幼女のマリー・デニッシュと覇風が邂逅してしまった。その時、種族としての特徴はいかに。と質問された幼女マリーは、こう答えた。
「他のドヴェルグは知らないけど、わっちはすごい物が好きなのだ!」
すごい物が好き。漠然とした主張に動じもしない覇風は、一つの考えを思いついた。
その後、自身達の紹介を終えた覇風とマリーで、セレンを混じえない狂おしい会議を発展させ、多種族「フロム」の民に成ることをせがむ。
◇◇◇◇
計画を共に執行する決意を示したマリーが多種族国家「フロム」の民に加入してから、半年の時間が流れた。
知り得る人族以外の種族を多種族国家「フロム」に勧誘すると言うミッションを実行していたシャミアとフランシスカ並びにユージンは、複数の種族を引き連れて覇風の国へと帰還し、報告と謁見をしていた。
「我が一族をお呼び頂いて、誠に感謝します! 聖族様の化身である王の使い。我らケンタウロス族は、今再びあなた様に忠誠を誓いましょうぞ」
ソルディオスを埋め込まれたシャミアと、左右非対称の気持ち悪いリンクス、フランシスカ及びユージンに連れて来られた複数の内の一種族であるケンタウロス族の長が、コジマ粒子を纏う神、覇風に服従の姿勢を取りながら、感極まる表情をして忠意を示す。
「ご苦労。・・・・・・ふむ、ケンタウロス族の長よ。私にはお前が言う『忠誠』が理解できん」
偉そうな態度を崩さず、腕と足を組んだ状態で王座みたいな物に座っている覇風は、ケンタウロス族の長が言っている、飾られた言葉に悪どい物を投げる。そして覇風の表情は、良心的心情を持つ者が嫌悪する面持ちをしている。・・・確実に何かを企んでいるようだ。
「と、申しますと・・・?」
質問の意図が読み取れないケンタウロス族の長は、服従のポーズから顔だけを上げて、その真意を聞き出す。
「簡単な事だ。今ここで、『忠誠』とやらを実践してみせろ」
ケンタウロス族の長は、またもや混乱した。
言葉以外での忠誠。女を供物として捧げるか、手に接吻をするか。しかしながら、それらは雰囲気ではない。そう、違うのだ。
ケンタウロス族の長は、考えに考える。そして、難題の思考が態度率いた答えはただ一つ。―――『死』。現在で出来る、もっとも効率的で簡易な表し方。
「わかりました。この老いぼれ――――」
「お前ではない。・・・・・・そうだな、そこの奴だ」
覇風の言葉を理解したケンタウロス族の長は、すぐさまその事柄を実行しようとするが、覇風の一声によって遮られる。
「ひゃいっ!?」
たまたま、覇風と目が合ったケンタウロス族の女性は驚愕し、舌をかみながらも立派な返事をする。
しかし、当てたれたケンタウロス族の女性はこう思っていた。
えーと、聖族様に忠誠を誓うってどうやるの? よ、嫁に出張っちゃうとか? ダメダメ! あたしには許嫁が居るのよっ!!
まったくもって、意図を理解していない残念な脳を持っていた。
「お待ちください! ルーではなく、この私に任せてはいただけませぬか!?」
覇風と目があったケンタウロス族の女性を庇うように、男性のケンタウロス族が前へと躍り出る。
「良いだろう。では証明しろ」
未だに口を三日月型に歪め、極めて不遜な態度で申し出を許可する覇風。
後ろでは、ルーと呼ばれたケンタウロス族の女性が落ち着いた面持ち、所謂安心した表情していた。
「・・・我らは誇り高きケンタウロス族なり! 醜魔族を打ち滅ぼし、安寧をもたらす聖族のお心と共に! 聖族様万歳! 聖族様万歳!」
庇ったケンタウロス族の男性は、背中に着けてあった直剣を天に掲げ、声に張りを持たせる。
セリフを言い終える時には、直剣を自らの首元へ持って行き、そのまま垂直に斬首。
自らで切り取ったケンタウロス族の頭が、弧を描いて覇風の足元に転がる。根本から上が亡くなったケンタウロス族の首から、勢い良く鮮血が飛び散った。
支えを失ったケンタウロス族の体は『どさり』と音を立てて、直剣と共に床へ堕ちる。
「え。あ? フゥル? な、いやぁっ。いやぁァァァァァァァァァァァァアアっ!?」
飛び散った鮮血が、ケンタウロス族のルーの顔に振りかかる。が、そんな事は気にならないのか、目の前で失ったケンタウロス族の男性の名を呼んでヒステリックに叫ぶ。
「良い物を見せてもらった。さて、『フロム』へようこそ。歓迎しよう、盛大にな」
やかましいケンタウロス族の叫びを気にせず、言葉通りに寛容よく歓迎した覇風。
その言葉を皮切りに、ケンタウロスの一族全員は一斉に頭を下げる。中には苦虫を口の中で潰したような表情をする者や、感極まる面持ちをするケンタウロス族がいたが、どうでもいいことである。
◇◇◇◇
そんな非常に非道な事が起きてから長い月日が経過し、多種族国家「フロム」の人口は30万を超えていた。
覇風は、多種族国家「フロム」の国民が増加すると、ある程度の法律を制定し、統一紙幣を作り出した。統一紙幣名は『fc』と『c』の2つである。
『fc』はフロムコームと名称を持っていて、1fcを日本の紙幣に例えると一円。
『c』はコームと言う名称を持っていて、1cを日本の紙幣に例えると1万円。
fcは主に一般国民が使う紙幣で、「1fc玉 50fc玉 100fc玉 500fc玉 1000fc札 5000fc札」が存在する。cは主にデカイ取引に使い、一般国民が使用できないため使いどころは限られる。
金と言う概念が出てくると、多種族国家「フロム」では労働力を提供する露店が増え始め、種族伝統の食べ物等が売りだされた。
そして、「フロム」に在住する全ての種族が一心同体に思ったことが有る。
「この様な恵まれた環境に済む許可をくれた神様には、感謝をしてもしきれない。だからもっと役に立たせてくれ」
国民全員からの願望を聞いた覇風はほくそ笑んだ。
多種族国家の神である覇風は、国民の願いを聞き入れてある物をふたつばかり創りだす。それは様々な仕事を斡旋する、同じ目的を持つ者同士が集合する場所『カラード』。同時に『レイレナード社』を設立。
テンプレファンタジーに存在するギルドの様な物が『カラード』であり、登録をすると、様々な依頼が飛び交う。例を上げると荷物の運搬、「フロム」の外にいる何々を討伐せよなどである。
『レイレナード社』は、ドヴェルグ族のマリー・デニッシュを筆頭に部下数人のドヴェルグ族で構成されている。設立目的は多種族国家「フロム」の自衛手段を増加させる事と、国民及びカラードに対する大規模商売。
もちろんの事、首輪付きとエヴァンジェ、シャミアやフランシスカとユージンもカラードへと登録を済まし、首輪付きに至ってはレイレナード社の研究用兼専属のリンクスとなった。あと国民全員もカラードに登録されている。
重大な事は、これだけではない。
多種族国家「フロム」に反体制武装勢力を名乗る者が接触してきたのである。それと同時に、オリスタン王国と時の教会と言う国からも。
一番速く接触に成功したのは反体制武装勢力であったが、セレンによって門前払いを受けてトボトボと帰っていった。
二番目はオリスタン王国。使者の話では、どんな目的で国家を立ち上げたのかを聞きに来ていた。しかし、これもセレンによって門前払いである。
最後は時の教会だった。長ったらしい話をしていたのだが、要約をすると『調子に乗らないことだな』と伝えに来たようで、セレンに木っ端微塵にされて使者は死んだ。
物語は急速に歩み始めている。もう、誰にも止められはしない・・・。
最近寒いです。白い息が出てくるって、早すぎると思うんですよね。
あと少しでバトルパートへと移行します。