うそです。
アラーネアの容姿表現で人間の上半身、とありますが実際には形だけの人間です。
アラーネアと言う蜘蛛の下半身を持ち、上半身が人間と言う、所謂魔物娘が覇風に従うことを一族と、名に賭けて誓った。そして、誓いの恩賞。と言うわけではないがすべての頂点に立脚すると思われている覇風からの贈り物は、蟻蜘蛛族を大いに震わせた。
全てを醜魔族―――人間に奪われた蟻蜘蛛族が目にしたのは、太陽の光りを反射する力漲った葉っぱ。自らを主張するように太く長く自分の有り様を見せるでっかな木。さらに草と木の生えている範囲がかなりの物だった。蟻蜘蛛族の目からは、地平線が見えなくなるまでそれらが存在していた。だが、これは蟻蜘蛛族の視点であるため、かなりの誇張が入っている。実際はそんなに広くはなくて精々1.2kmほどであった。そして、これらを用意したのは覇風であるが、それ以外を全てセレンに投げたのでセレンは地味にキレ気味だ。
「改めまして、エヴァンジェと申しますわ。・・・・・・クビワツキでよろしいのでしたか?」
エヴァンジェと名乗る人物は、下半身が蜘蛛のような尻尾と六本足を持っていて、上半身が人間と言う常識的な容姿とはかけ離れた姿をしていた。
エヴァンジェは上記で説明した容姿をしているが、それは事実ではなかった。何故かというと、蜘蛛である下半身はアラーネアを参考にすると二倍以上のでかさを持っていて、その表面は生物的な柔らかいものではなく、すべてが機械によって覆われた装甲をつけていた。しかも覆われた装甲は青緑色をしていて、まるで生体兵器とでも言うかの様に時々、蠢いている箇所も発見できる。上半身は所々を人間らしき肌が観られるが、ほとんどは下半身同様に機械の装甲で覆われている。もちろんおっぱいなども覆われている。
「ク、クビワツキです・・・。貴女は誰ですか? もふ?」
覇風によってアラーネアはナニカに改造されて数日後、アラーネアは覇風から『エヴァンジェ』と名乗るように言付けされた。
改造された際、麻酔を撃たれて意識を失ったエヴァンジェは数日にわたり微睡みの中に居たので、意識が起き上がってから覇風に会い、覇風からの命で首輪付きの部屋と足を運んで言葉通りに改めて自己紹介をしに来たのである。
「えぇと、わたくしはアラーネアと名乗っていた者ですわ。これでお分かりいただけること?」
姿を忘れられていたエヴァンジェは気まずい表情を出して、装甲で覆われた手で額を掻く。
『アラーネア』と言う単語を聞いた瞬間、首輪付きの脳内には『いきなり怒る人物』がせり出て来た。そのため白い両手で頭を抱え、座り込みガクブルをお披露目したのである。
「あー、えー・・・。オホン・・・・・・。そんなに怯えないでくださいまし・・・。アレは失態なので忘れていただけると・・・」
いきなりガクブルしだした首輪付きに、あたふたと慌てながら六本足で近づいてそっと頭を撫でる。
頭に手を乗せられて、撫でられたことに少しびっくりする首輪付き。しかし、撫でられたおかげで『この人は大丈夫』と思ったのか、恐る恐る顔を上げて出来る限りの笑顔を向けながら詫びる。
「い、いきなり怯えてごめんなさいです・・・・・・。クビワツキですよ、よよよろしくおねがいしますですっ。もふふっ」
噛み噛みになりながらも必死に笑顔を浮かべながら、自己紹介を改める。
「えぇ。よろしくおねがいしますわ、クビワツキ。これからは天様の下僕として、仲間として、仲良くやっていきましょう!」
柔らかい微笑みを首輪付きに向けて、手を口に押さえて上品に笑うエヴァンジェ。
それに対して首輪付きは『下僕?仲間?』と意味が理解できない単語に頭を傾け、頭の上にハテナマークを浮かべる。
「えぇーと・・・。・・・・・・そう! お友達ですわっ! お友達として、わたくしと仲良くやっていこうですわっ!!」
首輪付きの問いに若干迷ったような面持ちを残して、どう意味がわかる言葉を思考した所『お友達』になってしまった。
『お友達』と言うワードに耳と尻尾をピンっと立てて反応する首輪付き。
「お友達っ? ・・・・・・お友達っ! クビワツキとエヴァンジェはお友達ですっ! もふもふぅ!!」
『お友達』と言って、エヴァンジェへと唐突に抱きついて喜びを体で表現する首輪付き。エヴァンジェも『お友達』はいままでいなかったせいなのか、首輪付きの行動に驚きつつ、自身も抱き合って『お友達』として喜びを分かち合っていた。
首輪付きとエヴァンジェが『お友達』と叫んで抱き合っている中、マザーの管制人格と言えるセレンが、その様子を覗き見ていた。
セレンは首輪付きとエヴァンジェが嬉しい表情を惜しみなく出して、互いの内側を出せる人物を見つけ出した事に喜んでいた。
だが、考えてほしい。これから首輪付き獣に成り得る人物に『お友達』は必要であるか。 それは覇風と同等な思考を持ったものでしか判ることはない。
◇◇◇◇
首輪付きとエヴァンジェが『お友達』に成り上がった一日後、さっそくエヴァンジェとって最高の一言につきるイベントが起こっていた。
「今回のミッションオブジェクティブを説明する」
マザー頂上にある管制室にて、コジマ粒子を回りに漂わせる覇風が椅子に座って空中ディスプレイに映るエヴァンジェを見ていた。
「排除対象は人間とその集落。集落及び人数の規模はそこまでデカくはないが、これはエヴァンジェの復讐を遂げる一歩だ。試験的実験も兼ねてはいるが・・・。まぁ、こんな事が聞きたいのではあるまい。私が与えた力で存分に殺すがいい」
覇風の方に移されている映像ではエヴァンジェの顔しか表示されていない。が、エヴァンジェはと言うと、首輪付きが搭乗する03-AALIYAHもといウィーズカラーの巨大な手のひらに、またとない巨大な装甲に覆われた蜘蛛の尻尾を鎮座させて覇風の言葉に耳を傾けていた。
「移動手段は首輪付きが駆るウィーズカラーだ。OBを使用し、できるだけ速く現場へと到着させる。送り届けた後は、邪魔にならないようその場を離れろ。その後はエヴァンジェ、お前の独擅場だ」
一句一句逃さないように真剣な表情で覇風の顔を見ながら頭に残す。だが、エヴァンジェの面持ちは自身の感情を我慢出来ないような『速く殺したい』とでもいいたい感じで口端を上へと釣り上げている。
「エヴァンジェ。お前の活躍に、私は期待している。その美しい体から、どう殺戮が見れるのかとな」
覇風の意外なお言葉を聞いて、エヴァンジェは頬を真っ赤に染め上げる。しかし、エヴァンジェの顔は至る所に機械の装甲があるため朱色に染まったほっぺたは見ることが出来ない。
「<えーしーねーむ『ウィーズカラー』。おーばーどぶーすといきますです!もっふ!>」
『行って来い』と空中に表示されるディスプレイから言われた首輪付きは、片手に乗っているエヴァンジェを回りの空気圧から守るように両の手を添える。
アリーヤの胴体である、スポーツカーのようなコアの後ろが開いてOBを発動する。
独特な音がマザー内部と外部を埋め尽くすと、長方形のカタパルトから『ウィーズカラー』が輝く光りを残して飛び出していった。
「あのコアがちゃんと動作するか見ものだな。さすがに急ピッチで完成させると不安が残るものだな・・・」
通信相手も、同室にも誰もいない所で独りでに呟く覇風。ちなみにセレンは首輪付きが搭乗している『ウィーズカラー』の方に付いて行っているため、この場には居ない。
◇◇◇◇
「<エヴァンジェ、怖くないのですか・・・・・・?もふぅ・・・>」
超高速巡航しているウィーズカラーから、エヴァンジェの片耳に付いている小型受信機へと通信を試みていた。
「怖い・・・ですの? 貴女がナニを恐れているのかは知りませんが、わたくしは怖いと言う感情は持っていません。むしろ、嬉しい。使命感がわたくしの中を急き立てていますわ」
ウィーズカラーの大きい両の手に隠されているため、どちらも顔色は伺えないがエヴァンジェの方は、装甲でほとんどが覆われた顔を蕩けるように頬を染めて自身の体を抱く。
「<わからないよ・・・・・。母さま・・・>」
誰にも聞こえないであろう、小さすぎる声音で弱々しく呟く首輪付き。しかしながら、ウィーズカラーに搭載されている通信用マイクはその声をしっかりと捕捉していてセレンとエヴァンジェにはしっかりと聞こえていた。
首輪付きの呟きに困ってしまったエヴァンジェは、とりあえず無視して会話と途切れさす。
この言葉を最後に、エヴァンジェの復讐場所へと着くまで終始無言となってしまった。
◇◇◇◇
「ここからは、わたくしだけですわね・・・・・・」
お互いに無言で、排除対象の近くまできたエヴァンジェ。首輪付きはエヴァンジェを届けると現地点から離脱して、遥か上空にて待機していた。まぁ、近くといってもACのブースター音が聞こえないくらいの距離なので数キロは離れている。
「うふふっ・・・。待っていてくださいな、醜魔族共。わたくしがズタズタに殺して、生涯を終わらせてあげますから。・・・・・・うふふっふフふ、ふふフフ。アハァッ!」
狂気に満ちた、凶悪な笑みを浮かべながら人間が住んでいる集落へと六本足を進める。
素晴らしい表情をしたエヴァンジェが歩くこと数十分。人間の集落の一歩手前までにエヴァンジェは到着していた。
「ま、魔獣だっ! 魔獣がきたぞぉっ!」
小さな集落の門番をしていた男はエヴァンジェを見ると叫び声を上げて、腰に下げてあるロングソードを抜き放ち、対峙する。
「うふふ・・・。さぁわたくしと天様の子供達―――アミダよ。穢らしい醜魔族を皆殺しにしておしまいなさいっ!」
エヴァンジェが番兵を見つけてそう言葉を言い放った後、エヴァンジェの目から、鼻から、口から、耳から。穴と言う穴から数ミリにも及ばない六目六本足をもつ青緑のダニの様な生物が湧き出てくる。
何を隠そう、この生物の正体はフロムのアイドル―――
エヴァンジェの穴から媒介して、師団規模に匹敵する数のアミダが出てきたと思うと母体から離れたから数秒後、数ミリにも及ばない全長だったにも関わらず、一気に肥大化して二メートル程の体をしたアミダへと変貌してしまった。
この集落に住む人間は、絶望と言う言葉をまだ知らない。
ちょっとややこしくなりますが、アラーネアはエヴァンジェに改名されました。意味が理解できると変態だって思うかもしれません。たぶん・・・。
Evangileでエヴァンジェと強引に読みます。
エヴァンジェと人間の会話、っていうか問答? 一応日本語表記にしていますが、お互い理解し得ない言葉を使っています。
次に出る兵器はAFを予定しています。