邪竜に急激されていたラミア族とダークエルフの二人を、保護と言う名の手駒にした覇風は、ラミア族のシャミアに『守れる力』を与え、ダークエルフのフランシスカとユージンに同様の力を与えた。シャミアは、自身の力を「すこし不便」などと言いながら自らで受け入れ、それを行使してたのに対してダークエルフの二人は、受け入れる以前に、そのものを忌引として現実から逃げ出していた。二人のダークエルフの態度に怒りを露わにした覇風は、二人で一人と変わり果てたフランシスカとユージンの首を締めあげて、それを叱咤する。
覇風はラミア族の長との会合をした後、大規模な行動を開始した。まず、本拠地であった犬侍族の近くに造った『スピリット・オブ・マザーウィル』を移動させる。移動させるときには、地表から見えるマザーの上半身がブースターで浮かび上がり、デカイ穴から六本の足が出てきて、完全に足が出きった時にマザーの上半身と下半身が結合する。
そして、見事完成した『スピリット・オブ・マザーウィル』が歩いて行動を開始するかと思われたが、そのまま水平に移動を始めた。実を言うと、この『スピリット・オブ・マザーウィル』の足裏には無限軌道、わかりやすく言えばキャタピラが付いているのである。そのため、一々重たそうな足を持ち上げて前へと鈍足に進むのを回避した。と言うのが覇風の言葉である。
さらに、覇風や他の種族が乗る『スピリット・オブ・マザーウィル』には武装が施されていないので、頂上部に付属されている超巨大なソルディオスが浮き上がり、回りを歩哨していた。あと、首輪付きが駆る03-AALIYAHAことウィーズカラーと、合体しているフランシスカとユージンが搭乗している特殊ネクストもソルディオスと並んで旋回している。
もう一つ言うと、犬侍族は置いていったようだ。犬侍族の長は、このことに悲しみ溢れて三日三晩泣き続けたと噂されている。
◇◇◇◇
新たなる拠点、海の隣にマザーを置いた覇風達は、主要人物を管制室に集めて重大な発表を公表した。
「さて、全員集まったな。・・・これより、私達は『多種族国家フロム』を建国する」
一般的に未開拓と言われる場所に拠点を置いたはいいが、すぐさま招集を掛けるとは一体何事だと思っている覇風以外の者達。
「多種族国家・・・ですの?」
初めにエヴァンジェが首を傾げながら、挙手して覇風へと疑問の言葉を質問する。
セレン以外の者達も同じような反応で、内心に『なんだろう』と思いながら次の発言を待つ。
「その通りだ。首輪付きやエヴァンジェ、ラミア族やダークエルフ族と言った、様々な種族達が同じ場所、同じ圏内での生活をし、外部の敵を牽制するためにあると考えろ。今はまだ、民と言える程の数ではないが、後ほど急激に増加するだろうと予測している。他にもまだまだ伝えることがあるが、今はこれだけでも十分だ」
覇風の、このセリフにセレンと首輪付き以外の者は『なるほど』と理解した頷きをする。首輪付きは、覇風の難しい言葉選びのおかげでまったく理解していない。
そして、理解した頷きをした者達は、重大な事に気づかない。覇風の言った違和感のある言葉に。
「先に言った通り、この国「フロム」には民が少ない。よって、シャミアとダークエルフ二人にミッションを与える」
名前を呼ばれたシャミアとフランシスカ、ユージンは、今一度姿勢を整えて覇風へとギョロ目と左右非対称の目を向ける。
「ミッション概要は、お前たちが知り得る全ての種族達に、我が国への勧誘だ。『現状より向上した生活を送れる』と言えば、大抵ついてくるだろう。準備が整い次第、すぐに発て。行け」
命を受けた三人は『わかりました』と一言だけ述べて、管制室を後にする。そして、覇風は残された二人の内首輪付きに視線を向けて、またミッションを下す。
「首輪付きにもミッションを命ずる。セレンと共に、ウィーズカラーへ搭乗してマップ制作をしてくれ。マザーを中心とした、半径300km以内だ」
「わ、わかりましたですっ。もふっ」
意味がわからない単語を必死に理解しようとしている首輪付き。だが、結局理解できないようで、セレンに教えてもらいながらとぼとぼと管制室を出て行った。
そんな中、唯一何も与えられていないエヴァンジェは、オロオロと覇風の身長を超える体を、あっちにそっちして、迷いの声を上げた。
「あの、天様。わたくしは何をしたらいいのでしょうか・・・・・・?」
両手を左右に、慌てている様子が伺える動作をして、できれば一緒にいたいと願うエヴァンジェが覇風に問いの声を掛ける。
対して、覇風は『そういえば、まだ残っていたな』と内心で思い出すと、右手を顎の下に持って行き、右の肘を左手で支える、所謂思案するときの行動をしてどうするかを考える。
そんな覇風の表情を見るエヴァンジェは、頬を朱色に染めてうっとりと見つめる。
「そうだな・・・・・・。私と一緒に来い。受け入れるための領地を整地しにいくぞ」
思案する時の体使いをやめて、後ろを向きながら話しかける。
「・・・あっ、はいっ! お供させていただきますわっ!」
エヴァンジェは、一瞬なんて言われたのかを脳内で何回も確認して、その言葉に驚く。現在のエヴァンジェの表情は、頬を真っ赤に染め上げて、蟻蜘蛛族の男性が見ると誰もが惚れてしまうような、輝かしい笑顔であった。言い例えるのならば、恋する乙女のようだ。
今、ここから覇風の計画が実行されてしまった。
歪で、愚かで、狂った覇風の恐ろしい計画が、結果的に世界を地獄に落としてしまう、最も災悪な計画が、ここで動き始めたのだ。
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