中々展開が進みません
キラキラ幼女に、堕とされると言う形で見送られた覇風は、空高くに落とされると言うわけではなく、岩の中に出現するわけでもなく、只々普通に森林の原っぱにうつ伏せの状態で寝そべっていた。
そして、棒の様に一切の乱れもない完璧な状態で地面と見つめ合っている事を数分間続けていた、覇風は『ピクリ』と体の一部を動かし、気だるそうな足を叱咤してその場に立った。
「・・・・・ここは、一体・・・・・?」
覇風が回りを見渡すと木がたくさん生い茂っており、所々の木には危ない色をした実や、新鮮そうで色鮮やかな木の実を付けているのが伺えた。
さらに、覇風は就寝して、目を開けたら真っ白すぎて頭がおかしくなるような所と金ピカローブを羽織っている幼女が居たと思うと、自分の言いたかった名セリフを言った次には、見知らぬ草木が聳え立っている場所へと着ていたのだ。
「どういう事だ・・・・・」
目を瞑り、その場で眉間に指を当てて、マッサージをしてから目を開ける覇風。
しかし、現実は非情であり、夢かと思っていた出来事はまぎれもない現実であった。
覇風は、幼女の言っていた言葉の内容を即座に思い出して、ここが中世ヨーロッパ風の『剣と魔法のファンタジー』の世界だと言う事をよみがえらせる。
「まさか、本当の事だったとはな・・・・・」
苦虫を口の中で潰した表情をするが、認めて受け止めなければいけない事実である。だが、驚愕の真実をそう簡単に認められないのが人間であり、人間たる証明だ。
「っ! そういえば、我が日本のことわざにこんな言葉があったはずだ。『焦った時はACFAをやって、落ち着こう。』とな。・・・・・さっそくPS3を起動させて、ACFAをプレイしよう」
そう呟いた途端に、生き生きしくなる覇風。やはり、覇風であるから、こうなることはしょうがないだろう。
元気よく豪語したのは良かったのだが、見渡す限り草や木しか無い所に、『PS3』『ACFA』『テレビ』『電気』があるはずもないので、覇風を絶望の中の絶望に突き落とすのは、そう難しいことではなかった。
「な、なんということだっ。何故。何故、『ACFA』がないっ!?」
すこし、自身の周辺を見渡すと両手を頭に当てて、地に膝を着き悲壮感を惜しみなく醸し出す。
神を信仰する、信仰者の懺悔みたいに姿勢を崩さず数分間が経った頃、覇風は突然、何かを思い出したかのように思い切りいきりだつ。
「あまり覚えては居ないが、不思議な幼き女が言っていたな・・・・・。『創造』の能力を授けると。文字通りの意味なら、無から有を創りだす言葉のはずだ。ならば、この場に『PS3』『ACFA』を創り出す事も可能だろう」
そう言葉を吐いた途端、覇風の目の前に淡い白色の光りが発光した。突然眼前が眩い光りに満ちたため、覇風は数瞬、瞼を閉じて顔を手で覆った。
「ふっ。ふはっ! ふはははははははっ!!! やった! やったぞ! 私はやったぞぉっ! メルツェェェェエェェエル!」
淡い白色の光りが止み終えると、顔を覆っていた手を即座にどかし『目的』の物があるかどうかを確認する。
『目的』の物が覇風の目に入ると、あまり人前では見せたことのない笑顔で、両手を天に上げ狂乱した。ACFAを見ると、どうしてもテンションが上がってしまう覇風にとって、端から見ると変な舞を踊っているようにしか見えないのはしょうがないことだろう。
「ふっ。ではさっそく『ACFA』をプレイしまくるとしよう」
ニヨニヨと口を歪め、両手を狂乱させながら『PS3』の電源ボタンを押す。
・・・・・が、いくら連打しても『PS3』の電源が入る音が聞こえないことに疑問を感じる覇風。
「何故だ、何故電源がつかないっ!? 貴方は、私を裏切ると言うのか、『ACFA』っ!?」
片手で『PS3』の電源ボタンを超連打しながら、もう片方の手で持っているパッケージに入っている『ACFA』に問い詰める。が、いくら言葉で『ACFA』に喋りかけても、『ACFA』から返答が帰ってこない事は、さすがの覇風でもわかりきっていたことだ。
なので、今一度、頭を冷静にして回りの状況を確かめる。
「・・・・・。私としたことが、なんで『PS3』のコンセントを指していないことに気がつかないのだ」
自分の失敗を認めようとしているのか、認めないようにしているのはわからないが、覇風の顔を見る限り、苦肉の表情をしているので心理的には認めようとしているが、子供の様な見落としに『PS3』と『ACFA』に誤っているようにも見える。さらに、『ACFA』が目の前にあるとどうしても、回りを見落としがちになる覇風にとって、初歩的なミスを犯すのはしょうがないことだろう。
『PS3』を起動させるために、『電力生産機(コンセント付き)』と『43インチのテレビ』を創造し、『PS3』と連結させる。
「では、如月 覇風。推して参る」
『PS3』の電源を入れて、『ACFA』のディスクを挿入し、『ACFA』のメニュー画面が開かれると、覇風はキメ顔でそう言い放つ。
そして、今一度この場所を確認してほしい。・・・・・そう。ここは金ピカ幼女から送られた森林である。森林の中でゲームをしている青年を見かけると、どう思うだろうか。人々は間違いなく「変態だ」と口を揃えて言うであろう。だが、覇風からの視点だと『ふむ、いい塩梅だ』と言うに違いない。
◇◇◇◇
時間は進んで、夕暮れが空を染めた時、覇風は回りが暗くてテレビが見づらいとの理由で視線をゲームから外す。
「むぅ、もうこんな時間か。いかなる時も、安息の時間と言うのは速く感じるものだな」
『ACFA』のデータをセーブしてから、コントローラーを手放し、立ち上がる。
すると、覇風の目の端に体長1mほどの巨大なウサギが映った。
「・・・・・。こんな生物は存在しているのか?」
怪訝な表情を浮かべながら白く巨大なウサギを観察する覇風。ちなみに、このウサギの名前は『ビルダーラビット』と言って、名前からわかるかもしれないが、かわいい外見からは見受けられない程の筋肉を皮膚の内側に持っていて、並大抵の人間ならば一回の体当たりで粉砕するほどの筋力をもっている。かなりおそろしいウサギだ。さらに、この『ビルダーラビット』は覇風がゲームをして約1時間後に美味しそうな獲物の覇風を見つけたのだが、空気を読んだのか、それとも覇風がゲームをしている時に放つ異様な雰囲気で手を出すに出せなかったのかはわからないが、ずっとゲームを終えるのを待っていたのだ。
覇風が『ビルダーラビット』を見ていると、突然かわいらしく『キュっ!』っと声を鳴らし、体を撓らせて、覇風に体当たりをした。
「ぐふっ!」
『ビルダーラビット』による不意打ちの体当たりを正面から受けてしまった覇風は、3m程地を回りながら転げまわった。
「な、なんだ、突然っ!?」
ゴロゴロと転がっていた覇風だが、摩擦抵抗によって徐々に勢いを無くし、次の攻撃に備えて即座に立って、なんの流派かわからないが格闘技の構えを取る。
そして、次々に『ビルダーラビット』が放つ怒涛の体当たりを危なげなく且つ、的確に回避する覇風。その様子は、今までニヤニアニヨニヨと『ACFA』をプレイしていた覇風の異様な雰囲気はなく、真剣そのものだった。
「くっ! 回避だけでは、いつかやられてしまうっ。何か、何か武器になるものはないのかっ!?」
右に飛び、左に飛ぶ。必死の形相でそんなことを繰り返している覇風と『ビルダーラビット』。
しかし、この均衡は突如『PS3がビルダーラビットの体当たりで砕け散る』と言う結果で終わりを迎えた。
『グシャッ!』っと異質な粉砕音が響いた時、覇風は一瞬、何が起きたのか頭の中で理解できなかった。『PS3』が破壊されたことによって、何も考えれなく成った覇風は動きを止めてしまう。
そして、『ビルダーラビット』はそれをチャンスだと思ったのか、これまでと比べることが出きない程の速度で、正面にいる覇風に跳躍する。
『ビルダーラビット』の体当たりが覇風に届くかと思われた瞬間、これまで以上に無機質で表情のない覇風の右腕が突如、前に伸びた。
「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアっ!!!!!!!」
あろうことか、『ビルダーラビット』の体当たりを右腕のみで軽々しく受け止め、そのまま左手で強烈で淡い緑色の素粒子状のナニカを纏ったアッパーを繰り出す覇風。
色々とやばいアッパーを真正面から食らってしまった『ビルダーラビット』は、まず頭が爆散して、連結するように体をも爆発させ、自らの血しぶきを回りに飛ばした。
「クソがっ! 下等生物の分際で、なにを粋がっているっ!」
周囲に飛び散らばっている『ビルダーラビット』だった物の内蔵や血肉を足で踏みつけながら激昂している覇風。自分の大好きな物を壊された覇風にとって、オーメルの様に超絶上から目線になり、色々とグロい風景を創りだしたのはしょうがないことだろう。
そして、『ビルダーラビット』だった内蔵や血肉を踏み続けて約10分後、覇風の中で『また、作り出せるのではないか?』と思い、血飛沫が飛び散っていない場所で『PS3』及び『ACFA』を思い浮かべて、創りだした。
手元に『PS3』と『ACFA』が在ることに安堵した覇風だが、何を思ったのか、すぐとなりにある木を突然八つ当たり気味に殴った。
「同じ物をまた作り出せるからといって、それを壊していいわけがないだろうっ!!」
殴られた木は『ベキリ』と音を立てながら、崩れ落ちる。さらに殴った際、衝撃波が発生してその奥に生い茂っている木々をなぎ倒していった。
グロい光景と、木々に八つ当たりをして粗方気分が落ち着いたのか―――当然、怒りは残っているが―――さっき、白色のウサギ『ビルダーラビット』に攻撃をした時に自分の左手が淡い緑色に光ったことについて考え始める。
様々な仮定が覇風の頭に過るが、最もその仮定に当てはまるのがあった。それはコジマ粒子を用いた『パンチ』だ。『ビルダーラビット』に出会う前に『ACFA』をプレイしていて、武器がほしいと願った時に、思考が『コジマパンチができればな・・・・・』と考えていたのが、そのまま『創造』の能力で作られかも知れない。
「私の体は、コジマ粒子によって造られているのか・・・・・?」
森のさざめきにより、消えそうなほどの声音で小さく呟く。
そうしゃべった途端、覇風の体が眩い光りが発せられた。そして、白色の光りが消えたと思うと自分の回りに、淡い緑色の小さなナニカ―――『コジマ粒子』がふわふわとたくさん浮かんでいる。
「・・・・・ハラショー」
自分の体を確認するように、クルクルと回りながら、どこかで聞いたことの在るセリフをちゃっかりと吐く。
数十秒、自分の体が『コジマ粒子』によってできていることに感動していた覇風だが、すぐにハッとなり、最も重要性がある言葉を呟く。
「これでは『コジマ粒子』に、森林が汚染されてしまう・・・・。害のない『コジマ粒子』がほしかったのだがな・・・・・」
また覇風がつぶやいた途端、体が光り輝いて数瞬で止む。
覇風は、『またこの光りか・・・・』と若干鬱陶しそうに小声で喋りながら、今の現象について考えた。
これまでに、『創造』してきた物の正確性を考慮すると、今覇風が言った害のない『コジマ粒子』がほしいと願った物は、本当の事と納得できる。なので、覇風は『PS3』と『ACFA』を『創造』した時と同じ満面な笑顔の表情をして両手を狂乱させた。
たしか、そんなことわざが在った気がします。
うそです。
感想、意見や罵倒、批判お待ちしております。