

 その代わりに。

 

「奴らは、東の海(イーストブルー)で唯一海軍本部の海兵が常駐している島……ローグタウンに護送します」

「確かにアーロンは元々偉大なる航路(グランドライン)の海賊だったものね。そこが1番安心だわ」

「はい。そして護送の後、上層部に進言してローグタウン全域に可能な限り綿密な警戒網を敷かせていただこうと思います」

「……えっ?」

 

 予想外な言葉だ、という風にきょとんとするナミさんに構わず私は言葉を続ける。

 

「ローグタウンは東の海(イーストブルー)における偉大なる航路(グランドライン)への、最も代表的な玄関口。

 かつてあの〝海賊王〟ゴールド・ロジャーが生まれ、そして処刑された〝始まりと終わりの町〟。

 この諸島から〝偉大なる航路(グランドライン)〟に入るまでには、食糧などの補給のために絶対に立ち寄ることになるでしょう」

「待って! そしたら私たちは……」

「はい、飛んで火に入る夏の虫。狙い撃ちにされること請け合いでしょう」

「な……」

 

 ガバッと、勢いよく私の肩を掴むナミさん。

 唇を噛み締めて複雑そうな顔をする彼女に、それでも私はいたって真剣に見つめ返す。

 

「厳戒体制の海軍本部の戦力です。いくらおにぃが強いとはいえ、これを突破するのはかなり難しくなる」

「そんな……あなたルフィの妹なんじゃないの!? あいつは本気で海賊王になることを望んでる……! なのになんで!!」

「決まってます。私がおにぃの妹だから。理由はこの一つだけでいい」

 

 肩に置かれたナミさんの手を外しながら立ち上がる。

 悲痛な顔をする彼女には申し訳なく思うけれど……これは私とおにぃの問題だ。

 さんざん考え抜いて決めたことなのだから、こちらで一切曲げるつもりはない。

 

「……偉大なる航路(グランドライン)に入ってしまえば後がなくなるんです。

 今ならまだ、捕まっても取り返しがつく! これが私にとっての最後のチャンスなんですよ! これを逃したら後がない!!

 おにぃが止まる気がないんなら……私だって自分で勝手に止まってやる義理はない!

 私は、命をかけておにぃの夢を叩き潰す! ただ私のエゴ……それだけのために!!」

「っ……!」

「ナミさん、あなたもおにぃの仲間になるのなら、私はローグタウンで容赦なくあなたに牙を剥きます。そうせざるを得ない。私は海軍ですから。

 それでは……覚悟の準備をしておいてください」

「あ……」

 

 よし、言いたいことは全部言った。

 これで対策は練られるかもしれないけれど……おにぃは必ずローグタウンに寄港する。

 それまでに私も傷を治して、万全の状態で包囲し、一網打尽にしてくれよう。

 まだ空は暗いけど……もういいや、気持ちも(たかぶ)ってるし、縛り上げてる軍艦の操縦士を蹴り飛ばして出港してしまおう。善は急げだ。

 

「おらァ! 錨を上げろ、帆を張れ!

 出港準備! 目標、ボルスター諸島〝ローグタウン〟!!」

「は、はいィ!!」

 

☆★☆★☆

 

 勢いそのままにココヤシ村を出立して一日程経った頃、ついにローグタウンが見えてきた。

 ここまでの間に軍艦の操舵方法は聞き出しておいたので、用済みになったネズミの部下を再度拘束して艦内のブタ箱に叩き込んでいた、その時だった。

 

「シャハハ……到着か? 小娘」

「……アーロン」

「何か用でも? 生憎と忙しいのですが」

「シャハハハハ! 冷てェじゃねェか。こっちは暇を持て余してる……」

 

 手足に枷をかけられ、鎖でがんじがらめにされながら牢獄の奥に座り込むアーロンが話しかけてきたのだ。

 

「シャハハ、俺たちを捕まえて勝ったつもりか?」

「何が言いたいのかわかりませんね。本当に時間が惜しいので早くはっきり言いたいことは言ってください」

「生意気だな……魚人族の怒りを背負うのは俺たちだけじゃあねェって言ってんだ」

 

 獰猛に牙を剥き出してアーロンは言う。

 

「今この瞬間にも……ヒューマンショップじゃあ魚人や人魚の奴隷が人間に売り買いされている。

 俺たちの故郷、魚人島もそうだ。大海賊時代が始まり、人間の海賊どもが頻繁に出入りするようになってから誘拐が絶えず起こっている……。

 俺たちにとっちゃあ地獄なのさ今の時代は……!」

「……それで?」

「こうしている今も! 数え切れねェ悲劇と怒りは呪いとなり、尽きることなくまた新たな〝鬼〟を生む!!

 俺たちか人間か! どちらかが徹底的に片方を叩き潰し、恐怖をその身に刻み込み、支配するまで終わりはこねェ!!」

「……」

「散っていった同胞たちのための聖戦なのさ、これはァ!! 受け継がれる意志(恨み)は決して断つことはできねェ!!!

 覚悟しているがいい!! 報復という俺たちの正義が、いつの日かキサマらの喉元を喰いちぎるその時をォ!!!」

 

 アーロンのその怨嗟の叫びを背に、私は牢を去って甲板に出た。

 青い空と海、白い雲、揺れる潮風、地上を明るく照らす太陽(タイヨウ)の光。

 顔にかかる黒髪を耳にかけながら、先程の言葉を反芻する。

 

「——うん、どうでもいいかな。そんなこと」

 

 それについては正直なところ、私は〝興味がない〟としか言いようがない。

 だって私は魚人島にも行ったことがないし、身をもって彼らの言う悲劇とやらを実感したことがない。

 だったら、そんな奴があれこれ言うのはお門違いも甚だしいだろう。

 大体、そっちもココヤシ村の人たちに悲劇を与えているのだから被害者面をするなというものだ。

 

 人に生まれたのだから、いつか死ぬのが道理だろう。それが例えどんなに納得できない形でも。

 だから死者の思い(こころ)は死者だけのものだ。生者が自分で勝手に想像したそれに、がんじがらめに縛られて復讐に奔るなんて不自由極まりすぎて馬鹿馬鹿しい。

 生者が見るべきは過去じゃない。今を生きる同じ生者と、未来に生きる者たちだけで手一杯なんだから。

 

 中でも私は頑固で不器用だから、今しかまともに見られない。

 今この瞬間、手の内に抱えられるものだけが私の全てだ。

 これを死ぬ気で大事にすることだけで、私はいつも限界ギリギリ崖っぷちなんだよ。

 

 それでも悲劇は起きるから、それから愛する人を守るのが私にできる最大限。

 恨みを捨てられない者たちは確かにいる。

 ならそんな奴らはみんな私たちがぶちのめ(ゼロに)して、恨みの連鎖は食い止める。

 

「そのために、私の(正義)はここにある」

 

 例えどんな手段を使っても、生きていてくれさえすればそれでいい。

 私の守りたいものは、ずっと私の側で守り通そう。

 家族愛(絶対正義)の名の下に。

 

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